ゆるめるモ!、ナカコー提供曲のハイレゾを先行配信!! プロデューサー、田家大知と読み解く超大作2ndアルバム
脱力系ニューウェイヴ・アイドル・グループ、ゆるめるモ! が2nd フル・アルバム『YOU ARE THE WORLD』をリリース! 今作は“君がいない世界は世界じゃない”をコンセプトにニューウェイヴに加え、ドリルンベース、ハード・ミニマルテクノ、80年代ポップ、トロピカル・パンク、オルタナ、ハードコア・パンク、エレクトロなど、なんでもありの17曲を収録。楽曲制作陣はお馴染みハシダカズマ(箱庭の室内楽)をはじめ、ナカコー(LAMA、Nyantora、ex SUPERCAR)、後藤まりこ、POLYSICSハヤシヒロユキ、ミドリカワ書房など超豪華! OTOTOYでは先行予約を開始、1曲先行DLできちゃいます! ぜひ、プロデューサー田家大知のインタヴューと共に『YOU ARE THE WORLD』をお楽しみください!
超大作の2ndアルバムをハイレゾ配信!!
ゆるめるモ! / YOU ARE THE WORLD(24bit/48kHz)
【Track List】
1. モモモモモモ! 世世世世世世!
作詞 : 小林愛 作曲 : 田家大知・松坂康司 編曲 : 松坂康司
2. 転がれ‼︎
作詞 : 小林愛 作曲・編曲 : 松坂康司
3. Hamidasumo!
作詞・作曲・編曲 : ハヤシヒロユキ(POLYSICS)
4. 1! 2! かんふー!
作詞 : 田家大知・小林愛 作曲 : 田家大知・松坂康司 編曲 : 松坂康司
5. 難
作詞 : 小林愛 作曲・編曲 : Tamptin
6. 不意打て‼︎
作詞・作曲・編曲:ハヤシヒロユキ(POLYSICS)
7. 眠たいCITY vs 読書日記
作詞 : 小林愛 作曲・編曲 : マモル(nhhmbase)
8. 波がない日
作詞 : 小林愛 作曲・編曲 : 大星徹
9. Refresh Your Jewellery Box
作詞 : 小林愛 作曲 : HALIFANIE 編曲 : ゆるめるモ!バックバンド
10. KAWAIIハードコア銀河
作詞 : 小林愛 作曲・編曲:田家大知
11. よいよい
作詞 : 小林愛 作曲・編曲 : ハシダカズマ(箱庭の室内楽)
12. id アイドル
作詞・作曲 : 後藤まりこ 編曲 : 後藤まりこ・ハシダカズマ(箱庭の室内楽)
13. 夢なんて
作詞・作曲 : 緑川伸一 編曲 : ハシダカズマ(箱庭の室内楽)
14. 私へ
作詞 : 小林愛 作曲・編曲 : 大星徹
15. もっとも美しいもの
作詞 : 小林愛 作曲・編曲 : Koji Nakamura
16. NNN
作詞 : 小林愛 作曲・編曲 : ハシダカズマ(箱庭の室内楽)
17. Only You
作詞 : 小林愛 作曲 : 田家大知・ハシダカズマ(箱庭の室内楽) 編曲 : ハシダカズマ(箱庭の室内楽)
【配信価格】
単曲 250円 / まとめ購入 2,800円
【配信形態】
FLAC、ALAC、WAV(24bit/48kHz)
【OTOTOY限定特典】
■まとめ購入いただくと、Web歌詞ブックレットが特典としてつきます。
INTERVIEW : 田家大知(ゆるめるモ!・プロデューサー)
アイドル・シーンがおもしろいのは、1人の天才がシーンを引っ張るようなアーティスト主導主義ではなくて、それぞれの役割を持ったスタッフたちがチームを作り、各々の強みを活かして1つの作品を作っていくところにある。もちろん、強力なプレイヤーをたくさん集めればいいというわけでなくて、バランスだったりタイミングも重要で、そういう意味では会社などの組織にも近いものがある。
ゆるめるモ! は、プロデューサーの田家大知がなんのノウハウもないなかで、路上スカウトでメンバーを集めてはじめたグループだ。メンバーの卒業・加入もありつつ、アレンジャー、マネージャーなど信頼できるパートナーたちをみつけ、本作は完全自主制作として完成した。しかも、ナカコー、ハヤシヒロユキ、ミドリカワ書房、後藤まりこまで参加している。こんな自主制作のアルバムがあっただろうか? これは、2015年最先端のクリエイティブの形だ。音楽が好きな人には絶対に聴いてほしいと切に願う。
インタヴュー&文 : 西澤裕郎
いろんな人を巻き込めるコズミック感と破壊力のある曲がほしくて作った
