KAQRIYOTERROR×作詞家・GESSHI類 対談──『アヴァンギャルド0チテン』に込められた歌詞の秘密

「禁忌がTABOO」をコンセプトに様々なジャンルの音楽をミックスし、歌唱法もラップ、デスヴォイス、ウィスパーなどなんでもアリな世界を表現している5人組ユニット、KAQRIYOTERROR。2020年に9月9日リリースされたアルバム『アヴァンギャルド0チテン』は、ラウドでダンサブルなトラックに、攻撃的かつ独創性に溢れた歌詞が載った刺激的な1枚に仕上がっている。今回OTOTOYでは、メンバー全員に加え今作に収録されている10曲中9曲の作詞を手掛けたGESSHI類に対談インタヴューを実施。KAQRIYOTERRORの歌詞に込められた秘密を探りました。次ページでは、メンバーからメンバーへの質問コーナーも掲載中。フォトギャラリーと併せてご覧ください!
1stアルバム『アヴァンギャルド0チテン』配信中!
INTERVIEW : KAQRIYOTERROR

前身ユニット・幽世テロルArchitectから名前を変えて1年、勢力的に活動を続けてきたKAQRIYOTERROR。改名後初のアルバム『アヴァンギャルド0チテン』は、1枚のなかにラウドロック、ミクスチャー、エレクトロなど様々なジャンルを詰め込んだ内容になっていて、その音楽の幅にまず驚いた。さらに、そのトラックに載っている歌詞も、摩訶不思議かつ攻撃的な単語が並ぶ一方で、声に出して見ると英語のように聴こえるフレーズが散りばめられていることが印象的だった。私はその歌詞の秘密がどうしても気になり、メンバー全員と作詞を担当しているGESSHI類氏を交えての取材を申し込んだ。そして、インタヴューのなかで語られたのは、「歌詞はメンバーへのラブレターのようなもの」という言葉。この1年のなかでKAQRIYOTERRORは、GESSHI類氏と共にどのようにしてアルバムを作り上げていったのか、じっくり伺った。
インタヴュー&文 : 西田 健
写真 : 宇佐美 亮
一緒に楽しめるように全ての振り付けを作り直した
──今作はどんなアルバムになりましたか?
心鞠游(こまりゆう) : KAQRIYOTERRORには「禁忌がTABOO」というコンセプトがあるんですけど、まさにその通りなんでもアリを表した一枚になったなと思います。
ノア・ロンド : 曲でいうとジャンルがなんでもアリになって、楽曲の幅が広がりましたね。
聖涙丸(せんとなみだまる) : これまでこんなにラップすることなかったんです。
心鞠游 : “Human fly”とかはがっつりゴリゴリのラップなんですけど、こういうのは今回がはじめてで。結構苦戦しましたね。
──今回からだったんですか!? でもラップの完成度はかなり仕上がってますよね。
心鞠游 : メンバーそれぞれ得意分野が違っていて、たとえばノア・ロンドはがっつりしたラップは得意で、私はゆるい歌い方は得意だったりして。
聖涙丸 : 私はゆるい歌い方は苦手なので、そういう部分は補い合って作ってます(笑)。
季(すもも) : それぞれのいいところを参考にし合ってます。
心鞠游 : 今回アルバムのために新曲が5曲入っているんですけど、見事にメンバーそれぞれの個性が出ていて。ファースト・シングルとして出した“lilithpride”と“SOS”も、当時は個性が強い曲だなと思ってたんですけど、新曲が出てからはもっと個性出しても良かったのかもしれないって思いましたね。

──新しくレコーディングした曲の方がより個性が出ている?
ノア・ロンド : そうですね。DKIちゃんと私は1年前に加入したんですけど、最初のレコーディングはガチガチで。いまは心に余裕ができて、ブースに入るときも楽しめるようになりました。
DKI(どき) : 加入当初は必死にやるしかないって感じだったんですけど、いまはもう、どんと来いですね(笑)。
──1枚の中で成長を感じられるように作品になっているということですね。
心鞠游 : そうですね。1曲目の“Avant-gardE”とかは特に歌詞もPVも攻めてますし。
聖涙丸 : PVはクロマキーやモーショングラフィックスを使用してもらっていて、完成するまで全体像がまったくわからない状態だったので、出来上がるまでワクワクでした。期待を上回る出来に仕上がりましたね。
心鞠游 : 撮影しているときもなにやってるのかわからなくて、出来上がったPVを見て、こういうことだったんだ! って(笑)。

