2017年J-POPをタワーレコード年間チャートを元に振り返る──OTOTOYトピック2017 POP編
2017年も残すところあとわずか。今年の音楽トピックをジャンルごとに振り返る「OTOTOYトピック2017」も年内最後の更新となります。ヒップホップ編、アイドル編と続き、今回はJ-POP編。安室奈美恵の引退宣言、彼女のベストアルバムがチャートを賑わせました。大ヒット曲がなかったなんてネットで言われたりもしていますが、実際はどうなんでしょう? そこで、タワーレコードの年間チャート「ベストセラーズ2017」を元に、タワーレコード広報室室長の谷河立朗さん、レーベル事業部長の行達也さんとともに2017年のポップシーンを振り返りました。
2017年J-POPを、タワーレコード年間チャートを元に振り返る
タワーレコード・ベストセラーズ2017 邦楽アルバムTOP20
1. 安室奈美恵 / Finally
2. 嵐 / 「untitled」
3. 関ジャニ∞ / ジャム
4. ONE OK ROCK / Ambitions
5. Suchmos / THE KIDS
6. Hi-STANDARD / The Gift
7. Hey!Say!JUMP / Hey! Say! JUMP 2007-2017 I/O
8. 米津玄師 / BOOTLEG
9. 欅坂46 / 真っ白なものは汚したくなる
10. スピッツ / CYCLE HIT 1991~2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary
11. ゆず / ゆずイロハ 1997-2017
12. back number / アンコール
13. V6 / The ONES
14. 乃木坂46 / 生まれてから初めて見た夢
15. SMAP / SMAP 25 YEARS
16. 桑田佳祐 / がらくた
17. NEWS / NEVERLAND
18. 三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE / THE JSB WORLD
19. Kis-My-Ft2 / MUSIC COLOSSEUM
20. KinKi Kids / Ballad Selection
タワーレコード・ベストセラーズ2017 邦楽シングルTOP10
1. 乃木坂46 / 逃げ水
2. 乃木坂46 / インフルエンサー
3. 欅坂46 / 不協和音
4. 欅坂46 / 風に吹かれても
5. 嵐 / Doors -勇気の軌跡-
6. 関ジャニ∞ / 応答セヨ
7. 星野源 / Family Song
8. 関ジャニ∞ / なぐりガキBEAT
9. 乃木坂46 / いつかできるから今日できる
10. 嵐 / I'll be there
>>〈2017ベストセラーズ〉ジャンル別ランキングはこちら
ーー今回はタワーレコードの年間チャート「2017 ベストセラーズ」を参照しながらお話を伺っていきたいと思うんですけど、このチャートはどのような集計方法で導きだされているんでしょう?
谷河立朗(以下、谷河) : 2017年1月から11月までのタワーレコード全店の売上を基に作成しています。12月の作品が入っていないんですけど、うちとしてはお客様が今年のヒット作品をまとめて振り返りたい、買いたいなと思っていただける月にチャートを出したいので、ベストセラーズという形でこの時期に出させていただいています。
ーー基本的にはCDの売上をベースに集計していると。
谷河 : そうですね。シングルを見ると面白いですよね。乃木坂46と欅坂46が1~4位を占めていて、今年をよく表しているなと思います。
行達也(以下、行) : 逆にアルバム・チャートは例年、どうしてもオリコンだとアイドルものが強くなってしまうんですけど、タワーのチャートはCDとして売れている純粋なチャートになっているんじゃないかなと思います。
ーーやはり今年は圧倒的に安室奈美恵さんが強いですね。
谷河 : 11月8日の発売だったんですけど、1ヶ月ない時期の集計でもダントツです。
ーー配信やストリーミングの時代にベスト・アルバムってどうなんだろうと思っていたんですけど、こんなに売れるのかと驚きました。嵐や関ジャニ∞といったジャニーズ勢も強いですね。そんななか、ONE OK ROCKが4位、Suchmosが5位と大健闘していますね。
谷河 : ベテランのアーティストが多く入っているなかで、この2組が入ってくるのは面白いですね。
行 : 結局、僕らが90年代に聴いていたものとそんなに変わらないんじゃないかって思うようなアーティストの作品が多いので、ワンオクやSuchmosが入ることはいいことだなと思いますよね。
レーベル SPACE SHOWER MUSIC 発売日 2017/01/25
01. 02. 03. 04. 05. 06. 07. 08. 09. 10. 11.
