【1万3千字レポート】5人で駆け抜けた416日の青春ーーGANG PARADE、密着ドキュメンタリー・レポート
POPから改名し活動中のアイドル・グループGANG PARADE。8月5〜7日にかけてお台場・青海周辺エリアにて開催された〈TOKYO IDOL FESTIVAL 2016〉をもって最年少のメンバー・シグサワアオが脱退した。カミヤサキの活動休止期間を挟みつつ、約1年2ヶ月間、5人で駆け抜けてきたグループにとってこれが初めての脱退となる。BiSHとの200km対抗熱海駅伝でのデビューから5人を追い続けてきたOTOTOYでは、カミヤサキの活動復帰からシグサワアオの脱退、そして4人でのスタートまでを追ったドキュメンタリー・レポートを掲載。彼女たちの歩みを振り返り、第2章を引き続き追いかける。
GANG PARADE改名後、初シングルを配信中
GANG PARADE / WE ARE the IDOL
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV、AAC、mp3
【配信価格】
単曲 200円(税込) / まとめ 800円(税込)
【Track List】
1. WE ARE the IDOL
2. これはきっとaventure
3. WE ARE the IDOL(inst)
4. これはきっとaventure(inst)
グループ史上最大キャパでのワンマン・ライヴ開催が決定
GANG PARADE OneMan Live『Barely Last』
2016年11月13日(日)@新宿BLAZE
時間 : Open 16:00 / Start 17:00
料金 : スタンディング 前売 3,000円(税込) 入場時にドリンク代別途必要
※会場内に女性専用エリアを設けます。
チケット一般発売中 : 受付URL イープラス
本公演に関するお問い合わせ : KM MUSIC 045-201-9999
DOCUMENTARY REPORT : 5人で過ごしたPOP〜GANG PARADE
「忘れられない15分間にしたいと思います。聴いてください「WE ARE the IDOL」」
8月5日~7日、お台場・青海周辺エリアにて開催された〈TOKYO IDOL FESTIVAL 2016〉。最終日、湾岸スタジオ屋上に設置されたSKY STAGEには、GANG PARADEの5人ーーカミヤサキ、イヌカイマアヤ、ユメノユア、ヤママチミキ、そしてシグサワアオが立っていた。約1年2ヶ月間、5人で作り上げたPOP~GANG PARADEのステージはあと15分、曲にして残りわずか3曲で終わろうとしていた。
ちょうど1年前の〈TOKYO IDOL FESTIVAL 2015〉。禁止事項を破ったことが1つの原因となりカミヤサキは活動休止、残された新メンバーの4人でPOPは活動することとなった。そこから4ヶ月間の4人でのライヴ、カミヤサキ復帰をかけた100kmマラソン、復帰を果たし5人になって臨んだ下北沢SHELTERでのワンマン・ライヴ、元BiSメンバーたちとの全国ツアー、SHIBUYA CYCLONEでの3rdワンマン・ライヴ、2016年6月17日のGANG PARADEへの改名、水着姿も披露した渋谷WWWでのワンマン・ライヴ… わずか1年間のこととは思えないくらい濃密な日々を5人は過ごしてきた。その1つの通過点が、初期メンバー・シグサワアオの脱退であるというのは誰が予想しただろうか。
2015年12月、カミヤサキ復帰、5人でのPOPのスタート
2015年12月4日(金)、5日(土)に行われたカミヤサキのグループ復帰をかけた100kmマラソン。カミヤサキは険しい山道が続く難攻不落のコースを22時間で完走し、そのまま下北沢SHELTERにて2ndワンマン・ライヴを敢行、無期限活動休止から復帰を果たした。復帰後5人のPOPで歌った初めての曲は、ユメノユア作詞によるPOP初のシングル曲「Happy Lucky Kirakira Lucky」だった。
この曲こそサキちゃんがいて完成する気がしました。(略)POPとして歌わせてもらっている曲の中でも「Happy Lucky Kirakira Lucky」を歌った時が1番物足りなかった。サキちゃんいてほしいな、サキちゃんと一緒に歌いたいなっていう気持ちが強かったです。
100kmマラソン前のインタヴューでシグサワアオが語った通り、カミヤサキを加えた5人での「Happy Lucky Kirakira Lucky」は客席を巻き込み爆発的な盛り上がりを見せ、同楽曲の完成系を見せた。それまでのPOPにはないBPMの早いトラックと、激しく上下に手をあげる振り付けやメンバーがクロスする立体的なフォーメーションは、これからのPOPの活躍を予想させる躍動感に溢れるものだった。
