
NERVS INTERVIEW
海外生まれのパンクも、ここ日本でしっかり根をはり、時間とともに熟成し様々な色を見せている。そうした環境の中で、振り幅を持たせたパンク・バンドが、LESS THAN TVから4年振りに音源をリリースするNERVSだ。女性ヴォーカリストのWannaとStruggle For Prideのグッチンを中心に、ベースにデラシネの風間コレヒコ、ドラムにGOD'S GUTSのタカヒロを迎え、5曲入りの2ndシングルを完成させた。耳をつんざくノイジーなギターに、妖艶な女性ヴォーカルが浮き上がるこのバンドは、旧来のパンクのイメージからも、海外のパンク・バンドからも、生まれて来ないパンク・ミュージックだ。彼らが提唱するパンクを、脳髄にぶちこんで体験してほしい。
インタビュー&文 : 西澤裕郎
NERVS / An Overturned Toy Box
NERVS、4年ぶりの新作をリリース! 耳をつんざくノイジーなギターとタイトな高速ハードコア・ビートに、キュートかつ妖艶でもの憂げなヴォーカルが凛と屹立。ガールズ・パンクの魅力をセンスフルに採り入れつつ、レトロ・エレクトロニカ・チューンまでを収録。
1. All Essences / 2. I Forgot You / 3. The Line / 4. My Boots
※CDに収録されている5曲目「Hanging On The Telephone」は、権利の都合上、配信での販売は致しません。予めご了承ください。
大人になってから出来るパンク
――前作はスージー・アンド・ザ・バンシーズ、今作ではブロンディのカバー曲を収録していますが、NERVSは女性ヴォーカルであることを意識していますか?
Wanna : もちろん、女がやっているっていう意識はあります。意識というか、昔は女の子パンク・バンドをやっていて、フェミニズムっぽさを必死に意識してたけど、今は自然と自分が女だと感じているので。大人のパンクがやりたいんですけど、それが出来るのは女の人だと思ってるの。
――大人のパンクとはどういうものですか?
Wanna : パンクって、ファック・大人だったり、アンチ・システム、若者の叫びみたいなイメージがあると思うんですけど、大人になってから出来るパンクもあるというか。
――アンチがメインではないということですか?
グッチン : そこはあるんだよね。パンク自体がアンチから始まっているから。その中で熟成される、成長した結果行き着いたパンクみたいな感じかな。

――例えば大人の不良のパンクみたいな感じでしょうか。
Wanna : それとも違うかな。
タカヒロ : 年相応? 多少長く生きている分、若い人とは違うぞってところを見せたいんじゃないの?
Wanna : なんとなくだけど、私はむしろ、叫んでる人間を受け止めたいと思うようになったのよ。音楽にかぎらず、私自身、叫んだり泣いたり、分かってもらおうとすればするほど伝わらなくて、つかれるなーと思ってたし。もっと違うやり方もあるかなと思いはじめたの。
――大人のパンクとして、今作で一番こだわった点はどういうところですか?
グッチン : バカなところかな。
――バカというのと大人のパンクは同じ意味ですか?
Wanna : 独特のユーモア感というか、斜に構えた感じにしたかったんです。
――なるほど。今作ではタカヒロさんがドラムを叩いていますが、実際にバンド内に入ってみて、それまで持っていたNERVSのイメージと違う部分はありましたか。
タカヒロ : グッチンがぐんぐん引っ張っているバンドなのかなと思っていたんですけど、実質的にイニシアチブを取っているのはWannaだなって。
Wanna : そう?