※ 曲番をクリックすると試聴できます。
ーー例えば星野源さんは、去年『恋』で大ヒットを飛ばしましたけど、今年のシングルチャートでも『Family Song』が7位に入っています。作品自体のよさに反応があるということなのかなとも思うんですけど。
行 : それもあるけど星野くんは相当強運だと思いますよ。曲のクオリティーはもちろんですし芝居や執筆もやっている、そういう間口の広さもありますし。僕はSAKEROCKをお客さん5人くらいのときにライヴを観てましたが、当時はここまでいくとは思ってもいなかったから。
ーーSuchmosに関しても、音楽で勝ち上がってきた感じがありますね。
行 : Suchmosも星野くんも音楽のよさに運も味方したっていうのは近いのかな。あと、ただ平均点が高いだけじゃダメなんだなとも思って。相対性理論がでてきたときもすごくそう思ったし、突出したものやとっかかりが必要なのかなと。
パッションだったり、佇まいのかっこよさに10代の子は絶対惹かれる
ーーあとONE OK ROCKがここまで上位にいるのはすごいことだなと思っていて。今やアティテュード的にはヒップホップのほうが本来のロック的なのかと感じていたので、ロックらしいロックがここまで支持されているのはおもしろいなと。
行 : 若い子にとって、激しめのロックだったりパンクとか直情的なものは絶対に感性として惹かれると思うし、ずっと廃れないものなんですよ。ワンオクがちゃんと売れているのは、今テレビに出ているバンドの中でも目立つところにいるし、初めて聴いた人もこんな音楽あるのか!! と飛びつく可能性も高いんだろうなって。
ーーたしかに、見た瞬間かっこいいと思えますもんね。
行 : そこはHIPHOPも同じだと思います。ロックに惹かれる子もいるし、HIPHOPに惹かれる子もいる。メロディがどうこうではなく、パッションだったり、佇まいのかっこよさに10代の子は絶対惹かれるんだと思います。
ーー6位にはHi-STANDARDがランクインしています。2016年に事前告知なしでシングルを販売して大きな話題を呼びましたけど、今年もアルバムと一緒に『AIRJAM2000』のDVDを事前告知なしで販売しました。
行 : 店頭で突然売り出されて面白かったですね。スタッフも知らなかったし。ごく一部の関係者のみで情報管理をして一緒に盛り上げる協力をさせていただきましたね。
ーーこれは現場でもお祭り感があったでしょうね。
行 : お店も相当盛り上がりましたね。みんな喜んでいたし、熱かったですね。
谷河 : 売り場の雰囲気もすごくて、Twitterで広がっていく様も面白かったですね。シングルのときは、ハイスタを売り出している横で星野源さんを展開していて。男性と女性_が同じ売り場の正反対に集まっていて、すごく売場が盛り上がりました。
ーー90年代後半から活動していて休止期間もあったハイスタが、20年経ったいまなおチャートに入ってくるのはすごいことですよね。
行 : ハイスタは普通に出しても売れると思うけど、それだけじゃなくて何か面白いことをやろうと考えているのがすごいと思います。手間がかかっても、そういうことをやるのが一流なんだなと。
ーー情報が漏れたら一気に拡散される時代にすごいことですよね。
行 : 本当に一歩間違えたら破綻する企画ですからね。それが守れたのは、お店のスタッフもすごいなと思いました。自分だったら絶対言いたくなりますもん(笑)。
メジャーでお金をかけて鳴り物入りでという時代ではない
ーーあははは。2017年には、BiSHもゲリラ的に2ndアルバムを299円で先行販売して大きく盛り上がりましたよね。
レーベル avex trax 発売日 2017/11/29
01. 02. 03. 04. 05. 06. 07. 08. 09. 10. 11. 12. 13.
※ 曲番をクリックすると試聴できます。
行 : うちの社長も「BiSH、やっぱりすごいな」って言っているし、売り方で学ぶべき点は多いですね。ただCDを出すだけだと、音楽が良くても気づかれずに終わることも多いので。中身が良かったらそのうち売れるっていうのは幻想だと思いますね。
ーーBiSHは活動初期から徹底してフリーダウンロードをしたり、とにかく聴いてもらうことが大事だと考えていますからね。
行 : いまは拡散するためのツールがたくさんあるから、個人レベルでプロモーションできる可能性も増えている。逆に言うと誰でもできるから横並びになっているので、プラスアルファを考えないと目立つところまではなかなかいけないんですよ。
ーーそういう点で、上位に入っているグループは何かしらきっかけがあるわけですもんね。Suchmosも自動車のCMがあったり。
行 : 例えば、米津玄師さんもニコ動という方面から来た人であって、何かしらきっかけはあるんですよね。メジャーでお金をかけて鳴り物入りでという時代ではないのははっきりしていますね。
ーー欅坂46の快進撃も気になるところです。乃木坂46や他のグループも大好調のなか、アルバムのトップチャートに入ってきたのが欅坂46でした。
行 : これが象徴的ですよね。AKBグループのなかでも、アイドルっていうジャンルで測りきれなくなってきている。
ーー僕も欅坂46のCDを買いました。握手会とかは行かないしストリーミングで聴けるんだけど、なんで買ったのかわからないけど普通に買いました(笑)。
行 : 買わせるための音作りが徹底しているんだと思いますよ。
ーー10位のスピッツもベスト・アルバムですね。
谷河 : スピッツ、ゆず、back numberと全てベスト・アルバムですね。
ーーこうやってみると、本当に息の長いベテラン勢が多いですね。
行 : 10年選手が多くなっていますね。そういう意味でも、今年の1番のブレイクは米津玄師じゃないですか。あと、ジャニーズの中でも楽曲派が上位に入っていますよね。ファンではない普通の人が買うのは楽曲派のグループなんだというのが現れている。旬なアーティストに楽曲提供してもらったり、そういう部分が伝わっているのかなと。
ーーあと、昨年だったら星野源の「恋」やRADWIMPSの「前前前世」やピコ太郎などがあったと思うんですけど、今年は突出したヒットがなかったという意見がネットでは見受けられますよね。
行 : ”誰でも知っている曲”ですよね…。うーん。たしかに。
ーー一方で、アルバムトップ20が純粋な音楽的チャートとして機能しているのが面白いです。ハイスタの話と同じで、売る人たちも一緒に応援しているかどうかが力になっている。タワーレコードが運営しているレーベル、T-Palette Recordsも、もともとタワーの店舗で働いていた方がスタッフをしていて、ノウハウはないかもだけど、愛情や現場感があるがすごい強みですよね。
行 : それは思います。レコード会社のA&Rの人が突然うちに来たらギブアップすると思います(笑)。そうじゃないところからきてるのが、T-Palette Recordsに関してはうまく機能している部分なのかなと。
ーー今、タワーレコードの中にはいくつレーベルがあるんですか?
