OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.153
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
愛される所以
幼い頃から、宇多田ヒカルが好きだった。超絶大ヒットしたファースト・アルバム『First Love』は、親のカーステレオからひたすらにエンドレスリピートされていた。おそらく人生で100回以上聞いていると思うアルバムだと思う。その後も「エヴァ」、「キングダムハーツ」をはじめとするドラマやCMなど、強力なタイアップがついていたこともあり、あらゆるタイミングで宇多田の曲は人生におけるBGMとして流れていた。いまでも、時々「光」を歌いながら皿を洗うし、秋に再放送のドラマを見ていると「SAKURAドロップス」が脳内に流れる。
ただ、宇多田ヒカルのことを最初に好きになった理由は楽曲ではなかったと思う。僕が好きだったのは、トークのときの素の感じ全開の姿だ。フジテレビで放送されていた音楽番組『HEY!HEY!HEY!』の初出演、大御所のダウンタウンに対して超絶フランクな態度で接していたのがとにかく衝撃だった。ほかにも、TBSの「うたばん」で「行け!稲中卓球部」に出てきたパンダの乗り物を乗り回したり、V6岡田准一と絡む姿は、鮮明に脳内にしっかり刻み込まれている。いまでも「〜なんだぁ」みたいな話し方をする人をみると、宇多田っぽいなと思う。めっきりそういうガチャガチャした地上波の音楽番組に出ることはなくなったし、そもそもそういうテレビの音楽番組自体が少なくなった(CDTVでEXITと絡む姿は見てみたい気もする)。
今や名実とともに日本のトップアーティストとなった宇多田だが、その素の感じが完全になくなったわけではない。最新作『BADモード』のジャケット大喜利に対して「一時間くらいエゴサした中でこれが一番ウケた」とHUNTER×HUNTERのゾルディック家の画像を引用リツイートする感じは、まさにザ・宇多田だった。宇多田ヒカルだって、エゴサをするのだ。楽曲のクオリティの話で言えば、間違いなく日本の音楽業界のトップのアーティストだが、これができるのが、彼女が愛される所以だなと思っている。狙っているのか、天然なのか。そういう部分も含めて、宇多田ヒカルは天才なのだ。
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