ーー『YOU ARE THE WORLD』、すごいアルバムですね。田家さんのやりたいことが詰まっているというか、ニューウェイヴやノーウェイヴ色もあるんだけど、そこに負けないポップさがついてきていて、聴きやすさもあって、素晴らしい作品だと思いました。
田家大知(以下、田家) : ありがとうございます(笑)。1stアルバム『Unforgettable Final Odyssey』でゆるめるモ! の姿勢みたいなものを提示することができたので、今回は1曲1曲の深みを詰めていきたいと思っていたんです。もともと「Only You」を今回のアルバムの核にしようと思っていて。ボアダムスとマイ・ブラッディ・ヴァレンタインを混ぜたような、ロック・フェスとかでもいろんな人を巻き込めるコズミック感と破壊力のある曲がほしくて作ったんです。
ーーアルバムの核になる曲を最後に持ってくるあたり、田家さんらしいですよね。
田家 : この曲を中間に置いちゃうと、そっちの世界に行き過ぎて戻ってきようがなくなるというか。ライヴでいう本編の最後に大団円を迎えたほうが、アルバムとしていいんじゃないかなと思ったんです。ライヴで例えると、「NNN」で本編が終わり、最後に「Only You」で照明が全部ついて、わーっていう終わるような感じを見せたかったんですね。
ーーそもそも「Only You」は、どういうアイデアと構想のもとで、できた曲なんでしょう。
田家 : 1999年の〈FUJI ROCK FESTIVAL〉におけるボアダムスのライヴがすさまじい宗教的体験で、いつかゆるめるモ! でもやりたいと思っていたんです。ただ、いきなりやってもお客さんには伝わらないから、「SWEET ESCAPE」みたいなクラウト・ロックをやって、「たびのしたく」みたいなメロウな大作をやって、ようやく今のタイミングなのかなって。「SWEET ESCAPE」でハシダさんやJOJO広重さんにギターでノイズの世界感をのっけってもらったときに、ハイトーンで伸びのあるサビにマイブラっぽい単音のギターリフをのせたら絶対にかっこいいぞと思ったんですよね。曲のイメージもできたんで、全体的な構成とかをハシダさんに細かいオーダーを出して、そこにハシダさんがかっこいいサビを考えてくれました。
ーーメロディ案は田家さんが歌って、それを骨組みに構築していったんですか?
田家 : 最初にイメージ伝えるときはそうですね。で、そのときに歌ったAメロを乗っけてトラックを作ってもらって、そのトラックを聴いて浮かんだBメロを僕が歌って付け加えてもらって。サビと大サビはハシダさんです。リズムもメロディもどっちも重要だったんですけど、踊れるリズムにマイブラっぽいポップで切ないメロディがくるっていうのが重要で。ゆるめるモ! だからこそ、歌があったほうが”らしさ”が出るかなと思ったんです。
ピンク色のでっかい風船がライヴ中に舞うような感じになりました
ーー今回は、外部のミュージシャンの方からも多く楽曲提供を受けていますよね。「id アイドル」は後藤まりこさんの作曲ですが、Aメロ部分がまさに後藤さんらしいですよね。そのあとでポップな展開になっていくのがおもしろい部分ですけど、この曲は田家さんが結構、指示をされたんでしょうか。
田家 : そうですね。1曲まるまる書きなおしてもらったんです。最初に書いてもらった曲もポップでよかったんですけど、なにかが足りないですって伝えて、後藤さんから再度上がってきた曲が「id アイドル」のすごくラフなデモだったんですけど、「これはいける!!」と思って、完成させてくださいって言いました。ただ、後藤さんはアレンジャーではないので、ハシダさんにフレーミング・リップス感、ブロークン・ソーシャル・シーン感、USインディーっぽさを足すようにしてほしいって細かく言ったら、スマッシング・パンプキンズっぽさも足されてきて(笑)。90年代っぽい感じで、フレーミング・リップスっぽいでっかい風船がライヴ中に舞うような感じになりました。
ーーたしかに大サビの前はスマパンっぽいですよね(笑)。さらにその後に、大サビでキャッチーなメロディがくるのがぐっときますね。
田家 : Aメロ、Bメロだけだったら、オルタナ色が強くなってしまうので、そこにキラキラ感が欲しくて。なので、サビも結構直してもらいましたね。
ーー直してもらう時の言い方って、もっとキラキラ感をみたいな言い方なんですか?
