いつも全身全霊で楽しんだら、それでうまくいく──結成10周年のTENDOUJIは次のフェーズへ
結成10周年を迎えたTENDOUJIから、セルフ・タイトル・アルバム『TENDOUJI』が届けられた。アルバムを飾る“TENDOUJI のテーマ”のBPM高めなドラムマシンのビートで幕を開けるやいなや、ハッと目が覚めたようにグイグイとTENDOUJIの陽の渦に飲みこまれる。この10年でよりシンプルに、よりストレートに、研ぎ澄まされた爽快なバンド・サウンドでごきげんにドライヴし続け、聴きおわるころにはじんわりと汗をかいていることに気づく。最高の気分だ! この突き抜けたハッピーさを前に敵うものなんてないんじゃないかと思わされる。向かうところ敵なしのTENDOUJIにとって、10年はまだまだ通過点にすぎない。(編)
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INTERVIEW : TENDOUJI
思い返すと、僕がTENDOUJIとはじめて会ったのは6年前、彼らがバンドをはじめて4年目のとき。その彼らは自虐的に「バンドのこと、よくわかっていないから」なんて言っていたけど、シンプルなアレンジながらもロック・バンドの持つ熱量と、キャッチーで芯のあるメロディを持つその楽曲たちに強く惹かれたのを覚えている。今作は、そういった彼らがバンド結成当初から持つピュアな魅力をより進化した形で昇華し、4人だけで音楽に向き合い、より強度を増したメロディがとてもフレッシュな状態で詰め込た快作となった。10年前、28歳のときにはじめてバンドを結成した彼らも、10年の時を経ていまや立派なバンドマンとなった。10周年という大台を迎えた彼らがいまなにを考え、どのようにバンドに向き合っているのか、存分に語ってもらった。
取材・文 : 鈴木雄希
ただ楽しいだけではじめた、あの感覚
──TENDOUJI、10周年を迎えましたね!最近の活動としては、コンスタントに新曲を出しながらライヴを精力的に行っている印象でした。
モリタナオヒコ(Vo. / Gt.)(以下、モリタ):この2年くらいめちゃくちゃライヴをしてきた影響で、いろんなところに呼んでもらえるようになったし、友達が増えたのがよかったな。その効果なのか、主催フェス〈OTENTO EAST&WEST〉もソールドアウトしてくれて、いい形で10周年を迎えることができました。
アサノケンジ(Vo. / Gt.)(以下、アサノ):この2年でこれまで行ったことのなかった場所に行く機会も増えましたね。もともとかなりライヴをやるバンドではあったけど、よりそこが強くなってきた感じかな。
──ライヴを増やしていこうというのは、10周年に向けて意識をしていたことでもあった?
アサノ:コロナの期間は俺ら単体でできることに限界があったから、対バンすることで新しい血を入れていくということが、いちばん新しい状態でいる方法だったのかなと思っていて。それをこの2年でやってみたイメージかな。
──バンドをはじめたとき、10年もやることを想像できました?
アサノ:どうだろうね。はじめたときは「ぜんぜん売れるだろう」って思っていたから、そこに対しては特になにも考えていなかったかも(笑)。ただ、いろいろとバンドのことがわかってきたうえで考えたら、よく10年もやれたなって思いますよね。この10年でみんながこんなにちゃんと“バンドマン”になるとは思ってなかったし。
モリタ:たしかに“バンドマン”にはなったよね。はじめたときは目標もなかったし、ただ楽しいからやってるだけだったから。もともとの性格的にみんな超飽きっぽいから、キツいってなったら、もうやめるか!っていうのはぜんぜんあったと思うんだけど、やめなかったからね。
──もともとTENDOUJIはメンバーが28歳のときに、バンド初心者としてはじめたバンドじゃないですか。最初はDIYでやっていたけど、プロデューサーを入れてリリースした作品もあったりして。そういう経験から、この10年の間で曲の作り方や楽曲に対するアプローチは変化しましたか?
モリタ:俺はめちゃくちゃ変わったかな。いいと思ったものをインプットしてアウトプットをするという根本の部分は変わっていないんだけど、曲作りの段階からお客さんの顔がちらつくようになったんですよね。というのも、いろんなバンドが出るフェスに出たたときに、「俺らの曲なんて誰も知らないだろう」みたいな感じでステージに出たんだけど、お客さんがすごく盛り上がってくれることがあって。そういう反応が来るとやっぱりすごくテンションが上がるんですよね。なので、もっとそういう曲を作りたいという気持ちは自然と出ちゃっているのかもしれないですね。お客さんを喜ばせたいという気持ちが強くなったかもしれない。
──根本は変わっていないけど、より伝わりやすいものを意識するようになった。
モリタ:そう。それはこの2年くらいでいろんなライヴに出た経験がすごく大きかったですね。アレンジに関しても、みんながデータでやりとりができるようになったのもすごい進歩(笑)。もともとは2~3割のアレンジを考えてスタジオに入ってやってみて……って感じでやっていたんだけど、いまはアレンジの要望を伝えたらみんなそれにちゃんと返してくれるようになったし。
ヨシダタカマサ(Ba.)(以下、ヨシダ):昔は技術もなかったからめちゃくちゃ時間がかかっていたけど、いろいろと経験したことでだいぶスムーズになりましたね。
オオイナオユキ(Dr.)(以下、オオイ):俺も完全にドラム初心者だったから、最初は8ビートすらわかっていなかったし、曲の展開に関してもなにがよくてなにがダメなのかみたいな感覚もまったくわからなかったから大変でしたね。いまはその辺もだいぶわかってきたから、「なんてラクなんだ」って感じ(笑)。
アサノ:なによりもコイツの進歩ですよ!
モリタ:そうだね、ムチャぶりができるようになったもんね。それは本当にでかいかも。昔は、この曲のドラムはこうしてみたいにお願いしても「できない!」って断られてたもん(笑)。
──逆に10年間で変えないようにしている部分は?
アサノ:ナオ(モリタ)は曲の作り方が変わったって言っていたけど、逆に俺は全く変えていなくて。お客さんのことを意識した強い曲を出していくことは今後バンドをやっていくうえで絶対必要だと思うんだけど、俺はこのバンドをはじめたときがバンドとしていちばんいい状態だったっていうのをずっと思ってるんですよね。ただ楽しいだけではじめたときのあの感覚。だからこそ、そこのバランスを取ることはかなり意識しています。どうしても歌詞を書いているときにライヴの景色を無意識に思い出しちゃうんだけど、曲を作る最初の段階ではリスナーのことは意識しないように決めてるっすね。
モリタ:俺は「簡単」ってことはずっと意識してますね。ジャズっぽいコードは使わないようにしているし、すぐにコピーができること、そこは自分の中のルールにしているかも。
アサノ:俺は好きなまんまをやったほうがいいのかなみたいなことは考えているかも。割と俺はそんなに考えなくていいかなっていうのはあるので(笑)。
ヨシダ:楽しさだったり簡単さだったりっていうのは僕も変わりたくないですね。いま振り返ってみると、一時期アレンジとかも小難しくしようと考えていた時期もあったんです。それを経て、いまは初期の頃とはまた違った形で楽しさをうまく表現できるようになったのかなって思います。
──1周回って原点回帰的な感じ?
ヨシダ:そうですね。そんな感じはあります。いまはあまり難しく考えずにポジティヴにできている気がしますね。