「連絡船」、その密やかな行き先は何処へ──対談 : VIDEOTAPEMUSIC x ロボ宙
『The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC』と題された、VIDEOTAPEMUSICの4作目にあたるフル・アルバム。ここには横山剣(CRAZY KEN BAND)、高城晶平(cero)、折坂悠太、ロボ宙、mmm、カベヤシュウト(odd eyes)、さらには韓国からはキム・ナウン(ex. Parasol)、フィリピンのMellow Fellow、そして台湾から周穆(Murky Ghost)といった歌い手たちが参加した、ある種の「ヴォーカル・アルバム」となった。また、先日のフリー開催 / 配信で話題となったアルバム・プレヴュー・ライヴ「Preview of The Secret Life Of VIDEOTAPEMUSIC」、そして次なるツアーにも帯同するエマーソン北村、松井泉、潮田雄一に加えて、Dorian、TUCKER、鶴岡龍、角銅真実、光永渉、武嶋聡、icchie(YOSSY LITTLE NOISE WEAVER)、長岡智顕(思い出野郎Aチーム)といった腕利きのミュージシャンたちも参加している。さまざまな試みを経て制作された新作となった。OTOTOYでは、本作収録の「連絡船」にてマイクをとる、ロボ宙を対談に招き、その世界観を探りました。
豪華ヴォーカリストを配した4thアルバム
対談 : VIDEOTAPEMUSIC x ロボ宙
『The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC』がスピーカーから流れる、じわりとじわりともやが少しづつ晴れていくようにイメージが立ち現れ、消え、そしてまた他の景色を心地よく呼び起こしていく。おそらく東アジアのどこかの街を歩く、いや瀬戸内のどこかの港町かもしれない。足音とともに現れる景色とまどろむ夢が混ざりあい、ときにはそこで漂う匂いすら伴う。そのサウンドはイメージの新たな領土をアルバム全体で生成していく。店頭のテレビから流れる現地のスターの歌、隣を歩く男の鼻歌、イヤフォンから流れるラップ、路地裏の語り部の独白、といった具合に、ゲスト・ヴォーカリストたちの声は、その世界に多様なグル—ヴとともに溶け込み、アジアの街の湿気を伴って、ぬるりと風とともに景色の一部となっていく。映画や小説では表現しえない“音楽”だからこそ表現しうる、すぐに霧散しながらも記憶に残る、刹那なイメージがそこには横たわっている。それはさまざまな参加アーティストがいながら、『The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC』と題されたタイトルの通り、どこか密やかでパーソナルな存在感を放つ。
そして本稿では、このアルバムの登場人物でもある一人の語り部にVIDEOTAPEMUSICとともに登場してもらい、その制作エピソードを媒介に本作を探っていく。ソロMCとして、2018年リリースした、ひさびさのアルバム『SCRAPPIN』が高い評価を受け、そしてスチャダラパー3本目のマイクとしてそのライヴには必ず帯同するロボ宙、その人だ。本作には「連絡船」という作品に参加し、ひとつの街を浮かび上がらせている。
インタヴュー・文 : 河村祐介
写真 : 沼田学
曲のストックと、「歌ってもらいたい」候補を結びつけて
──はじめにビデオさんに全体の話を、今回ほぼ全曲にヴォーカリストをフィーチャリングされていますが、ある種のコンセプトでこうなったんだと思うのですけど、これはどこから?
