水玉さがし / Royal Touch
5人編成となって初の作品となる今作は、正統派ポップス、ジャズ、ボサノバ、フォーク・ミュージック、プログレッシヴ・ロック、ソウル・ミュージック、昭和歌謡、賛美歌テイスト、タンゴ調… と、ジャケットのステンドグラスのイメージそのままに、多彩でカラフルな楽曲達が収められている。
【配信価格】
mp3、wav 単曲 150円 / アルバム 1,650円
>>>「01. CALM DOWN」を1曲フリー・ダウンロード出来ます!
【TRACK LIST】
01. CALM DOWN / 02. 寝息とアフリカ / 03. package / 04. MIKADO / 05. clash plum / 06. 密林のF# / 07. spin the meat / 08. ミステイク / 09. 映画枕 / 10. 空洞物語 / 11. 双子のファンファーレ
10年を越えるバンド活動、自然に生まれたピュアな響き
札幌在住のアーティストと聞いて、エモーショナルな情感を覚えるのは、ステレオ・タイプな先入観かもしれない。しかし、その音楽の先に、壮大な余白が広がっているという感覚は、案外共感してもらえるのではないかと思う。例えば、Discharming man。例えば、sleepy.ab。それぞれに、特有のエモーショナルさ、壮大な超自然性が備わっていて、技術的なものを通り越した本質が横たわっている。そんな気がして仕方ないのである。
水玉さがしという、札幌在住の5人組による新作『Royal Touch』もまた、同様の要素を秘めているバンドだ。元Discharming manの玉木道浩が在籍しているということもあるが、ヴォーカル、ピアノの水玉よしこの歌声が、コンダクターのように5人の演奏を一つにまとめあげている。それによって、エモーショナルでありながら、メロディの立ったポップ・ソングが、武器となって鳴り響いている。どこかクラムボンのようなセンスやメロディも彷彿とさせるそのサウンドは、長い時間をかけてじっくり熟成されてきたようである。
というのも、水玉さがしは、2001年に結成され、本作が4作目となる。さらに、前作までは、ピアノ&ヴォーカル、ベース&ギター、ドラム&バイオリンというトリオ編成だったが、本作までの間にドラマーが脱退、新しくドラマーとベーシストが加入し、キーボードとトランペットを兼任するメンバーも加入した。つまり、10年選手とはいえ、新しい道を歩み出して初めてとなるアルバムでもあるわけだ。
彼らの楽曲における大きな軸として、ジャズのような即興性があるのは間違いない。そこに、ソウルやボサノバ、タンゴなど、いくつもの音楽的要素が横断的に盛り込まれ、幅広く、懐の広い音楽が鳴っている。しかし、とっちらかった印象はない。アレンジ力の豊かさ、演奏力の高さ、経験値の豊富さ。それらによって、各楽曲が裏打ちされており、余裕すら感じることができる。なおかつポップさを感じるというのは、水玉さがしの音楽的センスが非常に高いことを証明している。さらに一番の肝となるのは、彼らのエモーショナルさが根底にあることだ。
最初にエモーショナルと書いたが、これだけの技術とセンスに裏打ちされていれば、そのような表現をする必要はないかもしれない。それは、個人の中から沸々とわいてくるものというより、太刀打ち不能な自然から受け取ったような感情。水玉さがしが、海を越えた国で生まれた音楽的要素をいくつ取り入れても、オリジナリティを持っているのは、そうしたエモーショナルが潜んでいるからに違いない。また、水玉よしこの、妖艶さをも感じる歌声が加わることで唯一無二の楽曲が完成する。彼らは技術や音楽的センスに裏打ちされながら、日本人ならではの、そして札幌ならではの、地に足のついた音楽を奏でている。それは決して意識的ではないかもしれない。10年を越えるバンド活動の中で、自然に生まれ、育まれてきたからこそ、ここまでピュアに響いてくる。北からの素敵なプレゼント。これを聴かないなんてもったいない。(text by 西澤裕郎)
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クラムボン / Rough & Laugh
2012年4月にリリースされたライヴDVD以来の作品で、アニメ”しろくまカフェ”のオープニングとして制作されたシングル曲「Rough & Laugh」。3人の演奏技術の高さはそのままに、アニメのオープニングの王道を行く疾走感と、耳に残るポップなメロディーで幅広い世代のリスナーの心をがっつり掴んでくる。
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PROFILE
水玉さがし
現メンバーは、水玉よしこ(ヴォーカル、ピアノ)、玉木道浩(ギター、コーラス、鉄琴)、ザキ(ベース)、俵谷“ボブ”仁規(ドラムス)、佐藤貴英(トランペット、アコーディオン、キーボード)。ドラム、ベース、ピアノ・ヴォーカルから成るトリオ・バンドとして2001年札幌にて結成。2002年1stアルバム『BCG』、2006年2ndアルバム『地団駄のリズム』(tone catz records)発表。2010年リリースの3rdアルバム『frozen』は、mouse on the keysの川崎 昭、二階堂和美、サカナクションの草刈愛美などから絶賛を受ける。2011年、ドラマーのチェンジ+ベース、トランペットのメンバーが加入し現在の5人編成となる。ギターの玉木は、2009年までDischarming manに在籍。ピアノ / ヴォーカルの水玉よしこもアルバム『フォーク』とその後の何本かのライヴにゲスト参加している。