──PVの見どころを教えてください。
心鞠游 : みんなでガスマスクをつけて向き合ってるところがあるんですけど、そこがかっこいいので一回止めてみてほしいです。
季 : 私は涙丸が空を飛んでるところですね。 他のメンバーが地球の上に武器を持って影になってるんですけど、それがすごいシュールで好きですね。
聖涙丸 : 私なんであんなそんなにニコニコ笑顔だったんだろう。楽しかったんでしょうね(笑)。
──2020年9月9日には“Avant-gardE”も収録されているアルバム『アヴァンギャルド0チテン』がリリースされました。お客さんの反応はどうでしたか?
DKI : YOMIBITO(KAQRIYOTERRORファンの総称)さんそれぞれが考察をされていていて、それが面白かったです。みなさんしっかり聴いてくださっている感じがしました。
季 : 音の一音一音がすごく良いとか、結構細かいところまで聴いてくださっていて嬉しいですね。
聖涙丸 : こだわったイントネーションとかもコメントしてくれてる方もいて、「そこ、気づいてくれるんだー」って嬉しくなりましたね。
心鞠游 : 楽曲だけを公開した段階で、「この曲一緒に踊りたい!」みたいな感想をかなりいただきました。お客さんのなかには踊った動画を上げてくれてる方もいて、すごく驚きました。
季 : 1回で振り付け覚えてくれてるからすごいなって。

──これから配信だけでなく生でもライヴがあると思うんですけど、今後はどんなイベントになりそうですか?
DKI : いま、コロナ禍で声出しもできない状況なんですけど、声を出せないなりにお客さんが工夫して下さっていて。そういうのも楽しみですね。
心鞠游 : この間はじめて着席にて有観客ライヴをやってみたんですけど、いろいろ書いた紙を手に持っていたりしていて、そういう楽しみ方もあったのかと思って(笑)。
聖涙丸 : いま、どうしても制限されている状況なので、私たち全ての振り付けを作り直したんですよ。もっと踊れる振り付けにしようと思って。これからライヴを観るYOMIBITOさんたちは新しい振り付けを観れていないと思うので、それにも驚いてもらえると思うし、一緒に楽しめる振りも増えたので、そこを一緒に楽しんでいければなと思ってます。
ノア・ロンド : コロナ禍になる前から、「お客さんと一緒に楽しめたらいいよね」って話をメンバー内でしていて、それが今回うまく出せたかなと思います。楽しみにしていてください。
「実験」がキーワードになっている
──ありがとうございます。これからは作詞担当のGESSHI類さんも交えてお話を伺っていきます。
GESSHI類 : よろしくお願いします。
──GESSHI類さんは今作で10曲中9曲作詞されていますが、KAQRIYOTERRORの歌詞はどういうことを考えながら作っていくんでしょうか?
GESSHI類 : まず、KAQRIYOTERRORの作品として、どれだけ面白くできるかということを最重要に考えています。基本的には自分たち制作陣が考えるKAQRIYOTERRORの面白さを前面に出せるように、そしていまの5人の個性がいちばん伸びるような形で歌詞を書くようにしています。
──ちなみに、歌詞と曲はどちらが先なんですか?
GESSHI類 : 全体的な話でいうと、曲作りをしてから歌詞を載せることの方が多いですね。面白いリリックの欠片は制作陣同士で共有していて、「こういうテーマのこういうものって面白くない?」ということから作っていくことはあります。

──メンバーには、曲が先に渡されてそのあと歌詞がという流れなんですか?
心鞠游 : ほとんどそうですね。「どんな感じでくるんだろう」っていつもワクワクしてます。歌詞をメロディにすることも考えるポイントではあるので、どうやって歌うんだろうってところからはじまります。
──曲によって歌い方も違いますよね。「ここはラップで」「ここはスクリームで」「ここはウィスパーで」ということは、歌詞を組み立てるときに決めるんですか?
GESSHI類 : 曲を作る段階からある程度は決めています。例えば何かフレーズの文脈の中でインパクトが欲しい時に「スクリームが上手くはまらないかもしれないけど、ウィスパーではどうだろう」って一回自分で実験的に仮歌を歌ってみてからメンバーには渡すようにはしています。
心鞠游 : GESSHI類さんや社長の仮歌で練習してますね。
GESSHI類 : 仮歌はかなり恥ずかしいですけど(笑)。
──他にもこだわっているポイントはありますか。
GESSHI類 : 例えばラップの押韻の仕方とかはよりわかりやすく、というのは常に考えています。HIPHOPカルチャーのラッパーではないからこそ、伝える部分にわかりにくさがあると何をやっているのかが全然伝わらなくなると思っているので。自分たちのやりたいことより、わかりやすさを大事にしてはいますね。