タカヒロ : 最終的にはWannaの一言ですべて覆るしね(笑)。それってバンドの雰囲気として良いなと思うんですよ。NERVSがメンバー抜けて誰か良いベーシスト居ない? って探してた時に、「女の子を入れたら良いんじゃない」って言ったら、Wannaが「男を従えている感じがいいんだよ」って言っていて、なるほどなって思ったんだよね。
グッチン : まさにブロンディのアルバム・ジャケットのイメージだよね。
Wanna : 何かギャングっぽくていいじゃん(笑)。グはボヤッキーね。
一本筋を通して、いろんなものをやっています
――音源としては2007年以来、約4年振りのリリースとなりますが、NERVSを続けている上で一番の原動力はどこにありますか?
グッチン : ライヴをしている瞬間が楽しいっていうのが、一番大きな原動力ですね。本当は面倒くさがり屋で、ライヴ・ハウスに行くのも、リハをするのも面倒くさいんだけど、ライヴが始まると楽しくて仕方ないんですよ。
Wanna : 音源を作ったりすることも含めて、一般的に言われるバンド活動みたいなことが楽しいんだよね。
グッチン : ずっと音楽をやっているので、生活サイクルになっちゃっていますね。
タカヒロ : そういえば、スタジオで「前に出来た曲、どんなんだっけ? 」ってWannaに聞いてるときよくあるよね。「知らないよ」って(笑)、じゃあ飲みにいきますかって感じになって流れるっていう(笑)。
――確かに生活と密着していますね(笑)。ちなみに、その曲は次回に生かされるんですか?
グッチン : 思い出すこともあれば、作ったこと自体忘れて、いつも通りスタジオに入っちゃったりすることもありますね(笑)。
タカヒロ : それで気づいたら「あれどうなったの? 」って話になるんだよね。
――今回収められた曲には、そのようにして出来たものはありますか。
グッチン : 全部そうかな(笑)。
タカヒロ : でも、1曲目は最初の頃の曲でしょ?
グッチン : そうだ。これはNERVSで初めて作った曲ですね。Black Dotsの時のバッド・ブレインズみたいな曲をやりたくて、シンプルで短くなるように考えて作りました。
タカヒロ : 2曲目は一回作った曲らしいんですけど、グッチンがギターを弾きながらまったく思い出せないって言っていて、出来たら全然違う曲になったっていう(笑)。違うけど、まっいっかみたいな感じになったんだよね。
――「I Forgot You」というタイトルとかかっている部分もあるんですね(笑)。NERVSが活動するにあたって、それぞれここは曲げないって部分はどこでしょう。
グッチン : やっぱりパンクの筋が奥底にあるところですね。例えば、ダムドにはすごくメロディックな曲があったり、ちょっと暗い曲もあったりする。ああいう感じっていうんですかね。一本筋を通して、いろんなものをやっています。自分でも、どうなるんだろうって思いながらやってみたいんですよね。
――Wannaさんはどうでしょう。
Wanna : 私は自分のパフォーマンスについて考えるほうが多いかも。歌詞に関してはやっぱり、さっき言った大人のパンクをやりたいなって思ってます。まだこれからですけど。
――NERVS以外で、大人のパンクをやっているなと思うバンドはいますか。
Wanna : メグビンズは大人。母性や余裕を感じる。
――LESS THAN TV(以下、レスザン)から音源を出しているバンドはどうですか?
