2024/08/19 18:00

REVIEWS : 083 ベースミュージック、テクノ (2024年8月)──草鹿立

“REVIEWS”は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ数ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューする本コーナー。今回はオトトイ・アルバイト・スタッフで、東京アンダーグラウンドのクラブ・シーンにてDJとしても活動・回遊している草鹿立がテクノ~ベース・ミュージックのシングルをお届け。現場直送の最新のダンスサウンドをぜひ。


OTOTOY REVIEWS 083
『ベースミュージック、テクノ (2024年8月)』
文 : 草鹿立

Becker & Mukai『Spirit Only』

LABEL:SAS

パリ拠点、マッシヴ・アタックのサウンドトラックなどにも参加した映画音楽家・Beckerと、Zongamin名義でもお馴染み、最近ではAl Woottonら所属のバンド・Holy Tongueのベースとしても知られるSusumu Mukaiによるタッグの2枚目。清涼感溢れるバレアリック・ダブの“Spirit Only”や、日本人アーティスト・Yama Warashiも参加した、どこか日本昔ばなし風(これがぽんぽこ?)の“Kinoko No Kioku”などが収録された、サイケデリック〜チルアウト・ダブ集。個人的には、哀愁漂うシンセとベースがバチッとハマった、ある種2名の持ち味が惜しみなく発揮された“Deja Vu”がピンときた次第。生命の危機すら感じるこの夏を少しでも乗り切るためにも、しばらくお世話になる予感です。

BANDCAMP

G3『U/ 110224』

LABEL:Little Corner

ロンドン拠点、質の高いオーガニックなベースをリリースする〈Little Corner〉。基本的には、主宰のG3、OSAMU KIMOTO、CHAPPY THE KINGによるリリースがほとんど。しかし、昨年リリース『G』のリミックス版では、日本のジューク・プロデューサーOyubiや、〈Príncipe〉周辺のDJ Danifoxなどが参加、それに加え、DJ MannyやTraxman、Scratcha DVAといった各方面のレジェンドもリリースに名を連ねている。その最新作は、最多リリースのG3による、もっと聴かれるべきシングル。A面は、耳で楽しむミニマル気味なオーガニック・ジューク、B面はグライミーなクラップから裏打ちハイハット、さらにはバイレファンキのリズムへと、徐々にサウンドのレイヤーが重なりコロコロ展開していくような仕上がりに。ポスト・ハイパーなテクスチャーともつながるのでは。

BANDCAMP

Toupaz『Frantic Gestures』

LABEL:ECLIPSE TRIBEZ

〈Scuffed Recordings〉や〈Control Freak〉でもお馴染み、Awo Ojiji改めToupazの新作は、ブリュッセル拠点のレフトフィールド・レーベルより。ヒプノティックな変則ブレイクスの“Summernights”から始まり、瑞々しい電子音とひん曲がったヴォーカルが相性抜群のダンスホール気味な“Torsion”、これまたダンスホール、かと思いきやブレイクビーツの応酬に思わずニンマリしてしまった“Matter Out Of Place”などなど......。Toupaz自身もリリースしている〈ANSIA〉や、そのボス・Piezo(またしても来日観られず)のトラック群とも通ずるような、ユニークで弾力のあるビートがツボで、既存のジャンルやビート感覚を常に逸脱していこうとするのが興味深いところ。加えて、こういったトラック群はミックスする面白みも倍増しちゃったりも。つまり最高です。

BANDCAMP

この記事の筆者
TOP