自分との距離感が近くて、コレだ!っていう名盤ができた
──そういう意味でも今回のアルバムは、シンプルだけど芯が強い曲が多く収録されている印象を受けました。事前にテーマなどはあったんですか?
アサノ:んー、ないかな。4人の性格上、こういうめちゃくちゃ大事なタイミングのときにスカす傾向があるんですよ。「えー?10周年?」みたいな感じで(笑)。だから、今回はスカさないためにも、去年のうちに「2024年にセルフ・タイトルでアルバムを出す」ということを決めて制作に入りましたね(笑)。
モリタ:俺は結構負けず嫌いだから、誰にも負けないアルバムを作りたかったし、10周年ということもあって自然と気合が入りましたね。テーマは特になかったけど「これがTENDOUJIだよ」というのを、くどいくらいわかりやすく詰め込んだ感じはあるかな。
アサノ:録り終えたあとに思ったけど、4人だけで考えて入れたい音を入れる感じは、空気感的に『breakfast』(2016年)に近い感じがしたんですよね。『breakfast』は、TENDOUJIをはじめたときのテンションが詰まったアルバムだから、あのときの感覚ではもう絶対に録れないけど、そこに近い雰囲気の作品ができたというのは、結果的に10周年っぽい作品になったなという感じはあるかもね。『breakfast』をリリースしたときとはリスナーの層も人数も違うし、反応は楽しみだよね。特にこの2年間、いろんな対バンでライヴをしてそこから俺らを知ってくれたお客さんにとっていいのか悪いのかはわからないね(笑)。
モリタ:11年目に俺らがどっちに向かうかは、アルバムを聴いてくれた人の声によって変わるかも(笑)。
ヨシダ:いろんな聴き方をしてくれるのは楽しみですね。
アサノ:そういう意味で言うと、初期の頃にTENDOUJIを聴いていたけど最近はちょっと離れちゃったみたいな人にも聴いてほしいアルバムになった気がする。
──たしかに今回の曲は、これまでのアルバムと比べると、よりシンプルに削ぎ落とされて、4人だけでできる音に向き合った感じを受けました。
アサノ:前のアルバムとかはskillkillsのスグル(スグルスキル)さんが入ってくれたんだけど、そこでやってくれたアレンジとかをバンド・メンバーだけでできる技術はまだないから(笑)。だけど、こうしていきたいというヴィジョンはちゃんとあった。
モリタ:シンプルに無理していないって感じだよね。第三者が入ってくれると俺らにはない新しいアイデアが出てくるし、聴いている人も新鮮に感じてくれるとは思う。だけど、なんかね、曲と自分との距離が離れていく感覚がちょっとあって。その感覚がしっくりこなかったんですよ。今回はプロデューサーとかも入れずに4人だけで作った作品だから、できた曲と自分との距離感がすごく近くて、そのまま曲として表現することができた気がしたんです。コレだ!って感じ。結局そうじゃないと聴いてくれる人にも伝わらないと思うし、そういう意味でも、今とこれまでの俺たちのすべてが表現できたアルバムになりましたね。シンプルに名盤ができた自信がある。
アサノ:2021年に出した『MONSTER』と『Smoke!!』の2枚ってほぼぜんぶの曲でグッと力が入っちゃっていた感じがして。そのこと自体は1曲1曲がそれぞれ立っているからいいんだけど、“TENDOUJIのアルバム”として考えると、今回くらいのバランスがちょうどいいのかなって。
──今回は既存曲もなく、すべて新曲ですよね。
モリタ:単純に新しい曲の方がいいっしょ(笑)。入れたい曲がいっぱいあったから自然とそうなった感じ。
アサノ:アルバムってそっちのほうがおもしろいしね。
──アルバムとしては今回はじめてメンバー全員の楽曲が収録されていますが、ヨッシーさんとオオイさんは曲作りに慣れてきた感じはありますか?
ヨシダ:かなりありますね。最初の方は歌詞の当て方もわからなくてかなり悩んでいたんですけど、今回はほんとに楽しさ100%でできました!
オオイ:俺は実は曲を作るのが結構好きで。いろんな曲ができていたんだけど、今回はアルバムとしてのバランスを取りながら、TENDOUJIらしいものを選んだつもりです。曲を作りはじめてから、そういうバランスのことも考えるようになったし、全体的に考えて話に参加できるようになって。この曲にはこういうドラムがほしいんだろうなみたいなことも考えられるようになったし、より理解度は増したかなと思いますね。ギターのことは相変わらずわかんないけど(笑)。

アサノ:ナオユキとかヨッシーが作った曲を聴いて毎回思うけど、バンド内での自分のキャラクターをちゃんとわかってきている気がしますよね。この曲をTENDOUJIというフィルターを通して、ヨッシーが歌ったらおもしろい、ナオユキがドラムで楽しくやったらおもしろいという曲を毎回書いてくる。ふたりがそこを意識しているのかはわからないけどね。あと、やっと曲を作ることに対しての照れがなくなってきた感はあるよね(笑)。
モリタ:それはめっちゃある!
アサノ:ヨッシーも最初めっちゃ恥ずかしがってて逆にこっちが赤面してたもん、もっと堂々とやってくれって。それはそれで笑えてよかったけど。でも今回レコーディングで高い声を出してて、やっと照れがなくなった!って思った(笑)。
ヨシダ:そもそもヴォーカル・ブースがめちゃくちゃ苦手で……。だけどいまはそういうのも含めて楽しさ100%でできるようになったね。だからいまめっちゃ楽しいし、どんどん音楽が好きになってきてます。
──もともと4人が曲を作れるバンドを目指していたと思うけど、そこに近づいてきていますね。
モリタ:そうですね。あとシンプルに、曲を作ってもらわないとこの人たち飽きちゃうから(笑)。やっぱ人が作った曲だけを演奏しているのと、自分の曲を演奏するのでは喜びがぜんぜん違うから。だからみんなガンガン曲を作ってほしい。