KEYTALK INTERVIEW
難しいことを考えず、ここまで身体を揺らして盛り上がれるロックに出会ったのは久しぶりのことだ。たまたまライヴ・ハウスで見かけたKEYTALKのライヴを見て、僕は彼らのことが気になって気になって仕方なくなってしまった。身体がうずくようなキャッチーなメロディと、裏で別のメロディを鳴らすギター、四つ打ちのドラム。ベタに聞こえるようでいて、じっくり聞いていると、細部は相当考え込んで作っていることがわかる。演奏技術も非常に高い。難しいことを考えずにと最初に書いたけれど、かなり演奏がうまく、冒険的なことをしている。それを小難しく見せないで踊らせるというのは、KEYTALKのポテンシャルが高いことに他ならない。彼らの演奏を前に、汗を飛ばしながら一心不乱に踊っている大学生くらいの男女たちを見て、音楽が人を繋げるという可能性を信じたくなった。それ以来ずっと気になっていた彼らが新しいEPをリリースするということで、念願かなってメンバー全員にインタビューすることに成功した。笑いの尽きないインタビューを、彼らの楽曲を聞きながら読んでみてほしい。
インタビュ―&文 : 西澤裕郎
KEYTALK / KTEP3
収録曲 : 1. 太陽系リフレイン / 2. マキシマム ザ シリカ / 3. ゼロ / 4. happy end pop (KTEP3 ver.)
価格 : 1000円
2009年7月結成の4ピース・バンドKEYTALK。20歳前後のメンバーによる超絶テクに裏付けされた次世代ダンス・ロック・サウンドは、作品のリリース、全国各地でのライブを重ねることでより強靭なものに。攻めるKEYTALKを前面に押し出す彼らの今年最後のリリースは、否応無しにフル・アルバムへの期待を覚醒させる、色艶を放つ全4曲。破竹の勢いで進む彼らのターニング・ポイントとなるであろう2013年を迎える前に、是非一聴あれ。
単純にキラー・チューンをたくさん作るために
ーーKEYTALKは、どういう音楽を標榜して活動してきたバンドなんですか?
小野武正(以下、小野) : キャッチーな歌とリフ、踊れるものをどれだけ作れるかを常に追求し続けてきたバンドですね。(キメ顔)
首藤義勝(以下、首藤) : 何キャラだよ。
ーーあははは。キャッチーかつ踊れるという意味では、『TIMES SQUARE』に収録されている「トラベリング」はKEYTALKを語る上での外せない曲ですよね。
小野 : まさしく、その通りでございます! 「トラベリング」が生まれたことにより、これだけ良いバンドになったっていうのはありますね。
ーー僕の言葉をそのまま言ってるだけじゃないですか(笑)。違うところは違うって言ってくださいね。実際「トラベリング」前後で、曲作りの方法は変わりましたか?
小野 : そうですね。「トラベリング」以後は、ひとりひとりが曲を持ってくるスタイルになりました。それ以前はスタジオなどに持ってきたパーツを、みんなで作り上げる感じだったので、そこは決定的に違うところだと思います。
ーーバンドが一つの到達点に達したから、新しい場所に進もうという雰囲気もあったんですか?
小野 : どうですか、八木さん。
八木優樹(以下、八木) : 単純にキラー・チューンをたくさん作るためにそうなったと言うか。なので、新しいことがしたいとか、そういう感じではなかったような気がします。
小野 : … と、作曲者じゃない人が言ってるんですけど。
一同 : (笑)。
小野 : でも、それだけ第三者の目を持ってるし、バンドを客観視できるすばらしいドラマーだと思っています。(キメ顔)
ーー初対面で言うのも失礼ですが、そのキメ顔、相当胡散臭いですよ(笑)。小野さんはライヴでの印象そのままですよね。それに対して、寺中さんは”巨匠”と呼ばれていたり、ステージ上の大物感が半端ないのですが、今日は大人しいですね。
小野 : 今は言葉を発さないことによってガンガン来る感じを出してるんです。言葉を発さない威圧感みたいな。
寺中友将(以下、寺中) : はい。(低い声)
ーーあははは。KEYTALKのメンバーは、音大や音楽の専門学校に行っていたということで、作品作りも録音の方に重点を置いているものだと思っていたんですよ。でも、今はライヴでの盛り上がりというのが印象的で。他のインタビューでもライヴは大きな要素だという話をしていましたよね。ライヴという場は、KEYTALKの今のスタイルに大きな影響を与えていると思いますか?
