アイドル・オタクはどこまでパリピになりうるのか?ーーSTEREO JAPANプロデューサー・水江に訊くEDMの現在とこれから
EDMアイドル・Stereo Tokyoの10月28日リリースのダブルA面シングル『PARTY PEOPLE / PARTY GOES ON』より、「PARTY GOES ON」の先行配信が急遽決定。彼女たち“らしさ”が出たアゲアゲのEDM楽曲ではあるものの、その内容は、ともにSTEREO JAPANのメンバーとして活動してきたStereo Osakaが名前を変更して別グループとして活動していくことが発表されたことに対する明確なメッセージ・ソングとなっている。なぜ、Stereo Osakaは改名をし、そして新たに同じ名前のグループが立ち上がるのか? その真相について、STEREO JAPANプロデューサー・水江文人に直撃インタヴューを行なった。このグループの行く末に何が待っているのか? オタクはどこまでパリピになりうるのか? その行方に注目してほしい。
10月28日リリースのシングルより超先行配信スタート!
Stereo Tokyo / PARTY PEOPLE / PARTY GOES ON
【配信価格】
WAV / ALAC / FLAC / AAC : 単曲 250円
【Track List】
1. PARTY GOES ON
「私たちのパーティは離ればなれになっても終わらない」。そんなフレーズがダイレクトに突き刺さるStereo Tokyoの10月28日リリースの最新シングル『PARTY PEOPLE / PARTY GOES ON』より、マスタリングしたての「PARTY GOES ON」を先行配信。
INTERVIEW : 水江文人
取材&文 : 西澤裕郎
結果としてグループが売れることが1番の近道なんだよって
ーーStereo Tokyoのライヴに何度か行っているうちに、チャラいことに対する羨ましさが僕のなかで生まれてきたんですけど、そういう人って実は結構いるのかなと思いはじめていたりもしていて(笑)。
水江文人(以下、水江) : 眼鏡のフレームをテープで貼っているような西澤さんみたいな人(※筆者の眼鏡が壊れていてテープで補強していた)は、クラブに行ってもイケイケにはなれないから、Stereo Tokyoを通して、チャラいパリピの人たちがどんなことをしてるのかを追体験していくのかなと思います。オタクが食わず嫌いだった部分を嗜んでいく過程というか。ただ、今回泡まみれになるライヴをやってみて、3曲目くらいで飽きましたね。
ーーたしかに、ちょっと出落ち感はありましたよね。なんといっても、泡が出てくるのが繰り返されるだけだから(笑)。すごく楽しかったんですけど、初ワンマンを観たときにも、このライヴは規模がでかくなったら、統制がとれなくなって難しくなるだろうなってことを感じて。
>>>EDMアイドル“Stereo Tokyo”が泡まみれ! 狂乱のパーティーをレポート
水江 : そうそう。普通の大人が見たら「危ない!」で終わっちゃいますよね。逆に僕はオタク出身だから分かるんですけど、今のStereo Tokyoのライヴは無秩序のようにみえて無秩序ではない。ファンの人が持ち込んだ浮き輪とかがステージに飛んじゃっても、メンバーの邪魔にならないように一生懸命防ごうと守ってくれたりとか、ギリギリのところで秩序を守ってくれているなと。西澤さん〈肉フェス〉の映像ってみました?
(一緒に動画を再生して観る)
ーー客席に国旗が掲げられていて、まるで海外のフェスみたいですね(笑)。
水江 : もうアイドルのイベントじゃないですよね。
ーーこういう野外では特に、EDMのシンプルさならではのお客さんへの引きの強さは強いですよね。
水江 : それはほんとにありますね。全然オタクじゃない人とか、通りがかりの人とかがノッてくれてたりとかするし。
ーーいいですね、この盛り上がり。お客さんが作っている感じがする。
水江 : 最初の企画書にも書いてあるんですけど、このSTEREOプロジェクトは単なるひとつのアイドル・グループではなく、アイドル+お客さんの一体感でEDMの空間を生み出していく、そういう試みなんですね。ちなみに普通こういうアイドルのライヴ動画ってお客さんの後ろからメンバーを撮っているかと思うんですが、これはDJ台の後ろから客席を撮っているんですよ。いわゆるEDMだとよくあるアングルなんですよね。
ーー泡パの時も、Stereo Tokyo以外の、普通にクラブでかかっているような海外DJのEDM曲ですごい盛り上がってたじゃないですか。もちろんStereo Tokyoが好きっていうのは前提の上で、EDM自体を愛してる感じがお客さんから出てきていますよね。
水江 : 本当にそうだと思います。「Waiting For Love」をかけたら大合唱が起こるアイドル現場なんてないですよね。写真だけ見たらやばいですけどね(笑)。おじいさんが泡を被ってるのとかね。
ーー(笑)。Stereo Tokyoのメンバー自身はどういう気持ちでいるんでしょうね。
水江 : そこは説明というか、話はしていますけどね。誰がセンター多いとか、歌パートが多いとか、そういうのはどうでもいいって。君たちはチームでStereo Tokyoとしてやっていて、結果としてグループが売れることが1番の近道なんだよって。企画として面白くなって、それで売れれば、イコールみんなも幸せになるからって話をしてるんですけど、どのくらい理解してるかはわからないですね…(笑)。
ーーちなみに、Stereo Osakaが1回終わるというか、新しくなるとのことですが、いまいちどういうことかわからないので説明してもらえますか。
水江 : Stereo Osakaは紆余曲折があって、結局のところ微妙に僕らに最終決定権がなくなってしまって。例えばグッズを作っても大阪の現場で売る、売らないは向こうが決める。同じようにCDもOsaka盤しか売らないとかですね。さっきの話じゃないですけど、JAPAN全体で売れれば、TokyoとOsakaで余波が来て、結果みんな幸せっていうのが1番近道だと思うんですけど、いまいちわかりあえなくて。最終的にOsaka運営がファンに「握手会中は一切会話してはいけません」みたいな独自ルールを勝手に発表して紙に印刷して貼りだしちゃう、みたいなところでもう一緒にできませんね、という話になりました。なのでコンセプトや機材など一式こちらが準備したものは返してもらい、こちらで新しくStereo Osakaを作ります、と。先方も新しい名前でアイドルを始めますと。そうなったわけです。
ーー今のStereo Osakaは名前を変えてやっていくってことですか?