──なるほど、個人的にKAQRIYOTERRORの曲を聴いていると、英語を日本語にしているんじゃないかと思ったんですね。
GESSHI類 : KAQRIYOTERRORの曲は、メロディを載せる段階で基本が英語ベースで、それを日本語に変換していく手法を取っています。英語の聞こえ方をする日本語とか、そうやって面白く聴こえるようにというのは当初からやっている手法ですね。
──独特な言語感覚だなと思っています。
GESSHI類 : 他の〈コドモメンタル〉のアーティストの曲で作詞をする時もそうなんですけど、面白い実験をしながら音楽をやっていければと思っています。英語に聴こえるフレーズの中に日本語を入れたり、日本語に聴こえるフレーズの中に英語を入れたり。KAQRIYOだったら、押韻しないものをポコンと入れ込んだらどういうものができあがるだろうとか。そういうことは常々考えていますね。「実験」はキーワードになっていると思います。
──メンバーに歌唱指導されたりすることはありますか?
心鞠游 : 基本あんまりないですね。自分なりに歌ってみて、ここをこうしてみようということはありますけど、「もっとやっていいよ」とか「もっといけるでしょ」って言われますね。
聖涙丸 : 自分で意図を汲み取ってみたり、自分だったらこう歌ってみようって考えたり。作曲をしてくれていてエンジニアも務めてくれてるsyvaさんがアドバイスくれたりするので、詰め合わせてドン! という感じですね。
GESSHI類 : 全部指示していたらおもしろくはないし、このメンバーでやっている意味がないと思うんです。実際にやっているうちにどんどん成長していくものだと思うので、個性が伸びるように自由にやってみてもらっていますね。

歌詞を書くときの感覚は手紙に近い
──メンバーはGESSHI類さんが書いた歌詞で好きなところはありますか?
心鞠游 : 私は“うすうす”の歌詞が好きです。実際歌っているなかでもいちばん攻めているなと。これまで以上にストレートに口撃性が強くなったなという印象があります。
GESSHI類 : アルバムを通して、「自分たちはここまでやりますよ」という線引きがしたかったんですよね。だからアルバムの中で一番口撃的で、一番聴いてもらったら困る“うすうす”を公式サイト限定公開で最初に出しました(笑)。
心鞠游 : かなり反響がありましたね(笑)。
聖涙丸 : GESSHI類さんの歌詞は私たちに向けて、こうなってほしいみたいな部分が入っているんですよね。YOMIBITOさんからするとエッジが効いてるって感じるかもしれないんですけど、私たちには毎回グサっときます。
季 : 社長を含め全曲歌割りをして下さっている時に、自分たちそれぞれに思い当たることとかがあって。メンバーのことをよく見てくださっているなと感じますね。
GESSHI類 : 歌詞はいろんな解釈ができるように書いているんですけど、これがたとえば、恋人に向けてなのか、大切な人に向けてなのか、そういうダブルミーニング、トリプルミーニングでたくさん入れ込んでいます。そのなかでもメンバーに向けてというのは一番考えています。KAQRIYOTERRORはなにやってもいいよというコンセプトなんですが、メンバーは正義感が強かったり真面目だったりするので、もっと殻を破ってほしいなと思って“うすうす”の歌詞を書きました。そういう意味では、歌詞を書くときの感覚は手紙に近いかなと思います。
心鞠游 : 私は世の中に向けて文句を言ってる曲だと思ったので、まさか自分たちに言われてると思ってなくて。いまびっくりしました(笑)。
聖涙丸 : 私は察してましたよ(笑)。

──歌詞はGESSHI類さんからの手紙との事なんですが、そのメッセージはメンバーのみなさんにも届いていますか?
季 : “B.W.G”の歌詞のなかの「飾らず脱げ!」とかはまさに「曝け出していけ」ということを伝えたいのかなって。自分の本心を言えなかったことも過去にあって、そこが自分に当てはまっていて心に刺さりました。
DKI : 私は“Persona_”の歌詞が刺さりました。人間誰しもありのままで生きるのは難しいので、仮面を被って生きているというテーマを感じました。
ノア・ロンド : いま私もライヴ前にもう1回“Persona_”の歌詞を見直して「叶わない、想いなら、いっそ今、灰になれ。」っていう歌詞がまさに刺さっています。すごく好きな歌詞なのでここをどう魅せていこうっていうのは考えてますね。
聖涙丸 : “Persona_”には上記にもあるダブルミーニングでメンバーに対しての皮肉も入っているんですけど、「正義が名義の気持ち悪さって気づかないまんま死んでも流浪人」というところがあって。私は小さい頃からよくも悪くも正義感が強いんですよね。この正義感を捨てることができたらもっと生きやすいんだろうなって思ってたら、そういうところをピンポイントで言われて、これはまさにGESSHI類さんからのメッセージだと受け取りました。
GESSHI類 : でも、新体制になってファースト・シングルの“lilithpride”から、“Persona_”、“BWG”と曲にしていくとどんどんいい方向になっていくんですね。たとえば、“うすうす”の歌詞に入れた自虐的なことはなくなりましたし。そして、KAQRIYOTERRORはそれを歌っていくことで自分たちの曲から世間に向けて「あなたの曲」に昇華していけるグループだと思っています。自分たちの歌から世間に向けてメッセージを発信していけるようなものになっていくんじゃないかなって思っています。このアルバムは1枚目なので、メンバーに対してこういう風になってねっていう想いをとても込めました。手紙というかもはやラブレターのようなものになったかもしれません(笑)。
メンバー : ありがとうございます!
1stアルバム『アヴァンギャルド0チテン』配信中!