純度100のその人の音を聴きたいから、まず自分がそれをやりたい──ミズノリョウト(GeGeGe)インタヴュー
GeGeGeが5年ぶりとなるアルバム『また会おう』をリリースした。2017年にミズノリョウトによるソロ・プロジェクトとしてはじまり、現在3人のメンバーが参加し“インディー音楽プロジェクト”という体制で活動するGeGeGe。しかしその実態はミズノが作詞作曲を担当し、レコーディングにおいてもドラム以外のほとんどの楽器をミズノが演奏している。気になって覗いたホームページにはミズノが書いたと思しき読み応え十分のSF短編小説が公開されている。多才なこの人は一体何者なんだ? 幼少期のエピソードから、いま興味がある事柄、音楽を通して表現したいことなど、ミズノリョウトの人物像へ迫るインタヴュー。
一枚入魂の13曲入りフル・アルバム
『また会おう』からMV公開中
INTERVIEW : ミズノリョウト(GeGeGe)
先行配信された“光のサイン”でビビッときて、アルバムを丸ごと聴いたら名盤だと思った。いまこの瞬間のGeGeGeをつかまえたいと思い、急いでインタヴューを申し込んだ。今作を構成しているのは、懐っこく耳に残る明快なメロディー、よれたインディー・ロック、宇宙へと誘うサイケデリック、所在不明のSFのような歌詞の世界──。これに加えて作品をとりわけ特別なものにしている要素があるが、それをどうもうまく言葉にできない。掘り進めていくと、Galaxie 500と活動初期のスピッツが思い当たった。どちらも私個人の思い入れがあるバンドだ。これは自分の偏った感覚によるものであり、正解ではない(不正解でもないが)。しかし今回ミズノリョウトと話しているうちに、歪でも私的なこの感覚は大事にしてもいいのだと思えた。
取材・文 : 石川幸穂
写真 : 斎藤大嗣
その人が何を考えてどういうものに影響受けたとか、その背景が気になる
──今作『また会おう』のことを考えていたら、ミズノさん自身のことがすごく気になったんですよ。作詞作曲をされていて、レコーディングでもほとんどの楽器を演奏していますよね。幼少期はどんな子供だったんですか?
ミズノリョウト(以下、ミズノ):僕の親父はいわゆる転勤族だったんです。海外で生まれて転々として、小2のころに日本に戻ってきました。ずっと転々としていたので居場所がないっていうのは感じてましたね。転校先で友達を作るために明るく振る舞ったりして、そのこと自体は嫌じゃなかったけど、今振り返ると無理してがんばってたなとは思います。
──あまり自分の中でネガティヴに捉えていなかった?
ミズノ:そうかもしれないですね。転校に対して悲しいっていう記憶がなくて、特段自分の中で重要なことじゃなかったんじゃないかな。弟がふたりいるんですけど、当時「弟ができるんだ!」っていう嬉しさのほうが記憶として残っていて、学校での大変さとかはあんまり覚えてなくて。でも明るく振る舞おうとしてた記憶はあって、お疲れ俺みたいな。あとは、弟ふたりは歳が離れていて、僕のことを尊敬してくれていたんですよ。ふたりが喧嘩してたら僕が止めに入るし、リーダーシップみたいなものは家庭のなかで育まれたかもしれないです。
──長男という立場もあって、学校で落ち込んでられない気負いもあったのかもしれないですね。当時夢中になっていたものはありますか?
ミズノ:当時は海外に住んでいたので、おじいちゃんが日本からおもちゃを送ってくれていたんです。ウルトラマンの人形とか、基地セットとか。ボタンを押したら戦闘機が飛ぶようなギミックも凝っていて、すごく好きでした。いま思い出したけど、女の子向けのおもちゃで流行ってたアイロン・ビーズはすごい好きでしたね。
──私もアイロン・ビーズ好きでした! 当時はおもちゃに夢中になっていたんですね。
ミズノ:そうですね、音楽にはまだ興味はなかったです。そもそも認識もあまりできてなかったですね。親が好きで流していたドリカムとかカーペンターズ、ビートルズは耳にしてましたけど、ハマった感覚はなくて。小学校高学年でB’zのベストを買ったのが最初ですかね。歌詞カードを読んでる光景が頭に浮かぶので、B’zはちゃんとハマったんだと思います。
──最近ハマってるものや興味があるものはありますか?
