プログレッシブ・ロックと昭和歌謡が交配したハイブリッド・ミュージックーー都内某所にあるクウチュウ戦のアジトに潜入してみた!

もしも、プログレッシブ・ロックと昭和歌謡が交配したハイブリッドな音楽があったとしたら…? 実はあるんです!! しかも、まだ20代前半のメンバー4人が作っているのです!! そのバンドの名は、クウチュウ戦。すでに“若手歌ものプログレ・バンド”として耳の早いリスナーから高い評価を得てきた彼らが、より多くのリスナーに向け、ジャンルを超えた“ポップ・ミュージック愛”を発揮したアルバムを完成。その髄まで楽しんでいただくべく、OTOTOYではハイレゾ配信。さらに彼らが曲を生み出している都内にあるアジトに潜入!! まるで平成、都内とは思えない時間が止まったような場所からクウチュウ戦に迫ります!!
待望の全国デビュー作をハイレゾ配信スタート!!
クウチュウ戦 / コンパクト(24bit/48kHz)
【配信価格】
WAV / ALAC / FLAC / AAC : 単曲 270円 / まとめ購入 1,234円
※ファイル形式について
【Track List】
1. 追跡されてる
2. MUSIC TRAVELER
3. リカバリーポップス
4. アモーレ
5. ゴーストライター
6. 作られた歌
INTERVIEW : クウチュウ戦
いきなりの自分語りで恐縮だけど、アジトという言葉を聞くと20代前半に体験した記憶が蘇る。三重県の山奥にアジトと呼ばる廃校があって、ライヴのできるスペースはもちろん、屋上にはバスタブが置かれ、満天の流れ星を見ながら風呂につかることができた。そんなアジトの裸電球しかない薄暗い部屋で、ボブ・ディラン、ヴェルベット・アンダーグラウンド、そしてピンク・フロイドを流しながら神秘主義について語り合う日々を過ごすことがあった。あれから10数年たち、その想い出は僕の記憶から抜け落ちかかっていたのだが、クウチュウ戦がアジトで曲を作っていること、しかもプログレと歌謡曲を融合させたような楽曲を演奏していること、そして彼らはまだ20代前半であり、みな髪の毛が長くまるで現代の若者という印象をうけなかったことで、タイムスリップしたかのような気持ちになってしまった。
そこで、今回はぜひアジトで取材をさせてほしいと頼み込んだ。そうして指定された場所は都内のとある場所。電車も走っているし、わりと現代的な住宅街のなか、異質を放つ建物がみつかった。そして、そのアジトで4人は僕たち取材陣を迎えてくれた。そこは時代に取り残されてしまったかのような古めかしい場所ではあるものの、人間が生きているという雰囲気が強く残る場所であった。なにより、想像力がかき立てられる場所でもあり、ひんやりとした空気が流れていた。クウチュウ戦とはどのようなバンドか、そしてどのような音楽を指向しているのか、その一端がアジトを舞台にしたこのインタヴューから少しでも伝わってくれたら、とても嬉しく思う。2015年の日本に対する強いカウンター・パンチが、いま放たれようとしている!!
インタヴュー&文 : 西澤裕郎
写真 : 大橋祐希
このへんのポリスとは、ちょっとしたいい人間関係ができている
ーーそもそも、ここは一体なんなんですか(笑)?
リヨ : ここはじーちゃん家ですね。じーちゃんがここから引っ越して管理人がいなくなったから僕が管理することになって、エレドラとか持ってきてプリプロとかできるようにして。要するにアジトです。

ーー家の雰囲気は田舎的ですが、ここ都内ですよね? 音、大丈夫ですか…?
リヨ : ダメですね(笑)。ポリスは3回来てます。ただ、別にポリスも悪い感じじゃなくて「お楽しみ中のところ申し訳ないんだけども… ちょっと音を下げてもらえませんか」ってすごく腰低いんですよね。このへんのポリスとは、ちょっとしたいい人間関係ができているっていうかね。そう思ってます。
ーーあははは。クウチュウ戦が始まったとき、みなさんは大学生とかだったと思うんですけど、なんでプログレだったんですか? 若い人からすると、ちょっと小難しいような部分もあると思うんですよ。
リヨ : なんでだろ…(笑)。好きなことをやりたいっていう。他にないよね?
