2024/06/25 19:00

REVIEWS : 080 ロック、ポップ・ミュージック(2024年6月)──石川幸穂

“REVIEWS”は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ数ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューするコーナーです。今回はOTOTOYスタッフの石川幸穂がロック、ポップ・ミュージックなどなど、さまざまなタイプの作品を紹介します!


OTOTOY REVIEWS 080
『ロック、ポップ・ミュージック(2024年6月)』
文 : 石川幸穂

UTO 『When all you want to do is be the fire part of fire』

エレクトロニカ、ダンス・ロック、シューゲイズをポップでキュートに咀嚼するオルタナティヴ・ユニット、UTO。セカンド・アルバム『When all you want to do is be the fire part of fire』はフランスの〈InFiné〉から。冒頭の“Art&Life”はピンポン球が弾むような軽快さで突き進むダンサブルなナンバー。続く“Plumbing”では対極に、ずっしりとした低音が鉛の振り子のように遠心力をかけ、クラクラ感が心地よい。終始電子音の要素が多く散りばめられた遊び心のある楽曲が展開されるが、爪を噛むようないたたまれさも見え隠れして、そのバランス感覚が絶妙。無限にループしてしまうあっという間の30分。

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Dosh 「Stone Cold Boogie」

フェンダー・ローズやドラム、サンプラーなど、何種類もの楽器を自身の身体のように操り、オリジナリティー溢れるダウンテンポを作り出す米ミネソタ州出身のマルチ・プレイヤー、Dosh。突如リリースした新曲は8分にも及ぶ「Stone Cold Boogie」だ。規則的とも不規則ともいいがたいリズムを刻む音から始まり、ドラム、旋律を奏でるローズ、ダブ要素のあるエコーがかけられた人の声も加わり、怪しさが増していく。アンダーグラウンドなヒップホップ、ポストロック、ダブ、エレクトロニカなどをポイポイと投げ入れた、ごった煮のやさしい魔術のよう。轟々と歯車が回る巨大なマシンのような無機質さとDoshの人としてのぬくもりが同居している。新たなアルバム・リリースへの期待も高まるところ。

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Cwondo 『Cwondo Memo 2020-2024』

『Cwondo Memo 2020-2024』はタイトルにあるようにCwondoのデモを編纂したアルバム。No BusesのGt./Vo.としても活動するCwondoは、ソロでの活動は日記をつけるように日々楽曲制作をしているそうだ。和製VegynともささやかれるCwondoの作り出すエレクトロニックな音楽は耳触りがよく、アイデアのメモ書きのような本作には容易に聴き逃せないクリエイティヴィティーに満ちたカケラたちが詰め込まれている。いつも、「こちらはこういった感じですが、そちらはいかがお過ごしですか?」といったような丁寧な姿勢でCwondoは楽曲をそっと置いていく。今作においても、静かに踊ってもよし、生活の背景として聴いてもよしと、楽しみ方の選択肢を多く残してくれている。つまり、いつ聴いても馴染みが良いのだ。

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この記事の筆者
石川 幸穂

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