脅威の新作『ナマで踊ろう』、その世界を生んだ“耳”に迫る――坂本慎太郎、ソロ作品一挙配信開始

おまっとさんです。待ちに待った配信がはじまりました。坂本慎太郎の〈zelone records〉からのソロ作が一挙配信開始です。すでに話題となっている最新作『ナマで踊ろう』、そしてファースト・ソロ『幻とのつきあい方』、シングル『まともがわからない』の配信をOTOTOYでも開始です。CD音質(16bit / 44.1kHz)のWAV / FLAC / ALACは事実上、OTOTOYだけの独占です。

今回は各作品の配信の開始を記念して、これらのサウンドを作り出した、坂本慎太郎の、その音の捉え方を探るべく、作品から妄想したOTOTOY配信曲を聴かせてみた。さて、その音作りは、どんな音の理解から来るのか、その片鱗が垣間みれるのではないだろうか。


坂本慎太郎 / ナマで踊ろう

【価格】
ALAC、FLAC、WAV 単曲300円 まとめ購入 2,300円
mp3 単曲251円 まとめ購入 1,800円

【Track List】
1. 未来の子守唄 / 2. スーパーカルト誕生 / 3. めちゃくちゃ悪い男 / 4. ナマで踊ろう / 5. 義務のように / 6. もうやめた / 7. あなたもロボットになれる / 8. やめられないなぜか / 9. 好きではないけど懐かしい / 10. この世はもっと素敵なはず


坂本慎太郎 / 幻とのつきあい方

【価格】
ALAC、FLAC、WAV 単曲251円 まとめ購入 2,000円
mp3 単曲200円 まとめ購入 1,800円

【Track List】
1. 幽霊の気分で / 2. 君はそう決めた / 3. 思い出が消えてゆく / 4. 仮面をはずさないで / 5. ずぼんとぼう / 6. かすかな希望 / 7. 傷とともに踊る / 8. 何かが違う / 9. 幻とのつきあい方 / 10. 小さいけど一人前


坂本慎太郎 / まともがわからない

【価格】
ALAC、FLAC、WAV 単曲300円 まとめ購入 800円
mp3 単曲251円 まとめ購入 600円

【Track List】
1. まともがわからない / 2. 死者より / 3. 悲しみのない世界

ぬるりと世界観を見せてしまうセカンド『ナマで踊ろう』

『空洞です』で見出したある種の空虚さをサウンドで示す、というスタイルを、さらに押し進めたソロ・ファースト『幻とのつきあい方』。日常にするっと入ってくる軽快なポップ・ミュージックでありながら、そのライトなグルーヴと美しさは浮世離れしている。その世界観はどこか、311以降の目の前の現実とそれまでの日常を規範にした思考との乖離を示したかのようですらあった。それは、音楽的にも、ご存知のように、メイヤー・ホーソンすらも魅了するなど海外でも高い評価を受けた。その延長線上とも言える、ブラス・セクションをさらに加えて、より豊潤なソウル・ミュージック的な体制を整えながらも空気のような軽さがクセになるシングル「まともがわからない」を経ての、セカンド・ソロ『ナマで踊ろう』。

ある種の「まともがわからない」までを一区切りとして、新たなサウンド・コンセプトが間違いなくそこにはある。その歌詞とサウンドが描く、世界観は、もはやSFというよりもギャグ・マンガのような終末観を備えたディストピアだ。幽霊がスティール・ギターをつま弾き、ムシ声でコーラスし、廃墟のキャバレーのような空気に変えてしまうムード歌謡じみた楽曲から、歌詞で歌われる恐怖の管理社会の図をより際立たせてしまう能天気にバンジョーが軽快にかき鳴らされるポップ・ソングまで、ある種のサウンド・トラックとも言うべき表現力を持って迫ってくる。

するりと入ってくるファーストと、ぬるりと世界観を見せてしまうセカンド。

もちろん、この世界への“違和感”の表現という意味では、坂本慎太郎が表現する世界観は、ずっと変わってないとも言える。しかし、『ナマで踊ろう』の歌詞の世界で示された、マンガのようなディストピアはもはや笑い事ではないほどの現実が、目の前にぽっかりと広がっている。そう言った方が良いのかもしれない、と、いま思う。

