2024/12/25 18:00

褒められたようなもんじゃないものを褒めていきたい、〈evilspa〉という悪夢の遊園地──【In search of lost night】

アーティスト、DJ、オーガナイザー、クラブ・スタッフ、レーベル・オーナーへのインタビューや、ある一夜の出来事のレポートなどを更新していく連載【In search of lost night】。
最新回は、バンド・moreru、小腸分裂主催のパーティー〈evilspa〉について。過去に出演したアーティストで構成され、そのエッセンスを色濃く抽出したコンピレーション・アルバム『evilspa』をリリース。そして11月22日には、そのリリース・パーティーとして過去最大規模で開催したばかりの〈evilspa〉。今回は、中心となって運営に携わる、夢咲みちる(moreru)、taga(moreru、小腸分裂、hYouU€a(phouca?))、Haruhi(小腸分裂、SMAP)、コジマアツヲ(moreru、童子、偶人)に加え、ANALSKULLFUCKとして2回目から参加し、フライヤーなどのデザイン面を主に担当している盟友、DHSにも急遽参加してもらい、話を訊いた。

〈evilspa〉コンピレーション・アルバム

INTERVIEW : evilspa(夢咲みちる、taga、Haruhi、コジマアツヲ、DHS)

先日開催された〈evilspa〉はまさしく壮絶な「体験」だった。聴覚は拡張され、身体は擦り減り、咆哮や悲鳴が四方から飛び交う。渋谷の老舗クラブ〈clubasia〉は、20時から翌5時まで、己の表現をこよなく愛するライヴ・アクト/DJ、そしてそれに踊り狂うオーディエンスで埋め尽くされていた。
全てのアクトを観られたわけではないが、個人的にいちばん衝撃を受けたのは、大阪のハードコア・バンド、KK manga。ツイン・ドラムから、まるで散弾銃のようにぶっ放された轟音に身体中穴を開けられてから、まだその傷は癒えていない。当日その場にいた者は、私のように何かしらの強烈な瞬間を脳裏に焼き付けて帰路についただろう。
インタヴューは、そんな〈evilspa〉が始まった経緯からスタート。地獄のスパは、来た者の疲れを癒すのではなく、足を入れた途端に身体を破壊し再起不能にさせようとする。横を見ると、狂った流浪人たちが叫び散らかしてるので自分も開き直って暴れるしかない。そんなスパに足を踏み入れてみるとする。

インタヴュー&文 : 草鹿立
写真提供 : Hiroki Tani

正直俺らならもっとエッジの効いたことができると思った

────先日の〈evilspa〉、衝撃的な体験の連続でした。インスタの投稿を遡ると、第1回は小岩の〈BUSHBASH〉で開催しているんですね。あれって何年ですか?

taga:20年の秋とかです。第1回は、イベントとして始めようとしたわけではなくて、〈BUSHBASH〉から「moreruのワンマンやってくれませんか」っていうメールがきて。でもワンマンはきついから、友達の小腸分裂を呼んで、ツーマン・イベントとして気楽に始めたのが最初です。

────なるほど。moreruは結成2018年ですが、そもそも小腸分裂はいつ結成したんですか?

Haruhi:俺が高1のときだから2015年。ドラム以外みんな高校一緒で、自分とヴォーカル(黒柳)で、最初に曲作ってました。新入生歓迎会で、「死ね」って言いまくった。

taga:バンドとして形を成したのは19年、20年くらいで、それまではバンドってよりかは、ふざけの延長線上でした。

────思ったより昔から存在していました。そこから小腸分裂とmoreruはどう出会うんですか?

taga:僕がその後にmoreruに入ってから、みんなで会うようになりました。〈evilspa〉の前に、〈kill all punks for nerds〉ってイベントを、幡ヶ谷の〈Club Heavy Sick〉で開催したんです。MerzbowとかJACKSON kakiさんとか呼んでやったのが初めてのイベント。でその後、〈K/A/T/O MASSACRE〉とかに呼ばれるようになって、クラブのシーンと関わるようになった。そのときもmoreruと小腸分裂は一緒にやって。そういうのが発展して〈evilspa〉になってった感じですね。

────じゃあ割と自然な流れで〈evilspa〉が生まれたんですね。

taga:僕はイベントをずっとやりたいと思ってました。〈kill all punks for nerds〉以降やってなかったし。で、moreruがYokai Jakiとかと絡みだして盛り上がってきたので、前やった〈evilspa〉って名前をもってきて始めました。

Haruhi:あ、〈kill all punks for nerds〉には、Merzbow出てないよ。坂口杏里が出てる。

taga:いや出てる。2回やったんだよ。なんでMerzbow出た方忘れてんだよ。あ、ちなみに坂口杏里も出てて。

────え、それは本物ですか?

