OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.337 俳優・山本耕史が歩んできた音楽というもう一つの舞台
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
俳優・山本耕史が歩んできた音楽というもう一つの舞台
いまや日本を代表するバイプレイヤーとして活躍する、俳優・山本耕史。1993年の「ひとつ屋根の下」で注目を集め、その後、2004年の大河ドラマ「新選組!」で土方歳三役を演じ、大ブレイク。近年も映画「シン・ウルトラマン」に登場するメフィラス星人役や、Netflixのドラマ「地面師たち」での大手デベロッパーの開発事業部部長役などを務め、数々の作品に出演。さらに洗剤、宝くじ、飲料メーカーや殺虫剤、転職エージェントなど、ありとあらゆるCMに出演して、今やテレビで見ない日はないほどの活躍ぶりである。
そんな山本耕史だが、彼の音楽活動のことはご存じだろうか。彼は1997年にシングル「IMAGINE」という作品でCDデビューを果たしている。その後も、自ら作詞・作曲・ギター演奏まで手がける楽曲を立て続けに発表し、俳優としてだけではない彼の本気を示していた。
そのサウンドとしては、彼自身が中学校時代に影響を受けたBOØWY、および氷室京介の影響を感じる、ビートロックを主体としたもの。ジャケットから感じるビジュアルのイメージとしては、GLAYのエッセンス (TERUのようであり、JIROのようでもある) を感じずにはいられないのだが、彼がデビューした「IMAGINE」がリリースされた1997年は、GLAYの特大ヒット作『REVIEW〜BEST OF GLAY〜』がリリースされた年。当時は音楽業界としても、ビジュアル系的な売り出し方に力を入れていたのではないかと推察される。
これらの音源は長らく手に入らなかったが、2024年に音楽配信がスタート。各種ストリーミングサービスでの配信のほか、OTOTOYでもダウンロード配信されている。
また、山本の音楽的な表現力は、ミュージカルでの経験に裏打ちされている。子役時代の1987年、『レ・ミゼラブル』で舞台デビュー。1998年にはブロードウェイミュージカル『RENT』のマーク役を務め、役作りのためにニューヨークで生活しながら英語を学ぶという徹底ぶり。演じながら歌うということが、彼にとって自然な表現の形なのだろう。
また、2006年には山口智充、佐野元春とともに「The Whey-hey-hey Brothers」を結成。そして2010年には、ロックミュージカル『GODSPELL』で演出と主演を兼任。山本の音楽と演劇への情熱が交差する、ターニングポイント的な作品となった。
現在の音楽活動の中核を成すのが、ヴァイオリニスト・古澤巖とのコラボレーションによる「Dandyism Banquet」コンサートシリーズだ。ジャズピアニスト・塩谷哲をはじめとした一流ミュージシャンたちと共に、既成ジャンルにとらわれないステージを展開。山本自身が演出を手がけ、2022年から続くこのプロジェクトは、音楽ファンと演劇ファンの両方を魅了している。現在は第3弾のツアーの真っ最中であり、全国11か所で新たな音楽体験を提供している。
山本耕史の音楽活動は、俳優という枠を超えて、音楽そのものと深く向き合う真摯な表現の場だ。演技と音楽、言葉と旋律、そのすべてを自由に行き来する彼の姿は、どこまでも柔軟で、そして挑戦的である。山本耕史はこれからも “音楽という舞台” の上で、観る者・聴く者すべてを驚かせ続けるだろう。