さて、この唯一無二の音はどこから来るのか? 10曲(+1)とともに『ナマで踊ろう』、そしてこの作品を作り上げた坂本慎太郎の音を捉える“感覚”に迫った。

インタヴュー&文 : 河村祐介
写真 : 渡辺睦美

坂本慎太郎に、10枚の音楽を聴かせてみた

ーーということで今回は、かなりインタヴューも出そろっているので、こちらが『ナマで踊ろう』で想起、もしくは聴いて、坂本さんに聴かせてみたくなったOTOTOYでの配信音源を聴きながら、『ナマで踊ろう』のサウンドや坂本さんの音に対する感覚をと思っております。まずはコレで。

1曲目 : JINTANA & EMERALDS / I hear a new world(『DESTINY』収録)

坂本 : あ、これあれだ、ジンタナ……。

ーーそうです。「スーパーカルト誕生」なんかの声ネタとかでジョー・ミークを想起したので。

坂本 : あの、おっかけの虫声みたいなのは、もろにジョー・ミークの「I hear a new world」です。

ーー同じ時期になんかおもしろいなとおもって。

坂本 : いいですね。これは、そもそも原曲がいいですからね。わりと忠実なカヴァーで、でも女性ヴォーカルでちょっとお洒落な感じですね。

ーーちなみにあの虫声は?

坂本 : 最初にあの虫声があったわけじゃなくて、「スーパーカルト誕生」のアレンジを考えてる時、ベースラインをこのジョー・ミークの原曲っぽいノリにしたら合うかな?と思いついて、ついでに虫声も入れてみたら予想外にハマったのでそのまま採用しちゃいました。自分の曲構成ではできなかったんですけど、「I hear a new world」は全部のフレーズを3回づつ繰り返すのがミソなんですよ。最初に肉声、次に虫声、最後に劣化した虫声という順番で、全部きっちり3回繰り返すのが絶妙に気持ちわるいんです。しかも3回なのに不自然な感じが全くしないのが凄いなと。(うれしそうに)。


坂本慎太郎「スーパーカルト誕生」

ーーやっぱり「スーパーカルト誕生」は、そういう気持ち悪さをどう出すか? みたいなところなんですかね。

坂本 : そうですね。“気持ち良い”気持ち悪さといいますか。この人たちはなんでいまジョー・ミークなんですか?

ーージョー・ミークとかフィル・スペクターを、サイケデリックなチルアウトみたいな感覚で聴いてるみたいですね。

坂本 : ああ、いいですね。スティール・ギターと女性コーラスがいるんですよね。

ーーそうですね。女性3人ヴォーカルがいて。

坂本 : 打ち込みなんですか?

ーーたぶん、メンバー構成的に打ち込みだと思いますが…。

坂本 : コーラス隊がいるのがうらやましいです。

ーーでは次で。わりと中村楓子さんの不思議な感じのヴォーカルから想起したサイケデリック感みたいなところで。

2曲目 : Juan Molina / Ferocisimo(『WED21』収録)

ーー女性コーラスのさっきの“気持ち良い”気持ち悪さみたいなところも含めて。ファナ・モリーナです。

坂本 : ああ。ファナ・モリーナはライヴ観たことあります。リキッドルームでやったときだから結構前になるけど。

ーー南米ものは?

坂本 : ボサノバや南米の古いガレージやサイケは買ってますけど、最近の人はあまり知らないし、いわゆるアルゼンチン音響派みたいな人たちは全然詳しくないんです。ファナ・モリーナはライヴを見にいって、そのライヴはすごくよかったです。そういえば、この曲はちょっとカンっぽい雰囲気もありますね。好きな感じです。

ーーわりと中村楓子さんのコーラスなんかから想起したんですが。随所随所に彼女の歌声っていうのは、ゆらゆら帝国のときから重要な要素としてポンと顔を出しますよね。ちなみに今回のアルバムの冒頭「未来の子守り唄」とかは? 今回はわりとイントロの位置というのがすごく大きいと思いますが。

坂本 : そうですね。最初に「スーパーカルト誕生」ができて、いきなり始まるよりも、なにかモノローグ的なちょっとした曲からあの曲につなげたいなと思って、1曲目だけ後から作り足したんですよ。