その日を皮切りに、5人での新たなPOPの活動がはじまった。12月12日(土)には、元BiSメンバーが集結したBILLIE IDLE®主催ライヴ〈BILLIE IDLE® presents Brand-new Idle Society〉がラフォーレミュージアム原宿にて開催された。シグサワアオがカミヤサキに対して「BiS時代一番目立たなかったカミヤサキ」とおどけた演技で突っ込むMCが話題を呼んだ。ライヴ自体も大盛り上がりを見せ、POPの注目度は着実に増していった。
2016年に入ってからは地方への遠征も増え、台湾でのライヴを行うなど、順調に活動は続いていった。一方で、カミヤサキと4人の間には薄い壁のようなものが生まれていたのも事実だった。がむしゃらに作り上げてきた4人の4ヶ月間の日々は、カミヤが復帰したからといってすぐに埋まるようなものではなかった。カミヤサキ不在の4ヶ月間での経験を通して、4人には自信とプライド、POPとしての自我が生まれていた。5人のPOPがひとつになるためには少なからぬ時間が必要であった。
2016年、メンバー4人とカミヤサキがひとつになるために
2016年3月15日、POPの2ndシングル『QUEEN OF POP』がリリース、その前日3月14日には、3rdワンマン・ライヴ〈QUEEN OF POP〉がSHIBUYA CYCLONEにて開催された。当日はあいにくの雨だったが会場は満員で熱気と湿気が蔓延し、汗だくになりながら持ち曲を出し惜しみせず披露しライヴ本編を終えた。アンコールに登場した5人。イヌカイマアヤが一歩前に立ちMCをはじめた。それは、イヌカイマアヤの想いを越えた5人のPOPにとって非常に重要な内容だった。
POPが活動開始してから9ヶ月が経ちました。カミヤの元に集められた私を含む新メンバー4人。最初はカミヤの後ろ姿を追っていくことに必死で周りが見えていなかったです。加入してすぐに決定した〈TIF〉への出演。そこは夢に見ていた世界でした。しかし、POPとして禁止事項を破ってカミヤは無期限の活動休止。私はメンバーにいらだち、私自身にもいらだち、未来が見えなくなってしまいました。カミヤに対しては怒りが抑えきれず「後悔していないというのなら私はあなたとこのグループをやっていくわけにはいかない」と初めて言いました。私はPOPにいる必要がないと思ってしまいました。POPが嫌いで、当時は逃げ出してしまいたかったです。そのとき、カミヤに「大丈夫」「一緒に乗り切ろう」と声をかけなかったのは、カミヤサキプラス新メンバー4人という形でPOPが進んで行くのが嫌だったからです。
それから4人での活動がはじまりました。思い通りにならないダンスも、歌も、メンバーのことも、何もかもが嫌いで、POPも嫌いで、私はPOPに必要ない、そう思ってしまいました。落ち着ける場所を探していました。ライヴはしたくなかったです。ステージから観て会場に私推しのファンの方がいるということは当たり前ではありませんでした。こんなに辛い思いをして、こんな嫌な思いをして、ここにいる必要はない、やめたい、すべてなかったことにしたい、そう思ってしまいました。そんなときに、みんなが私にかけてくれた「イヌカイがいなくちゃPOPじゃないよ」「POPはイヌカイがひっぱっていくんだよ」という言葉。そしてメンバーのシグサワからの「POPはマアヤが変えていくんだよ」という言葉。POPに必要ないと思っていた自分が恥ずかしくなりました。こんなにも思ってくれているメンバーがいて、ファンの方がいて、この場所を離れるわけにはいかない、逃げ出すわけにはいかない、自分のエゴのためにここを逃げ出すわけにはいかないと。私は変なところで負けず嫌いで、自分が優位に立ちたくて、でも現実は甘くなくて、葛藤して、涙を流して、また葛藤をしての繰り返しでした。でも、なにも変わらなかった。ついてきてくれる人も増えなかった。でもみんながいるから、私はちょっとずつでも私にならなくちゃいけない。
昨年末行われたカミヤサキの復活をかけた100kmマラソン。無事完走して、当日のワンマン・ライヴは5人でのステージに立てました。あのときは、嫌なことをすべて消し去ってしまうくらい楽しくて幸せな時間でした。POPは、まだPOPとして再スタートをはじめたばかりです。いままでの私は限界を作ってきてしまいましたが、これからはなにごとも挑戦していく、挑んでいかなくちゃと思っています。POPはPOPとして走り始めたばかりです。まだまだこれからも走り続けていきたいです。
約15分に渡るMCののち、5人はイヌカイマアヤ作詞の新曲「走る!!」を披露した。会場入場時にイヌカイからファンにプレゼントされた袋のなかには黄色のサイリウムが入っており、それを手にしたファンによるサイリウムが会場をやさしく包み込んだ。メンバーたちも自分のカラーのサイリウムを持ち、歌い、ダンスをした。イヌカイの言葉は4人の想いを代弁する言葉でもあった。カミヤサキ率いるという枕詞から名実ともに解き放たれるための大切なMCだった。
