未知のモノに出会った時、人はとまどいを覚える。そのとまどいを克服するために名前を与え、ジャンルという棚に整理し系統化する。自分の尺度で管理することで安心を覚えるのだ。だとしたら、あなたはSU:の音楽をどのように自分の棚に落とし込むであろう?
SU:は、名古屋を拠点に活動する3人組ユニットである。ポスト・J・DILLA世代の新鋭と言われるような細やかなトラック作りと、それを演奏する際の融和感が特徴的なユニットだ。音源主体ではなく、ライヴ活動も積極的に行っており、一見の客は彼らの音楽への対処方法を模索することとなる。それだけ、日本の音楽シーンでは得意な3人組ということである。
コンポーザーのSU+3を主体に、ベースとドラムがリアル・タイムで重なり、肉体性と偶然性が付加される。ライヴと音源で印象が異なるのは当然だが、構築されたインストゥルメンタルなトラックを、ライヴで体現しようとする彼らの場合、それは一層顕著である。SU:をジャンルで区分できない理由はそこにあり、なおさらのこと聴き手を惹きつける。
型にはめて安心するのではなく、とまどいを掘り下げた時、音楽はより深く理解できるのではないか。そんな感慨をSU:の楽曲はもたらしてくれる。
インタビュー&文 : 西澤裕郎
→「Deep」のフリー・ダウンロードはこちら (期間 : 7/30〜8/6)
INTERVIEW
—東京でのライヴを拝見させていただきました。ライヴと音源の印象が大分異なるよう感じましたが、それぞれ状況に対応させて、音作りや演奏スタイルを変えているのでしょうか?
Su+3(以下、S) : そうですね、音源とライヴは区別しています。僕は、主にサンプラーとシンセ(FADER BOARD)を担当していますが、音源には入っているけれど、ライヴでは入れて無い音があったり、その日の気分でやっています。他のメンバーも、ライヴでは音源と違うフレーズを演奏しているので、その日の気分で演奏していると思います。音源をそのまま演奏する事はもちろん可能なのですが、演奏している側としては、それではつまらないので、ライヴは自由な感じでやっています。
—SU:の楽曲は、どのように作られているのでしょう?
S : 僕が作ったほとんど完成状態の曲をみんなに聞いてもらって、各担当にパートを考えてもらっています。シンセのフレーズやドラム・パターンから曲を作っていくので、音作りから曲へ持って行く感じが多いですね。
—メンバーの名前に、数字がついていたりしてユニークだと思いました。何か意味が込められているのでしょうか?
S : 特に意味は無いのですが、本名を出すのが恥ずかしいので・・・ 。名前やアダ名を変換したら、たまたま数字が付いていただけなのですが、自分も最近気がつきました(笑)
—recommuniでも記事を書いているJJ(Limited Express (has gone?)がオーナーを務めるJUNK Lab Recordsからリリースされています。どのような経緯でJJと知り合い、リリースに至ったのでしょう?
S : JJくんとは、『Rank e.p.』をリリースするまで、よく一緒にライヴもやっていたし、JJくんがレーベルを始める前からの付き合いです。元々、今回の作品は他のレーベルからリリースの話があったのですが、無くなってしまって、たまたまライヴを見に来ていたJJくんにその話をしたら「うちから出す? 」という話になりました。SU:の事も理解してくれているので、お任せしました。
—ポストJ Dillaと評されるSU:ですが、そのことに対してどのようにお考えですか?
S : J Dillaは影響も受けているし大好きなので、すごくうれしいです。でも特に、J Dillaみたいな音を造ろうと意識はしていないので、自然に影響が出ちゃっているんじゃないかと思います。人と違う事をやらなきゃ単純におもしろくないので、オリジナリティはすごく大事にしていますよ。ただあんまり凝りすぎないようにはしています。
—東京においても、SU:のようなバンドはあまり見受けられません。目標としている、あるいはモデルとなったバンドやアーティストはいらっしゃいますか?
S : 特に目標としているアーティストはいないのですが、音楽的には、デリック・メイ等のテクノ、J Dilla等のヒップホップを始めとするデトロイト系の影響はかなりあると思います。あと、表現的なところでは、PiL、THIS HEAT、Pop Group等のポスト・パンク系の影響も受けています。Warp、R&S、ライジング・ハイのテクノ系も好きですよ。
—SU:の音楽に、何かメッセージはありますか?