ミズノ:興味あることでいうと、最近スター・ウォーズの新シリーズの公開が発表されてましたね。それは心配もありつつ楽しみです。幼稚園の年中くらいの時に親に連れてってもらったエピソード1が映画の原体験だったんです。こんなに長く続いているシリーズの新作はやっぱり嬉しいですね。
──GeGeGeはSF要素もありますが、SFへの興味はご両親の影響も大きかった?
ミズノ:いや、親はそういうのあんまり興味なくて、どっちかというと博物館とか科学館とか、現実に即した分野でしたね。よく連れられて行ってました。本もよく読んでましたね。特に好きだったのが江戸川乱歩の〈怪人二十面相シリーズ〉で。図書館で一巻だけ読んで、すごく面白かったんですよ。家で取っていた生協のチラシを見ていたら、〈怪人二十面相シリーズ〉のセットが売られてるのを見つけて。お願いして買ってもらってから何周も読んでました。それが小学校中学年くらいですね。
──本はたくさん読まれているんだろうなと思っていました。というのも、GeGeGeのホームページのブログ欄に短編SF小説が載っていて、あれはミズノさんが書かれていますよね?
ミズノ:そうです。前に星新一賞に応募しようとして書いたものと、もうひとつはふと書きたくなって書いたのを載せてます。僕らが知っている世界からちょっとずれた未来の話ですね。SF小説は星新一とかを小さい頃からよく読んでいて、特に短編が好きなんですよね。
興味あることでいま思い出したのが、恋愛リアリティショーですね。見世物なので気持ちいいもんじゃないと思う人もいると思うんですけど、なんか好きなんですよね。恋愛って人のコアじゃないですか。普段見ようとしても見れないコアを見ちゃってるっていうのがあるんだと思います。行動ひとつ取っても、その人の性格がすごく出るんですよね。ガンガン行くタイプが番組では勝ちやすいけど、じっくり攻めた人が結ばれることもあって。人によって戦い方や恋愛の運び方が全然違っていて、その人自身の人生が出ているような感じがしておもしろいです。
──ミズノさんは人に興味があるんですね。
ミズノ:ありますね。人のパーソナリティに興味があります。知らない人の恋愛リアリティショーですら見ていておもしろいと感じるので、知ってる人のパーソナリティにもすごく興味ありますね。僕は自己開示がすごく激しいんですよ。それを苦手に思われることもあるだろうけど、自分も自己開示するからお前もしてくれよみたいなスタンスを取りがちで。その人がいまやっていることよりも、その人が何を考えてどういうものに影響受けたとか、その背景が気になる。好きなものをなんで好きなのかとかを知って、納得したい思いがあります。
──好奇心旺盛なんですかね。
ミズノ:いやもうめちゃくちゃ好奇心旺盛ですよ。レストランのメニューとかもじっくり見ちゃうタイプで、字とか情報に常に触れていたいのはあります。ボーッとするのも下手ですね。コーヒー飲んでただ座るっていうのもできなくて、絶対何か読んだり聴いたりしちゃう。
──芦田愛菜さんと一緒ですね。
ミズノ:活字中毒っていうらしいですね。芦田愛菜さんに心から共感です。
──幼少期の体験で、いまの活動に活かされていることはありますか?
ミズノ:それはやっぱりウルトラマンの歌なんですよね。ウルトラマンのテーマ・ソングって、いま聴き直すと世代ごとに時代がすごく反映されていて、結構違うんですよ。いろんな“聴く耳”を育てられたと思いますね。初代のウルトラマンのテーマはサーフロックっぽいんですよ。ギターの音とかリズム感にそういう雰囲気が出ていて。ウルトラマン80のゴダイゴっぽい曲もあったり、本当に世代で全然違うんですよね。ウルトラマンが登場するあの「ダダーン!」っていう雰囲気だけは歌詞とメロディに共通しているけど、音色だけは年代ごとに違っていて、自然と“聴く耳”は育てられたんじゃないかと思います。
──ウルトラマンのような、子供にも伝わるわかりやすさと心に残るインパクトが『また会おう』にはありますね。
ミズノ:それは今回意識しましたね。