グッチン : 大人の言い方によるんですけど、レスザンのバンドはみんな大人のバンドって感じがします。自分がやりたいことをわかっているというか、やりたいことをやりたいようにやっている。プンクボイとか大人のパンクですね(笑)。
タカヒロ : 子どもにはできないね。やらないか(笑)。
グッチン : U.G MAN(以下、UG)も大人のバンドだと思います。無様なところもさらけ出して、どうだって迫ってくる感じが格好いい。わざと無様にしているというよりも、それが自然で格好いい。狙ってないっていうのかな。
タカヒロ : でも、UGって、パンク・バンドの「何だこれ? 」って笑っちゃうくらいダサくてシブいとこを誇張して始まったらしいけど(笑)。
グッチン : でもそれを見てぐっとくる。気取ってないっていうのかな。
Wanna : 私は最初観たとき、カッコつけてるのにカッコ悪くて、カッコいいと思った。けどこの話、さっき私が言った、女だから大人のパンクができると思うって事覆されちゃってるんだけど。UGは確かに大人。

――ちなみに4曲目の「My Boots」は、他の曲と違ってノイズなしの打ち込みで構成されていますよね。
グッチン : これはいつもライヴでやっている曲なんですけど、録ろうってなったときに、リミックスを先に出したら面白いんじゃないかって思って。今作はリミックスにして、次のアルバムでライヴ・バージョンを出そうと思ったんです。変なところでひねくれているんですよね。
Wanna : 本当は、私はライヴでやっている方を出したかったんですけど、結果的によかったね。
グッチン : もともと色んなタイプの要素を入れるっていうコンセプトがあって、そのまま入れても全くタイプの違う曲だったんですけど、Wannaが打ち込みやっていたので、このタイミングで入れたいなと思って。
――コンセプトという言葉が出てきましたが、グッチンさんはどのようなコンセプトを持って作り始めるのでしょう。
グッチン : 自分が今までやっているバンドには敢えてメッセージを持たせていなかったんです。表面的なものより、もっと内側にあるもの、自分の奥の奥にある部分を出したいと思っているし、やっていて楽しいんです。そういう絵的なものをイメージして曲を作ります。
――イメージっていうのは、メッセージ性を含んだものですか。
グッチン : そうじゃないですね。自分は人にメッセージを送れる人間じゃないと思っているんですよ。WARHEADの『この想いを何処へ』みたいな、鳥肌が立つどころじゃない作品もすごく好きですけど、自分の能力じゃそれは無理かなって。
――3.11以降の活動における変化はありましたか。
グッチン : 活動自体は変わってないですけど、変わっていない訳ないですよね。根本には、ライヴの間だけでもスカっとしてくれればいいなと思っていて、そこは変わらないですね。みんなでイエーってのではないんですけど、すっきりしないものが少しでも解消してくれればいいなって思います。自分自身もそういう思いでやっているし、聴いている人もそうだったら嬉しいですね。
――前作のピクチャー盤に続き、今回のも特殊パッケージでブリスター・パックですね。
グッチン : 手元にあったらおもしろいかなって。買ってもらうための努力じゃないけど、そのほうが自分たちも買って嬉しいしね。
タカヒロ : あとレスザンだからやっても大丈夫ってのもあったでしょ?
グッチン : そう。レスザンだから笑える感じで出したいなと。前作は「ピクチャー盤出すの? 」って感じで色んな人に言われたから、今回はブリスター・パックにしたいってWannaが(笑)。
Wanna : おもちゃみたいでカワイイでしょ?
グッチン : フィギアが入っている感じだもんね。最初に言ったことに戻っちゃうけど、バカだなと思ってもらったら嬉しいですね。
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NERVS PROFILE
ex.NodicksのWanna(Vo)とStruggle For Prideのグッチン(Gt)を中心に2005年東京にて結成。2006年にStruggle For Pride今里の監修によるコンピ『MASTER CUTS ILL SKILLS』、2007年にLess Than TVのコンピ『STRANGE』への参加で、圧倒的存在感を放ちジャンルを超えて聴く者を魅了させる。同年、待望の単独初音源となるPicture Disc 7EPをリリースし瞬く間に完売。2010年Dead KennedysのトリビュートV.A『Get Drunk More Fuck』へ参加。PUNK全開に爆走するリズムと、激NOISEYなギターが耳を貫く中、Wannaのクールで妖艷なヴォーカルが音の洪水の中で凛と屹立し、混沌とした世界が激しく渦巻くステージも圧巻。ベースに風間コレヒコ(デラシネ)、ドラムにタカヒロ(GOD'S GUTS)という強力な布陣で送り出される4年ぶりの単独新音源となる5曲入りシングル『An Overturned Toy Box』を今年11月レスザンTVよりリリース!