田家 : 具体的に言う時もありますし、サビがあっさりしすぎてるので、もうちょっと長くしてくださいとか、真ん中に詰めるか、おしりに詰めるかどっちかにしてくださいってことは言いましたね。そしたら膨らませてくれて、サビが不穏なAメロ、Bメロと等しく張り合えるなと思って、僭越ながらオッケーを出させていただいたって感じです。
ーーそもそも、最初に曲を頼んだ時はリファレンスみたいなのはあったんですか?
田家 : 今回、後藤さんから書きたいってご連絡をいただいて、最初はキャッチーで大衆的な曲をお願いしますって言ったんですけど、僕の伝え方が言葉足らずで、もう少しアクの強さがほしくて。後藤まりこさんが書いてくれた曲で、これじゃあ癖がなさすぎるかなと。キャッチー、キャッチー言っちゃったんですけど、キャッチーから1回離れてしまって、腰にクル感じにしてくださいって言ったら、これをいただいたんです。
ーー見学もさせていただきましたが、ナカコーさんの曲はどれだけ自由度を持って作ったんでしょう?
田家 : ナカコーさんとお会いして、こちらの意図、希望を伝えました。スーパーカーの踊れてポップな曲、具体的に言うと「WHITE SURF style 5.」「YUMEGIWA LAST BOY」「FAIRWAY」とか、そういう曲を作ってくださいと伝えて上がってきたのが「もっとも美しいもの」だったんです。すごくかっこよくて、僕がこれでどうこう言うものじゃないくらい作品として仕上がってるなって思ったので、すべてお任せで、直しはないです。
ーーまさに『HIGHVISION』期のスーパーカーを想起する曲で、ナカコーさんヴァージョンもリリースして欲しいくらい素晴らしかったです。レコーディング時、田家さんを見ていたら、迷いがないディレクションをするんだなと思いました。
田家 : 吐息のところですよね(※一番はじめのレコーディングで、小説の1音目をメンバー全員の吐息を重ねようというアイデアが出た)。あれでいこうと思ったんですけど、1回辞めたんですよね。吐息がみんなそんな得意じゃなかったっていうのと、無理してる感が出ちゃって。 要はスキルが足りなくて、違うかなと思ったんです。それよりも、フルカワミキさん的なフラットで平熱な感じで歌ったほうがいいんじゃないかと思って録り直したんです。最初、カヒミカリィさんみたいにウィスパーっぽく歌ってって言っていたんですけど、全部やめて、そんなに抑揚つけなくていいから、メロディに音符を置きにいくような感じで歌ってと言って録ったんです。
ーー声がダブって聴こえるのは重ねているんですか?
田家 : あれは同じ人が2回歌って重ねてるんです。それでフワンフワン感を出して、スペーシーな感じにしました。微妙なズレがあるんで、ああいった感じに聴こえるんですよね。ナカコーさんの仮歌が音を重ねまくっていて、それが再現できないなと思ってやっている中で、ダブルでやってディレイをかけるのが1番いいのかなというところに行き着いたんです。
ーーレコーディングとミックスに関しては、ナカコーさんからなにか指示はあったんですか。
田家 : 歌に関しては何も指示はなかったですけど、エンジニアさんがミックスしたトラックに対して、かなり細かく指示がありましたね。もっとここを大きくしてくださいとか、これは左右に振らない方がいいと思うとか、そういうやりとりが3回くらいありましたね。
ーーそれによってサウンドの印象は変わりました?