ベントラーカオル(以下、カオル) : 僕らの世代からしたら、小難しいものっていう捉え方はない気がするんですよね。すでに一種のクラシックと化しているから、普通にツェッペリンとかを聴く感覚っていうか。言ってみたらツェッペリンだって難解な曲はあるし、同じだなって。
リヨ : だからプログレっていう括りで聴いてはいなかったですね。60年代、70年代のイギリスのロック・バンド、ディープ・パープルとかビートルズとかレッド・ツェッペリンとかと同列で聴いていて、プログレっていう言葉も後で知ったと思うんです。もちろん、さっき仰ったとおり、小難しさっていうのは最初聴いた時はめっちゃ感じてました。例えば、ピンク・フロイドとか初めて聴いた時はそこまでピンとこなかったんです。なんだこれ? みたいな。時間が経って、キング・クリムゾンの「レッド」っていう曲を聴いて、なんじゃこりゃー! ってなった。そこからプログレっていう言葉を覚えて、プログレをいっぱい聴いてみようっていう風になって、こういう形になった感じですかね。

ーーちなみにみなさんは、どうやってディープ・パープルとかクリムゾンとかを知って聴いていったんですか?
リヨ : 僕は図書館ですね。
アバシリ : 僕は友達のお父さんにこういう音楽を好きな人がいて、そいつの家に遊びに行って、60年代のビートルズに始まり、そこらへんのレコードだったりCDを聴いてたのが始まりでしたね。
カオル : 僕は何方向かあって、小学生の時に兄が中古で『レッド・ツェッペリン2』を買ってきたとき部屋で一緒に「胸いっぱいの愛を」を聴いて、なんだこれ!? ってなったんです。あと、中学の吹奏楽部で一個上の先輩にロック好きな変わった女性がいて、共通の話題がツェッペリンとかハード・ロックだったんですけど、プログレっていうジャンルもあるよってことで、最初にエマーソン・レイク・アンド・パーマーの『恐怖の頭脳改革』を貸してくれたんです。
リヨ : やべえ先輩だな(笑)。
カオル : それがものすごくかっこよかったのと、小さいころからクラシックをちょっとやってたので、ELPもキース・エマーソンがクラシック畑の人間だったってこともあって取っ付きやすかったのかもしれないですね。
ーーユミコさんはどうですか?
ニシヒラユミコ(以下、ユミコ) : うちのお父さんがロックきちがいみたいなところがあって、聞いた話だと、3歳の頃にエマーソン・レイク・アンド・パーマーの「タルカス」をかけたら俺が踊り狂ってたっていう。その後も、お父さんのCDかレコードを沢山聴いていて、中学くらいでプログレ四天王にハマってっていうのが始まりっちゃ始まり。完全にお父さんですね。
自分が溶けて世界と一体化するみたいな体験をしました
ーーまるで、ここだけ時間が止まってる感じですね(笑)。当時のプログレって、他のカルチャーと結びついて生まれてきたものだと思うんですよ。例えば、神秘主義みたいなものだったり。プロフィールを見ると、リヨくんは海外によく行ったりするじゃないですか? っていうのはそういうのと結びついていたりするんですか?
リヨ : どうなんでしょうね。結びついてるのかな? 間接的には結びついてるんでしょうけどね。好奇心が強いんですよ。旅が好きっていうか、自分が誰でもなくなるじゃないですか? 一旦日本から出て、違う国に行って、新しい人と出会う。誰もクウチュウ戦のリヨなんて知らないし、0から始まるじゃないですか。その感じがすごく好きなんですよね。

ーー何者でもなくなる感覚が好きっていうのはおもしろいですね。突然ペルーに飛ぶっていうのはどういうきっかけから?