その週末の土曜日、追加ワンマン公演〈QUEEN OF SHELTER〉が下北沢SHELTERにて開催された。イヌカイのMCにアンサーを返すように、カミヤサキが20分近くに渡るMCを行った。
POPが結成してから早くも9ヶ月が経ちました。熱海駅伝のとき、POPとBiSHの差を目の当たりにして、悔しくて、渡辺さん(※渡辺淳之介 / 株式会社WACK代表取締役、POPプロデューサー)に八つ当たりしてしまいました。「BiSHで頭いっぱいになって爆発して死んでください」って言ってしまいました。(略)そんな喧嘩から渡辺さんと話をして「お前は何も見えてないよ。続けるのか、続けないのか、ちゃんと考えな」って言われました。(略)見えていないというものがなにかはっきりとはわからなかったけど、自分のスタートした道を自分の過去が乗り越えられないという理由でたち切るわけにはいかないと思って、私は続けますと答えました。(略)
昨年夏に行われた〈TIF〉では私が禁止事項を破ってしまい、責任をとるために私は無期限の活動休止となりました。たくさんの人に迷惑をかけてしまったし、なによりも爪痕を残したいという気持ちが人を裏切る形でしかできなかったことに本当にあきれて、空回りどころじゃないなって思いました。渡辺さんにも「お前、全然わかってないじゃん」って言われました。活動休止期間中、メンバーは必死でPOPを守ってくれていました。あのときは私も4人も自分の居場所もPOPの未来も見えなくて、その日1日乗り越えることにいっぱいいっぱいになってしまっていました。私自身、モチベーションを保つことが簡単ではなくて、自分がPOPのスタッフとして現場に来させていただいている意味とも向かい合おうとせず、自分で考えるということも半分あきらめて放棄していました。それに気づいたスタッフさんから怒られたこともありました。
何を考えても逃げている気がした私は、本当は見たくない自分の姿を一度見てみようと考えました。私は、本当は人のせいにして自分が傷つかない方法を探しているただの弱虫です。自分というものがなく、人の言葉に振り回されて、人の言葉が私の気持ちみたいに思ってしまう空っぽな人間です。だから人の気持ちもわからないし自分の気持ちもわからない。でも、なにもないから、なにも傷つかない。中身はからっぽで外だけ硬い。みんなは私のことを鉄人とか、前向きな明るい子だって言ってくれるけど最悪の鉄人だと思いました。でもプライドだけはいっちょまえに出来上がってしまった、どうしようもない大人だと思いました。カミヤサキという人間はただのハリボテでした。当たり前だと思っていた周りの環境、自分のいれる居場所の大切さ、わかっているフリをしていただけで、それがフリだということに気づかず、誰よりもそういう気持ちを持っていると思っていただけでした。(略)
POPじゃなかったら、悲しみや苦しみや困難を乗り越えていくことがどんなに大変か。その先にどんな景色が待っているか、どれだけ自分が強くなれるのか、知ることはできなかったと思います。POPを続けて、あきらめないでよかったと本当に思います。やっといま5人肩を並べてスタートすることができましたが、POPはまだまだこれからだと思っています。私自身もまだまだ変わっていきたいです。これからたくさんのもっともっと困難や乗り越えないといけない壁が待っていると思いますが、どんな壁もボロボロになってでもよじのぼるくらいの覚悟をもって絶対にあきらめないで進んでいきたいと思います。
5人のPOPは前回のワンマンに続き、アンコールで「走る!!」を披露した。「この曲はマアヤが作詞してくれた曲で、マアヤがPOPへの気持ちを持って書いてくれた曲です。マアヤだけじゃなくて、私やPOPみんなにとって特別な、大切な、これまで9ヶ月間を詰め込んだような曲だと思っています。これは過去を歌う曲じゃなく、私は未来につながる曲にしたいです。そんな私たちの大切な曲がみなさんの心に寄り添えるような1曲になるよう心を込めて歌います」。
渋谷WWWワンマン、そしてシグサワアオの脱退発表
POPは自分たちのやり方で5人のPOPへなろうとしていた。カミヤサキ活動休止という長く困難な呪縛からようやく解き放たれ、次のフェイズに進むべき準備はととのった。同ワンマンでは、3作目のシングルがリリースされること、次なるワンマンが渋谷WWWで行われることも発表されていた。ここからは、5人揃ってのPOPを作り上げていくための時間だった。そのために毎回ダンスの細かい部分をマイナー・チェンジしたり、新木場STUDIO COASTで開催されたアイドル・イベントではステージ後ろから登場してみせたり、お客さんが想像しない休憩スペースから登場するなど、自分たちの見せ方を模索し続けた。2016年6月17日には、自分たちをもっと知ってもらうためにPOPからGANG PARADEへの改名を発表した。