田家 : 変わりました。深い音がいろんなところで鳴っている、サイケの感じが出ているというか。
「もっとも美しいもの」レコーディング潜入レポ
9月17日(木)、都内某所で行われていたゆるめるモ! のレコーディングに潜入した。この日のレコーディングは、ナカコーの作曲・編曲による「もっとも美しいもの」。歌入れ前のデモを聴かせてもらうと、まさに中期〜後期スーパーカーのエレクトロなサウンド!? ゆるめるモ! への楽曲提供というところで、ナカコー流のポップさが化学変化を起こしたのではないかと、このコラボレーションの実現に祝杯をあげたくなった。とはいえ、メンバーの大半は、スーパーカーにリアルタイムで触れていない子が多く、あまりピンときていない様子。そんななか、スーパーカー好きを公言している、ようなぴがリード・ヴォーカルとして1番手で歌入れをした。プロデューサーの田家は、大量の炭酸水を飲みながら、細かい指示を出していく。ウィスパーで吐息を吐くようにという指示に苦戦しながらも、1時間半近くかけてようなぴの歌入れが終わると、交代で一人ずつレコーディング・ブースに入っていく。皆、難しそうにしているが、真剣な面持ちで何回も撮り直していく。もね、けちょん、ちーぼう、あの、しふぉんという順番で一通りレコーディングが終わったのは、20時過ぎだった。12時から始めたレコーディングは、すでに8時間が過ぎていた。あまり歌ったことがない曲だったから難しかったと、それぞれ話していた本曲。果たして、どのような仕上がりになっているかは、ぜひ聴いてお確かめいただきたい。
ーー「不意打て!!」は、POLYSICSのハヤシさんから、かなり細かい指示があったそうですね。
田家 : そもそも、ハヤシさんがゆるめるモ! で次に曲を作るなら、こういう感じがいいと言ってくれていて。「ぜひそのデモを聴かせてください」って聴いたら、めっちゃかっこよくて。これはすごいと思って、そのまま完成に向かって進んでくださいってできたのが「不意打て!!」です。
ーーレコーディングでは、ハヤシさんの指示を田家さんがメンバーに伝えていましたよね。
田家 : 1回本気でレコーディングしたものをハヤシさんに送って、ハヤシさんの要望と意図にそって細かく直しました。
こいつら頭おかしいんだぞ、ぶっち切ってるんだぞって頭から出したくて
ーーそういう外部の方の楽曲もありつつ、1曲目、2曲目の松坂康司さんの楽曲がすごく印象的だなと思って。ゆるめるモ! のノー・ウェイヴ感とかオルタナ感とは違う、手数の多い叙情的なピアノの旋律が気持ちいいというか。
田家 : ちょっとへんてこさはありながらも、いろんな人をガシっと掴むような大衆性もある曲になってますよね。1曲目「モモモモモモ! 世世世世世世!」は、松坂くんテイストをすごくいい感じにプラスしてくれて。最初、僕のメロディのイメージをそのまま伝えたら、松坂くんが「サビはシリアスな方がかっこいいと思う」って提案してくれて、それでできたのがサビメロで、僕もこっちの方がいいと思ったんです。当初はスクエアプッシャーとかジェフ・ミルズとか、90年代テクノとかドラムン・ベースみたいなものが幕開けにあって、ハード・ミニマルみたいな感じでひたすらに踊らせて、かっこいい歌回しのメロディが乗るイメージだったんですけど、そこに泣きの切なさを足してくれて。最初は「ゆるトロ2」みたいな感じで、ただただ盛り上げるだけの曲にしようと思っていたんですけど、「ゆるトロ(slo-モ!)」とは違うシリアスさもあったほうがいいんじゃないのという話になり、たしかに! と思ったんです。
ーー「ゆるトロ(slo-モ!)」みたいなSE感もあって、アルバムの導入として、すごく期待感が増すオープニングですよね。
田家 : 今作は狂った感のある「Only You」で締めることを決めていたので、こいつら頭おかしいんだぞ、ぶっち切ってるんだぞってことを頭から出したくて。そしたら、ドリルン・ベースだろって(笑)。松坂くんはドリルン・ベースっていうジャンルも知らなかったんですけど、スクエアプッシャーとかエイフェックス・ツインとか、その辺の音源をいろいろ送ったら見事に格好よくしてくれて。テクノばかり聴いている人にオーダーしたら、まんま90年代っぽいのが出てきて、逆につまらないと思うんですよ。聴いたことがない人が作ってるからこそ、ちょっとズレていて、新しい曲が出てきたんだと思います。
