精神的にも経済的にも生きたいから芸術をしているーーヒロネちゃん、2017年以降の覚悟を語る
現在大学3年生のシンガー・ソングライター、ヒロネちゃんが、約10ヶ月ぶりとなるシングル『浴槽プランクトン』をリリース。ヒロネちゃんのいまにも消えてしまいそうな繊細な歌声と、それを引き立たせる壮大なバンドサウンドが優しく絡み合った名曲となっている。OTOTOYでは、恥ずかしいほどに赤裸々に綴られた片思いソング「おやすみ」、アコースティック・ギターとヒロネちゃんの歌声のみのラフな空気感を一発録りした「灯り」、シンプルなバンド編成ながら独特な構成を持つ「アイニー」、ヒロネちゃんの真骨頂であるピアノ弾き語りによる「静寂少女」の全5曲を収録したスペシャルパッケージを配信開始し、ヒロネちゃんの覚悟を語ったロング・インタヴューを掲載する。
OTOTOYスペシャルパッケージを配信スタート
ヒロネちゃん / 浴槽プランクトン
【配信価格】
WAV / ALAC / FLAC / AAC / mp3
単曲 250円(税込) / まとめ購入 1,000円(税込)
【TRACK LIST】
1. 浴槽プランクトン
2. おやすみ
3. 灯り
4. アイニー
5. 静寂少女
INTERVIEW : ヒロネちゃん
クラシック・ピアノを3歳から習い、通っていた高校の卒業演奏会では武満徹を弾くなどの経歴を持ちながら、ポップスの道へ舵を切ったシンガー・ソングライター、ヒロネちゃん。前作よりバンド・アレンジを野澤翔太が担当することで、より聴きやすいポップ・ミュージックへ変化を遂げた。そんなヒロネちゃんは2017年の1年間を音源制作とリリースに集中することで、卒業後も音楽を職業として続けられるかを判断するという。果たしてヒロネちゃんはなにを考え、どのように音楽に向かい合っているのか。話を聞いた。
インタヴュー&文 : 西澤裕郎
野澤さんの捉われていない感じがいいなと思う
ーー(Twitterを見ているヒロネちゃんを見て)メッセージ、たくさん送られてくるんですね。
ヒロネちゃん : うん、DMを開放してるから。
ーーどんな内容が多いんですか?
ヒロネちゃん : 失恋しましたっていうのが1番多い。あとは死にたいですとか。ちゃんと見ています。みんな大変だなと思う。
ーーヒロネちゃんは恋愛の知識が豊富だと思われているんでしょうね。
ヒロネちゃん : そんなことないんですけどね(笑)。
ーー今作『浴槽プランクトン』を聴かせてもらって、活動初期の作品と比較してすごくよくなったというか、なんて言えばいいんだろう…。
ヒロネちゃん : 改善された?
ーーうーん、改善されたじゃなくて匿名性を感じるようになった。前はヒロネちゃんっていうキャラクターが全面に出まくっていたのが、ちょっと薄くなって先入観に縛られずに聴けるようになった。曲を作るにあたってなにか変えたんですか?
ヒロネちゃん : うーん、変えてないです。いかにもポップスというようなアレンジをしてもらったからですかね?
ーーアレンジは、ヒロネちゃんに惚れ込んで鳥取から上京した野澤さんがされているんですよね。
ヒロネちゃん : 惚れ込んだというか(笑)。野澤さんは当時鳥取に住んでいて今思えばちょうどいい距離感だったんです。親や友だちにも言えない音楽活動の悩みを電話で相談していた。野澤さんは野澤さんでこのまま鳥取で死ぬのはどうなんだってことを言っていて。そういうのが積み重なっていって、タイミングよくワンマンだったり音楽制作を手伝ってくれることになったんです。
ーー野澤さんはもともともミュージシャンなんですか?
ヒロネちゃん : 全然違いますよ。音楽をするのがちょっとした楽しみの鳥取の会社員だったんですけど、大森靖子さんが好きでそこから繋がったんです。web上で私の音源を聴いて連絡をくれて、そこからやりとりをするようになりました。
ーーヒロネちゃんは学校で音楽の勉強してきた人で、野澤さんは感覚的にアレンジとかを始めた人ですけど、音楽のコミュニケーションはうまくいっていますか。
ヒロネちゃん : 野澤さんは私に「音楽の勉強をしてきていて知識があるから凄いなって思う」って言ってくるけど、わたしからするとそれだけが全てじゃなくて。野澤さんは野澤さんで私より音楽をたくさん聴いているから洋楽とかもいろいろ知っているし、野澤さんの捉われていない感じがいいなと思う。お互いに尊敬してるところがあって、私はDTMが全くできないから、そういう部分でも補ってくれているし。
ーー前回のインタヴューでも言っていましたけど、ヒロネちゃんはガンガン曲を作っていくタイプなんですよね。それはいまも変わらずですか。
ヒロネちゃん : ガンガン作っているんですけど、1曲完成させるまでにはわりと時間がかかるんですよ。1週間くらい練るかな。いろんなワードを出して、そこにメロディをのせた1コーラスのパーツがいっぱいある。それを適当にパズルのように結んでいって1曲にするんです。「浴槽プランクトン」も、別の作りかけの曲のAメロにあった〈浴槽の中で泣いてた〉っていう歌詞を最初のAメロに結びつけていていって1曲になったんです。
ーー同時並行で何曲くらい作っているんですか?
