REVIEWS : 107 ダブ、テクノ(2025年9月)──河村祐介

"REVIEWS"は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ数ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューするコーナー。今回の更新は、OTOTOY編集長でもあり、昨年、監修本『DUB入門』刊行した河村祐介が「『DUB入門』その後」的な新作+テクノ〜ハウスなどの気になる作品を隔月で紹介します。
OTOTOY REVIEWS 107
『107 ダブ、テクノ(2025年9月)』
選・文 : 河村祐介
Adrian Sherwood 『The Collapse Of Everything』
On-U Sound / Dub, Downtempo
UKダブの巨星、エイドリアン・シャーウッドの13年ぶりのソロ・アルバム。膨大なプロデュース、ミックス・ワークスに反比例してこれがソロ4枚目。なにせ1970年代中頃からキャリアがありながらも、ファーストですら2003年発という。じっくりと納得のいく作品をということなんでしょう。これまでソロは打ち込み主体のでしたが本作はダグ・ウィンビッシュや故キース・ルブランといった朋友、タックヘッド組などなど、ここ数年のパンダ・ベア&ソニック・ブームのダブ盤などでエイドリアン・ワークを支える腕利きのミュージシャンが参加。ヴォーカル曲なしの全編インストの抑制の効いたダブ・ダウンテンポ。ノイズ、ベース、エコーと彼の美学が音の隅々までに宿ったサイケデリックなダブ・ジャーニー。どこかブルージーで達観したかのようなサウンドは聴き込むほどにそのコスモロジーにハメられていく。ダグ・ウィンビッシュらバンドを帯同した来日ライヴ公演が楽しみ。
Paul St. Hilaire 『w/ The Producers』
Kynant Ex / Dub, Dub Techno, Bass Music
ミニマル・ダブ / ダブ・テクノを代表する「喉」といいますか、その始祖、マーク・エルネスタス&モーリッツ・フォン・オズワルドのリズム&サウンド発足時から活動するシンガー、ティキマン……じゃなくてポール・セント・ヒラーレ。同レーベルからのセルフ・プロデュース作(2023年)から一転して、今回はその名前の通り各曲をさまざまなプロデューサーたちが手がける体制に。これがまたベテランから新鋭まで、現行シーンのダブ・テクノ、ベース・ミュージックの一番濃いところが揃ったある意味でコンピにもなっているというか。ダブステップ~ベース・ミュージックからはマーラ、バツといったベテランからアズ・ティワライン、カズンなど、ダブ・テクノからはシンイチ・アトベ、カナダのプリオリ、レフトフィールドなジャマイカン・ダンスホールからはイクイノックスのガヴスボーグが参加。もちろんその手の音としてのクオリティは太鼓判(ですが、もうちょっと冒険も聴きたかったかも)。
Tokio Ono 「Peel EP」
Accidental Meetings / Dub, Downtempo
ここ最近、一時期の〈Bokeh Versions〉あたりを豊富とさせるレフトフィールドなエレクロニック・ダブのおいしいところを出している感のあるUKの〈Accidental Meetings〉から、横浜出身の小野時生によるチャーミングなエレクトロニック・ダブ・ダウンテンポが到来。〈Not Not Fun〉からの2022年作はユーフォリックなニュー・エイジ・アンビエントでしたが、その持ち味を生かしながらレゲエ、ダブのリズム・デリバーを融合させたゆるやかなダウンテンポに。7FOとテープスのコラボあたりにも近しい感覚もありますが、1曲目の歌物などは、ユンキー、いやリー・ペリー『Roast Fish Collie Weed & Corn Bread』あたりを彷彿とさせるユル・サイケデリックなSSWダブの系譜にも連なる感覚もあり。ともかくいい湯加減に配慮した脱力ユーフォリックなワールド・オブ・エコー・ウィズ・ベースラインな。最後にはそのコラージュ・サイケ感が相性よしなシーカースインターナショナルのリミックスも収録。








































































































































































































































































































































































































































