【In search of lost night】ということで、レイヴやってみました
In search of lost night vol.06

In search of lost night vol.06
第6回 : ということで、レイヴやってみました
クラブにライブハウス、果てはSNS上に至るまで、散在されゆく音楽の「現場」。タイムラインや喫煙所での語りのような、忘れ去られていく現場の音楽にまつわるあれこれを、パーティーレポート、ミックス・レビュー、インタビューなど、さまざまな方向からアーカイブするための連載【In search of lost night】。パーティーとは?と常日頃からあれやこれやと語らうライター陣がついにフロアを飛び出し、ローカルの若きプレイヤーをはじめとした仲間たちとレイヴをやってみることに。さまざまな現場で得た学びと享楽をぶつけた名もなきDIYレイヴの思い出を、ハイライトの瞬間を捉えた写真と共に振り返ってみました。
写真 : Yuki Nasun
構成 : yukinoise
DIYでレイヴをやってみた
NordOst : みんなでサウンドシステムを持ち寄ってレイヴをやってみたって話ですけども。どうでしたか?
yukinoise:楽しかったし、ちゃんとレイヴだった! 参加者全員がそれぞれ自分らしくいられて、各々のレイヴ観がしっかり提示されてたのが印象的だった。前半はIDM、ジャングルでレイヴィーな雰囲気を作り上げてからハード・テクノやトランスで精神性を極めつつ、後半はトライバルでダンスの身体性を取り戻して、最後はハウスみたいな王道なダンス・サウンドで非日常から現実に帰着……という感じのタイムテーブルで、レイヴならではの音楽体験にうまくアプローチできてたよね。
山本:「レイヴ」と言われてイメージする音楽のジャンルもそれぞれだと思うんですけど、大体聴けたなって感じです。
yukinoise:テクノやトランスだったりと、ジャンルによって違ったムードや景色が広がってるのもレイヴならでは。特に日本ではこのふたつが人気だし、最近だと去年の秋に開催された〈SLICK〉ではいわゆるUKのレイヴ・カルチャー色が強かったけど、ポスト・レイヴとも言われている今の時代においてやっと各々が個性を存分に出すようになった気がする。その中で、「自分にとってのレイヴ観とはなんだろう?」って問いへの答えをみんなそれぞれ持ってるんだなって思った。
山本:出演者それぞれがここに至るまで見て学んできたものを、パフォーマンスの内容にも遊び方にも表出させていた回だったなと。
NordOst : DIYの限界はあれど、自分たちでもここまでできるんだなって感じもして。全員がバラバラの方向を向いていても「レイヴを作るぞ!」って気概だけは同じで、あとは自由に…ってのが本当に素晴らしかったです。
yukinoise:レイヴって日常から解放される場でもあるからもちろん楽しいんだけど、やっぱりどうしてもリスキーな部分があるじゃない。騒音や警察の問題もあるし、いつもよりハメを外しすぎちゃうこともある。でも今回は一応シークレット・レイヴだったからさ、もしここで危ないことをすると音が止まってしまったり、パーティー自体が続けられなくなったりするかもしれない。だからこそレイヴをやり遂げるために、あえてちゃんとお行儀よく遊ぼうってマナーが無意識のうちに芽生えてた気がする。
NordOst : 設営から最後の片付けまで手空いてたらみんな自然と何かしらをやってくれて、そういうのも含めて美しかった。イベント的な組み方ではなく名前すらつけずに「レイヴ」をやる、って感じだったけど、だからこそ現象に近い遊びというか。音だけ出てればいいっていう妥協もせず、非常に物好きな酔狂さで空間装飾をやってくれるチームがいたり、どこからともなくいろんな人が「自分はこれをやります」って感じで。商習慣の中にいるとこういう遊び方できないよな…って思ったりもしたけど。
yukinoise:TUDAちゃんはどうだった?
TUDA : ずっとどこ行っても楽しい場所だった。収拾が取れてる空間だったからメインのフロアでめっちゃレイヴィーなのやってて、それに疲れたらお風呂場のアンビエントセット見に行ったりと中と外の対比が上手くいってた。オープン・ブースのタイムテーブルも自分たちで勝手に名前入れたし、メインとサブフロアの調子が空間的に上手く取れてたように感じたかな。上手くいくことって上手くいくんだなって。
バナナ、ウーファー、お花、各自持ち寄り
yukinoise:レイヴの様子を写真で振り返ってみようか、じゃあまず1枚目から。
NordOst : ウーファーは誰の持ち込みだったか分からないけど、これがすごい効いてました。お花は装飾チームが添えてくれたやつ!

yukinoise:レイヴァーやパーティーフリークってよくバナナ食べてるイメージあるんだけど、なんでだろ?
NordOst : ガチのレイヴァー集団も何組か嗅ぎつけてやってきて、そういう人たちは完璧に分かってるからバナナとか栄養があって食べやすいものを腹に入れて踊ってる。このバナナ持ってる人たちを見て上級者やなーって思った(笑)。

NordOst : お風呂場のアンビエントセットには喰らったなー。このフロアを改めて説明しときますと、山の民宿に近い感じだけど今日水あんまり使えないんでお風呂無理ですってなって、えっ?ってなった時フロアにしちゃうかってなったみたいな。お風呂が使えないからお花も挿しちゃいましょうとなって。偶然にしてはだいぶやばい。
山本:しかも無限にやってましたよね。
TUDA : 人がいなくても音が流れるようになってた。誰かがずっと瞑想してたような。


yukinoise:ここでZECINくん、fantaneruranちゃんたちと絵しりとりとかしてた。普段クラブでしか会えないような人たちとゆっくりコミュニケーションタイムを過ごせたのもいい機会。印象的だったのは、お風呂場にこんな機材あったら水没する可能性もあるのに、この環境を楽しむためにどれだけハジけても危なっかしいことは誰もしないよう注意を払ってたとこ。
NordOst : 起こりうるいろんなリスクについての考えを巡らせないといけない緊張感から解放されてたのもよかった。どうしてもパーティーではいろんなことが起きるので…。
TUDA : ほぼホームパーティーって気持ちでいた。元々そういった集まりの人が機材を持ち寄って始まった話でもあるから。
yukinoise:いわゆるクラブのようなパーティーだけの場所から離れてみると、こういう名もなきレイヴや友達の家でのホームパーティーとか、普段の暮らしや日常の中でパーティー的な瞬間を見つけられるようになったんだよね。ただアンダーグラウンドでパーティーしていたいだけじゃなく、ちょっとした日常でもハレの日を感じたいというか。
NordOst : 間違いない、色々顔出してると社交疲れするし…(笑)。
山本:資本の力が強くなればなるほど社交としての趣もより増してくるけど、今回は資本が全く介在してなかったことで暖かいムードになっていたのかもしれないですね。