寺中 : 「トラベリング」みたいな曲で、お客さんの盛り上がりを見て、曲を作る上でライヴを想像するようになったんです。こういう時にこういうことをやると、お客さんはこうなって… みたいなことを想像しながら作るようになりましたね。
小野 : だから、かなりライヴが前提になる音源になってきたよね。
ーーそれまではもっと、作品寄りだったと。
小野 : そうですね。それも全部オムスター(八木)のせいなんですけど。
ーーオムスターは何をしたんですか?
小野 : すぐ、ドラムを編集するんですよ。
八木 : あ、録音の時にね(笑)。
小野 : 波形を、右にずらしたり左にずらしたりするんですよ。
八木 : 下手なくせにうるさいんですよ、クオリティに。
小野 : だから音源はめっちゃドラムうまくて。音源聴いたらどうなるの? オムスター君。
八木 : うっ… うまいっ!!! ってなるんです。
小野 : いい! とかじゃなくてうまい!! なんだよね。あ、すみませんこれは蛇足でした。
ーー大丈夫です。漏れずに載せますから(笑)。ステレオタイプなイメージだと、音大とか音楽専門の学校に行ってる方って、アカデミックな感じの音楽制作に向かうもんだと思っていたんですけど。
小野 : それは先入観かもしれないですね。音大に行ってる人もダンサブルな音楽とか好きな人はいますし、僕らは音大って言ってもポピュラー・コースなので。
ーーポピュラー・コースでは、どういうことをやるんですか?
小野 : 僕と巨匠は同じ大学だったんですけど、logicとかDTM系のソフトを使って作曲したり、レコーディングをやったり、アンサンブルとか楽器の練習をしたりしていました。ジャズとか、理詰めの方ではなかったっていうのは、大きいかもしれないですね。
ーーそもそもメンバーはどのような繋がりから結成されたんですか?
小野 : 僕と八木が高校の軽音楽部で一緒にバンドを結成して、文学少年(首藤)を仲間にしたんです。
首藤 : 地元が埼玉で一緒だったので、たまたま同じ日に同じハコで共演したときに知り合って、その半年後くらいにベースを探してるみたいな話があって。最初はサポートでやらせてくださいって言って参加していたんです。
小野 : それで僕が大学で巨匠と同じコースで一緒になって。巨匠が「うぅーうぅー(ドスのきいた声)」って言って、加入しました。
ーー全然、わからないんですけど(笑)。
小野 : 相当アカデミックな加入の仕方だなと思って、これしかないなと思って。
ーー… 巨匠は、なぜ入ったんですか?
首藤 : はしょった(笑)。
八木 : 正解ですね。
寺中 : ライヴに誘われて、3人でやってるライヴを見たんですよ。当時は、小野君がヴォーカルをやっていたんです。
ーーそれを見て、これはいいなと思ったんですね。
寺中 : いや、歌が下手だなあと思って。
ーーえっ(笑)。
小野 : わざとですよ、わざと。僕だけ15ヘルツ下に歌ってたんです。そうすることで、ちゃんと歌に演奏を合わせられるメンバーなのかどうか図っていたんですけど、全然合わせてくれなくて。
首藤 : ほんとに自分が悪いみたいな気になってきた(笑)。
寺中 : そのときは、バンドいいなと思って見ていたんですけど、ある日いきなり、授業中とかに今度歌ってみない? って聞かれて。その流れで歌うようになりました。
ーーその時からボーカルは2人体制だったんですか?
小野 : いや、1人体制でした。巨匠が『KTEP』のレコーディングの最中にポリープになって、1曲だけ歌録りが終わってない曲があったので、義勝が代わりに歌を入れたらすごく良くて。そこからツイン・ボーカル路線が開きました。僕がやっぱり歌はすごくうまいので、そこで教えてあげればいいじゃないかっていう話もあるんですけど、そこは自分で考えて切り開いていかないとオリジナリティを追求出来ないかなと思って僕は歌いませんでした。
ーー… 歌がうまい小野さんの目から見て、2人の歌に対する変化みたいなものは見えますか。
小野 : かなりやばいですね。かなりきてます。『KTEP3』に、そのやばさは全部詰まってます。おすすめです。
一同 : (笑)。
難しいものを簡単に見せるのがかっこいい
ーー僕は『KTEP2』が本当に好きなんですけど、出し惜しみがないくらいキラー・チューンばかりですよね。『KTEP2』から今作『KTEP3』までは、KEYTALKにとってどういう期間だったんでしょうか。
小野 : 実は『KTEP2』の後、アルバムをリリースする予定だったんですけど、インディー大魔王こと、KOGA RECORDSの社長の古閑さんの迷案で、もう一枚出そうっていうことになりまして。アルバム制作の時に、アルバム用にいっぱい作っていた曲の中から、『KTEP3』用の曲をチョイスして、作った感じですね。
ーー『KTEP3』は、『KTEP2』のド直球な、超ポップ、キャッチーとはまた違う部分があると思うんですよね。幅を広げるというか、深くいくというよりちょっと横にいくような印象を受けました。そういう部分は、ライヴとは違うところからフィードバックがあったんですか?
