“あなた”がいるからこそ綴られた、足立佳奈の言葉──感謝と日常を綴ったハートフルな新作

SSW、足立佳奈の気持ちをリアルに描いた新作アルバム『あなたがいて』。本作の聴きどころのひとつは、wacciのメンバーや、渡辺シュンスケ、ハマ・オカモト、澤村一平らゲストアーティストと共に作り上げた、彼女の凜とした歌声を中心に据えたサウンドである。しかし、本作で最も魅力的な部分は、“あなた”がいるからこそ生まれた感情それぞれが曲を通して繋がっていくというアルバム全体のコンセプトだ。ひとりでは知らなかった、暖かく、ときには切ない気持ちが綴られている。今回のジャケット写真にも使用されている赤色のポピーの花言葉「感謝」にちなみ、「出会ったすベての人に感謝を伝えたい」という、ハートフルな傑作をぜひ。
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INTERVIEW : 足立佳奈

足立佳奈の新作アルバム『あなたがいて』は、彼女がこれまでの活動で見せてきた「元気」や「明るい」といったパブリックイメージとは、また違った一面を見せる作品だ。今作に収録されているシンプルなアレンジの楽曲群からは、彼女の「感謝」のメッセージがストレートに伝わってくる。今回のインタビューのなかで、「もしも辛いって思っている人がいたとしても、その人たちに寄り添う音楽を作る」ことが私のテーマだと語った彼女。日常で生きるなかで抱いた感情をそのまま歌詞に乗せたという足立佳奈の歌は、きっと人々の心に寄り添っていくだろう。そして、その気持ちが多くの人に連鎖していくことを願っている。
インタヴュー&文 : 西田健
撮影 : YURIE PEPE
出会ったすべての人に感謝をしている思いを伝えたかった
──今作『あなたがいて』のコンセプトはどういうところから作っていったんですか?
足立佳奈(以下:足立) : 前作の『I』では、“自分“や”私“を表現したいと思って作っていたんですけど、今回はいままで関わってきた人との間に、嬉しいことも楽しいことも色々な出来事がそれぞれにあって、それが本当にいまに繋がっているのを強く感じたんです。だから『あなたがいて』っていうタイトルにして、その1曲1曲に「あなたがいて嬉しくなったよ」「あなたがいて寂しくなくなったよ」「あなたがいて楽しかったよ」「あなたがいて幸せだったよ」って全部繋がるように、その“あなた“とのエピソードを作れたらいいなと思って作りました。
──ジャケットもすごく素敵ですよね。今日も赤いお洋服を着ていらっしゃいますが、“赤色“は今回のテーマだったりするんですか?
足立 : 色々な花言葉を調べるなかで、赤のポピーの花がすごく良いなって思って。そこから「自分は赤とかオレンジっぽい色で表現できたらな」と思って壁紙を塗ったり、お洋服の色でデザインをしてみました。ポピーには「感謝」という花言葉があるんですけど、自分はこのアルバムを通して「あなたがいて、本当に私は幸せだよ」って出会ったすべての人に感謝をしている思いを伝えたかったんです。

──感謝の象徴としてのポピーなんですね。今作には、登場人物がふたりの楽曲が多い印象があります。
足立 : そうですね。1対1の空間というか、ひとりひとりとの思い出に向き合っている姿を表現できたらいいなと思いました。でも、1曲目“なんかさ“に関しては、私の口癖である「なんかさ」という言葉をタイトルにして、「自分のつぶやきみたいな感じではじまったらいいな」と思って作りました。
──“なんかさ“はアルバム全体のイントロのような曲ですよね。
足立 : イントロや序章のポジションの歌をアルバムの1曲目に入れようとはじめからイメージしていて、アルバム全体のイメージが見えてきてから、それをまとめるように最後にこの曲を作りました。
──シングルとしてリリースされた曲も多数収録されていますが、アルバムとしての制作が動きはじめたのはどれくらいの時期なんですか?
足立 : 今年の7、8月くらいには、「アルバムを出そう」と考えていて。そこに前々から温めていた曲や、この機会にアルバムで22歳になる自分と向き合いながら、前のアルバムから2年間でなにが変わったのかとか、世の中のスタイルも変わっていくなかで、私から出てくる言葉ってなんだろうと思って作りはじめました。
──なるほど。今作からは、全体的に落ち着いた雰囲気を感じたんですよね。その辺は意識して作られたんですか?
足立 : 最近、普段の話し方も落ち着きはじめていて、それがそのまま出ているのかなって思います。自分から「落ち着かせよう」とか「ちょっと控えたほうがいいよね」っていう感じではなく、いまの自分のプライベートな感じから「じゃあアルバム作るにはどうしたらいいかな?」って思ったときに、自然とそういう流れになったんだと思います。
──そういう落ち着いたモードになった理由はなんだったんでしょう?
足立 : やっぱりコロナ禍でお仕事がお休みの時間があったんですけど、その時間のなかで「バタバタ動いてきたけど、どうしたらこの先自分が納得いくようになるかな」とか「どういう曲作りたいのかな」とかそういうことを改めて考えることができて。自分のなかで考える時間があったからこそ、いまこうしていられるのかなって思います。世の中もストップしているようでしていないですし、多分なにも変わらずに世のなかが進んでいたら、この落ち着き方はしてなかったかもしれないですね。
