REVIEWS : 049 VTuber(2022年8月)──森山ド・ロ

毎回それぞれのジャンルに特化したライターがこの数ヶ月で「コレ」と思った9作品+αを紹介するコーナー、REVIEWS。今回はVTuberをメインに活動するライター、森山ド・ロが登場。様々なジャンルにまたがったVTuberによる楽曲のなかから、9作品をセレクト。
OTOTOY REVIEWS 049
『VTuber新譜(2022年8月)』
文 : 森山ド・ロ
VESPERBELL 『革命』
「今のVESPERBELLの全てを詰め込んだアルバムです。」の公式メッセージが妙に印象強かった。そんなVESPERBELLの1st Album「革命」は、彼女たちの”格好良さ”を最大限に音楽に落とし込んだ1枚。”格好良さ”とシンプルにまとめてしまったが、激しいとか速いとか、そんな単純な要素では説明できない。VESPERBELLらしいハードなサウンドとメロディックなハーモニーの組み合わせを軸に、メロコアっぽい「メイビス」やピアノの旋律が軽快に走る「Twilight」など、多種ジャンルを自分たちらしく歌い上げる格好良さが詰め込まれている。全てがリード・トラックと言えるクオリティであるが故に、何から聴いていいかわからない場合は、「RISE - 2022 ver.」をオススメしたい。
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Stripe 『仮初(Ver2.0)』
やたらとリアリティの高いリリックと、抜群に聞き取りやすい声が特徴的で、思わず最後まで聞き入ってしまうStripeのED「仮初(Ver2.0)」。ポエトリーじみた強烈なメッセージ性はないものの、磨り減った日常を小回復するくらいの心地いい前向きな言葉と現実的な描写が並ぶ。淡々とそれらしき言葉を並べるのではなく、繰り返される1日を振り返るように構成された楽曲が多い。「selfish」のようにフックの部分のメロディックさと、少しドスの効いたバースとのギャップもみられ、楽曲としてのクオリティは全体的に高い。EPを通して感じたアーティストとしての印象は、日常で巻き起こる辛い現象や悩みを否定するのではなく、受け入れた上で少し前向きになるような気持ちにさせる不思議な魅力を感じた。
猫目石ネモ 『Reincarnation』
普段からコンスタントに歌枠配信を行なっている猫目石ネモが1stフル・アルバム『Reincarnation』をリリース。フル・アルバムだけあって、歌への情熱とこれまでの活動の集大成が詰まったボリューミーな出来栄え。猫目石ネモの優しく伸びる歌声が活かされた緩めのポップスから、軽快なダンスミュージックまでジャンルは多彩。なんにせよ、歌手活動以前にオリジナル楽曲リリースからわずか1年足らずでフル・アルバムをリリースできるアクティヴさがとにかく素晴らしい。ぜひライヴも数をこなしていってほしい。「Sugar」や「Voyager」なんかは生で聴くとまたガラッと印象が変わるだろうし、猫目石ネモの持つ透き通った歌声が最大限活かされた楽曲だ。