首藤 : そうですね。4曲目とかちょっと遅いテンポなんですけど、今まで速い曲しかなかったのでそういうのも入れてみたりとか。来年出るであろうフル・アルバムはもっと振り幅が広い作品になっているので、それに向けてKEYTALK、こんなこともできますよみたいな風に思ってもらえれば嬉しいですね。
八木 : もう、(首藤)義勝さんのおっしゃる通りですね。次のアルバムと、『KTEP2』のキャッチーさのちょうど中間くらいになったなあって。 今と未来のKEYTALKを見せられる作品だと思っています。
一同 : うおおおお!! (八木を褒めたたえる感じで)
ーーこれ何て書けば良いんですか(笑)。言っておきますが、どれだけしゃべり方を変えても活字になったら一緒ですからね!
小野 : じゃあ”(爆)”って書いておいてください!!
一同 : (爆)。
ーーKEYTALKを語るにあたって非常に重要な点なんですけど、4人はエンターテイメントであることを恐れていないですよね。特に小野さんは、先陣切って盛り上げようとしていて。エンターテイメントであることは意識していますか?
小野 : まあ、していないと言ったら嘘になります。(キメ顔)
首藤 : お願いだから、普通に言って(笑)。
ーーどうして、ステージ上で踊ったり、お客さんに対して目立つパフォーマンスをするようになったんですか?
小野 : 曲だけ良くてもしょうがないかなっていう思いはあるんです。もちろん、曲が良いのが前提にあっての話なんですけど。
ーー寺中さんはどうですか? ステージでギターを担いだり、本当に巨匠っぽいスタイルで登場するじゃないですか。
寺中 : 曲がいいのは絶対だと思うんですけど、他のバンドのライヴとかを見ても、メンバーたちの動きとかが印象的だった方が衝撃を受けるので、棒立ちでやるよりは全然、体中で表現していきたいなと思っています。
ーー曲以外の部分でも見せられる部分は見せていくっていうのは、バンドを始めた時からっていうわけではないんですか?
寺中 : その時は全くなかったですね。やっぱり自分が動くとお客さんも動いたりしてくれる場面とかやっぱりあるんで、それをやっていく中でどんどんライヴが変わってきて、おもしろいなって感じで始めていきました。
小野 : わかりやすくしたいですね、やっぱり。
ーーそれは、曲に関してもですか?
小野 : 曲が難しくても、わかりやすく聞かせることはできるだろうし、ライヴでうわーってやることによって、難しいフレーズもすんなり入っていったりとか。入り口を作ることはパフォーマンスだったりキャラクターでできるんじゃないかなって思います。
ーーそれに至った理由は何なんですか? 結構難しいものを難しくやっている状況が歯がゆかったりしたんですか?
小野 : うーん。これっていう一つのものはないですけど。僕はジャズだったり、ファンキーなものも大好きだし、ちょっと難しいっていうか、そこにかっこよさがあるバンドっていうのもすごく好きなんですよ。昔はストレートなバンドがそこまで好きじゃなかったっていうのもあって、難しいものを簡単に見せるのがかっこいいなっていつからか思いだして。何がきっかけっていうのはわからないんですけど、それは一番の根底にあると思いますね。
ーーそういうことはメンバーで話して共有したりしているんですか?
小野 : テレパシーでやりとりしてます。
ーー伝わってますか?
八木 : いや、初めて聞きました。
一同 : (笑)。
小野 : 伝わってませんでした! でも今伝わったんでいいかなと思います。さすがOTOTOYさんです。
ーー…。ここまで振り切れてるのは本当にいいなと思います。KEYTALKはどんなバンドになっていきたいと思っていますか?
