【In search of lost night】2022年の印象に残ったパーティ【前編】 : 〈Keep Hush Tokyo〉、〈みんなのきもち〉、〈AVYSS Circle〉、〈SLICK〉──帰ってきた!?座談会
In search of lost night vol.02
photo by Omega
In search of lost night vol.02
座談会
クラブにライブハウス、果てはSNS上に至るまで、散在されゆく音楽の「現場」。タイムラインや喫煙所での語りのような、忘れ去られていく現場の音楽にまつわるあれこれを、パーティーレポート、ミックス・レビュー、インタビューなど、さまざまな方向からアーカイブするための連載【In search of lost night】がスタート……したハズなのですが、どうやら現場が楽しかったようで……ということでやっとこさ9ヶ月ぶりに帰ってきました連載【In search of lost night】。2023年はきっと頻繁に更新される……ハズです。
vol.02は、NordOst(松島広人)、山本輝洋、yukinoise、TUDAの4人による座談会を届けします。 今回はネタも多いので前後編でお届け、まずは前編をどうぞ。(編集部)
天井眺めたりDJブース眺めたりしてたら半年ぐらい経ってました
構成 : 山本輝洋
NordOst : まずは、連載止まってすみませんでした……。3月に一本出して、そこから色々あって止まってしまい。
yukinoise : その間いろいろあったね。みんな何してた?
NordOst : 天井眺めたりDJブース眺めたりしてたら半年ぐらい経ってました(編集部注 : ただしくは8ヶ月近く)。
山本輝洋 : 僕もDJしてましたね。あとは就職して、その後すぐ無職になったりもしました。
yukinoise : 私も会社員やめて無職になりました。
TUDA : 私は無職辞めました。
yukinoise : 今年の前半はみんな結構パーティー行ってたよね?
山本:めっちゃ行ってましたね。
TUDA : なんか「なんでみんなもっと平日のパーティー来ないんだ」って理不尽なキレ方してる時無かった?
山本:それはアレですね、ジェフ・ミルズ来日の時に……(笑)。海外アーティストが来たら平日ナイトでもめっちゃ人入るし、「みんな頑張れば平日でも遊べるんじゃん、普段から遊ぼうよ」っていう。今思えば無茶言ってたな。
TOPIC
Jeff Mills
2022年8月31日(水) 21:00〜
会場:渋谷CONTACT
出演:STUDIO X : Jeff Mills, Wata Igarashi / LIGHTING : Machida (LSW), CONTACT, yama’, Nao, CELTER, Tomoki
yukinoise : 今年入ってやっと海外アーティストの来日文化戻ってきたよね。
NordOst : 海外アーティストが来るようになって、雰囲気もまた少し変わってきて。でもドメスティックな遊び方に定着した人がめちゃくちゃ増えたのも間違いないと思うし。大型フェスとか来日公演に回収されないエコシステムの予兆は感じます。
yukinoise : 連載始まったタイミングのトピックで書けなかったトピックとしては、私と山本くんが〈Keep Hush Tokyo〉に遊びに行って。海外アーティストの来日が復活してきた中で、海外のイベントが日本に持ち込まれて、ローカルのアーティストにフォーカスして開催されたのは面白い試みだったな。ブッキングもいわゆるUK色が強めというよりは日本ならではのアーティストが出ていて。UKからも反応がありそうなRalphとかGOTH-TRADさんが出つつ、〈Boiler Room〉でも反響があった行松さんとかも出ていて。
TOPIC
Keep Hush Tokyo #1
2022年3月27日(日) 16:30~22:00
会場:北千住BUoY
出演:¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U、GOTH-TRAD、imus、DJ YAHMAN(Tribal Connection)、Peterparker69(Jeter + Y ohtrixpointnever)、
NordOst : 本国の〈Keep Hush〉をベースとしつつも、やってることを拡張したようなパーティだったんだろうな~と。しかも会場のセレクトも面白かったし。行けばよかった_。
山本 :〈Keep Hush Tokyo〉もそうだったし、〈AVYSS Circle〉もそうだったと思うんですけど、ここ最近大きなイベントに行く度に毎回感じるのは、その大きなイベントで起きていることは全部それ以前に沢山の小さな場所で起きていたことだったり、ローカルの中で培われてきたノリやムードが集積したものなんじゃないかってことで。〈Keep Hush Tokyo〉の時にDJ Yahmanさんが〈Tribal Connection〉のオリジナル・ダブプレートを掛けてて、そういうDJを聴いて恐らく普段〈虎子食堂〉(編注 : 〈Tribal Connection〉のレギュラー開催場所)に遊びに行かないような人たちが盛り上がってる光景を見て、それを強く感じましたね。
TOPIC
AVYSS Circle
2022年9月16日(金)19:00〜6:00
会場 : 下北沢 SPREAD / THREE / CREAM / BASEMENTBAR / ILLAS
出演 : 膨大なためコチラを参照のこと https://avyss-magazine.com/2022/08/09/37527/