ーー要所、要所で、中村楓子さんのヴォーカルを使用されているじゃないですか。自分でないものの表現というか。

坂本 : それもあるんですけど、楓子さんのヴォーカルのなんともいえない素朴でさみしげな感じが… なんでしょうね、雰囲気が合うなという。

ーー浮世離れ感っていうところを感じてしまうんですが。

坂本 : そうですね。

ーーそのあたりでファナをもってきたんですが。

坂本 : あと、楓子さんは他で活動している人じゃないので、顔も知られてないしイメージもまったくついてないのがミステリアスでいいなと思って。あの声でサラっと歌う感じがいいんですよね。

ーーなるほど。次は「めちゃくちゃ悪い男」のスローな感じのビートで。

だからヴォーカルがうまくないディスコとかを探しているんです

3曲目 : Taana Gardner「Heartbeat (Original 12" Party Version)」(『Taana Gardner & Kenton Nix's West End Works』収録)

ーーこれは、あと、前にわりとこのあたりのディスコにはまっていたということでもってきたんですが。ターナー・ガーディナーの「Hartbeat」。

坂本 : あ、「Hartbeat」なら持ってます。でも持ってるやつと違うかな。

ーーいろいろヴァージョンがあるみたいです。これは、ラリー・レヴァンがミックスした、イントロがそのもの心音になっているやつですね。

坂本 : へぇ~。でもしばらく聴いてないから持っているやつか違うのかわからない…。

ーー「めちゃくちゃ悪い男」のスローなディスコ感みたいなところで……。

坂本 : ああ、あの曲はディスコというよりは、どっちかというとT・レックスですね。T・レックスの「Mambo sun」とかの、ちょっと遅くて跳ねた感じのブギーみたいなイメージなんですよ。コード進行なんかはもろにT・レックスです。

ーー「スーパーカルト誕生」から、「めちゃくちゃ悪い男」とか、全体的に歌詞になにかストーリーを感じてしまうんですが。

坂本 : 特に全体的なストーリーを考えて作詞したわけじゃなくて1曲づつ作っていったんですけど、最後に並べてみたら、なんか関連性がありそうな感じになったというか。

ーーそこは自動的になってしまった?

坂本 : 半分ぐらいそうかもしれませんね。最初にアルバム全体のサウンドとイメージがはっきりあって、それにあわせて歌詞を考えるので、まったくそぐわない歌詞は出てこないですけど。例えばすごい生活感が出てる歌詞とかは自然に出てこないですね。ちなみにこの曲って何年ですか?

ーー1981年の曲のようです。ディスコとしては、でっかいブームが終わった後に起死回生でNYの〈パラダイス・ガラージ〉で流行ったとか、そういう。

坂本 : へぇ。ハンドクラップがもうちょっと優しかったら最高なんだけど、ってえらそうにすいません。

ーーラリー・レヴァンのミックスなんで、ダブ・ミックス的にバランスが変わってるかもしれません。でも、たしかにゲート・リヴァーヴ感ありますよね。

坂本 : そこまでじゃないけど、こんなにハンドクラップ鋭かったっけな? しばらく聴いてなかったもので。でも、このタメがある粘っこいノリはかっこいいですよね。

4曲目 : Loose Joints / Tell You (Today) (Original 12" New Shoes Edit)(『Pop Your Funk』収録)

ーー〈ウェスト・エンド〉つながりで、こちらも。

坂本 : もうね、これは大好きです。

ーーアーサー・ラッセルのディスコ・プロジェクトでルーズ・ジョインツですね。ディスコ的なビート感みたいなので、意識した曲ってありますか? さっきの話だとなさそうです。

坂本 : いやいや、そんなことはないですけど。えーっと、ディスコも相変わらず聴いてるんですが、ディスコといっても僕が買うのは、遅くてテンションの低いやつばっかりで。その辺のは自分が好きな他のジャンルのレコードと同じ様な感覚で聴けるところもあって。あ、 「ナマで踊ろう」は一番ディスコっぽいと思います。