小野 : とにかく熱気をどんどん上げれるバンドにっていう。身近な狙いから、ゆくゆくは世界征服を。KEYTALKが世界一のバンドになったら、日本ってすごいってなりますもんね。
寺中 : 超有名な、サザンオールスターズ、ミッシェルガンエレファントみたいな、そこまで行きたいです。
ーーいわゆる一般の人も知っているようなところで音楽的にも評価されているところですね。
寺中 : そうですね。やっぱりそうするとおばあちゃんも嬉しいので。わかりやすく親孝行したいです。
ーー首藤さんは?
首藤 : おもしろい、飽きられないバンドになりたいですね。
ーー先ほども話に出ましたが、アルバムっていつくらいを考えているんですか?
小野 : 2013年の春先くらいを目指しています。
ーー今までリリースしてきた曲も収録されるんですか。
小野 : いや、『KTEP3』から1曲入れて、あとは全部新曲ですね。キラー・チューンもありますけど今回は今までにないようなバラードも収録されたり、今までにないような曲もかなり幅広く収録しているので、おもしろいものになっているんじゃないかと思いますね。
ーー最後に。今まで黙っていましたが、小野さん腕を骨折してますよね…。2月の、UNITのワンマン、アルバムに向けて全国ツアーをする前にまさかのピンチだと思うんですが不安はないですか?
八木 : 逆境こそがチャンスなんで。
小野 : 逆境こそがチャンスだそうです。
首藤 : 逆境こそがチャンスだと思うんで。
寺中 : 逆境こそがチャンスだと思うので。
ーー(笑)。2月までに回復してもらって、更に進化したKEYTALKを楽しみにしています。ありがとうございました。
一同 : ありがとうございました!
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年間60本超のライヴで確かな演奏力を養い、盟友real、KEYTALKとの共同企画「the 床でライヴ」や、独自の目線で尊敬する表現者を集めた「リスペクトクラブ」などのイベント主催でもシーンを揺らしているDACOTA SPEAKER。複雑に入り組みつつもPOPに消化されている絶妙な音バランス、摩訶不思議なメロディに乗る叫びと語り口調のラップ。ROCK、HIP HOP、DUB、POST ROCKなど様々なジャンルで形容される彼らの音楽は、その実どこにも属さない。
PROFILE
小野武正 a.k.a. ぺーい (Gt./Cho.)
首藤義勝 a.k.a. おしゃれ番長 改め 文学少年 改め 宇宙人 (Vo./Ba.)
寺中友将 a.k.a. 巨匠/アーロン寺中 (Vo./Gt.)
八木優樹 a.k.a. オムスター (Dr./Cho.)
2009年7月結成。2010年3月に1000枚限定でリリースされたデビュー・シングル「KTEP」は即完売。2010年7月7日には1stミニ・アルバム『TIMES SQUARE』をリリース。プロデューサーにFRONTIER BACKYARDのTGMX aka SYUTARO TAGAMI氏を迎え、現在進行するZERO世代の若者たちが放つ4つ打ちダンス・ロック/パンク/ギター・ポップ・ジャズ/フュージョンを近未来系に再構築したデビュー・ミニ・アルバムとなった。2011年3月にはライブ・ハウスのみ限定発売の『PASSION / 東京Star』をリリースし現在までに800枚を売り切る。
名古屋のライブ・サーキット”SAKAE SPRING 2010”、大阪野音でのイベント“モーニングリバーサミット2010”や神戸の大イベントCOMIN’ KOBE2011にも出演。また盟友DACOTA SPEAKERとの共同イベント“床でライブ”を定期的に東名阪で企画したりと様々なところでのライブを経験中。また、2011年9月に開催されたモーニングリバーサミット2011にも出演。2011年10月に開催された福岡のライブ・サーキットMUSIC CITY TENJINにも2年連続出演! 2012年3月に開催された熊本初のライブ・サーキット「HAPPY JACK 2012」にも出演。
2011年11月には2ndミニ・アルバム『SUGAR TITLE』をリリース。東京2ヶ所のソールドアウト含む全国26ヶ所の発売記念を敢行。2012年4月には初の海外進出を果たし、台湾ツアー&台湾の有名フェスSpring Scream 2012に出演。2012年5月、限定マキシシングル「KTEP2」をリリースし、オリコン週間インディーズ・チャートで1位を獲得(2000枚即完売)。それに伴う東名阪福ワンマンツアーは4ヶ所全てソールドアウト。
2012年8月"RISING SUN ROCK FESTIVAL 2012 in EZO"に出演、10月には仙台のライブ・サーキット”MEGA ROCKS 2012”に出演。そして同月『スペースシャワー列伝~第九十一巻 秋茄子(あきなす)の宴~』に出演決定! とキテル感増幅中!