そこにいた自分が、その瞬間に本当に感じたことを残しています
──ExWHYZとして初シングルとなる『iD』には、mahoさんが作詞を手がけた「goodbye」も収録されています。別のインタビューで、「このタイミングじゃなきゃ書けなかった曲」と話されていましたが、いつ頃の心境が反映されたものなんでしょうか?
maho:ツアーが始まって、5月ぐらいですね。
──すごく余白のあるmahoさんらしい歌詞だなと感じたんですけど、どんなテーマや思いを込めて書いたんでしょう?
maho:いつも、そのときの感情を少しずつほどいていくような感じで書いています。「goodbye」=「別れ」って言うとちょっと寂しい響きがあるかもしれないんですけど、今の自分だったら、「別れ」というテーマに対して、最大限の愛を持って手を離すことができるかもしれないと思って書けた曲ですね。
──「別れ」って言葉も、決してネガティブな意味で使われてないですよね。別インタビューで、「大切なものが増えすぎて、逆に見失いそうになることがあった」とも話していましたが、それってどんな感覚だったんでしょう?
maho:今の自分で見つめなきゃいけないものを、ちゃんと見つめなきゃと思ったというか。たとえば、あの頃はこう思っていたとしても、今の自分はきっと違うのに、同じだと思い込んで縛られすぎちゃったりすることってあるじゃないですか?それは今に対しても過去に対してもいい形ではないなと気付いて。だから、今の自分ができる形でいったん手放してみる。もしかしたら、それが未来にふわふわと飛んできて、また巡り合える大切なものになるかもしれない。なので、今は今「大事だな」と思えるものを、自分のキャパシティの中でちゃんと見つめていけたらいいなって。そんなふうに感じたんです。それを、ツアーが始まって、ライブをする中で本当に強く思って。
──楽曲が生まれたタイミングと、ツアーが始まったタイミングが近かったからこそ、この歌詞が書けた、と。
maho:本当に1週間でも、気持ちってすごく変わるんですよ。スタッフさんに「ちょっと締め切りすぎてるけど……」って言われながら、「もうちょっとしたら書ける気がするんで、すみません」みたいな感じで。たとえば、金曜日には書けなかったことが、土日を過ごしたら月曜日には書ける、みたいなことがある。ちゃんと自分の気持ちに沿った言葉にしたいと思って書きました。
──mahoさんの中でも、自分の気持ちをしっかり掴み取れるタイミングがあるんですね。
maho:そうですね。なんとなくで埋めたくないっていうのは、すごくあって。なので、今回も丁寧に書きました。

──LINE CUBE公演を目前に控えたタイミングで、改めて「goodbye」の歌詞を見て、どんな風に感じますか?
maho:今はもうそう思っていないとかではなくて、その時に書いた気持ちとか、そう思えた自分は絶対にいて。たとえ気持ちが変わっていたとしても、「こういう風に感じた瞬間があった」っていう自分が、ちゃんと存在していたことが大切だと思っているんです。日記じゃないけど、本当に思ったことを書こうと思って書いたので、そこにいた自分が、その瞬間に本当に感じたことを残しています。後から見た自分もちゃんと信じられるように、大事にしたいなって。そんな風に思っています。
──シングル表題曲「iD」は、メンバーそれぞれが書いた歌詞が組み合わさってできている楽曲ですよね。mahoさんが書いたパートはどのあたりなんでしょう?
maho:<正気じゃいられない だけど疑いもない>は私が書いたんですけど、すごく自分っぽいなって思いました。というか、私が実際に思っていたことだから、そのまま書いたって感じですね(笑)。最初に、『iD』ってテーマをいただいて、「私たちの存在証明になるような曲にしたい」って想いがあったんです。強い気持ちを持っていたし、証明していきたいっていう気持ちは間違いなかったんですけど、この歌詞、2月くらいに書いているんです。
──ツアーが始まる前に書いていたんですね。
maho:その時点ではまだ、そうだって言い切れるような経験は、4人としては積めてなかったんです。正直、形もちゃんとつかめていなかった。でも、そのときの自分が感じていたリアルな温度感みたいなものをちゃんと書きたいなと思って。活動だけじゃなく、日々の生活の中でも、自分の行いや選択が正しいのかどうか分からないけど、それでも「疑いようがないから進んでいく」気持ちがあって。希望とか、何かしら信じたいものがあるから、疑えない。そう思っている気持ちは本物だと思ったから、それを書きたかったんです。そう思えるのは、これまでの自分たちの足跡があるからだと思うし、だからこそ感謝の気持ちを込めて書きました。
──4人とも、それぞれ違う言葉で書いているのに、向かっている方向性が同じですよね。
maho:そうですね。こういう共作のときって、全員のフルパワーの気持ちが一つに繋がってくるんです。1曲を通して全部がフルパワーになっているのが、すごくいいなって思います(笑)。
──本当に、すごいエネルギーを感じます。
maho:すごいですよね。歌詞が完成して、初めてレコーディングしたのが4月くらいだったんですけど、そこからツアーで披露して、3ヶ月くらい経って。その強い気持ちで書いた部分が、だんだん馴染んでくる感覚があって。今では、歌っていて「ちゃんと自分たちにフィットしてきたな」って感じられるのが、すごく嬉しいです。リリース前に、みんなが返してくれたバラバラの言葉たちが、3ヶ月かけてちゃんと自分の言葉として口に出せるような気持ちになれて、本当によかったなって思います。