リヨ : ペルーは目的があって行ったんですよ。大学の卒論の一環だったんですけど、シャーマンの儀礼を受けにジャングルに行きたくて。ペルーでは合法になってる薬草があって、それはすごい文化と結びついてるんですよ。みんなでそれを飲んで儀礼を受けるみたいな。それをやってみたくて教授から色々話を聞いて行ったんですよね。
ーーそれで儀式はできたんですか?
リヨ : できました。真っ暗なジャングルの木で出来た小屋みたいなところにシャーマンがいて、ロウソクの灯りが立っていて、深夜なんですけど、儀式に参加する人が囲んで、シャーマンが魔法の歌を歌うんです。養命酒みたいな味がする飲み物なんですけど、それをテキーラのショットくらいの大きさでみんなで飲んで、サイケデリックな体験というか、シャーマンの歌を聴きながらいろんなことを体験するみたいな。
ーー飲んだ時どんな感覚になったんですか?
リヨ : まずめっちゃゲロ吐くんですよね。胃の中が全部ひっくり返るくらいゲロが出て、下痢とかも止まらなくなるんですよ。そういう辛い思いをした後、お面を被った青年がカヌーを漕ぎながら迫り来る感じがあって。めちゃくちゃ怖くて、迎えが来た、死んじゃうと思って本当にパニック寸前だったんですよ。そしたら「怖がらせて悪かったね」って、言葉じゃなくてテレパシーみたいに響いてくる感じがして、地球の秘密を見せてあげようって、その瞬間にボワー! ってなって。すごい世界でした。自分が溶けて世界と一体化するみたいな体験をしましたね。
ーーそれってどのくらいの時間軸で起こったことなんですか?
リヨ : 飲んでから1時間後くらいですね。
ーーその後、通常に戻るまでにはどのくらい?
リヨ : 8時間くらい。夜中に始まって、明け方終わるっていう感じですかね。
ーーその通過儀礼を受けることで、何が変わるんですか? 大人になるってこと?
リヨ : 通過儀礼って吐くってことなんですけど、自分を浄化するっていう。例えばシャーマンは、予言もするし、物も探すし、なんでも屋さんなんですよ。医者にもなれるし、恋愛相談とか、呪いとかもある文化だから人に呪いをかけたり、解いたりとか、ほんとになんにでもなり得るんです。シャーマンから渡されたそれを飲んで、いろいろヒントみたいなのを得て、結論を出すみたいなそういう文化なんですよね。
ーーそこに行ったのは、卒論とか好奇心以外に、自分を探しに行くとかそういうこともあったんですか?
リヨ : 単純に呼ばれました。今行かなきゃいけないって。
人に対しても音楽に対しても、すごく開いた
ーーそのとき、すでにクウチュウ戦は組んでいたけど、バンドのことは置いて行ってしまったわけですよね(笑)。
カオル : 置いていかれちゃましたね(笑)。でも1回行って帰ってきた時、明らかにバンド活動に対してポジティヴになってましたね。
リヨ : みんなの後ろ姿が見えたんですよ、儀式のヴィジョンの最中に。みんなが待っていてくれてるみたいな。ギターも何も持たずに行って、ペルーで1ヶ月半くらい過ごしていたんですけど、音楽を断ってみて、やっぱり音楽やんなきゃみたいに思ったんです。
カオル : 帰ってきて最初に会った時、何度も「俺逃げてた」って言ってて(笑)。
リヨ : それ恥ずかしいな(笑)。ほんとそうだったんですよね、そういうことをすごい思って。
ーー何から逃げてたんですか?
リヨ : マンネリ化してて、新曲とかもできてなかったんですよ。ずっと同じ曲をただただライヴでやるだけの、結構だらしない感じのバンド活動になっちゃっていて、嫌気がさしちゃって。就活とかもあるじゃないですか? それで辞めようとは思わなかったけど、もういいやって思ったんです。
ーー戻ってきて音合せとかした時、行く前と行く後だと何か違いましたか?
