【ライヴレポート】パピプペポは難しい、夢の舞台へ──恵比寿LIQUIDROOM公演〈復讐〉

6人組アイドル・グループ、パピプペポは難しいが、ついに夢の舞台だった恵比寿LIQUIDROOMでのワンマン・ライヴ〈復讐〉を開催。今回OTOTOYでは、パピプペポは難しいの結成3周年の集大成となったライヴの模様を、当日の熱気や観客の高まりとともにレポートでお届けします。
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LIVE REPORT : パピプペポは難しいLIVE2021「復讐」
文 : 西田健
撮影 :ヒラノコウタ
東京を中心に活動するアイドル・グループにとって、恵比寿リキッドルームという場所は、夢の舞台のひとつである。そして、2021年6月28日。その夢を叶えた者たちがいる。それが、6人組アイドル・グループ、パピプペポは難しい(通称、パピムズ)だ。
このコロナ禍においても歩みを止めることなく活動を続け、2020年12月には配信ミニ・アルバム『もしも君がいない世界に生まれてたら』の音源をリリース。また、地上波のバラエティ番組への出演するなど、地道に知名度を上げ続け、インディーズながらも着実に勢いをつけてきた。今回のワンマン・ライヴはグループ史上最大規模の会場であるが、チケットはソールドアウト。2018年から活動をはじめた彼女たちにとって、この日の舞台は結成3周年の集大成を見せる重要なライヴだ。


定刻を迎えると、産声、チャイム、ハッピーバースデーの声、それらが入り混じったような混沌としたSEが響き、メンバーが現れた。スポットライトを浴びるカワシマユカのエモーショナルな熱唱で、1曲目の“決まりごと”がスタート。客席では、思い思いのサイリウムが一斉に輝きだす。儚い恋心を綴った歌詞を丁寧に歌い上げるメンバーたち。この日に感情の全てをぶつけるという気合いが感じられる。しかし、2曲目の“ホニャララ・アンビシャス”に入ると、空気はガラッと一変する。さっきまでの感情のぶつかりあいのようなパフォーマンスとは対照的な、「ズンチ・ズン・ズンチ」というコミカルかつファニーな歌詞とダンス。この何でもアリな空間作りが、パピムズの魅力のひとつだ。
さらに、ライヴは“だるい日”、“U・F・O”へと続く。低音の効いたビートの波が、体全身にバシバシぶつかる。こういったビートの強い楽曲はパピムズの武器のひとつだが、リキッドルームのサウンドシステムで鳴らされると、その真価を発揮する。パピムズの音楽は、大箱で鳴らされるべき楽曲たちなのだと感じさせられた。そして、それらの曲に負けない魂の歌声を届けるメンバーたち。ライヴは最初からクライマックスだ。


“しんるーちゅるサイダー”で最初のブロックを終えると、そのままMCヘ入る。しかし、なんだか様子がおかしい。「もう、グリちゃんが犬になっちゃえばいいんじゃない?」というワードに、「キリンが?犬に?」と客席がどうリアクションをとっていいのかわからず戸惑っている間に、次の曲のフォーメーションに入るメンバー。「は!これは茶番だ!」と気づいたときには、“犬迷惑”のイントロが流れ出し、そのまま曲に入っていく。正直、やや強引なような気もするが、こういった観客を翻弄するライヴ・スタイルもパピムズの持ち味だ。
パピムズは、おそらくメンバーであるドン・グリの独特なビジュアルやプロモーションによって、色物のように見られることも少なくなかっただろう。普通はメンバーにキリンがいたら、観客はそっちにばかり気に取られてしまうものだ。しかし、ライヴを観ていると不思議とそうはならない。背の高い木内小百合のダンスは舞台映えするし、一方で小枝みゆは小柄ながらも情感たっぷりに歌声を届けている。もちろん、ドン・グリのパフォーマンスにも、えも言われぬ凄みを感じる。とにかくメンバー全員のパフォーマンスへの気迫がすごいので、しっかりそれぞれのメンバーを目で追ってしまうのだ。これは彼女たちがただの色物ではなく、本物のパフォーマンスができるアイドルであることの証明である。ただの色物なだけで、このリキッドルームに立てるはずがないのだ。