S : 聞いてくれた人がそれぞれ感じとってくれればいいと思っているので、特にメッセージは無いですね。
—トラックに、サンプリングのフレーズがループして乗っています。トラックと言葉の関係をどのようにお考えですか? 例えば、歌やラップを乗せるという手法をなぜ選ばなかったのでしょう?
S:トラックと言葉の関係はすごく大事だと思います。実際、今回の作品はゲストを何人か入れる予定だったのですが、今作のトラックに合っていなかったので、結局サンプリングを使いました。
—名古屋という土地は、あなたたちの音楽に何か影響をもたらしていると思いますか?
S : 特に無いと思います。音楽シーン的にも別の所にいるし、あまり名古屋のバンドと一緒に何かするという事が無いので、名古屋のバンドって意識も無いですね。影響を受けてないからこそ、今のサウンドが出せていると思います。
—今回の作品で試みた手法以外で、新しく挑戦してみたいことがあれば教えて下さい。
S : 個人的にはソウルやR&Bも好きなので、歌物もやってみたいですね、前作と間隔が空いてしまったので、次の作品はもっと早めにリリースしたいですね。
SU:が気になった人はマスト! asana配信開始
スワール / asana
アサナ、3年ぶり3枚目のフル・アルバム。「スワール」とはインドネシア語で「声」の意。ガムラン、カリンバ、スチール・パン、ウクレレ、トランペットなど多彩な音色で紡がれるスケール感溢れるアンサンブルに、ゲスト・ヴォーカルたちが「声」を添えた。ボサノヴァ、ポスト・ロック、ジャズ、アフロビート、そしてアサナのルーツでもあるバリ島音楽を背景に、レイド・バックでサウダージ、トライバルでリラクシンな傑作、ここに完成。
クプ・クプ / asana
マイス・パレードやディラン・グループら海外ポスト・ロック勢に通じる先進的な音楽性と、アジア的な叙情性を見事に融合させた、日本におけるポスト・ロック黎明期の金字塔。アートワークは、トータス等の作品で知られるアンディー・ミューラーが手掛けた。リリース当時、各所で驚きと絶賛をもって迎えられた奇跡のデビュー・アルバムにして2000年代日本を代表する名盤が、待望の再発!
JUNK Lab Records カタログ
PARADISE+ / MY DISCO
オーストラリアはメルボルンにて、友人同士であった、John Andrews、 Rohan Sebastian RebeiroとBenjamin Wayne Andrewsにより結成。MOGWAIやBATTLES等と共演し、現在本国オーストラリアでは1000人の会場をソールド・アウトする人気を誇っている。本作はプロデューサーにスティーブ・アルビニを迎えてレコーディングされた、バンド史上最も繊 細かつ猛々しい、反復と彩りに溢れた完成度の高い作品。
LIVE SCHEDULE
- 8月30日(日)@中野CLUB HEAVY SICK ZERO
w / Elf Tranzporter (from Australia) / 神門 (半袖バイブスレコード) / Metamorforce / キリコ(術ノ穴/AZUKI) / DOTAMA(術ノ穴) / Kaigen (Curse Ov Dialect/Mush) / Geskia!(flau/術ノ穴) / dr.pulse / YUMIKO(噛ませ猫、RHTHMCRUISE) / UR/AN(噛ませ猫) / YEW(KITAKANTO SKILLZ) / Sho/hei(術ノ穴) / cubism
- 9月21日(月)、22日(火)@岐阜県揖斐高原貝月スキー場
- 9月27日(日))@名古屋 cafe domina
w / kashiwa daisuke / 蓮沼執太チーム / k!?h!g@!
- 10月3日(土)@下北沢 BASEMENTBAR<『Re.PEAT』レコ発>
- 10月10〜12日 @京都livehouse nano
LINK
- SU: web http://www.su-music.net
- JUNK Lab Records http://www.junklabrecords.com/
PROFILE
SU:
from名古屋。コンポーザーのSu+3(Sampler、FaderBoard) 、masa44 (Bass) 、01 (Drum)からなる3ピース。06年にtoeの美濃隆章をマスタリング・エンジニアに迎え1st EP『Rank e.p.』を発表。その後、メンバー・チェンジ等とともに音楽性も変化。現在は、J.ディラ以降のトラック・メイカーのトレンドである、コズミックな音色のシンセを随所に取り入れたトラックに、ボーカル・サンプリングや生演奏の挿入を試みたスタイルを取っている。09年8月、待望の1st ALBUM『Re.PEAT』リリース。