ヒロネちゃん : 3曲くらいですね。最近買ったんですけど歌詞を書くためのホワイトボードが部屋にあって、最初は携帯に歌詞を適当に打つんですよ。そのなかから最近の旬なワードを書く。そうやって曲ができて、それとはまた別に曲を作りはじめたり。そうやって何曲か同時進行でできるんですよ。
ーー例えば、AっていうストーリーとBっていうストーリーからいいところを組み合わせると、話が全然違っちゃったりするんじゃないかって気もするんですけど。
ヒロネちゃん : 私の曲ストーリーがないから大丈夫(笑)。でも統一性はあると思うんですよ。なんとなく1つのまとまりがある。ホワイトボードは小さなのが3つあるんですけど、真ん中のボードに主体となるものを書いて、端のボードには別のものを書いていって編み合わせていく。だから全体でどれを入れてもわりと大丈夫なんですね。
ーー本作では、ピアノ弾き語り曲「静寂少女」、アコースティック・ギターと歌声のみの一発録り楽曲「灯り」と、さまざまな演奏スタイルに挑戦されています。どのようにして、演奏スタイルを決めていったのでしょう。
ヒロネちゃん : 曲作りをしている時点で「この曲はバンド編成がいいなあ」とか「この曲は弾き語りがいい」ってなんとなく自分の中で決めていて、例えば「浴槽プランクトン」はキラキラさせたかったのでアレンジは絶対ストリングスいれてってお願いしました。「静寂少女」や「灯り」はCDの3曲目に収録するために作ったので自然に弾き語りになりました。シングルの3曲目とかってバラード多いイメージだったので。
ーー「浴槽プランクトン」をはじめ、本作には他のミュージシャンも参加しているんですか。
ヒロネちゃん : わたしと野澤さんと2人で作り上げました。音に関しては2人以外だれも関わっていません。曲をつくってからアレンジしてもらってレコーディングする、そこまでの行程はできればシンプルで短いほうがいい。わたしは人付き合いが下手だからいろいろな人が関わってくださることが必ずしも自分の音によく反映するわけではなくて。いまは野澤さんと2人で納得のいくものをたくさん話し合って作っていくのが自分にあってる気がします。
ーー「灯り」は一発録りでの収録ということですけど、どのような場所でどのようにしてレコーディングされたんでしょう。
ヒロネちゃん : 野澤宅で録りました。絶対にこの曲は一発録りがいいと思っていたので全部で10テイクくらい録って、その中から決めました。一発録りでしかとれない緊張感や空気感ってありますよね。
ーー「おやすみ」は片思いソングになっています。どのような着想から生まれた曲なんですか。
ヒロネちゃん : 曲を作るにあたって、超"恋愛ソング"を作ってみようと思って書き上げた曲が「おやすみ」です。曲を書くときにありがちな表現にならないように気をつけているんですけど、例えば「キス」は絶対にいれたくないワードだったんです。恥ずかしいから。でもそういうワードを使ったりしてTHE恋愛ソングにチャレンジしてみました。あとはaikoの「二時頃」という曲に感化されたのもあります。あの曲も夜の電話がテーマなんですけど、わたし自身夜の電話が好きだったりしたので。
ありのままが嫌だからやっている
ーーヒロネちゃんは、2017年は毎月リリースするくらいのペースで音源制作と発表をしようと計画しているそうですけど、ライヴはやらないんですか?
ヒロネちゃん : あんまりやらない。音源をたくさん出したいんです。2016年も4枚くらいCD-Rも出していたし、結構出してたんですけどね。今年はもっとRecをたくさんして発表したいんです。
ーー音源メインでやっていこうと思ったきっかけはあるんですか?
ヒロネちゃん : もともと素の自分が嫌でした。何気なく歩いてるときに車にうつった自分の顔が嫌だったり、特に素の自分が嫌いで。なりたい自分になりたくて音楽を始めたのにギャップが出てきちゃったんです。音源はそのまま自分の世界観を作り込んで発信できるけど、ライヴではどうしても嫌な自分というか、MCだったり音楽以外のところが出てきちゃう。それで家に帰って1人になると鬱になっちゃったりしてました。
ーーお客さんはみんな優しかったですよね。
ヒロネちゃん : そうそう、やさしくて楽しいし、とても嬉しい。でもちょっと嫌になっちゃう時がある、自分自身に。
ーー素の自分が嫌だっていうのは、音楽活動をはじめても変わらないですか?
ヒロネちゃん : うん。ずっと変わらない。
ーーだからこそ音源には自分の理想を全部詰めこんでいると。
ヒロネちゃん : そう。アートワークとかジャケットとか、限られた情報は自分の理想通りのものにしています。普段の自分とは全く違うと思います。
ーー要するに、音源はある意味作りものみたいな気持ちもある?
