2023/09/20 18:00

水樹奈々はこれからも大きな光となって、人々の世界を照らし続けていく──〈NANA MIZUKI LIVE PARADE 2023〉ツアーファイナル

水樹奈々

圧倒的な歌唱力でファンを魅了し続ける水樹奈々。〈RUNNER〉、〈HOME〉、〈HEROES〉に続く4部作の完結となる〈PARADE〉ツアーのファイナル公演が東京・有明アリーナで開催された。今回も水樹奈々は最初からフルスロットル。声出し解禁で、より一層会場のボルテージが高まったライヴのDAY2の模様をお届けする。

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REPORT : 〈NANA MIZUKI LIVE PARADE 2023〉at 有明アリーナ DAY2

取材&文 : 西田健
photo：kamiiisaka

まさに圧巻。水樹奈々のワンマン・ライヴ「NANA MIZUKI LIVE PARADE 2023」は、混沌とした世界をずっと照らしてくれそうな、光のようなライヴだった。このレポートは、東京・有明アリーナで開催されたファイナル公演、その2日目の記録である。

「PARADE」と銘打たれた、このツアーは実に4年ぶりの声出し解禁公演。ステージには飛空艇を模した煌びやかなセットが組まれていた。開演前BGMの時点で、すでに満席の会場から開演を待つ手拍子が鳴り響き、客席の気分は徐々に高まっていく。

定刻を迎えると、まずはスチームパンク風の世界観のオープニングムービーが流れ始める。映像のなかで水樹は、飛空艇の船長として登場。歌の力で世界に夢や希望を伝えるその姿は、現実の水樹の姿とシンクロしている。そして、ゆっくりと扉が開き、オープニングムービーと同じくゴシックテイストのドレスに身を包んだ水樹船長が登場。今宵のPARADEがスタートした。

ライヴは序盤からトップギアに攻めていく。“Red Breeze”のイントロが鳴り響くや否や、会場は燃え上がるような熱気に包まれる。会場のボルテージは一気に最高潮だ。続く、“Bring it on！”では拡声器を手に、どんどん客席を煽り、客席もしっかりそれに応えていく。その姿はこのライヴが標榜する空挺団のリーダーのそのものだった。

水樹はその後もその熱を絶やすことなく“Rock Ride Riot”を歌い、MCへ。「みんなの声が本当に気持ち良いー！」と全身で歓声を浴びる姿が本当にチャーミングだった。水樹の話によれば、このツアー中に自らのパワーで家中の家電が壊れはじめ、ついにはエアコンまで壊れたという。そのため、暑さには耐性があるとのこと。水樹はさらに、これからは「暑さには熱さで対抗していきますよー！」と叫び、会場内の温度をさらに上げていく。

そして、ここからはダンスブロックへ。チェッカーフラッグの海賊のような衣装に着替えた水樹は、ダンサーのteam YO-DAと共にハイスピードなダンス・チューン“still in the groove”を披露。次のマーチングのリズムが印象的な楽曲“Love Fight！”では、センターステージへと移動し、客席の士気をどんどん高めていく。これだけ激しい振りを踊りながらも、水樹の歌は音程もぶれず、声量も一切落ちることはない。ここに水樹奈々というアーティストの底知れぬ凄みがあった。

“Gimmick Game”でダンスのブロックを終えると、水樹のライヴを支えるバンド隊、Cherry Boysの紹介コーナーへ。それぞれの自己紹介のたびに、客席からはしっかりレスポンスが返ってきているのが印象的だった。このコーナーのなかでCherry Boysはお茶目なバンドメンバーたちのように見えるが、水樹の楽曲はどれも、演奏するにはかなりの技術を要求されるものばかりだ。水樹のパフォーマンスはもちろんのこと、彼らの超絶技巧を楽しむのもライヴの醍醐味のひとつだと思う。ライヴはその後も灼熱のセットリストが続く。ティンカーベルをイメージしたグリーンの衣装にチェンジした水樹は、“Get up! Shout!”、“Silent Bible”を熱唱。そして、水樹の代表曲 “ETERNAL BLAZE”では会場から地鳴りがするほどの歓声が湧きあがり、水樹奈々のライヴの真骨頂を見せていた。

怒涛のようなライヴを見せた後は、“ナイトパレード”と称した、しっとりしたムードのブロックへ。アコースティックコーナーでは、ベース担当のりゅーたんによるアレンジで“Love Brick”を披露。原曲とはガラッと雰囲気を変え、レゲエ調のリズムでチルな夏の夜を演出していた。曲を披露したあとは、少しバンドメンバーとのトークを挟むのだが、りゅーたんが「水樹奈々はスクワットの女王」という不思議なキャッチフレーズをつけたため、そのまま客席も巻き込んでスクワットを7回やる謎の流れに。なかなかクールダウンさせないのが、この日のライヴのおもしろいところだ。しっかりと腰を落としたスクワットを見せたあともライヴは続き、ムーディーな“Sweet Dealer”、切なく心に染みるバラード“恋想花火”といったナンバーで魅了していった。