yukinoise : 確かに、〈Triibal Connection〉を知らないような人たちがお客さんには多かった気がする。Peterparker69とかが好きそうな子たちが新鮮な楽しみ方をしているのにびっくりして。元々ハイパーなカルチャーをきっかけに入ったような子達が王道なダンス・ミュージックを発見しているのは凄く良いなと思うのと同時に、自分の場合はいわゆるオーソドックスなクラブミュージックが入りじゃなかったなっていうのは思ったし。それこそ成人してから一番通ってた箱が〈WWW β〉だったから、その頃にはいわゆる“デコンストラクテッド・クラブ・ミュージック”とかが流れてたわけだし。そこから自分のルーツを考えると、オーソドックスなテクノやハウスでちゃんと踊ったりするようになったのはここ最近だったりするし、それより下の世代もダンス・ミュージックへの入口がテクノ / ハウスみたいな王道ジャンルだけじゃないなってのは感じたね。
山本:そういう人たちがプロパーなダンス・ミュージックの良さや遊び方を再発見してる雰囲気はここ最近の流れの一つなんじゃないかと感じます。
NordOst : めちゃめちゃわかる。ここ一年で飛躍していった若手アーティストたちはシンプルに「これ最高だから!」って好きなことを発信してるだけなのに、ファンには「なにそれ!」って、未知の存在として映っていて。アーティストの表現にしか興味が無かったユース層の人たちがそれを見て周辺情報についてdigり始めるっていう「再履修的」な流れもあって。lilbesh ramko君が少し前のアニメの魅力をガッツリ発信してく感じとか。良い流れだと思います。
山本:文化の流れとして凄く健全ですよね。
NordOst : 〈みんなのきもち〉とかも、基本的に彼らの軸足はアンビエント的なチャラくないトランスで、それでもハードコア・テクノに振り切るときは際どいハードスタイルとか、UKハードコアからブロステップ的なものまで流して、それをカッコいい物として通用させていて。発信する人たちの面白さやセンスが出ていたなと。
山本:〈みんなのきもち〉は今年を振り返る中でかなり大きなトピックですよね。
NordOst : 5月の相模湖は自分の中でかなり決定的だったかな。しかも、その後あの空間で〈SLICK〉をやっていたのも含めてアガりました。
山本:〈みんなのきもち〉と〈SLICK〉が同じ場所で開催されていたのは今年の動きを象徴するような雰囲気もあって。
TOPIC
みんなのきもち×松永拓馬『ちがうなにか』Release party
5月7日(土)15:00〜
相模湖付近某所
出演 : 松永拓馬、Eichi Abe、E.O.U、堀池ゆめぁ、illequal、Miru Shinoda。サカイp、soichi 芳芽、T5UMUT5UMU
Exhibition : 平手、Reina Kubota、Reon Tokutake、山田結子
TOPIC
SLICK
2022年10月8日(土)〜10/9(Sun)
相模湖付近某所
出演 : LIVE : Limited Toss、食中毒センター(食品まつり a.k.a. FOODMAN × HAIR STYLISTICS)
DJ : 7e、 Ascalypso、BING、FELINE、KA4U、LIL MOFO、Mari Sakurai、PortaL、Ultrademon
TUDA : 私は今年何回も松永拓馬さんを観てるんだけど、あの会は松永さんのリリパとして開催されて。それまで〈みんなのきもち〉周辺の人たちが何をやってるのかわかってなかったんだけど、松永拓馬さんのトラックのアンビエンスと、トランス、堀池ゆめぁさんのフォークが同じ場所で鳴らされてるのが新鮮で、でも心地よくて。そういうブッキングはあれ以降見るようになった気がする。
NordOst : 〈みんなのきもち〉はブッキングが本当に幅広くて、しかもそれが自然に成立してるところが面白い。例えばサ柄直生さん、illequal君みたいなWebシーンの新鋭たちをあくまでアンダーグラウンドな現場に接続させていくっていうような。個人的には六本木のハードコア(テクノ)回の時にpiccoloさんが出演してたのもヤバいなって。〈HAKAisDEAD〉の切り開いたネットレイヴみたいな質感が今も活きてる。それに、「この人知らないけど良いな」ってクラブ特有の楽しみ方を、ライヴ・アクト好きな若者に伝えてるのも良かった。いわゆるヘッズっぽい人たちって特定の誰かを目当てにイベントに行く感じだと思うんだけど、そういう層に「よく知らないけどめちゃめちゃ凄いことしてる人がいるかも:って思わせてる、そのパーティ作りの感じを見事に達成してて。今若者がめっちゃアンビエント聴いてると思うんですけど、それって〈みんなのきもち〉が伝えた魅力じゃん、って思いますね。もちろん、世界的な潮流としてそういうサウンドに耳が行き始めてるのもあるけれど、誰かが面白さを伝える機会が無いと伝わらないから。Spotifyで聴くだけの音楽じゃないってところで、ビートレスな感じでレイヴを成立させるっていうのが素晴らしかったです。
yukinoise : 松永拓馬くんのリリパの時も夏にあったトランス/ハードコアの時も、いつも似通ったことやっている感じにならないから良いよね。もちろん同じメンバーちゃんと集まってるパーティも安定感があって楽しいけど、「ああ、あれね」って慣れすぎないのも毎回パーティーとして新鮮に楽しめてる理由かも。
NordOst : 出来上がったものでそのまま続行すれば絶対大きくなるし、興行的な意味での安定性は保たれるんだけど、そこに胡座をかかない攻めの姿勢は最高だよね。その姿勢を伝えたのは〈K/A/T/O MASSACRE〉って場所だと思う。
yukinoise : 〈K/A/T/O MASSACRE〉は毎回新鮮だし、若手回もベテラン回も同じ景色は無いよね。カトーさんが絶対にブッキングに対して胡座をかかないのが素晴らしい。ちゃんと「こことここの組み合わせアリだな」とかっていう意図が見えるし、確信をついてる回もいい意味で意外な回もあって。
NordOst : しかも、仕掛け方も話題性を作るためだけのものじゃないというか。ちゃんと見聞きして、絶対にハマるって必然性を感じさせるのが凄いところ。リスペクトです。
山本:その結果毎回必ずミラクルが起こる場になっていますからね。