7月19日にはGANG PARADEとしての初シングル『WE ARE the IDOL』がリリース。前日の7月18日には東京・渋谷WWWで4thワンマン・ライヴ〈WE ARE the IDOL〉が開催された。夏真っ盛りの祝日。チケットはSOLD OUT。即完売というわけではないが、毎回ワンマンのチケットを売り切っているのは、コツコツとライヴを積み重ねながら前に進んできた彼女たちらしい。ライヴではこれまでの持ち曲すべてを披露し、立体的でスピード感のあるフォーメーションのダンスを見せつけた。もはやダンス・ユニットといってもいいくらい躍動的でクオリティの高いステージだった。アンコールでは、海の日ということもあり、メンバーが水着で登場。それまで露出とは無縁だったGANG PARADEだっただけに、お客さんたちは度肝を抜き、彼女たちの水着姿を収めようとカメラの液晶画面が覆い尽くした。そしてこの日のステージではユメノユアがMCを行い、「日本武道館を目指す」ことを公言した。
ぼくはアイドルにとても憧れていました。それはステージ上でキラキラ輝く素敵なアイドルさんたちの姿をたくさん見てきて、自分も生きているんだなって感じて、またその人に会えるまで頑張ろうと思えたからです。自分も誰かにとってそんな存在になりたくて、誰かの支えになりたくて(POPの)オーディションを受けました。そしてこのステージに立つことができています。ぼくは自分の弱さが原因で、よくファンのみなさんに心配をかけてしまうことがあります。「ユアちゃん元気?」「ユアちゃん大丈夫?」って、握手会やチェキのときにいつも声をかけてくれるファンのみなさんが、たくさんいます。そんなファンのみなさんや、たくさんのスタッフのみなさん、そしてメンバーに支えられて、今日までこうして歩いてくることができました。そんなぼくですが、アイドルとして叶えたい夢があります。それは日本武道館に立つ。それがいまのGANG PARADE、ユメノユアとしての大きな夢です。たくさんの日本を代表とする、世界を代表とするアーティストが立ってきた場所に自分も立ちたい。でも、その大きな夢を叶えるためにはみなさんの力が必要です。たぶん、いまこの夢を言ったところで寝言のように、現実味のない夢だなと思う人も本当にたくさんいるのはわかっています。だけど僕は夢というものは叶えるために、努力するためにあるものだって信じています。ここにいるファンのみなさん、全国の応援してくださるみなさん、スタッフのみなさん、メンバーと夢のかけらを拾い集めてこれからも歩いていきたい、そう思っています。決して平坦な道のりではないと思います。それでもみんなでその夢が叶う瞬間を味わって夢が実現する喜びを一緒に感じれたらいいなって、そう思っています。GANG PARADEはまだまだ止まるわけにはいきません。改名後、これからが本当の勝負だと思っています。(ユメノユア)
同時に、次回のワンマン・ライヴを11月13日(日)にグループ史上最大キャパの新宿BLAZEで行うこと、11月8日(火)には改名後初となるアルバム『Barely Last』を発売することも発表した。GANG PARADEは明確な夢に向かって突っ走っていくのみ。こうして4回目のワンマンライヴは幕を閉じた。
シグサワアオの脱退が発表されたのは、その2日後だった。
2016年7月〜8月、メンバー5人それぞれの想いを持っての3週間
それは7月20日にタワーレコード渋谷店CUTUP STUDIOcutにて行われたシングル『WE ARE the IDOL』のリリース・イベントでのことだった。メンバー5人がステージに登場した直後、シグサワアオから発表があることが告げられた。
わたくしシグサワアオは、8月7日の〈TIF〉最終日をもってGANG PARADEを脱退します。これからっていうときに、こんな発表をしてしまって本当にすいません。わたしがみなさんの前にアイドルとして立たせていただいたこの1年間、家族から応援を受けることができませんでした。いまは応援してもらえないかもしれないけれど、それでもステージに立ち続けたいという強い想いを伝え続ければ、いつかはそれも覆せると思ってステージに立ち続けていました。けれどもそれは自分が思っていたよりもずっとずっと難しい問題でした。きっかけは親からの反対だったかもしれないけれど、それでも死に物狂いでこのステージに立ち続けるという選択をしなかったのは、紛れもなくわたしです。GANG PARADEが嫌いになったわけでも、夢を諦めたわけでも、もちろんみんなのことが嫌いになったわけでもありません。それでも外からの反対で少しでも気持ちが揺らいでしまうような人間は上へ上へと走り続けていくこのグループにふさわしくないと思いました。