夏の空気を感じさせる“サマータイマー”まで披露し終えると、メンバーはステージからいなくなってしまった。すると、スクリーンに「スーパーSAMURAI忍者・カラテマン」という文字が現れ、崖の下で歌い踊るメンバーの映像が流れ出す。これは新曲のMVであり、クラウドファンディングのサクセスによって作られたものだという。ファンの応援が文字通り爆発していた。映像が終わると、MVで着用していたメンバーカラーをあしらった新衣装で登場。そのまま先ほどMVを披露したばかりの新曲“スーパーSAMURAI忍者・カラテマン”がはじまる。特撮オマージュに溢れた熱血ソングなのだが、とにかくサビのメロディーがキャッチーで、2回しか聴いていないにもかかわらずしっかり耳に残った。最後の鈴木めがねの「待て、次回!」の全力シャウトに心をグッと掴まれてしまった。これから多くの場所でライヴの起爆剤として披露されていくのが楽しみだ。
ライヴは、後半戦へ。“ラブげっちゅ! -お誕生日のお歌-”、“世界の終わりには牛丼つゆだくをあなたと食べたい ”というテンションの高い楽曲を叩き込み、フロアを熱狂の渦に巻き込む。ファンも声こそ出せないが、全力で拳を上げて跳び上がり、彼女たちの全力のパフォーマンスに応える。ステージと客席が一体となってライヴを作り上げていくのを感じた。

終盤、今回のライヴへの想いをメンバーそれぞれが自分の言葉で語った。白羽根優衣の「もうカワシマとは5年いっしょにアイドルやってるんですよ」という言葉に胸がキュッとなる。5年という年月は決して短いものではない。ここまでの道のりには苦労や衝突もあっただろう。彼女たちはそれらを乗り越えてここに立っている。
最後に、メンバーでありプロデューサーも務めるカワシマユカが「人生のうちの貴重な1日を私たちの夢を叶えるために、来てくれてありがとう」と感謝を伝える。パピプペポは難しいは、自分たちの力だけで活動を続けてこれたのではない。応援してくれたファンがいたからこそ、夢を叶えることができたのだ。この日のステージはファンとともにたどり着いた場所なのだと感じた。

最後の曲“シャニムニ”を全力でパフォーマンスし、ライヴはフィナーレを迎える。ステージからメンバーがいなくなると、スクリーンには、エンディング・ムービーが映し出された。その内容は6人の記録を集めたスライドショー。彼女たちがこれまで辿った軌跡を感じられる映像だ。最後には、今回のライヴの写真も映し出されていた。パピムズの物語は、これからもどんどん続いていく。パピムズにとって、リキッドルームは夢の舞台だったかもしれない。しかし、これは通過点に過ぎないのだと思う。彼女たちはもっと大きな舞台で活躍できるグループだ。そして、これからさらに飛躍していく、パピプペポは難しいの未来を想像するのは、きっとそんなに難しくないはずだ。

■セットリスト
パピプペポは難しいLIVE2021「復讐」
2021年6月28日(月)恵比寿LIQUIDROOM
M1.決まりごと
M2.ホニャララ・アンビシャス
M3.だるい日
M4.U・F・O
M5.しんるーちゅるサイダー
M6.犬迷惑
M7.バーサーク
M8.神様のきまぐれ
M9.my life
M10.ロンリーバード
M11.サマータイマー
M12.スーパーSUMRAI忍者・カラテマン
M13.ラブげっちゅ! -お誕生日のお歌-
M14.世界の終わりには牛丼つゆだくをあなたと食べたい
M15.Charm
M16.アイマイニ―
M17.ねぇ これから
N18.シャニムニ