ーー一応、参照曲としては「ナマで踊ろう」の部分でこの曲をもってきました。あんまりブラック・ミュージックらしいブラック・ミュージックみたいなものよりも、ちょっとずれてるものが良いって感じがしますが。

坂本 : そうですね。だからヴォーカルがたどたどしいディスコとかを探しているんですが、なかなかなくて。あんまり歌いあげないで、素朴なヴォーカルが好みです。ブラック・ミュージックのデモ・テープ集みたいなのがあれば、そういうのが聴いてみたい。

ーー微妙に話ずれるんですが、アーサー・ラッセルというところで、なんとなくアーサー・ラッセル感みたいなのを感じさせる日本の若手バンドを聴いてもらいたいんですが。

5曲目 : ミツメ「停滞夜」(『ささやき』収録)

ーーミツメというバンドです。

坂本 : あ、名前は聴いたことあります。

ーーアルバムのなかでも少々異質な曲ではあるんですが。

坂本 : あれ? この音、バンドですか?

ーーそうですね。この曲はリズムマシンですが4人組のバンドです。

坂本 : へぇ。でも、この曲の感じは好きですね。

ーー新譜ってあんまり買わないですか?

坂本 : どうしても旧譜か発掘音源がメインになっちゃいます。

ーーレコードを掘るって感じですもんね。

坂本 : そうなんですかね。あ、でもこのバンドは想像してた音とちがいました。「アーサー・ラッセルみたいな」というのは言わんとしていることはわかりますよ。

ーー新譜つながりで、さっき出た、黒人、黒人してない感じのR&Bが出ているのでそういうのを。

いろんな音楽で1982年ぐらいまでの音が好きなんです

6曲目 : Blood Orange「S'Cooled」(『Coastal Grooves』収録)

坂本 : ヴォーカルとか曲とかすごく良いんですけど、僕はどうしてもドラムの音色の好みが狭いので。

ーーああ、重いと。

坂本 : 僕にはドラムというかクラップの音が強すぎるかな。ベースの低音もすごいですね。そこがいいんでしょうけど。

ーーもともとテスト・アイシクルズっていうバンドをやってたのが、いきなりソロになって、わりとゲイ・ディスコ・カルチャーなんかに敬意を示したR&Bをやるようになって。新作では、男性なんですが、女性ものの下着姿で写ってたり。多分、彼もそっちの人みたいです。

坂本 : なるほど。ヴォーカルの感じとかはすごい好みなんですけどね~。

ーー「でもミックスが」というところで(笑)。

坂本 : なんかすごい偉そうですいません。どう考えてもぼくの好みが偏ってるだけで、今のかっこいい音なんでしょうけど…。

ーー音色もですけど、そのあたりの音圧感みたいなのって、大事だったりしますか?

坂本 : 自分が買う場合はいくら曲がよくても、音色や音圧感が好みじゃないと買わないです。自分で作ってるものも、自分が買いたいやつっていうのになってくるから、そこは大事ですね。逆にいうと音の感触が好みだったら、だいたい好きです。そもそも全く聴いた事ないコード進行やメロディなんてないじゃないですか? あったとしてもたぶん良くないし。そしたらどうしても質感や微妙なムードの差異が重要になってきますよね。さっきの「Tell You」のヴォーカルが出くる瞬間、あの瞬間がやっぱり好きなんですよ。

ーーなるほど。

坂本 : そこはよくも悪くも完全に自分の好みが出来上がっちゃってて、世の中の流行とはリンクしてないんです。ちょっといびつなミックスが好きだったり。

ーーじゃあ、ちょっと反対かもしれませんが、これも変なミックスとかバランスの極地というか……。

7曲目 : Fingers Inc. 「Feelin' Sleezy」(『Another Side』収録)

ーー気持ち悪い気持ち良さみたいなところで。

坂本 : かっこいいですね。曲もヴォーカルもいいんですけど、もうちょっと好きな音色だったらもっといいですね。でも、かっこいいと思います。でもね、どうしても、ディスコも含めて、いろんな音楽で1982年ぐらいまでの音が好きなんですよね。