行 : 10個くらいです。正直、別に最初はレーベルに意味はそれほどなくて、売れてきてからやっと意味が生まれると思っていて。「そこのレーベルから出ているアーティストなんですね」ってなることで後続が出しやすくなればいいなと。
谷河 : 今年は、うちのレーベルでいえばロック系やインディー系の結果が出始めてきた年だったと思います。中でも、緑黄色社会とTHE CHARM PARKの2つが突出していましたね。
行 : THE CHARM PARKはCDより配信がすごいんですよ。緑黄色社会はフィジカルしか出していないので圧倒的にフィジカルに反映しています。インディもストリーミングでも売上に繋がるんだなと実感できました。タワーはCD屋なのでそっちも大事ですけど、さすがに配信もないがしろにはできないなと思った年でした。
新旧入り乱れている〈J-ROCK TOP10〉
ーーそういえば、先日東京ドームにイエモンを観に行ったら、2日間で10万人も動員していて。
行 : それはやっぱり往年のファンですよね?
ーー年齢層は高かったですけど、若い子もいたのが面白かったです。
谷河 : イエモンは〈J-ROCK TOP10〉に10位で入っていますね。
レーベル TYMS PROJECT 発売日 2017/05/21
01. 02. 03. 04. 05. 06. 07. 08. 09. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16.
※ 曲番をクリックすると試聴できます。
行 : このチャートではTHE ORAL CIGARETTESが9位に入っていたりするし、面白いですよね。
谷河 : 10-FEETが6位ですしね。
行 : 新旧入り乱れている感じですね。
ーー純粋にチャートとして機能している感じがありますね。
行 : 今年楽曲として飛び抜けたものがなかったぶん、それは良かったかもしれないですね。良かったと言っていいのかもわからないですけど(笑)。
ーー2016年はSMAPの解散があってSMAPが盛り上がり、2017年は安室さんの引退発表でベストが売れた年でした。2018年は新しい世代の話題が欲しいですね。
行 : オリンピックが近づくのに合わせて、それと連動しておもしろい音楽も出てくるんだろうなという気はしています。洋楽と混じったものが出てきたり、国内ばかり見ていないで、視野の広いものが受けていくのかなと。海外も日本に目を向けていて、旅行客も増えているし、文化やアート的なものも含めてたくさんの目が向けられるので、その中から何か動きが出てくるのが楽しみです。
さまざまなジャンルをもっと深く知る「OTOTOYトピック2017」
その道の識者に2017年の音楽事情をきく「OTOTOYトピック2017」もぜひともお楽しみください!
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2018年もTOWER RECORDSのレーベルから新譜も続々リリース!!
アプガ妹分ユニット、アップアップガールズ(2)、2nd シングルを元旦リリース!!
アップアップガールズ(2) / どしゃぶりのテラス席 / フユトテトテ
発売日 : 2018年1月1日
定価 : 1,000(税抜)
品番 : TPRC-0197
収録曲 :
1. どしゃぶりのテラス席
2. フユトテトテ
3. どしゃぶりのテラス席(instrumental)
4. フユトテトテ(instrumental)
Pay money To my Pain PABLOとZAXが新ユニットを始動!!
POLPO / peels off
発売日 : 2018年1月24日発売
定価 : 2,500(税抜)
品番 : TRJC-1074
収録曲 :
1. 30 Steps
2. in the mountain
3. encore
4. Rhaphidophoridae
5. Night Cafe
6. Wings of Black
7. Sleeping Bug
8. Manhunt
9. White Painted Johnny
10. A fool born in April