Haruhi:俺、坂口杏里とバンドやってて。坂口杏里がバンドのメンバー募集してたんですよ。坂口杏里が『NANA』って映画を観て、「バンドやりたい」ってなって、メンバーのオーディションをしたんです。で、ドラムのやつとふざけて行ったら俺受かったんですよ。

────そうだったんですね......。実際にライヴはしたんですか?

Haruhi:やってましたよ。〈EBISU BATICA〉とかも出た。斉藤和義の曲と、『NANA』の曲しかないんですけど。

taga:「杏里爆発」っていうバンド名もはるひくんがつけたよね。〈kill all punks for nerds〉では、坂口杏里はDJとして出て。YouTubeからONE OK ROCKとかEDMそのまま流してたから、たまに広告入るみたいな。

Haruhi:俺も面倒臭くなって、「とりあえず携帯繋いで好きなやつ流してください」って言った。杏里爆発は伝説のスカム・バンドですね。俺、坂口杏里に5000円貸してるんだけど、まだ返してもらってない。

────返してもらいましょう! そして、〈evilspa〉の第2回は、2021年8月に中野〈heavysick ZERO〉で開催されています。

taga:結局2回目が、〈evilspa〉として開催した初めてのイベントですね。でもコロナだったので人数制限がありました。

Haruhi:でも盛り上がってたよね。自分がその当時〈heavysick ZERO〉で働いてたんですよ。

夢咲みちる(以下、みちる):すみません、遅れました。

taga:結構好感触だったというか。

Haruhi:その後は、マサカーのコラボ回もあわせて3回連続で〈Forestlimit〉だよね。

taga:結果的にフォレストでもやれて良かった。

────その後は、〈WWW〉で開催しました(2023/05/20)。〈Forestlimit〉に比べると格段に規模が大きくなりましたが、コミュニティが以前より大きくなっていった実感があったからこそ、会場を移したんですか?

taga:いけるんじゃねっていうのもありますし、単純にフォレストが狭かった。結構危険っちゃ危険。

Haruhi:会場が酸欠になっちゃって。ライターの火も点かないみたいな。

────基本的に、〈evilspa〉の運営は、この4人が担当してるんですよね。

taga:当初、はるひ、みちる、俺の3人だったんですけど、アツヲくんもやりたいって言ってきてくれて、〈WWW〉のときからこの4人です。

コジマアツヲ(以下、アツヲ):呼びたい人もいっぱいいたので。物販とかデザインはよくやります。

みちる:役割は別に分けてない。本当は役割分担した方がいいと思うけど。

Haruhi:でもブッキングがいちばん重要。遊んでるところも被ってはいるけど、結構バラバラだからブッキングも分かれるよね。

───tagaさんは神宮前にある〈Bar bonobo〉で働いていたりと、割とクラブ・ミュージックもお好きな印象があります。

taga:そうですね。

Haruhi:自分も割とクラブで遊びます。こっちの2人はバンドかな。

────みちるさんとアツヲさんはどんなライブハウスに行くことが多いですか?

アツヲ:いいなと思ったイベントだったら行きます。

みちる:中野の〈MOONSTEP〉はめっちゃ行く。あと、〈Discipline〉(KLONNSを中心に、〈BUSHBASH〉にて開催されていたパーティー)によく行ってたんですよ。クラブ・ミュージック的なものも〈Discipline〉から入ったし。

Haruhi:あと俺ら世代は〈SPEED〉(パーティー主催やレーベル活動を行うアーティスト・コミュニティ、後に〈XPEED〉に改名)の影響あるよね。

みちる:今でこそバンドとクラブの融合みたいなイベントは浸透してるけど、当時の〈SPEED〉や〈Discipline〉は俺からしたら新しかった。

taga:でも正直俺らならもっとエッジの効いたことができると思った。

この記事の筆者
Kusaka. Ryu

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[インタヴュー] moreru, 小腸分裂

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