スタンダードを再定義する新プロジェクト、Oruquesta Libreスタート
「さまざまなジャンルのスタンダード・ナンバーを片っ端からやってみる」。そうしたコンセプトを掲げ、自由でのびのびとした演奏を聴かせる大所帯バンド、それがOrquesta Libreだ。中心人物の芳垣安洋は、ROVOや大友良英ニュー・ジャズ・オーケストラのドラマーとして活動し、豊かな経験と音楽感を持ったアーティストだ。そんな彼がスタンダード・ナンバーを鳴らすのだから、その演奏に聴き入らずにいることができるだろうか。2011年末には、おおはた雄一、柳原陽一郎、ブランドン・ロスらをゲストにレコーディングをしており、スタジオ・アルバムのリリースも控えているという。
そんなOrquesta Libreが、2012年2月5日に新宿ピットインで、おおはた雄一を迎えてライヴを行った。ブルースやフォーク・ミュージックをルーツとするシンガー・ソングライターおおはた雄一と、これまで何度も共演してきた芳垣が、スタンダード・ナンバーという一つの目的に向かって曲を奏でるライヴは、曲の新しい顔が見えてきて、ワクワクしてくる。そんな2人に集まっていただき、対談を行った。
インタビュー&テキスト : 西澤裕郎
Orquesta Libre with おおはた雄一 / Plays Standards vol.1 -LIVE at PIT INN 2012.02.05- (HQD ver.)
【配信形態】
HQD (24bit/48kHz WAV)
【価格】
1500円(まとめ購入のみ)
【Track List】
01. Por Una Cabeza(首の差 ) / 02. Hello Dolly / 03. Ponta De Areia / 04. One Morning / 05. リリー・マルレーン / 06. ひとりにしてくれ / 07. オー・シャンゼリゼ / 08. Purple Haze / 09. ゴロワーズを吸ったことがあるかい / 10. Misterioso
<Orquesta Libre>
青木 タイセイ / Taisei Aoki (Trombone、arrangement)
塩谷 博之 / Hiroyuki Shiotani (Clarinet、Soprano Saxophone)
藤原 大輔 / Daisuke Fujiwara (Tenor Saxophone)
渡辺 隆雄 / Takao Watanabe (Trumpet)
Gideon Juckes (Tuba)
高良 久美子 / Kumiko Takara (Vibraphone)
鈴木 正人 / Masato Suzuki (Bass、arrangement)
椎谷 求 / Motomu Shiiya (Guitar、Steel Guitar)
岡部 洋一 / Yoichi Okabe (Percussion)
芳垣 安洋 / Yasuhiro Yoshigaki (Drums、arrangement)
<Special Guest>
おおはた雄一 / Yuichi Ohata (Vocal、Guitar)
Recorded & Mixed & Mastered by 益子 樹 / Tatsuki Masuko
INTERVIEW -芳垣安洋 × おおはた雄一 -
——最初に、2人が知り合ったきっかけを教えてもらえますか。
芳垣安洋(以下、芳垣) : 愛知県の三河吉良町で毎年開催されている「Rock on the Rock」のステージ脇で、5年前に話したのが最初かな。「機会があったら一緒にやってもらえませんか? 」って言われて、その1年後くらいに、レコ発ツアーをバンドでやりたいって言うので行ったみたら、2人きりだったんですよ(笑)。「うわー、大胆なこと考えるんだな」って。それ以降、ことあるごとに一緒にやっている感じですね。
——おおはたさんは最初から2人でやろうと思って誘ったんですか。
おおはた雄一(以下、おおはた) : どうだったかな?
