Bimiの宇宙はどこまでも拡がり続ける──〈Bimi Live Galley #03 -cosmic-〉
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確かなスキルと圧倒的な世界観で観るものを虜にするアーティスト、Bimi。2023年12月より開催されている〈Live Galley〉シリーズの第3弾となる〈Bimi Live Galley #03 –cosmic-〉が7月15日に品川ステラボールにて開催された。サブ・タイトルに「cosmic」を携えた本公演では一体どのようなパフォーマンスが繰り広げられたのか。熱気冷めやらぬライヴ・レポートをここに掲載する。
LIVE REPORT : 〈Bimi Live Galley #03 -cosmic-〉
文 : 沖さやこ
撮影 : Yusuke Baba(Beyond the Lenz)
Bimi史上最大規模ワンマン〈Bimi Live Galley #03 -cosmic-〉は、彼がさらに広い世界へと羽ばたいていくことへのメタファーであり決意表明だったのだろう。2016年に俳優としてデビューし、2021年にインディーズで念願のアーティストデビューを、2023年10月にはメジャーデビューを果たし、今回約1500人収容する会場でのワンマンライヴもソールドアウトさせた。8年にわたる表現者人生、新たなフェーズに入るには絶好の機会だ。このライヴも「宇宙」をキーワードにしたコンセプチュアルなシーンもあれば、自由度に富んだ場面もあるなど、彼の美学や好奇心が純度高く表れていた。
浮遊感のある壮大なSEと宇宙船を彷彿とさせるアナウンスに乗せて、地球の大自然とそこから飛び立つ宇宙船のオープニングムービーが流れると、“インベーダーインバイト”のジャケットなどでもお馴染みの宇宙人・越川がDJセットにつき、続いてネイビーのセットアップ姿のBimiが花道まで躍り出る。「声聞かせてくれ」と一言告げると“LOVE”でライヴをスタートさせた。
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1曲目から展開の多い曲で振れ幅の広さを見せるだけでなく、フロアの中央まで伸びた花道をフルに使ってパフォーマンスをする。ステージが見えにくいであろう両端の観客を慮ってのことだろう。フロアを見渡しながら歌う彼は、これまでのライヴと比較すると普段よりもどこかポジティヴな高揚感に溢れている。その様子はまさに、宇宙へと飛び立った際の胸の高鳴りを体現するようだった。
“funky night”では陽気な様子を見せ、“selfy”ではミステリアスなハイトーンボーカルで会場を引き付ける。「初めての人たち、今からめっちゃ疲れるんで各々スタミナ配分して楽しんでくださいね」「お馴染みの人たち、隣の新参者たちを導いてくださいね」と普段以上に丁寧に観客に呼びかける姿にも、船長の気概が見えるというものだ。“Popstar”でもステージを走り抜けたり、細い花道の上で跳ねるなど、大胆なモーションで魅了する。そのナチュラルな躍動感は、ステージに立ち続けた人間だからこそ習得できるものだろう。「ステージには魔物が棲んでいる」と語られることがあるが、彼がこの8年間、俳優としてもアーティストとしてもその魔物と駆け引きをし続けてきたのだろうと感じるほどの鬼気迫る身のこなしだ。
二日酔いだという越川が花道の先でうずくまり、Bimiの呼びかけで観客が一斉に越川へ「大丈夫?」と声を掛けると、その声で復活を果たした越川がフロアを煽り“Awake now”へ。Bimiのひずんだシャウトで会場の緊張感が高まると観客の熱も上がり、その勢いに乗って両者はステージを後にした。
そこから間髪入れずにシリアスな音楽と宇宙の映像が流れると、DJ dipがDJブースの前に就く。エンタテインメント性が高かった序盤から、ダークかつディープなムード漂うセクション、その後のBimiの言葉を借りれば「ブラックホール」へと突入した。Tシャツとジーパン姿のBimiが登場すると“Safe Haven”、“NINJA”、“rave”と様々な角度から心の闇の奥へと引きずり込む。怒りのなかには繊細さと哀愁があり、神妙な空気感を醸しながらもユーモアも忘れない。絶妙な温度感と身体にまとわりつくような粘度の高さは、ダークという概念の解像度の高さがあってこそ生まれるものだろう。一見同じような色をした闇であっても、目を凝らして見てみるとその奥にあるものはそれぞれ異なることを、彼は知っているのだ。“Tai”と“inner child”の畳み掛けは息を呑むほどに痛烈で、美しかった。