VIDEOTAPEMUSIC : これまでもアルバムのなかに1曲とかゲスト・ヴォーカルが入るというのはやっていて、それが楽しくて歌モノで1枚アルバムを作りたいたいというのはずっと考えていました。加えて、タイミング的にもうひとつあるのは、CRAZY KEN BANDの横浜アリーナ公演でVJをやったのをはじめ、自分にとっての大先輩にあたる人と関わらせてもらう機会が増えたり、前回のアルバム・リリース後にライヴで国内外いろいろな土地に行ったり、海外からのリリースもあったり、改めていろいろな人と関わるようになったというのもあります。僕もそんなに社交性のあるタイプじゃなくて…… ひとりでいるのが好きなタイプなのですが音楽をやらせていただくことによって、国籍や世代を超えた人たちと楽しく交流ができてると実感できるようになりました。そんな音楽活動で得てきた実感と、ずっと考えていた「歌ものをやりたい」という願望がうまく合わさって、こういう形になりましたね。
──人選はとにかくやってもらいたい人たちを自分で選んでという。
VIDEOTAPEMUSIC : 「アルバムを歌モノにする」ということを考える以前から、曲自体はたくさん作っていたので、そこそこストックはあって。そのストックと、「この人に歌ってもらいたい」と考えていた候補の人を結びつけながら、実際にお願いする人を決めていきましたね。参加してほしいヴォーカリストのアイデアは他にも何名か考えていたけど、ちょうど良い曲がなかったり、今回実現できなかった人たちもいます。ここには、お互いのタイミングがしっかりあった9名が参加しているという感じですね。
──全体のサウンドのコンセプトみたいなものはあったんでしょうか、若干ですが前作のわりとローカルな雰囲気よりも、前々作にあったようなワールドワイド感というのが近いのかなと。
VIDEOTAPEMUSIC : とにかく雑多な感じにしたいというのがありました。ジャンル的なサウンドの統一感はないんだけど、メロウなムードでつないでいくような感覚…… メロウなムードで境界を溶かしていくという感じ。それを言い換えれば“にじみ”の多い音というか。ジャンルであったりとか、地域性、時代性、音楽のもつ記号的な要素も色々ありつつ、それが溶けてどれも境界線が曖昧になっている感じ。あとは、そこに対して三次元的な音像にするというのは前作よりも意識しましたね。それはミックスなど音響的な部分で裏テーマとして存在していて。これまでの制作はひとりでやっていたのもあって、サウンドの質感的には絵葉書っぽいというか、平面のコラージュを作っている感覚に近くて、そこまで立体感のあるものを目指していなかった気もします。対して、今回はゲスト・ヴォーカルもいるというのもあって、もっとサウンド的に三次元的に聞こえてくるようなものにしましたね。
──ヴォーカリストの顔とか、それこそパーカッショニストの松井さんの音が聞こえたらあの姿が出てくるとか、その景色のなかからキャラクターが立って出てくるみたいな感じもありますよね。
VIDEOTAPEMUSIC : 全体的にはにじみつつも立体的に見えてくるというところで、そういう感覚はあるかもしれませんね。
──ロボ宙さんにお願いしたきっかけはあるんですか?
VIDEOTAPEMUSIC : ロボ宙さんの音楽がもともと好きだというのが第一にあるんですけど。いろいろな現場でお会いしてお話する機会が徐々に増えてきていて。ぼんやりと「次に歌モノアルバム作るなら、こういう人にやってもらいたい」というリストに、つねにロボさんの存在はあったんですよ。この前リリースされたソロ・アルバム(『Scrappin』)もすごい好きだったし、あとはロボ宙&DAU名義で出だしたアルバム(2007年『Life sketch』)も好きだったし。それこそDAUみたいに柔らかくてにじむような音に対して、自由なラップを乗せていく感じとか、とにかくリスナーとして好きな作品が多かったんですね。去年、葉山でロボさんがやられたときあったじゃないですか?
ロボ宙 : 葉山はオアシスかな。
VIDEOTAPEMUSIC : あのときになんとなく「曲を作りたいですね」という会話を交わして。ちゃんとそれを僕がいやらしく覚えていて(笑)。このアルバムの曲を作っていくなかで、ロボさんに合いそうな曲がちょうどできたタイミングで、年末のGRASSROOTSでたまたまお会いしたんです。それが良い機会だと思って、思い切ってその場で直接お願いしました。
ロボ宙:そう、たしか、はじめは2曲候補曲をもらって……それは「VIDEOTAPEMUSICの音だな」っていう。でも、これまでもアルバムをもらって聴いていて、「この曲に自分がラップのっけるとしたらこうかな」みたいなことはよく考えてたんですよ。
VIDEOTAPEMUSIC : 2曲渡したうち、ちょっと難しそうな方を選んでくれたという印象で。もうひとつのトラックの方がラップを乗せやすそうな気がしてたんですけど。
ロボ宙 : 感覚的に選んだという感じなんだけど。このサウンドに対して、言葉が出てくるかとか、ここにラップが乗ることでおもしろいものができるかなということとか。
VIDEOTAPEMUSIC : いわゆるラップというよりも、ポエトリー・リーディングみたいな感じも合うトラックだなと思ってたんですが、ロボ宙さんならそういうのもありかなという印象があって。実際にそういう感じのものが乗って戻ってきて。ビートよりもムードに寄り添う感じがさすがでした。
ロボ宙 : ラップとポエトリー・リーディングの中間というか。
VIDEOTAPEMUSICの音楽自体が連絡船みたいなところもある
──こう、聴いたイメージとしてはアジアの雑多な港町を舞台に、歩き回るロボさん…… みたいな感覚があるんですけど、おふたりでイメージの共有みたいなものはあったんですか?
