Clark 『 Feast / Beast 』
TAICO CLUB出演前に突如発表されたクラークの新作の詳細が明らかになった。『Feast / Beast』と名付けられ、2枚組CDとしてのリリースが決定している本作は、クラークがマッシヴ・アタック、デペッシュ・モード、バトルス、アモン・トビンの楽曲を徹底的に解体し、自身のオリジナル楽曲であるかのように再構築した楽曲。盟友ビビオ、ネイサン・フェイクらによって再構築されたクラークの楽曲。さらには、自身の楽曲のオルタナティヴ・ヴァージョン、新曲「Alice (Redux)」も収録される。
「ただリミックス仕事を集めただけのコンピレーションには絶対したくなかった。そんなものリスナーが聴いても楽しくないだろ?」とクラーク本人が語る通り、本作のためだけにすべてプログラミングをし直し、曲順にも徹底的にこだわり、ひとつのクラーク作品として完成させている。
Clark 『 Feast / Beast 』
【配信価格】
WAV 単曲 250円 / アルバム購入 2,400円
mp3 単曲 200円 / アルバム購入 1,800円
【Track List】
01. Smoulderville (Clark Remix) / 02. Braid of Voices (Clark Remix) / 03. Kitchen Sink (Clark Remix) / 04. Fentiger (Clark Remix) / 05. Alice (Redux) (Clark) / 06. Glow (Clark Remix) / 07. Spur (Clark Remix) / 08. Cantstandtherain (Clark Remix) / 09. Let's Go (Clark Remix) / 10. Peter (Clark Remix) / 11. Bendir (Clark Remix) / 12. Absence (Bibio Remix) / 13. Ted (Bibio Remix) / 14. Sea (Clark Remix) / 15. Cold Caby (Clark Remix) / 16. Absence (Clark Remix) / 17. Red Light (Clark Remix) /18. My Machines (Clark Remix) / 19. D&T (Clark Remix) / 20. Growls Garden (Nathan Fake Remix) / 21. Dulceria (Clark Remix) / 22. Let's Get Clinical (Clark Remix) / 23. Evil Beast (Clark Remix) / 24. Suns Of Temper (Clark Remix) / 25. Die Slow (Clark Remix) / 26. Freestate (Clark Remix) / 27. Siberian Hooty / Fallen Boy (Clark Remix) / 28. Hammersmashed (Clark Remix) / 29. Mr Bad News (Clark Remix) / 30. The Galactic Tusks (Clark Remix)
自らの世界へと容赦なくその音を引きずり込んでしまう、クラークのその手腕
本作はクラークのある種のベスト盤とも言える作品だ。
『Feast / Beast』は、彼のリミックス・ワークのコンピレーションと銘打っているが、内実は、彼のこの10年ちょっとのキャリアを巡るベスト的作品と言えるだろう。彼はこれまで、“エレクトロニカ”が、ひとつの盛り上がりをみせていた2001年にデビューを飾り、その後もしっかりと生き残り、名門〈Warp〉の本流とも言えるレフト・フィールドなエレクトロニック・ミージック路線の旗手として着実に活躍を続けている。その音楽的なスタンスだけで言えば、1990年代にエイフェックスが作り出して、ゲラゲラと笑いながら2000年代に放り投げたその道を、丁寧に自分のやり方で歩み続けてきた。もちろん、エクスリームな実験性と、ある種、ポップとも言えそうな音楽の楽しさをギリギリの配合で混ぜ合わせ歩み続ける〈Warp〉らしいやり方もあわせ持ったかたちでだ。
本作は、CDでは2枚のディスクによって構成されている。1枚目(OTOTOYの配信音源では、16曲目まで)は“手のこんだごちそう”や“宴”を示す“Feast”、そして2枚目(OTOTOYの音源では17~30曲目まで)は、“野獣(Beast)”というタイトル。“Beast”には『Turning Dragon』~『Totems Flare』あたりの彼の作品が強く打ち出していた、凶暴なインダストリアル・ビートがスウィングするハードな楽曲が中心だ。“Feast”はその逆というよりも、美しくノスタルジックなノンビートものから、ダーク・ゴシックなヘヴィー・ダウンビートなど、“Beast”な側面以外の彼の様々な面が反映されていると言えるだろう。
本作の作品性に元曲のアーティスト名はあまり関係がない。そのアーティスト・リストはリミックスであっても自らの世界へと容赦なくその音を引きずり込んでしまう、クラークのその手腕の先鋭性を、より確かに感じることを可能にする文字の羅列以外のなにものでもなくなる。また、さまざまな時代の作品の寄せ集めなのだが、それぞれの時代を感じさせないことにも驚かされる。それでいて多彩だ。これまでアルバムごとに明確な色調を設けてきたアーティストだけに、リミックスというワンオフの作品の寄せ集めによって、まるでモザイク画や切り絵のように、奔放で多彩な彼の作品性の全体像をうまく示しているとも言えるだろう。彼のサウンドの案内として非常に雄弁な作品となっている。
(Text by 河村祐介)
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PROFILE
Warp Records所属、イギリス・バーミンガム出身のミュージシャン、音楽家、作曲家、DJである。 作曲ジャンルはメロディアスで叙情的なサウンド・スケープからブレイクビーツまでこなす。 美しい旋律と不穏な音像を同居させたエレクトロニカ・サウンドが特徴。 またステージでは生のドラムを起用する事もあり、65デイズ・オブ・スタティックやトータスといったポスト・ロックのアーティストともツアーやライヴを行う事もある。また旧名義は「クリス クラーク」(Chris Clark)である。