リヨ : 最近になって音楽に出てきたと思うんですよね。戻ってきたすぐ後、すぐ『プログレ』のレコーディングが始まって。その時はまだ特に変わったっていう自覚はなかったんですけど、明らかに影響が及ぼされてるんですよね。最近作る曲とかも全部、その影響がどっかしらにあると思うんですよね。行く前と行った後で何が違ったっていうと、すごい開いたんです。それが大きな違いかな。人に対しても音楽に対しても、すごく開いたっていうのが転機ですね。
ーークウチュウ戦の音楽の特徴として、プログレでありつつ昭和歌謡的な要素が入ってくることがあげられますが、どうしてそれは生まれてきたんですかね?
リヨ : それは僕が井上陽水とさだまさしがすごく好きで、僕はキャッチーな人間だから、すごく自然なことなんですよね。自然とポン! って出てくるのは、たぶんキャッチーな方だと思うんですよね。逆に『プログレ』はすごく左脳で作ったっていうか、なんなら、ちょっと「俺が出てない」じゃないけど、以前の僕って感じがしますね。
カオル : 昔、10分15分とかの曲をやってた頃から彼の歌はすごいこのバンドの武器だっていうのは認識してたんで、その歌に的を絞ったポップスの曲がレパートリーに入ったらすごいんじゃないかってことは、最初の頃からちょっと思ってたんですよ。それが実現されて、自分たちとしても意外な流れじゃないというか。

ーー今回の6曲っていうのは、全部このアジトで産まれたんですか?
リヨ : ほぼ全部、そうですね。ユミコがベース弾いて、俺がここでギター弾いて。
ユミコ : 『コンパクト』に収録されている曲を作ってる途中なんかは、週に2回みんなで会うとしたら、1日は外のスタジオ、1日はここっていう感じでやっていました。
ーー『コンパクト』の曲はテーマ性を持って作ったものなんですか? それともバラバラに作ったものをまとめたって感じですか?
リヨ : これはバラバラに作ったものをまとめましたね。
カオル : でもコンパクトなものにしようっていう意味ではコンセプトはありますね。
ーーコンパクトなものにしようっていうのはどういうことですか?
リヨ : 『プログレ』との対比ですよね。『プログレ』っていうアルバムが1曲目から13分で始まっていたので、真逆をいっちゃおうぜっていう。
カオル : 自分たちを売っていくにあたって、『プログレ』というアルバムだけだとちょっと説明不足っていうか、クウチュウ戦のできることを全部イメージしきれないこともあるだろうってことで、もともと持っていたポップスができるってことを強くアピールする作品にしようってことでしたね。
ーーじゃあ前作とはまた違う部分を見せていこうと。
カオル : 意識して極端に変えました。振れ幅を見せて、ここからここまでのことができます、っていうのを前作と今作で1つ見せられるっていう形にしました。
リヨ : キャッチーな音楽というか、ポップな音楽というか、過剰なサービスというか。
エンターテイメント性を僕はずっと追求していきたい
ーー過剰なサービス精神じゃないですけど、キャッチーさみたいな部分も含めて、ヴィジュアル面も自分たちで考えてるんですか?