ヒロネちゃん : そうです。ありのままなわけがない。ありのままが嫌だからやっているわけじゃないですか…。だから、何がありのままだよって思うんですよね。
ーーおもしろいのは、理想的なものを作ろうとしてるけど、アレンジは野澤さんのやりたいように任せてるってところで、そこは気にならないんですね。
ヒロネちゃん : わたしはDTMを扱えないから誰かにやってもらわないといけないし、だからって誰でもいい訳ではなくて野澤さんだからいいんだと思います。わたし本当に人付き合いが下手なので、野澤さんくらいの理解のある人じゃないと出来ないと思う…。私はいずれ音楽を仕事としてやりたいんです。私は芸術学部にいるんですけど、よく自分のために芸術をやっていて、商業的にはやってないって人がいるんですよ。私はその気がしれない。私は、精神的にも経済的にも生きたいから、だから芸術をしています。
ーーヒロネちゃんは2018年3月で大学を卒業するわけで、2017年に音源リリースだけで生計が立てられるかに挑戦したいってことなんですね。
ヒロネちゃん : もし仕事として音楽をやるとしたら、会社員みたいに朝何時に起きて定時に終えるっていうのをやりたいんですよ。朝8時に起きて曲作りを始めてお昼休憩をして曲作ってって。芸術家って昼夜逆転しているイメージがあるんですけど私はそういうのじゃなくて、ちゃんとした生活をしていきたいなって。
ーーなんでそう思うんですか?
ヒロネちゃん : 普通の人に対してすごく敬意があるんです。だから自分は芸術家だからみんなと違う、そんなのする必要じゃないとかじゃなくて、自分もそうなりたい。わたしはずっと普通になりたかった。だから、今も朝からバイトに行ったりしているんです。普通の感覚を忘れずに、普通の世界観からかけ離れ過ぎないような曲作りをしたい。
ーー前は、昼夜逆転していたときもあったんですか?
ヒロネちゃん : わりと今も逆転しているんですよ。それでちょっとニキビができたりするんですけど、今は大学生だから休みの日に書かなきゃっていうのがあるから。卒業して何もやることがなくなったら、自分に甘えたダメ人間になっちゃいそうな気がするから、ちゃんと朝に起きて、曲作って業務してって、そんな生活を送りたいんですよ。
ーーもし音源だけで生計を立てるのが厳しかったら、どうするんですか?
ヒロネちゃん : 就職かバイトします。
ーー他の仕事をしながら音楽はします?
ヒロネちゃん : 音楽は一生続けます。生き甲斐だから。もし本当に生計が立てられたら、朝はちゃんと起きて音楽のために就職をしたってことにしたい。
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記念すべき全国デビュー作を配信スタート
ヒロネちゃん / きみの死因になりたいな
【配信価格】
WAV / ALAC / FLAC / AAC / mp3
単曲 200円(税込) / まとめ購入 1,200円(税込)
【TRACK LIST】
1. カロリーメイト
2. プラネットボーイ
3. 片道切符
4. 恐竜のうた
5. さみしいキャラメル
6. 19歳の夏
7. 目隠し
8. 死と魔法
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ヒロネちゃん / 神様
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WAV / ALAC / FLAC / AAC / mp3
単曲 200円 / まとめ価格 500円
【TRACK LIST】
1. 神様
2. スローモーション流星群
3. きみと雨ふりのうた
OTOTOYでしか手に入らないepを配信中!!
ヒロネちゃん / 憂鬱ep
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mp3 単曲 108円 / アルバム 540円
1. カロリーメイト
2. ピンポンダッシュ
3. 少女事情
4. 片道切符
5. 目隠し
6. 深夜0時
LIVE SCHEDULE
ちょっとはやいバレンタインイベント
2017年2月5日(日)@高円寺U-ha
料金 : 2,000円 (+1d)
時間 : 開場 19:00 開演 19:30
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新譜の楽曲解説
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メール事前予約(1月15日15時~)
来来来チーム 「muchujin」リリース記念ワンマンショー
来来来世紀で会おうよ 14 来年からちゃんとするから
2017年2月13日(月)@新代田fever
出演 : 来来来チーム
ゲスト : MCpero、ヒロネちゃん
時間 : 開場 19:00 / 開演 19:30
料金 : 前売 2,300円 / 当日 2,800円
ご予約は、mekakusirecords@gmail.comまで!
PROFILE
ヒロネちゃん
2014年から活動を開始。女性シンガー・ソングライター。 初の自主音源CD-R「わたしのep」を400枚完売させる。初ワンマン・ライヴを無力無善寺で行う。ディスクユニオンで発売した自主音源は、すべてディスクユニオン・インディーズチャート1位を獲得。 1stアルバム『きみの死因になりたいな』、2stアルバム『目隠し 照れ隠し』を発表する。 2016年、mekakusi records設立。専属アレンジャーの野澤翔太と日々あたらしい楽曲を創作している。