発表の瞬間、静まり返った会場。予期せぬ突然の発表に反応できる人はいなかった。他のメンバー4人はステージ上から客席をまっすぐ直視している。静まり返る会場のお客さん、まっすぐ前を見て横を見ないメンバー、大粒の涙を流しながら脱退について話すシグサワアオ。まるで異空間に迷い込んでしまったような気持ちになった。
絶対に下を向くなって私が言いました。泣くのは絶対禁止、下を向くのも、目線を下げるのも全部禁止にしたんです。アオが辞めても4人は前を向いていくんだという姿勢を、あの一瞬でお客さんに伝えなきゃいけないと思ったから。そこで4人まで下を向いていたらお客さんは不安になると思って。私自身も絶対に下を向きたくなかったから。(カミヤサキ)
シグサワアオは涙をいっぱいに自分の思いを伝えた。カミヤサキ、イヌカイマアヤ、ユメノユア、ヤママチミキはその事実に耐えることと現実に向かい合うことに必死だった。メンバーもまた、シグサワアオの脱退を受け入れる姿勢は簡単にできるものではなかった。
アオちゃんの言葉を耳に入れたら私はダメになっちゃうと思ったので、とにかく無心でいようと思って。考えをめぐらせた時点で涙も流れちゃうかもしれなかったので、リリース・イベントのことをひたすら考えていました。今はアオちゃんだけの時間じゃなくて、私たちの3rdシングルの発売のイベント中のことなんだって。そう思って、あの時は立っていました。(ヤママチミキ)
アオの脱退を知ってからしばらく経っていたので、心的には落ち着いてはいたんですよ。だけどやっぱりお客さんの顔を見ると、その人の気持ちのことすごい考えちゃって心が揺れちゃうと思って。アオの言葉を聞いていたんですけど、お客さんの顔を見るのが怖かったので、ずっと前を向いていました。(イヌカイマアヤ)
アオが辞めることに対して納得がいってたわけではなくて。サキちゃんが1回抜けて4人でやってきて歴史や、1年間やってきたことを考えると悔しくなっちゃって… 5人でやりたかったから…。アオの言葉を聞きながらも、いろんな感情にのまれそうになっちゃって。前を向かないといけないし、前に進みたいし、自分はGANG PARADEでやるって決めていても、誰かの感情をすごい気にしちゃうから、そっちに半分のみこまれそうになっちゃうんですよ。聞いてるのもしんどかったから虚空を見つめて言葉を理解しないように、その時間を耐えてました。(ユメノユア)
メンバーのなかでも、カミヤサキは特に強い気持ちを持とうとしていた。
同じ方向を向くのは大事だけど、手を繋ぐみたいなのは好きじゃなくて。みんなが一瞬バラバラの方を正直向いちゃっていたので、どうやったら気持ちが一つになるか、まとめないといけない時期だと思いつつ、誰よりも負けたくないなってやっていました。アオの脱退にも納得はできないけど、そんな理由で続けられていても私は困るので、残りの期間、アオには本当に死ぬ気でかかってきてほしいと思う。それに対して私は負けたくない。アオの脱退がどうとかじゃなくて、単純にこの状態に負けるのは絶対に嫌。自分が未来を見るためにも、お客さんとか周りの人が未来を見るためにも誰よりも戦う気持ちでやっていきます。(カミヤサキ)
シグサワアオの脱退発表は大きな衝撃を与えたが、リリース・イベントは止まることなく続いていった。1週間ほぼ毎日東京でのインストア・イベントは行われ、連日のように多くのお客さんたちが会場に足を運んだ。翌週末には、名古屋、神戸、大阪でのインストア・イベントが行われ、炎天下のなか、5人でのステージをやりきった。
8月2日(火)には、BELLRING少女ハートとの2マン・ライヴが新宿LOFTで開催された。約60分のライヴ。最後の長尺ステージとなったこの日、GANG PARADEは初期からの代表曲である「Plastic 2 Mercy」を3連続で歌い踊った。1回目、2回目、3回目… 回を増すごとにメンバーのボルテージもあがっていった。ステージ上でカミヤサキがシグサワアオを掴み寄せ、吠えるシーンも見られた。脱退を受け入れつつも、やっぱり納得できない。そんな現状に対するやりきれない感情がこぼれだしていた。言葉を介さないメンバー間のコミュニケーションがステージ上で繰り広げられていた。
2016年8月7日、5人でのGANG PARADE最後の1日
8月5日~7日、お台場・青海周辺エリアにて〈TOKYO IDOL FESTIVAL 2016〉が開催された。カミヤサキが活動休止になった原因を作った場所ということもあり、メンバーはどこか心配そうな面持ちで会場入りしていた。声をかけてみると「犯罪者のような気持ち」と笑いながらも、どこか恐縮している様子が見て取れる。〈TIF〉というフェス自体、回を重ねるたびに彼女たちと切っても切り離せない存在になりつつあるようだ。