芳垣 : もしかしたらバンド編成にするつもりだったのかもね。
おおはた : いや、そんなことなかったと思います。芳垣さんと一緒にやりたくて、バンドでやりたいって言ったんですよね。
芳垣 : まあ、2人でもバンドですからね。
一同 : (笑)
——沢山のミュージシャンがいる中で、おおはたさんが芳垣さんをお誘いした理由はどういうところにあるのでしょう。
おおはた : 芳垣さんの出す1つ1つの音が本当に好きなんですよね。音色もリズムも、それまで聴いてきたものと全然違って衝撃だったんです。自分にとってはドラマーっていうよりアーティストって印象が強いんですよね。
——実際、2人でやったときのことを覚えていますか。
おおはた : 名古屋でやってたときに覚えているのは、テンパリ過ぎて声がでなくなって急遽2ステージにしたことですね。曲順も決められず、本当にでたらめな感じながら楽しんでもらいました(笑)。じゃあ、今は何かが変わったかというと、変わってないんですけど。
一同 : (笑)
芳垣 : すごく極端なことを言うと、おおはたって一人で完成しているアーティストだから、+αを与えられたり、触発しあう関係じゃないと一緒にやるべきじゃないと思っていて。例えば、おおはたが全面的に自分を出していると思ったら、僕は何もしない瞬間もあるし、逆にこっちの方に行ってみないかっていう提案も出来るわけで。実際にやってみて、そういうことが出来ると思えたので、ずっと続けているんだと思います。
——芳垣さんが加わることで、おおはたさんは自分の演奏に変わった面はありましたか。
おおはた : めちゃめちゃ歌いやすいんですよね。一人でやるよりも自由な気がする。芳垣さんが鳴らす音を聴いていると、すごく歌いやすいんですよ。一人でやっているよりもすごく楽に行けるんです。
——それは意外ですね。一人でやるほうが自由に出来て楽なのかと思っていました。
おおはた : 芳垣さんの音にプッシュされているときもあれば、変な音が出てくるときもあって、それぞれすごく楽しいんですよね。芳垣さんがバチとかを投げている音とかも、そういうプレイなのかなって(笑)。何かを探しているガチャガチャって音とかもいいんですよ。それを聞きながら静かな歌を歌っていると、いいんですよね。
芳垣 : 半分くらいわざとやっているんですけどね。
一同 : (笑)
こんなにいい曲があるんだよっていうことを伝えたい(芳垣安洋)
——Orquesta Libreを始めた理由はどういうものなのでしょう。
芳垣 : 東日本大震災があって、当時一緒にやっていたミュージシャンやシンガーが東京を離れてしまったりして、生活のサイクルがすごく変わってしまったんです。東京にいても、やりきれない気持ちをみんな持っていたと思うんですよ。その中で、少しでも足しになることが出来ないかなって考えたら、みんなが楽しくなることをするしかないと思って。極端に言えば、それだけの気持ちから始まったんです。
——芳垣さんにとって、みんなが楽しくなることはスタンダード・ナンバーを演奏することだったんですね。
芳垣 : 過去を振り返ってみると、ビートルズ、バート・バカラック、サイモン & ガーファンクル、ボブ・ディランなどが、僕の音楽の原体験なんですよね。あの時聴いた音楽を改めて聴くと、やっぱりワクワクするわけですよ。こんなにいい曲があるんだよってことを伝えたい。僕らの周りの若い人たちの活動を見ていると、新しいことにはすごく貪欲に向かっているんだけど、これを聴いていたらぐっとくるよねって歌や曲は素直にやらないんだよね。オリジナルが素晴らしすぎて勝てないっていうのもあるんだろうけど、いいものはどんどんやればいいと思うんですよ。それをまずは俺がやろうってことで始めました。
——先に控えているOrquesta Libreのスタジオ・アルバム、そして今回配信する音源を収録したライヴでも、おおはたさんが参加されていますね。
