浪漫革命、音楽やバンドへの想いが『溢れ出す』──京都を抜け出し、この1枚で人生を変える
生活に根ざした愛や浪漫を掲げる5人組バンド、浪漫革命。結成8年目を迎えた彼らは今後の指針を見つめ直し、意を決して京都からの上京を選択した。そして拠点を移してから初のリリースとなるEP『溢れ出す』。本作の制作では、足し算引き算を緻密に行い、Vo./Gt.の藤澤信次郎の歌をよりフィーチャーするこれまでにないアレンジとなった。EPの最後を飾る“聴いて!”における「溢れる想いを聴いて / 僕は音楽やバンドが大好きなんだ」という歌詞には、浪漫革命の情熱と心からの想いが端的にあらわれている。これは、決意を固めた浪漫革命渾身のEPであるが、さらなる飛躍の予兆も感じさせる1枚だ。
上京後の勝負の1枚! 高度なアレンジにも挑戦
INTERVIEW : 浪漫革命
「京都を東京に持ち込む」の誓いを胸に、浪漫革命がついに上京。阿南智史(元never young beach)、Ryosuke Takahashi、bisshi(元PAELLAS)の3人をサウンド・プロデューサーに迎えて作り上げた6曲入りEP『溢れ出す』をリリースする。昨年8、9月に配信したシングル「うわついた気持ち(feat. 鎮座DOPENESS)」と「ゆ」の2曲を含むEPの内容はもちろん、東京でかなえたい夢まで語ってもらった。浪漫たっぷりのロング・インタヴューをどうぞ!
インタヴュー・文 : 高岡洋詞
写真 : 作永裕範
「次郎の歌を聴かせるために」、全員でブラッシュ・アップ
──結成は2017年。京都で7年活動して、今年の初めに上京してきたそうですね。
藤澤信次郎(Vo./Gt.):はい。「あんなつぁ」のアルバム(『ROMANTIC LOVE』2020年)ができたくらいのときに、メンバー全員の足並みがバンド一本に揃ったんですけど、以来7年間、「本気で音楽で食べたい」って7年間めっちゃ泥臭くやってきた気がします。
──結成7年めにして拠点を移したのは大きな決断ですよね。
藤澤:京都ではいい意味でのんびりやれるんですけど、それって裏を返せば東京ほど人が多くないってことですよね。全員アラサーになって、音楽でお金を稼ぐことや聴いてくれる人を増やすことの難しさを本気で考えるようになって、バンド一本で食うためには東京に出ないと、って話になりました。実際に出てきたら刺激を受けるし、ここで「3、4年のんびりやって結果出しましょう」じゃ、京都にいたときと変わらない。だから今回は「この1枚で人生変えようぜ」くらいの背水の陣で作ったといいますか、みんなの感覚的にもフル・アルバムくらいの覚悟があると思います。完成した瞬間にはちょっと大げさに言うと「死んでもいいかも」って思えたくらい、「やれたな! 」って感じがあります。
──いただいた資料には誰がどの曲を作ったかが書かれていないので、それぞれどんなふうに作っていったのかを教えてください。最初の2曲はリード曲( “世界に君一人だけ” )とサブリード( “君という天使” )になっているだけあって、とても印象的な導入になっていますね。
藤澤: “世界に君一人だけ” はもともと京都にいたときに(後藤)潤くんの家で「なんか作ろう」つってふたりで集まったときに、うまくいかなくて疲れちゃって、気分転換で潤くんが作ったトラックに、僕が前から歌いたかったテーマをちょっと乗せたら潤くんもさらに乗せてくれて……っていう感じでデモができた曲なんです。で、みんなに聴かせたら「めっちゃいい」「売れそう」「いろんな人に届きそう」って言ってくれて。売れるために東京に出てきた僕らとしては「上京第1弾のリード曲にぴったり」ってことで、完成させることになったんですけど、ああしとけばよかった」という可能性をすべて潰したくて、それぞれにアレンジを作っていったら、10パターンぐらいできて、結果どれがいいかわかんなくなっちゃったんですよ(笑)。
──なんだかわかる話ですね。