ーーだはは。リリース年指定(笑)。たしかに、これは1988年ですね。

坂本 : もうね、1982年でもちょっときついのがあるぐらい。それ以降の音がね、ちょっと受け入れがたいんですよね。

ーーなるほど。ちなみに、アルバム全体のダウナーな死の臭いみたいなところで、思い浮かべた曲だったりするんですが。

坂本 : うーん、なんかあんまり解放されてない感じが良いんですよね。なんか自己批判も無しに開放的になるのがよくなくて。抑制されたエロスがあって、爆発しない感じでためてるやつが好きですけど。だけど、それでも切れ味が鋭いっていうのが好きで。でもいまの曲もそんな感じがしますね。逆にいままで聴いたやつも、ドラムの音を変えてくれれば全部好きです。あとヴォーカルのリヴァーヴを抜いてくれれば(笑)。

ーーなるほど。では、ちょっと1982年以前の曲で。

8曲目 : Parliament「Little Ole Country Boy」(『Osumium』収録)

ーーパーラメントの最初期のアルバムで、バンジョー感とかで「あなたもロボットになれる」とか思い浮かべたんでもってきました。

坂本 : ああ、パーラメント。良いですね。やっぱりこういうドラムの音が好きなんですよ。ファンカデリックはよく聴いてたんだけど、パーラメントは有名なアルバムをすごい昔に聴いて以来聴いてなかったです。

ーーパーラメントでもこのアルバムはちょっと特殊でファーストで。まだファンカデリックと分かれる前ですね。

坂本 : これ聴いてないかもしれないな。自分が思ってるパーラメントのイメージと違いますね。

ーーあとは「あなたもロボットになれる」の怖いけどユーモラスな感じはちょっとギャグマンガ感というか、Pファンク感かなと。

坂本 : ああ、パーラメントは考えたことなかったけど……。

ーー次にいってみます。

素朴なブラコンとかあったら良いんだけど

9曲目 : FERNANDO GELBARD「Mojo Uno」(『DIDI』収録)

ーーアルゼンチン人のジャズ・キーボーディストなんですか。アルバムのインタヴューでいくつか見た、ハトヤのハコバンみたいなところで、ラウンジとかムード・ミュージック感というところでもってきました。アルゼンチン音楽の哀愁みたいな変な感じで。

坂本 : ありますね。

ーー坂本さんってジャズは聴かれるんですか?

坂本 : ジャズはあんまり聴かないですけど、こういう感覚のは買うかな。これ以外もこんな感じなんですか?

ーーいや、1曲CM音楽みたいな感じのありつつ、わりと他はストレートなジャズって感じで、でも南米感あったり。

坂本 : いまのでチープなドラムマシンとか入ってたら最高なんですけどね。

ーーちょっとマヌケな感じとかも。

坂本 : いいですね。ジャズは若い頃に有名なやつはちょこっと聴いてたんですが、一応勉強のために無理してって感じで。もう、手をつけてないですね。こういうのはたまに買いますけど。

ーーあとは「義務のように」とかは、ラウンジ・ジャズっぽい感じというか、スムースなAORとかありますよね。あの曲は?

坂本 : もともとはリズムボックスを使ったソウルみたいなイメージで。ドラムマシンと小節の頭にコードを弾くだけのピアノの、ちょっとブラコンっぽいイメージだったのかな。ブラコンもやっぱりテンション低くないと、受け入れ難いんですけど。

ーー今回、ブラコンものも入れようと思ったんですが、歌い上げる系が多くて避けておいてよかったです。

坂本 : 素朴なブラコンとかあったら良いんだけどね。

ーー「素朴なブラコン!」(笑)。

坂本 : チープで危うい感じのブラコンがあったら聴きたいけど、どうなんだろう? ブラコンじゃないけど、最近のだとMyron & Eはすごく良かった。〈Stones Throw〉から出してて、曲もいいし、黒人なのにヴォーカルが脱力してて、バックもさりげない感じで、知らないと本当に昔のレコードみたい。ひさびさのヒットでした。

ーー〈Stones Throw〉といえば、この前のRSDで相互カヴァーしたメイヤー・ホーソンは初期のリリースって〈Stones Throw〉ですよね。

坂本 : そうですね。メイヤー・ホーソンの「Maybe so maybe no」もそんな感じの曲ですよね。

10曲目 : ボハノン「ボハノンビート」(『ボハノン+1』収録)

ーー次はシカゴの名門〈ブラウンズ・ウィッグ〉から。

坂本 : お、これは良さそう。これ良いですね。これなに?