芳垣 : ちゃんとした声で音楽を表現している人とやりたいと思ったときに、頭に浮かんだのが、おおはた雄一と柳原陽一郎の2人だったんです。違う角度から2人に曲を選んでもらって、それぞれの言葉で日本語に訳してもらいました。まずは2月におおはたと一緒にライヴをしてみようってことで、今回のOrquesta Libreとおおはたが実現しました。
——おおはたさんは、その話を聞いてすぐに賛同して、やろうと思ったのでしょうか。もちろん、おおはたさんも震災後、いろいろな気持ちの変化があったと思うのですが。
おおはた : 震災のことは、芳垣さんがおっしゃったことと、似たような気持ちを持っています。震災以降、みんな表現が変わったと思うんですね。その人の持っているものが強く出るようになったというか。音楽をやっている自分にとって、いい音を鳴らすことが、今一番できることだと思ったんです。当時、僕は何の発言も出来なかったけど、音を鳴らすことで何かが伝わるんじゃないかなって。2012年の3月12日に、吉祥寺キチムで芳垣さんとベースの伊賀航さんと3人でライヴをやったんですけど、厳かな雰囲気の中、僕はそのことに一言も触れずに終わって。言葉にしてしまうと、大事なことが損なわれてしまうときもあるじゃないですか。だから、必ずしもすべてを言葉にしてきたわけじゃない。僕は、そういう風に震災から1年活動してきた気がするんですよね。で、話をぐっと戻すと、「Orquesta Libreと一緒に歌ってみない? 」って言われたときは本当にやってみたいと思いました。
——大所帯のバンドですが、レコーディングはユニークな形で行われたんですよね。
芳垣 : 全員同じ部屋でレコーディングをしました。今って機器が進化しているから、音の工作ができるわけですよ。そういうのを一切やらないで、間違ったらそのテイクは直せない状況でやりました。それぞれ管楽器とかもマイクは1本ずつだし、ドラムも2、3本。昔の録音みたいにシンプルな形で、ヘッドフォンを使わず、みんな生の状態でやったんです。しかもヴォーカルも生声で聞いて歌うっていう。
おおはた : ヴォーカルが他の人に聴こえていないと思うから、がなっちゃうんですよね。そうなると声はうわずるし、いつもと違う感じがするんですよ。いかに普段、ヘッドフォンでモニターして、コントロールしながら歌っているかってことに気づかされたんですよね。ある種、勘に頼って歌うみたいな。そういうところが新鮮でしたね。なかなかスリリングな体験でしたね。
——後から音をいじれないようにしたのには、どういう意図があったのでしょう。
芳垣 : 機器に頼れば頼るほど、ミュージシャンとしての技量や色んなものが落ちていってしまう、日本のミュージシャンの技量は昔に比べて落ちていると僕は思うんです。ヨーロッパとかに行って向こうのミュージシャンと一緒にやったりすると、それを痛切に感じるんですよ。例えば、教会みたいなところで演奏する場合、小さい音で、スピードを保ったまま、プッシュできる演奏ができる人が多いんです。そういう場所でも自分の演奏をコントロールしなくてはいけないってことを、次の世代に伝えないといけないと思っているので、そういったことを僕はバンドでやっていこうと。今の録音って、それぞれの音はくっきり録れてはいるけど、どの音も目の前に全部張り付いているようなんだよね。奥行きがあるものを作りたいですね。
おおはた : 今回のようなレコーディングは、ダメな部分はダメで残るし、出過ぎたところは出過ぎたまま残るのが新鮮で、おもしろいですよね。話が戻るんですけど、なんで芳垣さんかって話になると、音色。音量が下がってもスピード感があるんですよ。僕はカフェでライヴをすることが多いんですけど、ドラムがいるって言うと驚かれるんです。世間一般のドラムのイメージは、音がでかい、豪快な人…、キャチャーみたいな感じなんですよ。でも、違うよって言いたい。ドラムだって、すごく繊細な部分から、バーンってところまである楽器だよってことを聞いてもらいたい。この間、メンバー紹介で初めてお客さんに「どうよ? 」って言ったの。
一同 : (笑)