藤澤:僕がずっとミックスを頼みたい人が何人かいて、その中にyonawoの “tokyo feat. 鈴木真海子, Skaai” を録った人がいたんです。僕らがMega Shinnosukeと対バンしたときに仲よくなって、「いま浪漫で死ぬほど売れようつって曲作ってて」って話したら「俺らのチームでやろうよ」って言ってくれて。それが今回、プロデューサーに入ってもらってるRyosuke(Takahashi)さん、bisshiさん、阿南(智史)さんなんです。
──外部の目は大事ですよね。
藤澤:「どれもよかったし、10パターン出しても面白いんじゃないか」みたいな話をしてくれた上で、「売れたいなら、テーマは歌を聴きやすくすることだね」って方向性を出してくれたんです。みんなで話して1個ずつ整理していって、行き着いたのがこのヴァージョンでした。他の曲はわりとみんなが最初に作ったデモを全員でブラッシュ・アップした感じなのかな。 “世界に君一人だけ” はいちばん手をかけました。
大池奏太(Gt./Cho.):長かったっす、完成するまで。
藤澤:もちろんこれが正解なのかわかんないですし、もしかしたら捨てた10パターンのどれかのほうが売れる可能性あったのかもしれないですけど、少なくとも悔いなく進められたんで、自分の中では。
大池:自分たち史上いちばん整理整頓されたサウンドって気がします。
藤澤:年も近いし、尊敬するプレイヤーでもある人たちと、また新しい先輩がバンドに入ったくらいの感覚で一緒にやれて、めちゃめちゃ楽しく、面白くやれました。
──「このパートは凝ったから注目して! 」みたいなポイントはありますか?
大池:全箇所凝ってる(笑)。
藤本卓馬(Ba.):Aメロのアレンジじゃない?
藤澤:確かに。BPMも試行錯誤して、結局スローに落ち着きましたけど、Aメロのラップは速いテンポのほうがかっこよかったんですよ。あと、デモでは潤くんと二人でラップしてたから、ひとりで歌うとなると違和感が出てきちゃって。聴くとわかると思うんですけど、最初のほうの「友達の結婚式行けずに土日出勤」あたりは潤くんっぽいんですよ。「今まで散々 / 言ってきた好きという言葉が」くらいから僕が作ってて。そこの整合性をどうとっていくか、歌詞もメロも譜割もどう変えましょう、それに伴ってバッキングはどうしましょう、みたいなこともみんなで相談して……確かにAメロがいちばん時間かかったかもしれないですね。
──浪漫革命の、ちょっと変な言い方ですが、プロとしての第1弾みたいな曲と言えるかもしれませんね。
大池:ある意味そうかもしれないですね。
藤澤:歌を意識してアレンジしたことがあんまりなかったんですよね。5人仲いいから、「全員目立ってほしい」ってたぶんみんな思ってて。だからみんなが「次郎(藤澤)の歌を聴かせるために」って自分のパートに取り組んでくれるのもうれしかったし、楽しかったです。いままでにないアレンジだと思いますね。
──2曲めの “君という天使” はどんな感じで?
藤澤:これは僕が弾き語りで作ったんですけど、当初はもうちょっとスローなテンポだったんですよ。でもバンドで合わせるとやっぱり速くしたくなるし、みんなから「こういう感じはどうだ」ってリファレンスがいっぱい出てくるんですよ。で、正解かどうかわからないままにとりあえず速くしてみて、イントロの「ジャジャジャジャジャン」が生まれた瞬間に、僕的には「やばい! これが正しい! 」みたいな(笑)。だから本当、スタジオで練り上がった曲です。
大池:これは前からライヴでもめちゃめちゃ演奏してて、けっこう育ってる曲だし、たぶんいちばん慣れた感じでレコーディングしてます。
藤澤:そういう意味ではレコーディング・マジックもいちばん起きたというか、阿南さんたちの音選びで「こんな音像になるとは! 」って。
大池:唯一、パソコンでプリプロをしてない曲だから、どういう仕上がりになるか予想できなかったんですけど、面白い感じで録れてすごく満足しました。
──これは単曲としてもいいけど、 “世界に君一人だけ” とのコントラストが鮮やかですね。
藤澤:うんうん。いかにもバンドらしい曲で、それがよかったですね。「売れるため」って悪い意味に捉えられることも多いんですよ、自分たち自身も含めて。「好きなことを我慢しなきゃいけない」みたいな。でもこの2曲はそういう感じじゃないから、すごくいいと思います。