ーーモータウンの元ドラマーで、ボハノンっていう人ですね。これはディスコのちょっと前のヒットっていう感じだと。

坂本 : ああ、ボハノンは何枚か持ってるけど、この曲は知らない。もっとブラコンな感じのアルバムを2枚くらい持ってた気がするけど、あんまり印象に残ってないです。帰って聴き返してみます。

ーーこういうのは好きだと。

坂本 : もう、直球です。あんまりヴォーカルも暑苦しくないし。

ーーたぶん、ドラマーっていうのもあるのかも。

坂本 : ちょっと、ちっちゃい声で歌ってて、ミックスで前に出てくる感じが好きなんですよ。張り上げた声がミックスで引っ込んでるのが最悪です。

ーー最後に変化球いっても良いですか? 編集部の西澤くんがどうしても聴かせたいと。アイドルなんですがシャグス的な……。

番外編 : BELLRING少女ハート「プラスチック21g」(『Killer Killer EP』収録)

坂本 : 「プラスチック21g」って、タイトルってかっこいいですね。

西澤 : ベルハーっていうアイドルなんですけど、当初は楽曲製作陣が、わざと本人たちの出ないキーを設定したりしていたみたいで。

坂本 : へぇ~。わざと下手なのが良いってことですか?

西澤 : 基本的にアイドルって、プロデューサーとか大人たちの作ったものを歌ったり踊ったりするっていうのがベースなんですね。大人にコントロールされている構図があるんですけど、それに対するアンチテーゼみたいな感じで、グループ自体が機能していて。運営陣もコントロールできない動きを求めている。そういうのがおもしろいなって。

坂本 : 歌ってる人たちは?

西澤 : 普通のアイドルになりたくて集まってきた子たちなんですけど、こういうことをやらされているなかで成長してきたというか、ねじが狂いはじめているというか…。

坂本 : 本人たち的に「違うんだけど」ってならないんですか(笑)? この外れてるのが良いっていうのはなんとなくわかるんですけど。アイドルは全く詳しくないんですが、なんかすごいことになってるんですね。

ーーいろいろ聴きましたけど、でも結構ひっかかるものってありましたね。

坂本 : いろんなジャンルのものは聴くんだけど、好みは凄く狭いんですよね。だからディスコでもソウルでもポップスでも何でも好きなわけじゃなくて、各ジャンルにある自分の好きな質感のレコードを探してる感じです。

ーーディープ・リスナーとしての自分って音楽制作っていう感覚に関わってきていると思いますか? それとも切り離されてます?

坂本 : ディープ・リスナーといっても、さっき言ったみたいに自分の勘で好きそうなやつを買ってるだけだから、知識も蓄積されてないし、全然たいしたことないです。

ーーなんかのヒントにはなっていますよね。

坂本 : それはそうなんだけど、「このリズムがかっこいい」「このフレーズ、このコード進行が良いから真似しよう」とか、そういう聴き方ではなくて、もっと感触というか、こんな地味な曲がなんでいいんだろう? とか、普通の曲なのになんで気持ち悪く聴こえるんだみたいなことを考えます。もしかしたら、同じレコードを聴いてても、他の人と影響受けているところが違うとかもしれない。あとベースが低すぎるとあんまり好きじゃないですね。ラインがわからないぐらい低いのよりも、ちょっとかわいい感じのベースラインが好きなんです。

ーーすでにフィジカルではリリースされて1ヶ月経ちましたが、周りの方々の感想とかいかがでしょうか?

