NOT WONK加藤発案〈FAHDAY〉に寄せて──プレ・イベント〈FAH_ver.7〉レポート
NOT WONK加藤が発案する〈FAHDAY〉。苫小牧の市民会館をまるごと使って開催される街のビック・イベントであり、HPのステイトメントには「表現の交換市」と記されている。そのプレ・イベントが各地で行われ、東京編として〈FAH_ver.7.〉が〈KATA〉と〈TimeOut Café & Diner〉にて開催された。
当日はNOT WONKに加え、苫小牧、高崎、沖縄、札幌、西東京と出身地の異なるアーティスト、DJがラインナップされた。あらゆるルーツをもつ人々が共にある東京にて開催されたこの日のイベントは、ルーツだけでなく、NOT WONKというバンドの、そして加藤自身の過去現在が交わり、希望のこもった未来を想像させる、晴れやかなパーティーとなった。以下はパーティー・レポートと冠してはいるけれど、NOT WONKの動向を追ってきた自分視点の出来事であり、〈FAHDAY〉への思いを馳せたコラム、といったほうが近いかもしれない。
さまざまな文脈の交差点となったパーティー〈FAH_ver.7〉
CAR10のライヴが終わり、夜の訪れを告げるようにMOGURIがかけるダブ・ステップが足元をすくうなか、興奮がおさまらない様子の加藤が「俺、ずっとこういうふうに遊びたかったんだよ! 」と話す。この日のパーティーは、音楽性と場所のあり方を実験しながら、1つの居場所にとどまらない活動を続けてきた加藤自身の文脈が混じり合うものだった。そしてそう話す表情は〈FAHDAY〉への確信を感じさせた…気がした。
NOT WONKはライヴアクトの一発目、これまでリリースしてきたアルバム4作品を横断して組まれたセットで挑む。メロディック・パンクから芽吹いた音楽性は、10年間でオルタナティヴ・ロック、ソウル、現行のUKジャズなどを取り込み独自のものに進化してきた。これまでの変化を見せながらも、かつての仲間との再会を喜び、その喜びすらフロアの着火剤にするかのように「Give Me Blow」がかき鳴らされる。ラストの曲選びは、「オープンDJのTOMOKIYOで踊る間に思いついた」ものであり「YELLOWUHURUへバトンタッチするつもり」でなされたそう。とはいえこの日のDJはバンドの合間を縫うようなセットではなく、和気藹々としたラウンジを引き立てつつそれぞれのフィールドを魅せていくものだった。
到着時はアスファルトの照り返しにやられてソファでうずくまっていたので、詳細な記憶がなく申し訳ないのだけれど、TOMOKIYOのセットは美しいハウスやジャズに、声でビートを生み出すような曲などリスニング・セット的な違和感を紛れ込ませていく。そのセットは数年前に訪れた〈Bar Base〉の落ち着いたアンビエントの映えそうな佇まいを想起させた。NOT WONKからバトンを受け継いだYELLOWUHURUはソウルフルなハウスやサイケデリック・ロックをかけつつ、持ち味であるラテンやトライバル、ジャズに、サイケデリアを誘発するような効果的なシンセ音を混ぜこみ時空を歪めていくプレイをみせる。
あらゆるところで再会が起こっていたのもこの日が様々な交差点となったことを示していた。そんな祝福のムードをNobuki Akiyamaのあたたかなリズムマシーンを用いた弾き語りセットがさらに解してゆく。当日にメンバー加入の発表がされ、the hatchの4人体制ラストとなったライヴは、最近のバンドのモードであった歌とジャズ・セッションをある到着地点まで持っていったものに。15分ほどのジャズ・トリップを広げたあとには「恐竜は俺の祖先」「グレープフルーツ」など初期楽曲をぶつけていく。その緩急に眩暈を覚えた。彼らはなにも捨て去らず、次の段階に進もうとしているんだ。そして、ライヴアクトのラストは、CAR10。ステージを見るのは5年ぶりだったけど、あの頃と遜色ない勢いと優しさをもってフロアを温め、アンセム「マチフェス」「Best Space」ではモッシュにダイブにめちゃくちゃな状態に。それでいて全員清々しい顔をしている。その光景が心底美しかった。途中唐突に放たれた「今日だけは自分のことを信じてみましょう」という言葉も、最後アンコールに応えようとしたのにギターアンプが鳴らずに全員で叫んで終わらせたのも、非常にらしい出来事で、うれしくなる。ギリギリCAR10が頻繁に活動していた時期に間に合わなかった下の世代の友人も、終わり頃には汗だくで、聞けば最前に乗り出していたらしい。これがうちらのCAR10だよ、と思わずほくそ笑んだ。最後を締めくくるMOGURIは、ベース・ミュージック、ダブ・ステップを中心とした地を這うようなセット。そして、苫小牧でいつもかかる曲だというKool & The Gang「Summer Madness」で暖かな拍手のもとパーティーは幕を閉じた。