ーー「転がれ!!」に関してはどんなオーダーをしたんでしょう。
田家 : アイドル・ファンがみんなで盛り上がれるようなサビの曲を作りたいと思って、松坂くんにオーダーしました。それに対して「こんなのどうですか?」と提案してきた曲のメロディに可能性があると思ったんですけど、アレンジが普通だったんですよね。だったら思い切って80年代ポップスみたいにしようと思って、何年か前のパッション・ピットみたいな感じのキラキラした感じを目指して。a-haみたいなキラキラさとシンセの80年代感はそのままで、綺麗なロックに仕上げるために、参考音源をいろいろ送りました。イントロは80年代感のある感じにしてほしかったので、a-haとかヴァン・ヘイレンとかの曲を送って、松坂くんなりに提案してきてくれたのがこのイントロですね。
ーー曲によって田家さんのイメージ像がはっきりしてるんですね。
田家 : そうなんですよね。「よいよい」は、邦ロック好きのキッズたちが初見で暴れられるような曲がほしくて、おしゃれダンス・ロック感を混ぜた曲を作りたいって、ハシダさんに相談したんです。そもそもは、ヴァンパイア・ウィークエンドみたいなトロピカル・パンクな曲がほしくて、ちょっとナードっぽい人たちをおしゃれに踊らせてみましたよって曲をお願いしたんですけど、そこにサークル・モッシュするような分かりやすいサビがほしいとお願いしたらハマって。これまでの道筋でカウベル曲の下地もできていたんで、カウベルもアレンジに加えてくれて。最初のデモでは、最後の展開はなかったんですが、ここにみんなが踊れるようなCメロ的展開を足してほしいと頼んだら、最高のお祭りっぽいメロディを付けてくれて。そこに小林愛ちゃんが「よいよい」って歌詞を考えてくれて、さらにレコーディングで合いの手がほしいねってエンジニアさんと話しているなかで「さーよいよい!」みたいなのを入れたら、お囃子みたいな感じに仕上がったんです。
ーーハシダさんは、こういうポップな曲も作れるんだってびっくりしました(笑)。「KAWAIIハードコア銀河」は、田家さんによる楽曲ですね。
田家 : 初期ビースティ・ボーイズのハードコアぽい感じとか、マイナー・スレットみたいな高速ハードコアみたいな曲がほしくて。でも、ポップさがないとゆるめるモ! じゃないので、ちゃんとサビはポップに仕上げて、三島さん(cinema staff)もすごいかっこいいベース弾いてくれてできた曲ですね。
暗闇の中で松明を焚きながら原始人たちによる宗教儀式をしているイメージ
ーーこの「KAWAIIハードコア銀河」以降、アルバムの流れがガラっと変わっていくような感じがしますよね。
田家 : それまでにポップな方向に耳を広げておいて、ちょっとシリアスな方に転換していったほうがギャップがあっていいかなと思って。「id アイドル」のイントロは激しいんですけど、終わりはすごく切ない気持ちになるんですよね。そこに更に泣かせようと思って「夢なんて」を持ってきて、さらにこれが今作で1番泣ける曲だと思うんですけど「私へ」が来て、「もっとも美しいもの」で美しい景色を見せて、「NNN」で酔わせて甘い眠りに誘い、「Only You」でぶち上げてしまえみたいな感じです。
ーー後半にいくごとに、物語が動いてく感じがしますね。
田家 : 人の1日みたいな感じで、朝起きて、昼は活動するぞって感じがあって、だんだん夕暮れに近づいて、夜になっていくようなイメージになってます。「Only You」は、暗闇の中で松明を焚きながら原始人たちによる宗教儀式をしているイメージなんですけど、夕暮れ感っていうか切なさは「私へ」っていう曲に詰まってます。アルバム・タイトルの『YOU ARE THE WORLD』って、「君なしの世界は世界じゃない」「 君のいる世界は素晴らしいし、君 = 世界だよ」って意味を込めていて。「逃げろ!!」でもそうですけど、ゆるめるモ! が一貫してやってきたのは、自分を大切にしなさいってことなんです。「私へ」は自分に感謝する曲で、アルバムを聴いた人が「自分に対してありがとう」ってなればいいなって曲なんです。
