2012年4月8日@下北沢SHELTER「爆祭-BAKUSAI-vol.4」(text by 西澤裕郎)
いつから、“ロック”は古くさい言葉になってしまったのだろう? もちろん、その思想自体は今でも力を持っている。古くなってしまったのは、メディアによって使い古され、記号となってしまった3文字そのものだ。そうは言っても、ロックという言葉を使ってバンドを語るべきときというのがあって、2012年はまさにその時代なのではないかと思っている。そこで語られるロックは、遺伝子的なレベルから生まれてきている。それがとてつもなくおもしろい。その最先鋒と言えるバンドが、大阪の空きっ腹に酒や、京都のtricotといった若い世代の音楽である。黒人にしか生まれ得ないリズムがあるように、日本人にしか生まれない“ロック”という血が、若い世代の間で通い始めているのだ。
2012年4月8日、tricotの自主企画 <爆祭>のvol.4が、下北沢SHELTERで行われた。ゲストに、SuiseiNoboAz、THE★米騒動、Scenarioartを迎えた会場は、SOLD OUT。ライヴ前から、tricotの物販には人が溢れていた。耳の早いリスナーは、すでにこの京都からやってきた4人組の魅力を嗅ぎ付けているようである。3バンドの演奏が終わったあたりで、会場が狭くなった。音楽業界の関係者が続々とやってきたようである。メジャー・レーベルからの注目度も相当に高い。とにかく、電子レンジで温められた爆発直前の卵のように、tricotはいつ殻を破ってメジャー・フィールドに飛び出してもおかしくない状態にある。
そんな状況の中、ステージに登場したtricotの4人は、そんなことはわれ関せずとばかりに、無邪気な笑顔で客席を煽ってからライヴを始めた。演奏開始と同時にお客さんが飛び跳ね、身動きの取れない客席に波が起こりはじめた。ここは強調しておきたいのだけど、お客さん以上に曲に乗っているのは、いつだってtricotの4人なのだ。彼女たちの非常に大きな魅力は、そのリズム感と躍動感にある。特にリズムの核を担うベースのヒロミ・ヒロヒロが、左右に飛び跳ねながら、髪を振り乱して笑顔で楽器を弾く様子は、換骨奪胎されたロックというものを一切感じさせない迫真の演奏スタイルである。ドラムのkomaki♂も力強くタイトだ。tricotはリズム隊がとにかくよい。それに加えて、キダ モティフォの生気に溢れた攻撃的なギターも、勢いを加速させている。そこにヴォーカル中嶋イッキュウの存在が加わることでtricotは完成する。
tricotは、楽曲だけではなく、バンドとして非常におもしろい。一曲の中で何度か訪れる、4人が揃ってブレイク決める瞬間は、写真でも言葉でも切り取れない煌めきを帯びている。そして、その煌めきはまだまだ可能性を秘めている。その鍵となるのはヴォーカルの中嶋。彼女のポテンシャルがどれくらいの大きさかは計測できないけれど、フロントマンとしての自覚とエネルギーが全面に爆発したとき、tricotというバンドは一回りも二回りも大きく変化するだろう。20歳そこそこのtricotは、まだまだ発展途上。その成長加速度についていけなくなる前に、ちゃんと掴まって彼女たちに注目しておくことを、おすすめする。
photo by Ohagi
2012.5.9 待望の2nd MINI ALBUM「小学生と宇宙」発売決定!!
tricot LIVE INFORMATION
2012年4月14日@福島LIVE SQUARE 2nd LINE
2012年4月20日@京都GROWLY
2012年4月28・29日@みちのく公園北地区
2012年5月3日@渋谷O-EAST
2012年5月4日@滋賀U★STONE
2012年5月5日@神戸ポートアイランド
2012年5月11日@京都MOJO<爆祭 vol.5>
2012年5月12日@高知X-pt
2012年5月19日@神戸
2012年5月24日@新宿LOFT<【小学生と宇宙】レコ発>
2012年6月2日@仙台PARK SQUARE
2012年6月3日@盛岡club change
2012年6月5日@新潟CLUB RIVERST
2012年6月7日@札幌SPIRITUAL LOUNGE
2012年6月9日@高松 DIME
2012年6月12日@福岡 graf
2012年6月15日@金沢 vanvan V4
2012年6月16日@江坂 MUSE
2012年6月17日@名古屋 CLUB Zion
PROFILE
tricot
当時各々活動していながらも「このメンバーなら凄い事が出来る(絶対)!」と確信し、 それまでの各々の活動を急遽終え、2010年9月1日『tricot』結成。見た目から想像出来る範囲を大きく超えた思い切ったパフォーマンスと予測できない独特の楽曲に、 力強くもどこか、か弱い繊細なヴォーカルが、なぜか何度も聴きたくなる絶妙な世界観を生み出し、 リスナーはもちろん、様々なライブハウス関係者などからも評価を受けている。