水江 : そうです。名前とか機材とかは全部返してもらって、あとどうするかは自由にしてもらう感じになります。その離脱のニュースは出すんですけど、ファンの人からしたら真相がわからないと思ったので、今回、西澤さんに聞いてもらって納得するような形にしたいなって。
ーー新しくなったStereo Osakaはいつから動きだすんでしょう。
水江 : それはまだ秘密なんですけど、ただ単純に新生Stereo Osakaを作るっていうわけではなく、色々と準備しているので楽しみにしておいてください!
広い間口を作らないと、そのものを殺しちゃうんですよね
ーー水江さんとしては、EDMシーンに、ちょっと波紋みたいなものを与えてる感覚はあるんじゃないですか。
水江 : この前、マルチネの10周年イベントで「Anthem」がかかってたみたいで。叩かれることが多いですけど、燃えたかいがあったかなと。アイドル・シーンだけで消化すると、絶対にそういう人たちは聴いてくれないと思っているので。死ね糞みたいなことになったとしても、聴いてくれたら、水江はブタでクソだけど曲はいいじゃんみたいなところになってくれてるのかなって。それはもちろん、曲を作ってくれている人たちのクオリティーの高さに行き着くと思うんですけどね。
ーーこのインタヴューのタイミングで10月28日リリースのStereo Tokyo単独によるダブルA面シングル『PARTY PEOPLE / PARTY GOES ON』のから、「PARTY GOES ON」を超先行で配信スタートさせてもらいましたが、これもらしさ満開のEDMですね。
水江 : ちょうど今日(9月30日)、マスタリングしてきたばかりです。「PARTY GOES ON」って、パーティーが続いてくっていう意味ですけど、今回のゴタゴタを経て急に作った曲なんですよ。元々の年間計画で用意していたものではないんです。なので急なスケジュールで色々やったので各所ご迷惑をおかけしましてすみません。ただこの騒動ってメンバーにもファンの皆さんにも一切なんのプラスもないことなので、その禊というか。そういう1曲です。これ作ったからにはこのCDのリリース期間が終わったらもうここには言及しないよっていう意味でのメッセージ・ソングですね。この後はただ続いていくだけなんです。そこには「PARTY GOES ON」以外は何も残りません。
ーー1番最初にインタヴューした時は、できるだけ意味のない歌詞にわざわざ書き直してもらっていたじゃないですか。だから、かなり水江さんのEDM愛とStereo Tokyoに込める気持ちが強くなってきたんじゃないかなと思いますけど。
水江 : たしかにそうかもしれないですね。EDMって本当に面白いですよ。西澤さん、EDM聴いてます?