初日はDOLL FACTORYとSMILE GARDENの2ステージ。2日目はDOLL FACTORYの1ステージでライヴを行った。どのステージにも笑顔で登場し、全力のパフォーマンスを見せつけた。「ここに立てていることが嬉しい。感謝の気持ちを持って立ちました」とカミヤは語った通り、この3ステージは〈TIF〉を楽しみまっとうする気持ちでのハッピーなライヴだった。
そして3日目、5人体制最後のステージを迎えた。SKY STAGEには、ライヴを見逃さないように数時間前から待機しているお客さんもいる。ライヴ会場後方では、同じ事務所所属のBiSHのメンバー全員の姿もみえた。GANG PARADEに縁のある人たちがステージを見守るなか、静かにライヴはスタートした。
GANG PARADEが1曲目に選んだのは、最新シングルの「WE ARE the IDOL」。ユメノユア作詞の〈アイドルをやっていく決意〉を歌った曲である。湾岸スタジオの屋上に設置されたSKY STAGEは、後方遠くにフジテレビが見える。18時45分からはじまったライヴは青空が夕暮れに移り変わっていく時間帯でもあり、青空から夕暮れへと移ろっていく様は、彼女たちの歩みの流れを意識させるようだった。1曲目にもかかわらずヤママチミキは泣くのをこらえられない。すでに歌声が震えていた。
2曲目がはじまると、シグサワアオが「SKY STAGE、これが5人のGANG PARADE最後のステージになります。今日忘れられない最高の日にしましょう」と力強く叫んだ。楽曲は「Letter」。プラニメ時代にカミヤサキが作詞した、サビにおけるシグサワの歌声が印象的なメンバーにとってもファンにとっても思い入れの強い楽曲だ。
当たり前が崩れてく 些細なこと一瞬で
眺めていた景色は いつも色を変え 流れてく
大きな丸の真ん中で 小さな光なくなった
言いたい事も言えなくて 君は何思う?
誰もが気付つかない星 なんてつまらないのさ
そんなウソだらけの汚い世界なら
壊れた窓の向こうに 誰も知らない空に
どんな未来描く? 鮮やかな世界へ
(「Letter」)
あっという間に2曲が終わってしまった。残すはあと1曲のみ。これを歌い終われば、シグサワアオのGANG PARADEでの活動は終わる。最後の曲がはじまる前に、カミヤサキが「ちょっといいですか」と話しはじめた。
今日、このスカイステージをもちましてメンバー・シグサワアオが脱退します。私は正直シグサワアオのやめる理由である親の応援が十分に得られなかったということを、まったくもってごめんなさい理解できません。こんなことでやめてしまうのかって、ちょっと許せない気持ちでいっぱいです。本当にすいません。私はいまも、そしてこのあとの活動でもアオにやめたことを後悔させたいと思います。
お客さんたちの拍手のなか、泣きそうになるのをこらえてうなづくシグサワアオ。すんでのところで涙をこらえ、こわばった表情ながら笑顔でいようと全力で我慢する。
みなさんも今日この場所でやめることを後悔させようじゃないですか。最高にハッピーなところをみせつけて後悔させてやりましょうーー。
5人体制のGANG PARADEで最後に披露した曲は、カミヤサキが活動休止から復帰し5人体制で初めて歌った「Happy Lucky Kirakira Lucky」だった。
この曲は、いろいろなことがあるけどライヴは楽しいし、みんなといる時間は楽しいっていう気持ちを込めて作詞した曲で、ギャンパレはほんとにハッピーでラッキーでキラキラしてなきゃいけないし、みんなにとってそういう存在でありたいから。(ユメノユア)
「Happy Lucky Kirakira Lucky」は、ハッピーでラッキーでキラキラした存在になるんだという願望を込めてユメノユアが書いた楽曲だ。このステージが終わったらGANG PARADEは4人になってしまう。それでも、もっともっと輝かなきゃいけないんだ。そう自分たちに言い聞かせるように彼女たちは大きな声で歌い、叫んだ。
もはや彼女たちを動かしているのは、このまま止まるかという強い気持ちだった。落ちサビでマアヤが「笑ってーー」と叫んだ。お客さんたちは涙を流してステージを見つめている。「Happy Lucky Kirakira Lucky」は、お客さんたちにも向けられた曲でもあった。曲が鳴り終わり、カミヤに肩を叩かれ、最後はシグサワアオが挨拶をした。「本当にありがとうございました」。深いお辞儀をし、カミヤサキ、イヌカイマアヤ、ユメノユア、ヤママチミキ、シグサワアオ、5人でのGANG PARADEは416日の青春の日々を終えた。