再びスクリーンには、ショートムービーが流れる。それは、オープニングムービーで世界に夢や希望を伝えてきた水樹の飛空艇が不慮の事故により墜落してしまうという内容だった。これは水樹自身コロナ禍によって、ライヴも中止となり、自らの歌を届けることができなくなってしまったこととも重なっている。暗黒の世界が街を覆ってしまったが、水樹は立ち上がり大きな光となって人々の元へと姿を現す。

水樹は、全長約7m、幅約4.5mという光輝く衣装(本人曰く“お奈々の塔”)で登場。そして歌われるのは、“サーチライト”。水樹は、自ら今なお混沌としている世界を明るく照らす光となったのだ。希望に満ちた歌が会場中を温かく包み込み、観るもの全てを笑顔に変えていった。水樹はさらに、ロイヤルなプリンセスドレスに着替え“POWER GATE”で自らのパワーを人々に分け与えていく。パレードはさらに続く。“Higher Dimension”ではメインステージからセンターステージまで小型飛空艇に乗って、上空約7mの位置でフライングで移動。物理的にも非常に高い場所から、高い音域のシャウトを響かせた。

水樹は、この〈PARADE〉というツアーはコロナ禍で開催してきた〈RUNNER〉、〈HOME〉、〈HEROES〉に続く4部作の完結編なのだと語る。4年ぶりの声出し解禁ということをお祝いした、いわば凱旋パレードの意味を込めて、このライヴを作ってきたのだ。やっと声を出してお客さんと共にライヴを作り上げることの喜びを、水樹はこの公演を通して伝えたかったのだと思う。

水樹は「ここからが真のパレードの始まりです！」と宣言すると、地面に降り立った小型飛空艇に乗って、アリーナを優雅に移動しながら“Astrogation”、“アヴァロンの王冠”をパフォーマンス。まさに凱旋パレードのように客席を巡回し終えメインステージに戻ると、T.M.Revolutionとコラボした楽曲“Preserved Roses”を大熱唱。この楽曲はT.M.Revolutionのパートをファンが歌うのがライヴのお決まりであり、客席からは大きな歌声が響き渡っていた。これもコロナ禍ではできなかったことであり、いまこの場で歌える喜びを多くのファンが感じていた。本編ラストの“NEXT ARCADIA”まで水樹はCherry Boysとともにステージを走り回り、笑顔と熱い歌声を客席に届け続けた。

アンコールでは、猫耳キャップにツアーTシャツでステージに再登場。序盤のダンスブロックとは異なり、アフターパーティーといった趣で、“PARTY! PARTY!”、“SUMMER PIRATES”といったキュートでダンサブルなセットを届けていく。有明アリーナ全体を巨大なダンスフロアへと変貌させた水樹はさらに、10月から放送のTVアニメ「でこぼこ魔女の親子事情」のOPテーマとなる新曲“Sugar Doughnuts”、そして最強ディスコ・チューン“DISCOTHEQUE”をラブリーなダンスで歌い上げ、最後まで観客を魅了した。

こうして3時間近くもの間、水樹は1人でライヴを走り抜けた。しかも、最後にはバンドメンバーやダンサーのteam YO-DAとともに、再びスクワットを7回(もちろん客席も巻き込んで)やる余裕すらもある。水樹奈々は超人なのだろうか。そしてその超人的なパワーはいったいどこから来るのか。それはきっと応援してくれるファンがいるから。水樹はファンからパワーを受け取り、それを何倍もの光にして返すことができるのだと思う。そして、水樹奈々はこれからも大きな光となって人々の世界を照らし続けていく。それはきっとこれから先もずっと。

「NANA MIZUKI LIVE PARADE 2023」東京・有明アリーナ DAY2 セットリスト

M1.Red Breeze
M2.Bring it on！
M3.Rock Ride Riot
M4.still in the groove
M5.Love Fight！
M6.Gimmick Game
M7.Get up! Shout!
M8.Silent Bible
M9.ETERNAL BLAZE
M10.Love Brick
M11.Sweet Dealer
M12.恋想花火
M13.サーチライト
M14.POWER GATE
M15.Higher Dimension
M16.Astrogation
M17.アヴァロンの王冠
M18.Preserved Roses
M19.NEXT ARCADIA