VIDEOTAPEMUSIC : ちょっとだけ共有はしましたね。「知らない街をひとりで歩くイメージ」という感じの。
ロボ宙 : そうだね。
VIDEOTAPEMUSIC : 旅なんだけど、いわゆるリゾートっぽい感じとか自然の中の旅行じゃなくて、知らない街の雑踏を歩き回るという。「連絡船」というタイトルはトラックを渡す段階ですでにあって。そのタイトルからも言葉を引き出してもらったのかなと。
ロボ宙 : VIDEOTAPEMUSICの音楽自体が連絡船みたいなところもあるじゃない?
──といいますと?
ロボ宙 : いろいろなところに連れていってくれる感じ。そういうことを介して、いろいろなところに繋がることができる。
VIDEOTAPEMUSIC : たしかに豪華客船ではなく、“連絡船”という言葉から出てくる船のサイズ感は自分の音楽的な部分のサイズにちょうど良い感じはあるんですよね。お金持ちが行く豪華客船の船旅ではなくて、ひとりで行って、そこの地元の漁師に船に乗せてもらう。それで向こう岸の行ったことのない島に行って、見たこともないイメージを見せていくという。さらにこの曲の音の素材に使ったのが、瀬戸内海の小さな島に住む人の暮らしを伝えるローカルなTV番組を録画してあった1990年代のVHSだったりもして、その映像に出てくる瀬戸内海の小さな古い連絡船のイメージもあります。
ロボ宙 : (「連絡船」を作ったときは)それなりにイメージが出てきて、それをどんどん羅列していって、いろいろ書いていってという感じで、書くのに苦しい感じの歌詞ではなかったかな。
VIDEOTAPEMUSIC : ロボ宙さんのいままでの曲から感じてた要素と、自分のトラックのイメージがハマって綺麗に着地した感じはしました。
ロボ宙 : この曲の歌録りしたレコーディング・スタジオの感じもすごい良くて。
VIDEOTAPEMUSIC : 永福町のスタジオでレコーディングしたんですけど、そのスタジオも結構変わってるんです。そのスタジオ自体が船室っぽいんですよ。ブースに丸い窓が着いてたり。
ロボ宙 : もともとそういう船室の感じをイメージして作ったらしい。
──レコーディング・ブースも歌入れするところでしょうから、サイズ感的にも「連絡船」感ありそう。
VIDEOTAPEMUSIC : レコーディングに行ったときに、そのスタジオの空間も含めて全てがハマったっていう感じがすごいして。
ロボ宙 : テイクもほぼ一発だったしね。
VIDEOTAPEMUSIC : 一応別テイクも録ったんですが、結局はファース・トテイクをメインに使いましたね。あのときのハマり具合はこの曲を作っていて印象的でしたね。やっぱりいろいろなセッションをやられていることの瞬発力をすごく感じましたね。
──ビデオさんのなかで、ロボ宙さんの言葉の魅力ってどこにありますか?
VIDEOTAPEMUSIC : やっぱり自分が歩いている感というか、ロボ宙さんの散歩している感と日常から非日常へと時空がつながる感じがおもしろくて。それこそ『銀河飯店』(2002年リリースの、ロボ宙1stソロ)というタイトルの作品もありましたが、日常から宇宙的なヴィジョンにまでいけてしまう感じは、すごい好きな部分ですね。
──逆にロボ宙さんから見たVIDEOTAPEMUSICとはどんなアーティストなんでしょうか?