リヨ : 考えてますね。へそを出すっていうのは昔から言ってます。
ユミコ : 脇も見せてるし(笑)。
カオル : ヴィジュアル面は、オリジナル・メンバーの2人(リヨとニシヒラユミコ)はぶれてないですね。
ーーそれこそうちの編集長は、ユミコさんを可愛い可愛いって言っていました(笑)。アバシリさんの艶っぽさというかビジュアルもすごいですよね。
リヨ : この人、これで初めてむけたんですよね。
カオル : 危険な男になった。
アバシリ : 本来とても芋臭い男なんで、みなさんにいろいろ引き上げてもらってやっとここまで人間として見られるようになりました(笑)。

リヨ : スタジオ帰り、俺とアバシリ、ユミコとカオルっていう二手で別れて、俺とアバシリで電車に乗るんですけど、自分が先に降りるんで、その降り際、ドアが締まる直前にアバシリを辱めようと思って大声で「パイズリー!」とかって言うと、アバシリが電車の中で顔真っ赤にしてて(笑)。
アバシリ : 誰もこっち見ないんですけど、みんなに聞こえているんですよ。2回くらい我慢できなくて車両変えましたもん(笑)。降りてから言うのでこの人はいいんですよ(笑)。
リヨ : 余韻だけが残ってるのね。
アバシリ : 言った人の関係者である自分も変なやつなんじゃないかっていう空気だけが残るんです(笑)。
ーーあははは。ちなみに『コンパクト』の楽曲は、どうやって作られたんでしょう。
リヨ : 左脳的に作る場合と右脳的に作る場合があって、こういう歌にしようって思って作る場合と自然と湧き水のように浮かんでくる場合があります。「追跡されてる」は聴く人に寄り添う聴きやすくてかっこいいものを作ろうって、左脳的っていうか、作ろうと思って作った曲です。「MUSIC TRAVELER」は半々ですね。「リカバリーポップス」はカオルがすごい気を遣って曲を作ってきてくれたから、こっちも気を遣おうと思って頑張りました。
カオル : でも、苦労してた風には感じた。人が作ったメロディーで歌うってことが単純に難しかっただろうし。
リヨ : 「アモーレ」は、サビの部分のメロディーが『プログレ』に入っている「電柱さん」のアウトロで使ってるギターのメロディーと全く一緒なんですよね。ちょっと繋がりを持たせたっていうか。
リヨ : 「ゴーストライター」は左脳で作ろうとして作った顕著な例っていうか。あえて言いますけど、これは渡邊マネージャーの方からゴーストライターっていう一見時事的なタイトルの曲を作ってくれって設定とか指定があったんです。死んだ作家が東京の街を彷徨うみたいな曲を作ってくれって言われて。渡邊さんはすごい近い存在だから基本的にリスペクトしているんですけど、曲に関して言われると、最初にむかつくんです。うるせーって。でも時間が経つと作ってやろうと思って作るんですけど、やっぱりまだ怒りはあるわけですよ。イラっとした感じっていうか。それが最後の行に出ていて〈ひょっとしたらマネージャーが書いてるかもよ〉って。渡邊さんへの当て付けです(苦笑)。
カオル : でもすごいキャッチーだよね。
リヨ : 「ゴーストライター」っていう曲自身にも、ゴーストライティングがあるっていう設定。
アバシリ : すごい入れ子ですよね(笑)。

ーーあははは。
リヨ : この曲に関しては、マネージャー発信で作られたっていうことが世に知られて初めて完成する感じがありますよね。
渡邊 : でも、これ言ったとき、リヨくんもなんとなくゴーストライターっていうのをテーマにやってみたいと思ってたって言ってたよね?
リヨ : 言ったっけ? SF的に幽霊って感じでゴーストライターを解釈するのはおもしろいと思ったけど、癪だったよね。うるせー好きにやらせろみたいな(笑)。
カオル : 曲の構成が、Aメロ、Bメロ、サビですって作りになったのは、たぶんクウチュウ戦としては初なんですけど、そういうのも当て付けのように分かりやすくなってます(笑)。
リヨ : ほんとに渡邊さんへの当て付けっていうか。
渡邊 : でも、そのメタっぽい構造がやっぱりいいなって思うよ(笑)。
ーー渡邊さんはどういう意図でこの曲を書くように伝えたんですか?