ライヴが終わり、関係者出口に向かうシグサワアオはボロボロに泣いていた。その姿にファンたちは手を振ったり声をかけたりして見送っている。そこには引き止めたい気持ちも宙に浮かんでみえている。そうした気持ちを飲み込み、ファンたちは「ありがとう」と声をかける。涙を流すメンバーたち。こんなにも暖かくてこんなにも辛い脱退があるだろうか。やさしさと苦しみを同時に味わうような最後のステージ。それはシグサワアオのPOP〜GANG PARADEでの歩みを象徴しているような最後だった。
ライヴが終わり、楽屋でシグサワと少しだけ話をすることができた。
ファンのみんなは私に対していろんな感情を持ってくれていると思うんですけど、みんなが見たいのは笑顔だなと思って。うん…。 最後、みんなに笑っているところを見てほしかった。だから5人の中で誰よりも笑顔でいようと思った。最初、ステージからお客さんたちを見渡した時にみんな泣いていて。それを笑顔にしたくて…。 もちろん、私が卒業だからってことは関係なくGANG PARADEを見に来てくれている人たちもいるし、私も私の卒業式にはしたくなかった。5人のGANG PARADEを見てほしかった。最後が「Happy Lucky Kirakira Lucky」で終わるセトリっていうのはすごい意味があると思ったから…。ここでわたしがポロポロ涙を流したらみんなはもっと泣いちゃうから… 笑ってほしかったから。
途中から涙が止まらなくなっている。
この1年2ヶ月間、シグサワアオはまっすぐに前を向いて自分と対峙してきた。カミヤが活動休止していた4人のPOP時代、最年少ながらメンバーを勇気づけていたのはシグサワアオだった。イヌカイマアヤが辞めたい気持ちになったときに引き止めたのも、カミヤサキへの意見を代表して話したり、笑ってグループをなごませていたのもシグサワアオだった。そんな彼女が、いつのまにか得意のイラストさえ描けないくらいに追い込まれていた。脱退インタヴューで人に相談するのが得意じゃないということを語ったように、1人で悩み、考え、もがきながら出したのが脱退という答えだった。それは彼女なりのPOP〜GANG PARADEへのけじめだった。
脱退を発表したあと、他のメンバーもシグサワへの想いを曖昧にしたり、はぐらかしたりせず、もがいていた。名古屋のインストア・イベントの合間、楽屋でメンバーに取材をした際、シグサワ本人の前で納得していないという想いをそれぞれが吐き出した。それに対してシグサワも耳を傾け、涙をこらえながらも最後までGANG PARADEを全うした。最後の最後までシグサワアオはシグサワアオだった。青春担当というキャッチフレーズで活動してきたように、シグサワアオはこのグループにたくさんの青春を残した。最後にシグサワアオは大粒の涙を流しながら4人のメッセージを語った。
最後の最後まで怒ってくれて、目の前で「後悔させる」って言ってくれて、ありがとう。私がいなくなっても当たり前に止まらないって言ってくれる人たちと1年近く一緒にこの世界にいれてよかった。楽なことだけじゃなかったし、楽しいことだけじゃなかった。特にサキちゃんいない4人の時代は本当にいろいろあって、その時思ったこととかあったことは絶対に忘れない。… 私は忘れない。1年間とちょっと本当にありがとうございました。ずっと応援しています。
4人でのGANG PARADE、第2章のスタート
〈TIF〉から1週間後の8月11日、4人体制のGANG PARADE初のライヴが吉祥寺SEATAで行われた。じゃんけんで出演順番を決めるという一風変わった方法のなか、トリを選んだGANG PARADE。少しでも練習と確認の時間を取りたかったのだろう。緊張の面持ちでステージに登場した4人。肩を組み円陣を作り、少し間を追いて流れ出したのは「Happy Lucky Kirakira Lucky」のイントロだった。
この前のライヴが「Happy Lucky Kirakira Lucky」で終わったので、4人体制でのGANG PARADEも「Happy Lucky Kirakira Lucky」ではじめようと思って。最後にやった「QUEEN OF POP」は、大変でも前に進むっていう曲だから、絶対最後に持っていこうと思ってセットリストを決めました。8月7日の想いをこめつつ、次に迎えたらなと思って。
GANG PARADEは、10月から初の東名阪ワンマン・ツアーを開催する。10月2日の名古屋・新栄DAYTRIVEのライヴでは新メンバーを発表、新体制でのライヴを行う予定だ。すでに名古屋、大阪のチケットは完売。11月13日(日)の新宿BLAZEが、これからのGANG PARADEを占う試金石になるといえるだろう。その直前には2ndアルバムも発表され、新生GANG PARADEがひとつの形となって見えてくるにちがいない。GANG PARADEの第2章はすでに動き出している。そして、そこにはシグサワアオが残した416日の青春の日々も消えることなく流れ続けている。(text by 西澤裕郎)
これまでの記事もチェックしておこう!!