ーー〈私でいてくれてありがとう〉ってラインは、じーんときますよね。
田家 : 小林愛ちゃんは狂気みたいなものを持っているんですよね。だから、一筋縄ではいかないというか、弱者に優しい。マイノリティの気持ちが分かるというか、生き辛さを分かってる人なんで、そういう人に寄り添うっていう意味でこういう感じの歌詞が生まれるんだと思います。
ーー「私へ」は、「Only You」とともに、もう1つ心臓的な曲になってますよね。
田家 : そうですね。サウンド的には電気グルーヴとアンダー・ワールドを組み合わせたイメージです(笑)。フェスでイントロかかった時に泣かせる曲が欲しいなと思って、大星徹くんはこういうの全然聴かないって言ってたんですけど、彼も器用なので、こっちが意図を伝えたらいい感じにメロウに仕上げてくれて、愛ちゃんがそれに乗る泣ける詞を書いてくれたって感じですかね。
ーーいつもいいですけど、今作の小林愛さんの歌詞はアルバムを体現しているものが多いですよね。
田家 : 愛ちゃんには途中から『YOU ARE THE WORLD』っていうコンセプトを伝えたんですけど、「よいよい」の歌詞に〈音楽は皆を主役にしなくちゃ〉〈音楽が鳴り出すたびに あっというま 自分がこの世の真ん中なんだ〉っていうラインがあって、見事にこのアルバムのコンセプトを言い当てていて、これはどんどん繋がってくぞと思いましたね。
ーー小林愛さん自身も、窮屈な感じを抱えてる方なんでしょうか。
田家 : うえーいとかリア充とか程遠い人で。ゆるめるモ! のメンバーもそういう子たちだし、すごく気持ちが分かるっていうか、歌詞に関してもゆるめるモ! のメンバーを通して見える世界を書いてくれていると思います。常日頃からメンバーに「これは君たちの歌だ。人からもらった歌ではなく、自分たちの歌だと思って歌いなさい」って言っているんです。みんながいなかったらこの詞は生まれてないんだよって言っていたら、メンバーも最近歌に気持ちをすごくのせるようになってきて。
ーー歌入れで、メンバーの変化って何か感じたりしました?
田家 : やっぱりでも表現力は増してるなと思いました。もちろん、まだまだだよとは言ってるんですけど、「私へ」みたいなちょっと泣かせる曲は、曲の中に入り込んで、泣かせる歌を歌えてたので、すごく上手くなったなと。
ーー歌入れにおいて、田家さんがこだわるポイントはどういうところですか?
田家 : 僕は音程を外したとかそういうことを気にするより、歌詞の景色みたいな部分を聴き手に見せてくれればいいと思っていて。上手く歌えていても、全然感情が震えない歌ってあると思うんですよ。そうじゃなくて、ひたすら練習して、できるようになったところで3~5回くらい本気で録らせて、その中から選ぶことが多いです。耳を澄まして聴いて、自分の心に1番刺さるテイクを選んでいます。
〈フジロック〉のホワイト・ステージに出ても遜色ないものをやってるんだ
ーー「Only You」は、パッションだったり、原始的な荒ぶる気持ちみたいなものを求めている曲じゃないですか。この曲に関しては、バンドでのレコーディングもされているってところで、他の曲とも成り立ちが違いますよね。
田家 : ハシダさんとも、これは打ち込みじゃなくて、生で録りたいよねって話になって。ドラムが重要だったので張替智広さんにお願いして、ベースも三島想平さんにお願いして、あとはいつもの箱庭の室内楽のメンバーとホーン隊のみなさんが吹いてくれて固まったんですよ。演奏しているときに、箱庭の室内楽の上野翔さんが「ちょっとノイズのせていいですか?」って提案してくれて。ウエノさんはフィードバック・ノイズ・マニアらしく、ものすごくかっこいいノイズをのせてくれたので、ここも弾いてください、ここもって、かなり全編にわたって弾いてもらって、後半も僕がめちゃくちゃボリュームあげちゃって(笑)。普通は絶対にこんなにあげないと思うんですけど、このノイズだけで異世界にトリップさせられると思ったから、ノイズはかなり重要な要素だと思っています。
ーーこの曲はツイン・ドラムで収録されてますよね。赤坂ブリッツでやったワンマンライヴでの編成もツイン・ドラムでしたけど、まさに田家さんの理想的な編成なんですね。