ロボ宙 : まずはその“VIDEOTAPEMUSIC”という名前がかっこいいよね。たぶん1stをリリースした直後ぐらいに最初に会って、その名前を聞いて「この人はなんなだろう」って思いますよね(笑)。
VIDEOTAPEMUSIC : 『7泊8日』を出したあとにお会いして、たしかCDをお渡ししたんですよね。
ロボ宙 : そうだったと思う。そもそもビデオテープ的なものってすごい好きだしね。
VIDEOTAPEMUSIC : タイミングが合わなくて実現しなかったんだけど「ビデオテープいっぱいあるから取りに来て」ってロボ宙さんから言われたこともあって。
ロボ宙 : タケイグッドマンとか、スチャラダパーと部屋でいろんなビデオ観てた感覚が、それこそ音楽に継承されているというか。もちろん世代感はあるから、いまの音楽なりがしっかり入り込んではいるんだけど。そういう自分たちがビデオテープで共有していたような感覚の流れはあるんじゃないかなって。
VIDEOTAPEMUSIC : VHSをエディットして出てくるおもしろさとかはタケイ(グッドマン)さんがやられていたことなんかに、やっぱり僕は影響は受けていると思うので。というかいっぱい観ていたものなので、無意識に染みついていたと思うから。
ロボ宙 : 音に関してもそういう感覚が自然に出てきて、「こういう人が出てきたんだ」って驚きましたよね。
──はじめの出会いって、いつでしたか?
VIDEOTAPEMUSIC : 最初の最初はいつだったかは覚えてないけど、ceroとか磯部涼さんとかと行った熊本の印象が強いですね。坂口恭平さんが主宰していたイベントで。ceroのライヴに、たまたま会場に来ていたロボ宙さんが飛び入りして、ceroの演奏をバックにフリースタイルしてくれた時がすごく印象的でしたね。
ロボ宙 : たしか1万人くらい集まる桜祭りがあるからそこに出るのに合わせて、曽我大穂君と九州をツアーしてて。そしたら箱を空けてみたら、お客さん5人しかいなくて。今度は沢山人がいそうなそのイベントに飛び入りしようって話になって(笑)。
──今回の「連絡船」歌詞が上がってきてから、修正とかすりあわせみたいなものはあったんですか?
VIDEOTAPEMUSIC : 歌詞での修正は1フレーズくらいって感じですね。音は歌詞をもらってから構成はいじったりしたんですけど、歌詞に対して大きくがらっと変化したというところはありませんね。もともと作った音源に対して、生楽器に差し替えるとかはやるつもりだったので、それはやりましたけど。
──全体的な作り方にしても、1度プリプロ的にビデオさん個人で作ったものを、生楽器にしたいところをリプレイスしていくという感じですか?
VIDEOTAPEMUSIC : 基本的にそうですね。1曲目の「教えて」の後半部分だけは例外的にバンドに丸投げした部分があるんですけど。自分にとってのドリームチームみたいな人をバンドとしてアサインして、コード進行とか簡単なデモとイメージを伝えて、後はお任せしたという。それもやりたいと思ってたことのひとつなんで。今回ヴォーカルの皆様にお題を与えて歌をのせてもらったやりかたを、そこだけバンドでもやってみた感じですね。そういう意味では今後のこのプロジェクトのなんらかのヒントになるかもしれない楽曲だったりもします。
ロボ宙 : あとアルバムは、いままでももちろんあるんだけど、言葉も含めていろんなところにいける感じはあったよね。
──今回はたしかにいろいろな言語が入り交じってますよね。そこはコンセプチャルにそうしたんですか?
VIDEOTAPEMUSIC :そうですね。実際に国外の方に参加してもらった事だけではなく、たとえば(横山)剣さんには歌詞のなかで、日本語以外のいろんな単語を入れてもらうとか、いろんな言葉の響きを多様なままで聴けることができる感覚というのをお願いして。言葉の面でもいろいろな国の要素がごちゃごちゃになっている感じは出したいなと思ってて。それはサウンド以上に感じれるようにしたいと思いました。
自分の身体で現地で感じる実感も大事だし、家の中、想像も大事
──それにしても「連絡船」名曲です。港町の夜特有の湿気ですら言葉からビンビンに出てきますよね。匂いすらしてきそう。どこかの街みたいなのはあったんですか?
ロボ宙 : いや、どこかというのはないけど、これまで行ったことがある街の要素とか、完全に想像のところもいろいろ入っていると思う。
VIDEOTAPEMUSIC : アジア旅行とかも行きますか?