シグサワアオ脱退インタヴュー
>>>GANG PARADE、シグサワアオ脱退インタヴュー
POPのデビュー舞台となった200km対抗駅伝をレポート
>>>BiSHとPOPの200km対抗駅伝はなにを生み出したのか?
はじめてのPOPイタンヴュー
>>>POP、デビュー・アルバムを配信スタート&メンバー初インタヴュー
カミヤサキ活動休止中の4ヶ月を経た4人へのインタヴュー
>>>「100kmマラソン前に4人で過ごしたPOPを振り返る」インタヴュー
密着ドキュメンタリー・レポート
>>>4人で過ごしたPOPの4ヶ月、カミヤサキ100kmマラソン
初のメンバー個別インタヴュー
>>>カミヤサキ編「今は1番目立ちたいし、棟梁みたいな感じでいたい」
>>>イヌカイマアヤ編「続けることで見えてくることもあるのかなって」
>>>ユメノユア編「POPは自分の中ですごい大事な存在だから」
>>>ヤママチミキ編「プラニメがあったからこそ、POPができた」
>>>シグサワアオ編「人生の中での第三次性徴期っていうのかな」
POPの音源をまとめてチェック!!
GANG PARADE改名後、初シングルを配信スタート!
GANG PARADE / WE ARE the IDOL
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV、AAC、mp3
【配信価格】
単曲 200円(税込) / まとめ 800円(税込)
【Track List】
1. WE ARE the IDOL
2. これはきっとaventure
3. WE ARE the IDOL(inst)
4. これはきっとaventure(inst)
POPの2ndシングルを配信スタート!
POP / QUEEN OF POP
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV、AAC、mp3
【配信価格】
単曲 200円(税込) / まとめ 800円(税込)
【Track List】
1. QUEEN OF POP
2. 走る!!
3. QUEEN OF POP(inst)
4. 走る!!(inst)
POPの1stシングルを配信スタート!
POP / Happy Lucky Kirakira Lucky
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV、AAC、mp3 単曲 200円 / まとめ 800円
【Track List】
1. Happy Lucky Kirakira Lucky
2. Alarm
3. Happy Lucky Kirakira Lucky(inst)
4. Alarm(inst)
POP-Period Of Plastic2Mercy-の1stアルバム、堂々のリリース!!
POP / P.O.P
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV、AAC、mp3 単曲 200円 / まとめ 2,000円
【Track List】
1. Plastic 2 mercy(POP ver.)
2. pretty pretty good
3. fly away
4. who am I ?
5. UNIT(POP ver.)
6. NEON
7. Lonely lonely lonely
8. 3rd FLOOR BOYFRIEND
9. Daydream
10. Letter
プラニメ時代のシングルもチェック!!
>>>カミヤサキ(プラニメ)へのインタビューはこちら
>>>ミズタマリ(プラニメ)へのインタビューはこちら
LIVE SCHEDULE
Barely Last TOUR
■名古屋公演
2016年10月2日(日)@新栄DAYTRIVE
時間 : Open 17:00 / Start 18:00
料金 : スタンディング 前売¥3,000(税込) 入場時にドリンク代別途必要
※女性キャッシュバックあり
プレイガイド : イープラス(PC&携帯)
お問い合わせ : 新栄DAYTRIVE 052-241-5019
■大阪公演
2016年10月16日(日)@club MERCURY
時間 : Open 17:00 / Start 18:00
料金 : スタンディング 前売¥3,000(税込) 入場時にドリンク代別途必要
※女性キャッシュバックあり
※リフト禁止
プレイガイド : イープラス(PC&携帯)
お問い合わせ : club MERCURY 06-6263-0027
■東京公演
2016年11月13日(日)@新宿BLAZE
時間 : Open 16:00 / Start 17:00
料金 : スタンディング 前売¥3,000(税込) 入場時にドリンク代別途必要
※会場内に女性専用エリアを設けます。
プレイガイド : イープラス(PC&携帯)
お問い合わせ : KM MUSIC 045-201-9999
PROFILE
GANG PARADE
2014年にプラニメとして活動開始。2015年、カミヤサキを中心にイヌカイマアヤ、ヤママチミキ、シグサワアオ、ユメノユアの4名を新メンバーとして迎え、ユニット名をプラニメから“POP”(ピーオーピー)に改名。ロック色の強かったプラニメ時代の楽曲から、POPとしての活動を経てアイドル然とした楽曲へと路線を変更。2016年6月、グループ名をGANG PARADEに再度改名。バリエーションに富んだ活動を行う。TIF2016をもってシグサワアオが脱退。