田家 : 要はボアダムスですね。あれをアイドルでやりたいなっていうのがそもそもあったから。こういう曲は、ドラマー2人がトランシーに叩きまくるっていうのがほしかったんですよね。
ーー12月20日のZepp DiverCity TOKYOを見据えての楽曲が詰まったアルバムでもありますね。
田家 : Zeppでやることが決まったときに、超大作のアルバムを出して、それを生でやろうってことが見えていたんです。だから、ライヴを観に来てほしいし、多くのロック・ファンに届いて〈フジロック〉のホワイト・ステージに出ても遜色ないものをやってるんだよってことを世間に知らしめたいんです。
ーー本作は、ゆるめるモ! でやりたいことが、トータルの世界感として、すごくポップにわかりやすく伝わってくる作品だなと思いますよ。
田家 : そのためにデザインとかも重要だったんです。ぐちゃぐちゃなジャンルでも、こういうジャケット・デザインだったらまとめられるだろうと思って、ちょっと80年代感のあるサイケデリックな感じでタカハシヒロユキさんにお願いしたんです。そしたら見事にこちらの意図を汲んでくれて、タカハシさんなりの攻め感、未来感を存分に出してくれて。最高のデザインになりました。
ーーナカコーさんもTwitterで「国内の音楽は今とても多重な世界だと感じました」って書いていましたけど、アイドルという枠だけで食わず嫌いでいると、音楽の多様性を見失ってしまう時代だと思うんですよね。変な話、ロック・バンドのフォーマットより、こっちの方が全然新しいし、ロックだと思うんです。
田家 : それって本当にそうだと思います。ただ怖いのが、これがかっこいいと思われるのにあと5年かかっちゃうんじゃないかなって。一般のリスナーが言い出すスピードをもっと早くしたいんですけど、どうやれば届くのかなっていうのは考えるところですよね。
ーーナカコーさんやハヤシさんのような鋭いアーティストが反応しているってことが、なによりもここにおもしろいものがあるという証拠でもあると思うんですよね。ちなみに、メンバーは本作をどう感じているんでしょう。
田家 : さすがにこれだけの奇作が手元に届いて、すごいことやっているかもという自覚は芽生えてきているみたいで、この音楽を届けるのは自分たちなんだと思っているようです。
ーー田家さんがこの作品を完全自主製作でやりきったことは、今後どういう道を進むかは置いておいて、大きな意味があると思います。ゆるめるモ! のステートメントを身をもって示した金字塔的な作品になると思います。
田家 : だからこそ多くの人に届けたいなって思うんですけどね。たくさんの人に伝わるといいなと思います。
レーベル YOU'LL RECORDS 発売日 2015/11/11
01. 02. 03. 04. 05. 06. 07. 08. 09. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17.
※ 曲番をクリックすると試聴できます。
ゆるめるモ! の過去作をハイレゾで
赤坂BLITZでのワンマン・ライヴもハイレゾ配信
ゆるめるモ! / 赤坂BLITZだよ! 全員ハミ出すモ!(24bit/48kHz)
【配信価格】 まとめ価格 2,800円(税込)
【配信形態】 FLAC、ALAC、WAV(24bit/48kHz)、AAC
【Track List】
1. ゆるトロ(slo-モ!) / 2. manual of 東京 girl 現代史 / 3. ゆるめるモん / 4. 難 / 5. あさだ / 6. アーメン / 7. 場viewer / 8. ぺけぺけ / 9. 眠たいCITY vs 読書日記 / 10. メルヘン / 11. 波がない日 / 12. 虎よ / 13. DO FUFU / 14. 聞こえる / 15. SWEET ESCAPE / 16. たびのしたく / 17. 1! 2! かんふー! / 18. OO(ラブ) / 19. スキヤキ / 20. Hamidasumo! / 21. なつ おん ぶる ー / 22. 私の話、これでおしまい / 23. 花のドイリー / 24. べぜ~る / 25. NNN / 26. さよならばかちゃん / 27. 逃げろ!!
