OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.341 my masterpiece
OTOTOY編集者の週替わりプレイリOAスト&コラム(毎週金曜日更新)
my masterpiece
伝説のSFバイオレンス・アクション映画『狂い咲きサンダーロード』をシネマート新宿で観てきた。石井聰亙 (石井岳龍) が日本大学藝術学部映画学科在籍時に制作した1980年の作品。限られた技術のなかで、爆発力を持った並々ならぬ熱意と気迫が画面であふれんばかりに表現され、今なお観る者の心を鷲掴みにする。「とにかく何かやってやりたいんだ!」という衝動が奇抜なキャラ設定やセリフの端々など演出に現れていて、その尖り方が本当にツボ。
学生時代にハマったときは何度も繰り返し観て、セリフもほとんど覚えていた。今回久しぶりに観ると細部は忘れていたけれど、そうだったそうだったと思い出すたびに脳が刺激され、アドレナリン出まくりだった。劇中歌も抜群で、オープニングでおとずれる一瞬の静寂のなかか細いカウントから始まる泉谷しげるの「電光石火に銀の靴」は、何度観ても痺れる。やっぱり大好きな映画だし、名作だと思う。
ふと気づいたのは、自分にとって「名作」と感じる作品は、音楽も映画も最近のものではないということ。20代前半までに出会った作品が多く、長い時間をかけて繰り返したしかめることで自分との距離が近くなっていった。逆に言えば、今出会った作品も10年、20年後には新しい「自分にとっての名作」になっているかもしれない。もうこれ以上自分のなかで名作と思える感性は生まれないのかもしれないと寂しく思っていたので、その可能性に気づけて嬉しかった。プレイリストには名盤だと思うアルバムから1曲ずつセレクト。やっぱりどれも出会ってから時間が経っている作品ばかりになった。大切な感情は時間をかけてあたためていくものなんだと改めて思う。