渡邊 : この曲に限らないんだけど、単純に、最初に会った時から彼らがポップスの人たちだって思ってたから、それがもっと分かりやすく見えたらいいなってことを何年も言っていて、それがジワジワと形になっていってる最中の一曲と捉えています。こっちが何か言うのは、相手にその準備が出来てるって感じたタイミングなんですよ。
リヨ : 作曲は俺とカオルになっているんですけど、これは随分キャッチボールがあったよね。セッションしてる時に「テルッテルッテル」っていう、イントロから出てくるフレーズだけを繰り返そうってことを言っていたんですけど、カオルが「それはちょっとさすがに」って言って、サビはAm7、D7にしようって言ったんだよね、最初。だからこのサビは基本的にカオル発信なんだよね。じゃあGが来た回だけにしようって。そこからキャッチボールがあって、Am7、Dm7、D7って行ったら、最後はEで完結しようって。そこからダラッダラに落ちていってサビに。
カオル : 初めて知った(笑)。
リヨ : 転調してるじゃんサビで。それはカオルのアイディアだよ。
カオル : そうだっけ(笑)?
ーー「ゴーストライター」にはかなり色んな思いがあるんですね(笑)。
リヨ : 思いっていうか、ついつい語ることが多くなっちゃうんですよね。
カオル : 最初の弾き語りの状態で、渡邊さんの意図とか何も知らないままで聴いたとき、ちょっとダサ過ぎないかって思ったんですよ。
リヨ : 「ダセー!」って言われたよね。
カオル : これ大丈夫かな… って。セッションして自分でフレーズをつけながら、タイミングを見計らって「ちょっと身も蓋もないけどこれダサくない?」って言ったんですよ。
リヨ : そこで「いや、もっとよくなる!」みたいなやり取りがあってね。
カオル : そのあと、渡邊さんとのやりとりがあったってことを聞いて、その上でこういう曲だったら確かに化けるかもって納得して。そしたらめっちゃお気に入りの曲になりました。
アバシリ : やるなら徹底的にやってやろうってなってね。
カオル : 自分の役割が見えましたね。

ーー最終曲「作られた歌は」はどうやって作りましたか?
リヨ : これは僕が弾き語りで、めっちゃ右脳で作りました。うわーっと出た。さっき言ったペルーの歌なんですけど、ほんとにさくっとそのままできた感じですね。言うことがないっす。すごく自信作。
カオル : 聴かせてもらった瞬間、何も言うことなし。感動したそれだけっていう(笑)。
ーー「ゴーストライター」とは対極な感じですね(笑)。
カオル : そうですね。これは、心の底から出た曲なんだろうなっていうのも容易に想像できたし、それに対して、どういうふうに演奏家としてやったらいいのかっていうのも「ゴーストライター」とは別の意味ですぐ分かったっていうか。
ーー今後、クウチュウ戦としてどういう風にやってくのが理想的ですか?
リヨ : ショーがあるわけじゃないですか、人前で演奏するっていう。エンターテイメント性を僕はずっと追求していきたいんですよね。今日もみなさんが来る前に、僕がどっかになくしたピカピカ光るシールドを必死に探してたんですよ。そういうのを使って最高なことがしたい。わー、おもしれー!! って思わせたい。かと言ってそれだけじゃ嫌なんですよね。僕ら、音楽性がめちゃくちゃ高いじゃないですか。両方のバランスを保ちながらガーって行きたい。どっちか片っぽになったらクウチュウ戦じゃないし。だからこのままエスカレートしていきたいって感じですね。
ーーすでに次の作品とかは作ってるんですか?
リヨ : やばいのがいっぱいありますよ。
ユミコ : 『コンパクト』の比じゃない曲がいっぱいね。
カオル : 自分たちでももう『コンパクト』の位置にはいないって思ってすらいますから。
リヨ : 過去だよね、完全に。
カオル : 録ったのは去年の秋だしね。
リヨ : 『コンパクト』は最初のテストっていうか、こういうことやってみようぜって試しながらやった6曲って感じですかね。
カオル : 世間的にポップな内容で、ポップになった作品って位置づけられるかもしれないけど、自分たちとしては実験作ですよね、完全に。
ーーそれじゃあ、次の作品も期待していいんですね。
カオル : もちろん!
リヨ : 期待してください! やばいんで。でも、まずは『コンパクト』を聴いてくださいね!

LIVE SCHEDULE
『コンパクト』リリース前夜決行!