坂本 : う~ん。どうですかね。いままでで一番良いって言ってくれる友だちも何人もいるんですけど、なかには今回はキツいっていう人もいますね。怖くなるって人がいるかと思うと、楽しい感じがするっていう人もいるし。

ーー人によっては社会的と捉える人もいるわけだと思いますが。

坂本 : そうですね。本当にいろいろですね。

PROFILE

坂本慎太郎

1967年 : 9月9日大阪生まれ。
1989年 : ロックバンド、ゆらゆら帝国のボーカル&ギターとして活動を始める。21年間で、3本のカセットテープ、10枚のスタジオ・アルバム、1枚のスタジオ・ミニ・アルバム、2枚のライヴ・アルバム、1枚のリミックス・アルバム、2枚組のベスト・アルバムを発表。
2006年 : アートワーク集「SHINTARO SAKAMOTO ARTWORKS 1994-2006」発表。
2010年 : ゆらゆら帝国解散。解散後、2編のDVDBOXを発表。
2011年 : salyu×salyu「s(o)un(d)beams」に3曲作詞で参加。自身のレーベル、zelonerecordsにてソロ活動をスタート、1stソロ・アルバム『幻とのつきあい方』を発表。
2012年 : 以前から交流のあるYO LA TENGOのジェームズ・マクニューのソロ・プロジェクト”DUMP”の「NYC Tonight」にREMIXで参加。NYのOther MusicとFat Possum Recordsの新レーベル”Other Music Recording Co" から、『幻とのつきあい方』がUSリリース。
2013年 : 1月11日シングル『まともがわからない』(「まほろ駅前番外地」のエンディング曲) と同ドラマ劇中音楽を手掛ける。「攻殻機動隊ARISE」エンディング曲や、冨田ラボのアルバム「Joyous」に作詞で参加。舞台「高校中パニック! 小激突!!」では作曲で参加。
2014年 : Mayer Hawthorneとのスプリット7inch vinylを、4月19日の全米 / 全欧のRecord StoreDay限定でリリース(zelone / Republic)。5月28日に2ndソロ・アルバム『ナマで踊ろう』をリリー ス。

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レヴュー

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by 阿部 文香
【REVIEW】刺々しくも清らかなサニーデイ・サービスの「クリスマス」──小西康陽remixを配信開始
[CLOSEUP]・2017年12月15日・刺々しくも清らかなクリスマスの物語──サニーデイ・サービス「クリスマス」小西康陽remixを配信開始 今年6月、突如Apple MusicとSpotifyにてストリーミング配信のみでリリースされたサニーデイ・サービスの『Popcorn Ballads』。その収録曲で、フェアリーテイル・ファンクな名曲「クリスマス」が小西康陽によるリミックスを経て、メロウでジャジーな楽曲へと変化を遂げた。さらに曽我部が書き下ろした新たなクリスマス・ソング「Rose for Sally(クリスマス・ソング)」も収録。また12月25日(水)にリリースされる『Popcorn Ballads(完全版)』の予約受付も開始! どちらもハイレゾでご用意しております! サニーデイからの最高のクリスマス・プレゼントを、レヴューとともにお見逃しなく! サニーデイからのクリスマス・プレゼント、ハイレゾ配信! サニーデイ・サービス / クリスマス -white falcon & blue christmas- remixed by 小西康陽'【配信形態】ALAC、FLAC、WAV(24bit/48kHz) / AAC>>>ハイレゾとは?'【配信価格
ジャンルの垣根を超え、世界中の音楽リスナーを虜にする天才トラック・メイカー!──Nujabesの過去作配信開始
[CLOSEUP]・2017年12月13日・ジャンルの垣根を超え、世界中の音楽リスナーを虜にする天才トラックメイカー!──Nujabesの過去作配信開始 日本を代表するトラックメーカーとして活躍しながら、2010年に36歳という若さでこの世を去ったNujabes。そんな彼の過去作をOTOTOYではまとめて一気に配信を開始する。ジャズとヒップホップを自在にクロスオーヴァーするサウンドからジャジー・ヒップホップというジャンルまで確立させた彼の名盤の数々をこのレヴューとともにお楽しみください。(Texted by 高柳圭佑) REVIEW : FIRST COLLECTION 12inchを中心にリリースを重ねていた〈hydeout production〉初のレーベル・コンピレーション・アルバム。プロデュースはレーベルを主宰するNujabes。それまでアナログ盤でしか聴くことのできなかったShing02とのM6「Luv(Sic)」、M14「Luv(Sic)pt.2」が収録されている。他にもNujabesのビートにFunky DLの軽快なラップが響き渡りるM2「Don’t Even Try It」など初期hydeoutの代表作が揃っていて、この先の進化の過程
by marvinkei