ロボ宙 : 一時期、バックパックですごい回ってた時はあったね。現地に行って、そのまま街を歩き回ってという。2000年ぐらいかな、そこからはあまり旅行に行くという感じはなくて、想像の部分が大きいかな。
VIDEOTAPEMUSIC : 僕も自分の身体で現地で感じる実感も大事だし、家の中、想像も大事だなと思っていて。どちらも楽しい、バランス良く使えれば。
ロボ宙 : 想像で補えることもあるしね。
VIDEOTAPEMUSIC : 海外旅行も自分は積極的じゃなくて、近所が好きなんです(笑)。いかに近所で未知のものに出会えるか、そこに力を注いできたところはあるので。それこそ福生みたいな場所だったり、近所でも探せばフィリピン料理とか韓国料理とか、それ以外にも珍しい国の料理に出会えたりするし、そういうのに惹かれるところもあって。
ロボ宙 : 東京は特にね、どこの国のものでも食べられるしね。
VIDEOTAPEMUSIC : でも最近は、ツアーとかで色々な土地に行かせてもらって、そこで肌で感じる身体感覚もやっぱりおもしろくて。それも今後は両方生かせるようになるといいなとは思っていて。
──まさにロボさんの歌詞、近所の散歩の感じと、そこに非日常がたまにぽっかりが出てくる感じ、その逆もありますけど、すごい響き合ってるなと。
VIDEOTAPEMUSIC : そういう距離感を共感させてもらって楽曲が作れたのが本当に良かったです。
ロボ宙 : でもアルバムを聴いたら、他のアーティストもラップっぽい感じもあって。
VIDEOTAPEMUSIC : そう、折坂(悠太)くんもちょっとラップというかポエトリー・リーディングぽかったりして。特にそういうオーダーはしなかったんですけど、「試しにやってみました」って感じで送られてきたデモがすごく良くてこの感じになりましたね。
ロボ宙 : 髙城(晶平)くんもmmmもそんな感じがちょっとあって。
VIDEOTAPEMUSIC : mmmは僕からラップしてよとお願いして。各々の個性が出つつ、溶け合った作品になりました。
ロボ宙さんの頭の中だけにあった秘密の市場が曲のなかに出現したわけですから
──最後にタイトルなんですけど、これはどこから?
VIDEOTAPEMUSIC : スティーヴィー・ワンダーの作品で『Journey Through The Secret Life Of Plants』というもともとは植物のドキュメント映画用に作られたサントラがあって。ただし、そのドキュメンタリー自体はお蔵入りになって、ある意味で存在しない映画に対するサントラみたいになっているんですね。作られたけど表にでない映像や音楽や、そもそも頭の中にあるけど作られなかった作品が世の中にはいっぱいあると思うんですが、そういうものへの思いみたいなのがすごくあって、このスティーヴィー・ワンダーの作品のタイトルから引用してみました。 僕自身の音楽が、例えば個人のVHSのなかに眠っていた、人の目に触れることのなかった映像や、つい見過ごしてしまいそうな何気ない1シーンから音を取り出して形にするという感じのものだと思うんですが。例えば今回のそれぞれの歌詞も自分と一緒にコラボしたことで書かれた歌詞だと思うんですね。こう言うのもおこがましい気もするんですが、コラボレーションを通して、お互いの今まで未公開だった一面が表に出ることはあると思うんです。なので、全体としてのタイトルは『The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC』ですけど、例えば『The Secret Life of 横山剣』や『The Secret Life of ロボ宙』でもあるという感覚があります。それぞれの中にあった未公開だったものが、僕とのコレボレーションで形を持ったというか。ロボ宙さんの頭の中だけにあった秘密の市場が曲のなかに出現したわけですから。
ロボ宙 : でも、また作りたいなと思いましたね。
VIDEOTAPEMUSIC : ぜひやらしてもらいたいですね。先日発表されていた「Nearby Town」は実際に生活しているすごい身近な街を題材にしていて、「連絡船」とは対極の視点なんですけど、どちらもロボ宙さんの視点で。合わせて聴いたら本当におもしろいと思います。自分のイメージも、身近で見つける部分とそれに対して想像で知らない街を考えるのは地続きになっている部分はあるので。
ロボ宙 : 本当に自分もそれだけですよ。おもしろいものを見つけるのが好きで、お店、人だったり、音楽だったりを見つけるという行為がすごい好きで。
VIDEOTAPEMUSIC : でも、いろんな人に自分の近所を書いた曲をとか作ってもらったらおもしろいですね。
ロボ宙 : 時間で縛ってもおもしろいかもね。
──たしかに、この時間のあなたの周りの街みたいなのでコンピが作れたらおもしろそう。
ロボ宙 : いろんな人が近所のことを曲にするっていう。
──ビデオさん監修でぜひ。
VIDEOTAPEMUSIC : おもしろいですね。場所みたいな話で言えば、現実問題どこまでできるかわかりませんけど、例えば次作は滞在制作がしてみたくて、どこかに一定期間いて、そこで作品を作るみたいなこともやってみたいですね。
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『ON THE AIR』リリース時の鶴岡龍との対談ページ
LIVE INFORMATION
“The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC” Release Tour
2019年8月24日(土)
@大阪 246ライブハウスGABU
OPEN 17:00 / START 18:00
Guest:折坂悠太
2019年8月25日(日)
@名古屋 CLUB QUATTRO
OPEN 17:00 / START 18:00
Guest:折坂悠太
2019年8月31日(土)
@キネマ倶楽部
OPEN 17:00 / START 18:00
ONE MAN LIVE
チケット発売中!!