おおはた : どこのライヴ・ハウスに行ってもドラムの音がでかすぎると思うし、バス・ドラなんかも重機みたいな音がしていることあるじゃないですか? そればかりだと、聴いている人のイメージもそうなっちゃうと思うんですよね。刺激を浴びていると、自分の耳もどんどんそれに合わせて変化していく。高音のシャリシャリしていた音を聞いていたら、やわらかい音がどんどん物足りなくなってくる。最近商店街とか街中でシャカシャカした音で音楽が流れているけど、あれはよくないと思うんですよね。
——いつの間にか、知らないうちに麻痺しちゃいますもんね。
芳垣 : 明らかに、自分が子どものころと音楽の聴き方が違うよね。今は好きなものだけを朝から晩まで、ヘッドフォンで聞いているけど、昔は、その瞬間瞬間で、今しか聴けないこれを聴くんだっていう思いで一期一会に聴いていたからね。それがいいってことを言うつもりじゃないけど、俺はそういう聴き方をしていたからこそ、これだけ音楽を好きになったんだと思う。
おおはた : この前、永六輔さんのインタビューを読んだんですけど、「イヤホンなんて耳たぶに失礼だ」って言っていて。
一同 : (笑)
おおはた : 「何のために耳たぶがついているんだ」って、おもしろいことを言っていて。今はヘッドフォンで聞かれることを前提に、ミックスされることも増えてきたと思うし、どうしてもエンジニアさんの自宅でミックスするしかないってときもあって。それによって、スケールがちっちゃくなっちゃうような気もしていたので、今回みたいに天井の高いスタジオで、靴をはいて、「さあ、やるぞ! 」みたいな感じで録るのもいいなって。
——おおはたさんは原体験がチャック・ベリーなんですよね。
おおはた : 正確にいうと「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でマイケル・J・フォックスが弾きまくるチャック・ベリーなんですけどね(笑)。それを見て、ギターを弾きまくっているクラスの友だちに教えてもらったんです。田舎だったので、みんな歪みのことを“ゆがみ”っていってましたからね(笑)。当時、バンド・ブームも並行していたんですけど、バンド・ブームとは別のレトロな感じが好きでしたね。
この曲が好きだから、違った良さを引き出そうという愛情を感じます(おおはた雄一)
——僕はミュージシャンはないので、原曲をどこまで崩していいのかっていうところが分からないんですけど、楽曲の本質さえ失わなければ、どこまでも崩していっても大丈夫なのかなと思ったんですね。Orquesta Libreの演奏も曲によっては、だいぶ独自の解釈で演奏されていますよね。
おおはた : スタンダードのすごさは、懐が深いというか、どんな風にやってもその曲のことが伝わったり、全然違う角度から見てもおもしろさが出てきたりするところだと思うんです。幹が太いというか、素材がいいものだから、何をしても大丈夫。本質というより、みんなそこをうまく感じながらやっているんじゃないですかね。いろんな角度から、その曲のことを捉えているような気がしますね。
芳垣 : もちろんメロディを変えちゃうと同じ曲とは言えないので手を加えないけど、拍子を変えたりリズムをまったく変えることによって、「あの曲なの? 」って聴こえるものもあると思うんだよね。もちろん狙ってすることも考えているんだけど、その場合は、その曲の持っている色彩感とか空気感を大切にします。例えば、サイケデリックな曲だとすると、そのサイケ感を匂わした形でやりたいかな。原曲と同じ楽器を使ったからといってサイケ感が出るわけじゃないので、サイケな色彩感は匂うようなアレンジにはしたい。
おおはた : アレンジャーによっても全然変わりますからね。青木タイセイさんと芳垣さんのアレンジでも全然違いますよね。
——大胆なアレンジをされていますが、すべてが即興というわけではなく、譜面にもおこしているんですね。