〈この神秘がバーニングする Special Live〉クウチュウ戦爆音生試聴会
2015年5月12日(火)@渋谷La.mama
時間 : OPEN 18:30 / START 19:00
料金 : 前売り 2,000円 / 当日 2,500円
出演 : クウチュウ戦(※ワンマン・ライヴ)
RECOMMEND
割礼 / 星を見る
2003年リリースの『セカイノマヒル』以来7年ぶりの6thアルバム! ファンの間で正式なレコーディング・テイクを待ち望む声が多かったあの「リボンの騎士(B song judge)」をとうとう収録。この15分間におよぶ怒涛のダーク・サイケ・ナンバーで幕を開ける本作は現在の4人編成になって初めてのアルバム。
人間椅子、バンド生活25年のベスト盤を出すことになりました。既発表曲に加えて、デビュー前のインディーズ盤収録曲、さらに新曲4曲入りの 豪華盤です。自分自身、1曲目からきちんと聴いてみました。当時どんな思いで曲を作り演奏したか、記憶がありありと蘇ります。それは懐かしいという感慨ではなく、まるで 昨日のことのようで、青春は今も続いているのだと思いました。芸術は永遠です。 時間は幻で、現世は夢のようなものでしょう。
現在の日本のロック・シーンをリードし、特異なスタンスで独自の存在感を放っているOGRE YOU ASSHOLE(オウガ・ユー・アスホール)が、遂に待望のニュー・アルバムをリリース! ポストパンク、サイケ〜プログレ、AOR、ノイズ・エクスペリメンタルなど、様々なモードを咀嚼した末に、叙情的でありながらクールでデカダンな「ミニマルメロウ」とでも言うべき新境地に至った、彼らの最新にして最高傑作がここに…。
PROFILE
クウチュウ戦

2008年 大学1年のリヨ(vo / gt)がクウチュウ戦の原型バンドを結成。数年間、試行錯誤の日々。
2011年1月、ベントラーカオル(key)加入。 7月 リヨ、突然ペルーに飛ぶ。 その後、9月より2012年3月までイギリスなどヨーロッパを放浪。 よってこの間のクウチュウ戦は活動休止を余儀無くされる。 バンドの存続も危ぶまれたが、海外見聞で新たなモチベーションを獲得したリヨが本格音源制作への意欲を爆発させる。
2012年5月、クウチュウ戦1st アルバム『プログレ』(2013年1月リリース)に繋がる録音を開始。 11月、先行シングル「意気消沈/白い十代」を500枚限定でリリース。瞬く間にソールドアウト。 同月、下北沢CLUB QUEにてシングル発売記念3マン・ライヴ(w / 股下89、壊れかけのテープレコーダーズ)を決行、ソールドアウト。
2013年1月、1stアルバム『プログレ』リリース。 同月、新宿MARZにてアルバム発売記念2マン・ライヴ(w / オワリカラ)を決行。 10月、下北沢CLUB QUEにて盟友二組をゲストに招き、3マンライブ(w/きのこ帝国、うみのて)を決行、ソールドアウト。 同月、大阪ミナミホイール、京都ボロフェスタに出演。
2014年2月、東京(下北沢Basement Bar)と大阪(心斎橋Pangea)にて、盟友ミラーマン(現ボールズ)と 共同企画〈ミラー戦隊クウチュウマン〉(w / 或る感覚[東京]、HAPPY[大阪])を決行、何れもソールドアウト。 会場限定シングル『予言 / いっそUFO』をリリース。 5月、ドラマーのアバシリが正式加入。新体制のクウチュウ戦が誕生。 この形で5月~10月にかけて、ぐるぐるtoiro、やついフェス、見放題、ぐるぐる回る、CONNECT歌舞伎町、ミナミホイールなどの 大型イベントに軒並み出演、何れも大喝采を浴びる。 9月HAPPYと名古屋にて2マン・ライヴ。10月~11月、1stミニ・アルバム『コンパクト』のレコーディングを敢行、完成に至る。
2015年5月、1st ミニ・アルバム『コンパクト』満を持して発売。