詳しくはカクバリズムのwebまで
PROFILE
VIDEOTAPEMUSIC
映像ディレクター/ミュージシャン
地方都市のリサイクルショップや閉店したレンタルビデオショップなどで収集したVHS、実家の片隅に忘れられたホームビデオなど、古今東西さまざまなビデオテープをサンプリングして映像と音楽を同時に制作している。VHSの映像とピアニカを使ってライブをするほか、MV制作、VJ、DJ、イベントのオーガナイズなど活動は様々。MVでは盟友ceroを始め坂本慎太郎、小島麻由美、NRQなどジャンルレスに手がける。ほかにもモデル、女優の菊池亜希子のムック本「マッシュ」のCM映像、楽曲も製作。ライブにおいては、クラブシーンからインディペンデントシーンまで幅広く活動。ダンスミュージックとしての下地に、近年盛り上がりを見せつつあるムード音楽やラウンジミュージックの文脈から繰り出すポップでメロウなメロディは絶妙であり、映像のセンス含め、まさに洒脱な音楽を作り出している。昨年秋にリリースした2ndアルバム「世界各国の夜」は全国各地で大好評ロングセールス中。2016年5月に配信限定シングル「Sultry Night Slow」(カクバリズム)リリース、7月にはceroとのコラボレーション編成の「VIDEOTAPEMUSIC×cero」としてフジロックフェスティバル出演、12月に坂本慎太郎との共作 LP「バンコクの夜」(em records)、2017年1月に7inchシングル 「Kung-Fu Mambo」(雷音レコード)リリースと引き続き精力的に活動中。そして2017年10月、満を持して3rdアルバム「ON THE AIR」をリリース。映像のみならず音楽との双方向でゆらゆら踊れる夜を演出する、そんな素敵な男がVIDEOTAPEMUSICである。
これまでにMVやVJなど映像で関わってきたアーティストは、cero、坂本慎太郎、CRAZY KEN BAND、キセル、サニーデイサービス、Gotch(ASIAN KUNG-FU GENARATION)、小島麻由美、片想い、KONCOS、やけのはら、Dorian、禁断の多数決、Alfred Beach Sandal、NRQ、odd eyes、Hi,how are you?など多数。
VIDEOTAPEMUSIC Official Tumblr
ロボ宙
大阪で同時多発で色々起こった様々なカルチャーに影響を受けて脱線3で活動開始。多くのhiphopの 初期 old school アーティストらと共演。beastie boys の G-son studio での録音を含む3枚のアルバムを発表。スチャダラパー3本目のmicとして、全国津々浦々 ライブ活動中。ソロとしては 2002年にアルバム「銀河飯店」を発表。
2006 ロボ宙&dau名義で、「life sketch 」発表
2007 スマーフ男組とのwokoba session
2007 THE HELLO WORKS で「payday 」発表
2010 donuts disco deluxe 結成
7枚のmix CD を発表
2017 アルバム 「scrappin 」
2018 4月 scrappin アナログを自身のレーベル omiyage とjet set recordsから発表。
サンプラー一台でのソロのlive から色々な 音楽家達とのsession即興 。rapは勿論、朗読や言葉 や声を使った 表現 styleで、フットワーク軽く 色々な フィールドで 活動中。
ロボ宙 Official Twitter