芳垣 : 自分のイメージの根本を受け止めてくれていると分かったら、あとはお任せって形にして、譜面にしなきゃいけないものは譜面にしています。ただ、おおはたが歌う部分に関しては、僕が口頭で伝えました。前半部分はアレンジしたものが来るんだけど、最後は自由にやっている曲もある。そういうところまでキャッチして広げてくれるミュージシャンの人たちなんで、信頼してやっています。
おおはた : 参加されているミュージシャン全員、素晴らしいですよね。一人一人がちょっとずつ変わっている人だなって思うし(笑)。僕が普段接しているシンガー・ソング・ライター人たちと管楽器の人は雰囲気もちょっと違うし、おもしろかったですね。さっき、やっちゃいけないことって言いましたけど、そんなことないんでしょうね。
芳垣 : 何をやっても、その曲だって主張するくらいだからスタンダードとして残っているんだよね。そのくらい強いものなんじゃないかなって。
おおはた : あと、取り上げる曲に対する、芳垣さんの思い入れや熱量が高いから何をやっても大丈夫なんだと思います。この曲が好きだから、曲の違った良さを引き出そうっていう愛情を感じますね。そこかな。参加しておいて何ですけど、好きだって気持ちが強い曲は強い気がしますね。
——なるほど。僕は完全にそこを切り離して考えていたから、今の話を聞いてすごく腑に落ちました。演奏している人たちの愛情が根底にあることで、解釈の幅も広がっていくってことですね。
おおはた : やっぱり熱量ですかね。
芳垣 : 極端なことを言うと、世間一般で言われるスタンダードをやりたいわけではなくて、僕の強い思い入れのある、本当に素晴らしいと思う曲をスタンダードとして取り上げています。だから、おおはたの曲もいつかスタンダードとして演奏する日が来ると思っています。僕の取り上げる曲を「スタンダードとして聴いてくれ、これいいだろ? 」ってことをやりたいんです。僕らは例えば、クルト・ワイルの曲も結構取り上げているんですけど、彼の曲は決して世間的にはスタンダードとして認知されているわけではないと思うんです。「マック・ザ・ナイフ」とか有名な曲はスタンダードかもしれないけど、それ以外の曲はみんな変わっていて、「Alabama song」をカバーしたのもドアーズだけだからね。ワイルの音楽を特集するようなアルバムが出たり、いろんなシンガーが歌ったりしているものはあるけど、決して世間一般のスタンダードではない。なので選ぶ曲も変わっているんですけど、この曲は素晴らしいんだから、スタンダードにしようよって作戦なんです。例えば、おおはたに歌ってもらった、かまやつ(ひろし)さんの曲も世間的にはスタンダードじゃないからね。
おおはた : <とぼけた顔してババンバン>とかのほうが有名ですもんね。
芳垣 : 簡単に言うとそういうことなんだよね。だから、いつかプレイズ・スタンダードっていうところに、おおはた雄一の曲を出す日が来ると思いますよ。
おおはた : 確かに、「これどうよ? 」ってことですよね。最近そういうのないですからね。「よかったらどうぞ」みたいな形が多いから。
芳垣 : 意外と若い人たちが知らないんだよね。例えば音楽をダウンロードしたら「これも好きでしょ? 」みたいなレコメンドが来るでしょ。そういうおせっかいじゃなく、ちゃんとこれを聞かないとダメだよってことを教えてあげたほうがいいと思う。今って、昔のものも簡単に手に入るし、YouTubeでもみつけられるから、すごく音楽のことを知っているのかと思いきや、本質的なところでちゃんと聞いていない気がするんですよね。それは、おっさんのノスタルジーじゃなくて、本当にこれはいいんだって伝えていくことを俺たちがやらないといけないと思っています。
おおはた : 確かに、偶然の出会いみたいなものは減っていますよね。本屋に行って何となく惹かれて買っちゃうとか、そういうのは少なくなっているかもしれない。
芳垣 : 昔だったらCD屋とかレコード屋に行って、ぱっとジャケットを見て、すごく変な格好をしたおっさんが、すごい格好してギターを持っているような作品があったら、外れかもしれないけど買ってみようってなったもんね。要するに、今は自分の分かるテリトリーでしかモノを買わないじゃん。昔はそれでだいぶ失敗したけど、ブルース・ブラザーズなんかは、当時思いきって買ってみたら大正解だったからね。だからといって、Orquesta Libreをすごいジャケットにはしないけど。