ーーStereo Tokyoを知ってから結構聴くようになりましたよ。
水江 : このEDMブームといわれる昨今、そこには実は2つ大きな流れがあるんじゃないかなと。それがまとまってEDMブームって言われてるんですけど、実はその2つはそんなに噛み合ってないから、どこかで破綻するなと思ってるんです。それが何かと言うと、このブームに乗ってる多くの人はたぶん、さっきのクラブ話で言うチャラい方のパリピなんですよ。彼らが実数を持っていて、お金を使っていてっていうのに対して、元々クラブ・シーンがストイックに好きな人たちがいる。その二本の軸があるんですけど、そこがうまくいっていなくて。その例が、去年・今年とたくさんの海外のEDMイベントが日本でも行われているんですが、必ず話題になる来場者のマナーの悪さ。ゴミだったり、タバコのマナーだったり…。これ言い辛いんですが正直に言うと客層の悪さなのかなと。ただそういう層の人がたくさん来てくれているから今の日本でのEDMシーンの盛り上がりがあるというのもまた事実なわけで。それをどういう風に折り合いつけていくのかなっていうのは注意深く見守りたいですね。ただ楽曲の面でも、世界では今Future House、Future Bassなど所謂「クラブ」といって皆が想像するような音楽、つまりはHouseですよね。昔からある。これは良い曲ももちろんたくさんあるんですけど、あくまでBig Roomに対するカウンターなのかなと。日本ではやっとBig Roomに食いついて興味もらってる中で、こういう方向に振れていくと一抹の不安を感じます。例えば、プロレスが流行った時に、前からいた玄人の人たちが初心者を叩くみたいな感じ。そうするとマニアックな方にいって、気付いたら周りに誰もいないみたいなことが起こりかねないんですよ。コアな方ばかりを見てやってしまうと、せっかくのこのブーム、終ってしまうのかなと。なのでSTEREOプロジェクトとしてはその辺に気を使いながら、「アイドル」という武器もあるので、EDMの間口を広げていけるといいなと思います。
ーーオタクが、その文化を殺すって記事が話題になりましたよね。
水江 : いつの時代もそうですよ。アイドルもそう。いかに新しい人が来やすい音だったり、雰囲気を作るかってことは必要なんですよ。広い間口を作らないと、そのものを殺しちゃうんですよね。みんな、コアにいきたがるじゃないですか。
ーーすごく力があるなと思ったのは、OTOTOYのイベント〈オトトイのススメ!〉に出てもらった時、わりとストイックな音楽ライターさんだったりとかも口を揃えてよかったって言っていたんですよ。メンバーが目の前まで来て踊っているわけじゃないですか。そしたらノらないわけにはいかないってなって、踊っているうちに楽しくなっていく。そこをいい具合に崩してやっていければ、どっちも両存できるんじゃないかって思った瞬間でもありました。
水江 : 僕らはファンの人にも恵まれていて、ファンの人も広く間口を持ってくれてるから、そこじゃないですかね。改めて初期の動画を観ていたんですけど、すごいんですよ。3人くらいしかお客さんがいない状態から始まって、ちょっとずつちょっとずつ盛り上がってきている。最初のショッピング・モールとかは本当に地獄で、CDが6枚しか売れなかったんです(笑)。だから申し訳なくて、スタッフ3人で3枚ずつ買いました。でも、Stereo Tokyoってメンバーがやっていることは、そんなに大きく変わっているわけではないんです。それがいまはすごく盛り上がって、インストアでもCDが売り切れちゃう。ファンの人の楽しみ方1つでこんなに変わるっていうのを実感しています。もちろんメンバーの頑張りもあると思うんですけど、そこに合わせてファンのたちが盛り上げてくれて、あの輪に入りたいっていうので、お客さんがどんどん増えてる状態だと思うんですね。ファンに助けられてるっていうか、ファンあってのコンテンツだと思うんで、それをすごく大事にしたいですね。宝物だと思います。ファンの人に何を持ってこいとかどれくらい盛り上がれとか言えない訳じゃないですか。ファンの人も曲を作ったりダンスをしたりする訳じゃないじゃないですか。ファンもメンバーもお互いに依存し合いながらやっているので、1回1回のライヴのデキがその合わさり具合による、出たとこ勝負みたいなのが面白いですね。そうやって読めなかったおかげで一店舗出禁になりましたけどね、インストアが盛り上がりすぎて(笑)。
ーー(笑)。あとは、それが秩序を保ちつつ、どこまで大きくなれるかですよね。お客さんの善意で保たれてるところが、規模が大きくなるにつれてどうなっていくかっていう。
水江 : ほんとそう。これは一種の社会実験ともいえるかもしれないですね。お客さんの絶対数が増えていくと当然変な人も増えるでしょうから。秩序がどこまで保たれるのか。それが保たれなくなってきた時が僕らの終わりの時なんでしょうね(笑)。
ーー諸刃の剣じゃないですけど、そういう面白さと危うさが常に両存しているグループだなと思います。そういう意味で、オタクにはどこまでパリピになれるのかってところが大きなテーマになっていきそうですね。
水江 : リアルな話、ちょっとしたバランスで活動ができなくなってしまうかもしれないですから。ギリギリのラインまでどこまでいけるか、そこは本当にやっていくなかでしかわからないですね。
これまでのリリース作品をチェック!!
LIVE SCHEDULE
年内の単独公演予定
2015年11月1日(日)パーティー(予定)
2015年12月19日(土)パーティー(予定)
2015年12月20日(日)パーティー(予定)
2015年12月24日(木)パーティー(予定)
2015年12月25日(金)パーティー(予定)
PROFILE
Stereo Tokyo
Stereo Tokyoは日本で最も独自なガールズ・グループです。
その人数は6人で構成されています。
その最もな特徴は、かわいいこと、そしてクラブなことです。