なぜ、演歌歌手・望月琉叶はボーカロイドを愛するようになったのか?──知られざる、その音楽遍歴
演歌歌手、グラビアアイドルとしても活躍する望月琉叶が、5人のボカロPとタッグを組んで5ヵ月連続で新曲を配信リリースする。望月はアイドルとしてデビューしながらも、昨年2021年には「日本レコード大賞」新人賞を受賞するなど、その実力を認められている演歌歌手である。そんな彼女はなぜ、ボカロPとの異色のコラボレーションに挑戦することになったのか。このインタヴューでは、彼女の音楽遍歴をたどりながら、そのパーソナルな部分にも迫りました。
ボカロP、jon-YAKITORYプロデュース作品 『MONSTER』
INTERVIEW : 望月琉叶
演歌歌手として活躍する望月琉叶が、ボカロPとタッグを組むという話を聞いたときは本当に驚いた。演歌とボカロは全く真逆の世界だと思っていたからである。しかし、今回の取材で彼女の音楽遍歴について話を訊いてみると、演歌とボカロの意外な共通点に気がついた。望月琉叶は現在、グラビア・アイドル・演歌歌手の“三刀流”として幅広く活動をしているが、彼女はあらゆるカルチャーの架け橋となる存在になるのではないだろうか。そんな予感がしてならない。
インタヴュー&文 : 西田健
写真 :西村満
「急に演歌? きらレボじゃないの!?」って
──2020年に演歌歌手としてデビューした望月さんですが、今回は5人の有名ボカロ Pとタッグを組んで5ヵ月連続での新曲を配信リリースするという企画に挑戦します。
望月琉叶(以下、望月) : 私は演歌歌手として活動しているんですけど、ボカロもずっと好きで、ボカロPの方と一緒に音楽を作るという夢も抱いていたんです。あるとき、今回のコラボのお話をいただいて、やる気満々でこの企画をやることに決まりました。
──なるほど。これまでの音楽遍歴からお伺いできればと思うんですが、望月さんは、どれくらいの時期から歌への関心が出てきたんですか?
望月 : 小学校低学年のころ、父親と一緒にカラオケに行ったんですけど、私があまりにも歌わないものだから、「歌が上手い女の子はモテるよ」って言ってきたんですよ。それを聞いて「歌ったらモテるんだ! モテたい!」と思って、そんなチョロい理由でちょっとずつ歌うようになったんです。
──なるほど(笑)。小学生の頃は、どんな歌を歌ってたんですか?
望月 : 小学校低学年の頃、『きらりん☆レボリューション』というアニメが流行っていたんです。天真爛漫なキャラの主人公の月島きらりちゃんが、歌ったり踊ったりしていて、みんなにも人気者だったんですよ。それを見て「私もこうなれたらいいな」って思っていました。そこからまずは『きらりん☆レボリューション』のアニメの曲を全部マスターしたんです。歌うことが好きになった入り口は、『きらレボ』でした。
──なるほど。演歌を聴くようになったきっかけは?
望月 : 母が演歌歌手になりたかったらしく、家でも演歌や歌謡曲がよく流れていたんですよ。それで気になっていろいろ調べているうちに、小学校の高学年くらいで、美川憲一さんの“柳ヶ瀬ブルース”にハマったんです。ミュージックビデオで、美川様が艶やかな感じで歌われているのを見て、「うわーすごい! 大人っていいな! 」って思ったんです。
──小学校の高学年で美川さんにハマったんですね。なかなか早い気がします。
望月 : そうですよね。友達とカラオケに行ったとき「急に演歌? あれ、きらレボじゃないの!?」ってびっくりされました (笑)。
──美川さんの歌を歌ったときの周囲の反応はどうでしたか?
望月 : 友達はびっくりしていたんですけど、親戚とカラオケに行ったときに、私が美川憲一さんの“柳ヶ瀬ブルース”を歌ってる姿を見て、みんながすごく感動していたんですよ。「演歌ってこんなに人を感動させるんだ」と思って、笑顔が見たくて頑張って歌っていました。
──ボカロにはいつ頃出会うんですか?
望月 : 中学校に入ってから、初音ミクちゃんが流行り出したんですよ。見たことも聴いたこともない新しいものに、私は虜になったんです。いろいろ聴いてみたら良い曲も多いし、それからは、ミクちゃんの真似をするようになりました。
──中学の頃は、どんなボカロ曲を聴いていたんですか?
望月 : Supercellさんの“メルト”、dorikoさんの“ロミオとシンデレラ”とかその辺ですね。他にも、再生数が1万回もいってないような曲もネットで探して聴いていました。ボカロはそれからもずっと聴いていて、Wowakaさんの曲とか、あつぞうくんさんの“デルフィ”とか、さつき が てんこもりさんの“お断りします”、OSTER project の“ミラクルペイント”がジャジーな感じで好きでした。