おおはた : 芳垣さんが斧を持っていたりね(笑)。何気なく手にとったものを、すごくいいなと思ったりすることは大事かもしれないですね。僕もどんどんそういうことが少なくなっていますから。
——Orquesta Libreは、今まで出会ってきた思い入れのある曲たちが、芳垣さんのフィルターを通って鳴らされているわけですね。
芳垣 : そうですね。これは出発地点なので、これからどんどんネタを変えながら、こっちにもこういうのがあるよって膨らませていきたいです。
おおはた : 芳垣さんは、しなやかで柔らかいんですよね。仲間内で話していたのが、芳垣さんにテーブル一つを渡して、ライヴしてもらおうって(笑)。これじゃ出来ないよっていうことがあまりないと思うんです。なぜ芳垣さんなのかって話しに戻れば、そういうところも理由にありますよね。みんなは楽器を持っているんですけど、芳垣さんだけはテーブルっていう状況を想像すると… おもしろいですよね(笑)。
——僕も見たいです(笑)。じゃあ、最後に芳垣さんからおおはたさんへ一言お願いできますか。
芳垣 : 言葉を伝える人、詩人的な素晴らしさという点で、グッと来る人って今そんなにいないので、そういうところで、さらにグングンいってほしいなと思います。その成長も楽しみながら、一緒にやっていきたいですね。これからも、いろんな側面で一緒にやっていけたらと思っていて、その一つが今回配信するライヴ音源なんです。これからも次々と作っていこうと思うので、続けて聴いてもらって、より多くの人たちに伝わっていけばいいなと思っています。
2012年3月17日
取材協力 : CAY
芳垣安洋とおおはた雄一の2人だけのセッションを記録したDSDライヴ音源も配信中
数々のジャズ・ミュージシャンとのセッションをはじめ、ROVO、渋さ知らズ、さらには自身が率いるVincent Atmicus、Orquesta Nudge! Nudge! など、幅広いフィールドで活躍する芳垣安洋。毎年恒例となった新宿PIT INNでの芳垣安洋4DAYSの初日6/21(火)に、おおはた雄一が登場。何を演奏するかは本番まで全く決めず、おおはた雄一がその時のフィーリングによってギターを弾き始め、芳垣が即興で合わせていくというスペシャル・セッションをDSDで録音しました。その中からおおはた雄一が選んだ全13曲をOTOTOY独占配信中。
芳垣安洋×おおはた雄一 / LIVE at 新宿PIT INN 2011.06.21
【配信形態】
1) DSD+mp3(320kbps)
2) HQD(24bit/48kHz WAV)
【価格】
各1500円(まとめ購入のみ)
<Track List>
01. 不思議なくらい / 02. キリン / 03. Prayer / 04. きみはぼくのともだち / 05. 決別の旗 / 06. ゴロワーズを吸ったことがあるかい / 07. 旅の終わりに / 08. おだやかな暮らし / 09. Good night, Irene / 10. Canción Mixteca -encore 01- / 11. トラベリンマン -encore 02- / 12. He was a friend of mine -bonus track- / 13. サカナ -bonus track-
Orquesta Libre次回のLIVEにはゲストvo.に柳原陽一郎の参加が決定!
「Orquesta Libre ~ Prays Standards」
日程 : 2012年4月17日(火)
場所 : 新宿PIT INN
open 19:30 / start 20:00
チケット : 前売¥3,000(1DRINK付)
Guest : 柳原陽一郎(Vo. / Gutar / Pf.)