※ご購入いただいたお客さまには赤坂BLITZでの豪華ライヴフォト特典がつきます。
ライヴ当日のレポートはこちらから
POLYSICSのハヤシによる作詞・作曲・アレンジ曲をハイレゾ配信
ゆるめるモ! / Hamidasumo!(24bit/48kHz)
【配信形態】 FLAC、ALAC、WAV(24bit/48kHz) 単曲 249円 / まとめ価格 1,200円
【Track List】
1. Hamidasumo! / 2. 難 / 3. 聞こえる / 4. Hamidasumo!(Heaven & Hell Remix) Remixed by 玉屋2060%(Wienners) / 5. Hamidasumo!(Instrumental)
1stアルバムをハイレゾ配信
ゆるめるモ! / Unforgettable Final Odyssey(24bit/48kHz)
【配信形態】 FLAC、ALAC、WAV(24bit/48kHz) 単曲 257円 / まとめ価格 2,160円
【Track List】
1. Majiwaranai Cats / 2. ゆるめるモん / 3. べぜ〜る / 4. 逃げろ!! / 5. 生きろ!! / 6. 場viewer / 7. ぺけぺけ / 8. 私の話、これでおしまい / 9. スキヤキ / 10. DO FUFU / 11. なつ おん ぶる ー / 12. OO(ラブ) / 13. たびのしたく
LIVE SCHEDULE
「ゆるめるモ! YOU ARE THE WORLD TOUR」
2015年11月14日(土)@大阪・樟葉Shing Hall
時間 : 開場 17:00 / 開演 17:30
料金 : 前売 3,500円 / 当日 4,000円
2015年11月15日(日)@名古屋APOLLO BASE
時間 : 開場 16:30 / 開演 17:00
料金 : 前売 3,500円 / 当日 4,000円
2015年12月5日(土)@福島・clubSONICiwaki
時間 : 開場 11:00 / 開演 11:30
料金 : 前売 3,500円 / 当日 4,000円
2015年12月6日(日)@仙台PARK SQUARE
時間 : 開場 11:00 / 開演 11:30
料金 : 前売 3,500円 / 当日 4,000円
2015年12月12日(土)@広島・STUDIO MAPLE
時間 : 開場 17:30 / 開演 18:00
料金 : 前売 3,500円 / 当日 4,000円
2015年12月13日(日)@福岡・小倉WOW!
時間 : 開場 9:30 / 開演 10:00
料金 : 前売 3,500円 / 当日 4,000円
2015年12月20日(日)@Zepp DiverCity TOKYO
時間 : 開場 16:00 / 開演 17:00
料金 : 前売り 5,000円(1F自由)
PROFILE
ゆるめるモ!
「窮屈な世の中を私達がゆるめるもん!」というコンセプトのもと2012年10月に結成されたニューウェイヴ・アイドル・グループ。英語表記はYou'll Melt More!。メンバーはもね、けちょん、しふぉん、ようなぴ、あの、ちーぼうの6人。楽曲はニューウェイヴを軸に、エレクトロ、クラウトロック、ヒップホップ、シューゲイザー、ハードコア、アンビエント、テクノなど様々なジャンルが取り入れられており、NEU!、ESG、SUICIDEなどの名盤をオマージュしたCDジャケットも毎回話題に。2014年1月には箱庭の室内楽とのコラボ・アルバム『箱めるモ!』を発表し、同年7月に初のフル・アルバム『Unforgettable Final Odyssey』を発売。2015年3月にはPOLYSICSのハヤシが楽曲提供したシングル『Hamidasumo!』をリリースし、5月2日に東京・赤坂BLITZでワンマン・ライヴを開催。最大15人の生バンドとともに演奏し、1200人を動員した。8月にはミドリカワ書房の提供曲「夢なんて」を含むシングル『文学と破壊EP』を発売、初のサマソニ出演も果たす。10月31日からは初の主演映画『女の子よ死体と踊れ』が公開。10月21日には映画スペシャルCDと、赤坂BLITZワンマン・ライヴDVDを発売。11月11日には、元SUPERCARのナカコー、後藤まりこ、POLYSICSハヤシらが作家陣として参加した2ndフル・アルバム『YOU ARE THE WORLD』を発売。冬には全国ツアーが行われ、12月20日にはツアー・ファイナルとなるZepp DiverCityでのワンマンも決定している。