ももクロ・高城れにが奏でる“ありがとう”の物語──ソロ活動10年の心の軌跡を語る
ももいろクローバーZのメンバー、高城れにが届ける最新アルバム『OTOGIMASHOU』。ソロ活動10周年を迎えてリリースされる今作のテーマは、「御伽噺」だ。けれど、そこに描かれるのは決して夢の中の物語ではない。迷いながらも笑い、立ち止まりながらも進んできた10年間の軌跡。そのすべてをファンタジーに包み込み、“本当の自分”と再び出会うための一枚がここに完成した。
高城れにが誘う、御伽話の世界
INTERVIEW : 高城れに
「おとぎ話」のように始まり、「現実の私」で終わる。高城れにのアルバム『OTOGIMASHOU』は、ソロ活動の10年間の音と心の記憶を編み上げた、ひとつの人生のサウンドトラックともいえる作品だ。ファンタジックなサウンドのその先に流れるのは、仲間、スタッフ、そしてファンへの深い「ありがとう」という気持ち。跳ねるようなリズムに乗って、優しさが広がっていく。彼女の音楽は今日も、聴く人の心にそっと寄り添うだろう。
インタヴュー・文：ニシダケン
今回は特に「ポップに表現したい」という気持ちが強かった
──高城さんは、ソロ活動を始めて今年で10周年を超えるんですよね。この10年を振り返ってみて、何か感じることはありますか。
高城れに：実は自分でソロをやろうと思って始めたわけではなく、ひょんなことから始まったんです。それが気づけば10年続いていたという、不思議な感覚があります。グループ活動では味わえない経験もたくさんできましたし、それをきっかけに他のメンバーもソロを始めたりして、それぞれの活動の幅が広がったと思うと、本当にソロをやってよかったなと改めて感じます。
──この10年で印象的だった出来事はありますか。
高城：やはり一番印象的だったのは、最初のソロ・コンサート（2015年3月9日に愛知・名古屋CLUB QUATTROで開催された〈高城の60分4本勝負〉）ですね。1日4公演という無謀な挑戦だったんですよ（笑）。もともと架空のチケットを作ったところから「本当にやっちゃおう」と始まった企画で、何もわからない状態からのスタートでした。しかも本番直前にマネージャーさんから「4公演全部セットリストを変えよう」と言われて、昭和初期の楽曲を急に覚えなきゃいけなくなったり……（笑）。松山千春さんの曲を歌うだけでなく、カツラをかぶってコスプレまでしたんです。もう本当に大混乱でしたね。
──それはすごい体験ですね。
高城：当時は本当に大変でした。でもその経験があったからこそ、「もうどんな大変なことが来ても大丈夫」と思えるようになりました。ただ、年を重ねるごとにグループとは違う壁にもぶつかって、自分に自信がなくなった時期もありました。実は「今年で最後にします」と宣言して臨んだライブ（まるごとれにちゃん 2019）もあったんです。でも最後だと思うと寂しくなって、ライブ中に「やっぱりもうちょっと続けさせてもらっていいですか」と言ってしまって（笑）。その瞬間が本当に印象的で、もしあの決断がなければ今も続けていなかったと思います。
──ソロ活動がご自身に与えた影響はどんなものがありますか。
高城：アイデアの引き出しが増えましたね。どんなことにも対応できる力が身についたと思います。「できない」で終わらず、「じゃあこうすればできるんじゃないか」と考えられるようになりました。その経験をももクロに還元できるようになったのは、大きな成長だと思います。
──ここからは楽曲について伺います。10月15日には、セカンド・ソロ・アルバム『OTOGIMASHOU』がリリースされます。今回のアルバムのテーマは「御伽噺（おとぎばなし）」とのことですが、なぜこのテーマに？
高城：「御伽噺」って誰もが通る道で親しみやすいし、10年間の活動で感じてきたさまざまな感情や自分の中の存在を、堅苦しくなくファンタジーに例えることで、もっとポップに伝えられると思ったんです。それで「御伽噺」というテーマにしました。
──リード曲「おとぎましょう」もとてもファンタジックな仕上がりですね。
高城：まさにファンタジーの世界に迷い込んだようで、聴いている人も楽しい気持ちになれるし、最後には感動もある。1曲の中で1本の映画を観ているような、そんな楽曲です。
──最初に聴いたときの印象はいかがでしたか。
高城：「もうこれしかない」と思いました。けんたあろはさんには、昨年「ポジティブ・アテンションプリーズ！」という楽曲も手がけていただいたんですが、現実と非現実が混じり合った世界観が、自分の表現したいものにぴったりでした。毎年ソロ・コンサートの前には自分の感情をヒアリングして曲を作ってもらうんですが、今回は特に「ポップに表現したい」という気持ちが強かったんです。その思いが形になった曲なので、自分でもお気に入りです。