INFORMATION
芳垣安洋 ライヴ・スケジュール
2012/03/31(土) @渋谷BOXX ※レナード衛藤『ブレンドラムス』
2012/04/01(日) @西麻布 音楽実験室 新世界 ※Club Aloeワンマンライブ『橙武者』
2012/04/07(土) @祖師ケ谷大蔵 Cafe MURIWUI ※NERIMA TEA CLUB
2012/04/08(日) @高崎市 SangamSangam presents『RAKU-Ne』 ~Percussion SOLO~
2012/04/14(土) @国立 NO TRUNKS ※広瀬淳二トリオ
2012/04/16(月) @六本木 SUPER DELUXE ※Orquesta Nudge!Nudge!
2012/04/20(金) @京都 アルティ ※レナード衛藤『ブレンドラムスの挑戦Ⅲ』
2012/04/24(火) @池袋 アップルジャンプ ※中村 真 トリオ
2012/04/25(水) @渋谷 公園通りクラシックス ※定村史朗+芳垣安洋+尾島由郎+中島ノブユキ
2012/04/27(金) @三軒茶屋 グレープフルーツムーン ※FUNKESTRA LIVE『FUNK JAZZ NIGHT』
おおはた雄一 ライヴ・スケジュール
2012/04/20(金) @梅田Shangri-La 『Osaka Song Book vol.4』
2012/05/05(土) @長野県上田市・上田映劇『楽しい夕に : 上田映劇ミーティング vol.1』
2012/06/02(土) @Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE 『GACHI・シーズン3(2012-2013)[全?回]』
2012/06/26(火) @仙台retro Back Page 畠山美由紀『わが美しき故郷よ』東北TOUR
2012/06/30(土) @東御市文化会館サンテラスホール 畠山美由紀『わが美しき故郷よ』TOUR 長野・東御編
PROFILE
芳垣安洋
関西のジャズエリアでキャリアをスタートさせ、モダン・チョキチョキズ、ベツニ・ナンモ・クレズマー・オーケストラ、渋さ知らズなどに参加後上京。渋谷毅、山下洋輔、坂田明、板橋文夫、梅津和時、片山広明、巻上公一、ホッピー神山、大島保克、菊地成孔、オオヤユウスケ、高田漣、ヤドランカ、酒井俊、長谷川きよし、カルメン・マキ、おおたか静流、小島真由実、浜田真理子、カヒミ・カリィ、UA、原田郁子、Jhon Zorn、Bill Laswellなど様々なミュージシャンと共演。現在、ROVO、大友良英ニュー・ジャズ・オーケストラ、南博GO THERE、アルタード・ステイツや自己のバンドVincent Atmicus、Emergency!、Orquesta Nudge!Nudge!等のライヴ活動の他、蜷川幸雄や文学座などの演劇や、映画の音楽制作も手掛ける。メールス・ジャズ・フェスを始めとする欧米のジャズや現代音楽のフェスティバルへの出演や、来日するミュージシャンとの共演も多く、海外ではインプロヴァイザーとしての評価も高い。自身のレーベル「Glamorous」を主宰する。
芳垣安洋 official web
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おおはた雄一
1975年茨城県生まれ。ブルースやフォーク・ミュージックをルーツとするシンガー・ソング・ライター、ギタリスト。2004年、1stアルバムを発表。現在までに5枚のオリジナル・アルバムをリリース。代表曲「おだやかな暮らし」は、クラムボンや坂本美雨など多くのアーティストにカヴァーされている。自身の活動に加え、映画音楽(’09「女の子ものがたり」)、プロデュースや楽曲提供(原田郁子、持田香織など)、CM音楽(全労済、永谷園あさげなど)、レコーディングセッションでも数多くの作品に参加。最近では、ハナレグミのツアーにもギタリストとして参加。坂本美雨とのユニット「おお雨」や、ドラマーの芳垣安洋(ROVO)とのデュオ、山口洋(HEAT WAVE)とのデュオなどでもライヴに出演。ジャンルの枠も国境も飄々と飛び越えて活動中。