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Bimiがステージから去り、DJ dipのソロパフォーマンスに入るも、一向にBimiが戻ってくる様子がない。どうやら衣装チェンジに時間が掛かっているようだ。作り込まれた映像やこのライヴ用に書き下ろされたであろう音楽、練られた展開など、舞台のように完成度の高いライヴのまま駆け抜けるかと思っていたが、計画通りにつつがなく進むBimiのライヴもそれはそれで物足りない。ここからはさらに自由に解き放たれる、無重力を我が物とするステージが堪能できた。
シルバーのセットアップに身を包んだBimiがステージに現れると“インベーダーインバイト”で仕切り直す。宇宙遊泳をイメージしたセクションとのことで、観客にライトブレスレットの装着を求めると甘くセンチメンタルなメロディが印象的なメロウナンバー“Good-by”を披露した。すると彼は、アーティストデビューから3年でここまでの人がライヴに足を運んでくれたのは俳優の仕事のおかげであると感謝を告げる。さらに俳優も音楽も続けることを前置きし「ここから音楽畑に殴り込んでいきます。いろんなところに出ていきます」と今後の活動への意欲を見せた。
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その後は先行リリースされたばかりの“You Gotta Power”、R&Bのリズムとカッティングが小気味よい“error”、アッパーな『Snack Box』収録曲“Hurry”、内省的な“飼ふ”と、趣向の異なる楽曲を立て続けにパフォーマンスして本編を締めくくる。感情の乱気流に乗ったまま解き放たれるようなラストもまた、宇宙の神秘に似たものを感じた。
アンコールではまず『Snack Box』を引っ提げたツアー〈Bimi Release Party 2024 -Special Box-〉の開催を発表。それを受けてBimiは「(自分に向けられる)みんなの期待がまだまだ足りない気がする」「いっぱい曲を作っていっぱいライヴをする」「楽しいやつらを増やしていきたいし、ここにいる人間の楽しさを分かち合いたい。ここにいる仲間たちも全員連れて行くつもりでいるし、仲間たちも連れてってくれるつもりでいる。そこにリスナーが加わって、みんなで上がっていくわけ。だからツアーもかまします。ついてきてください」などあらためて自身のポリシーと今後のヴィジョンを言葉にし、観客も大きな歓声でその思いに応えた。
“虫の音”の後、急遽Bimiが「さっきの“You Gotta Power”のノリ方わかんなくて、(撮影を許可した)動画消化不良じゃない?」と告げ、ライヴのキラーチューンのうちのひとつである“輪-味変-”の動画撮影とSNS掲載の許可を出す。観客も予期せぬ展開にテンションを上げ、Bimiもリミッターを外すかのごとくステージを縦横無尽に飛び回った。その勢いはラストの“ミツ蜂”まで続き、彼の一挙手一投足に迸る自信と焦燥感から最後まで目が離せなかった。
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今回のライヴのテーマ「宇宙」はBimiがかねてより魅せられているものであり、彼がDJ dipと知り合うきっかけでもある。彼が宇宙に胸をときめかせる理由は多々あるとは思うが、そのなかのひとつに「未知であること」が挙げられる気がした。自分の範疇ではどうにもならないこと、どうなるのか予想がつかないものに惹かれるからこそ、彼はステージに立ち続け、表現に人生を捧げ、愚直なまでに感情と向き合い、時にギャンブルに興じることも厭わないのかもしれない。
音楽活動にさらにギアを入れる旨を語り、未知なる領域に飛び出した彼は、この先どんな日々を獲得していくのだろうか。「これからもライヴに来てください」と深々と頭を下げ、ステージを後にした彼の背中は、興奮と気魄で漲っていた。
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ライヴ情報
Bimi Release Party 2024 -Special Box-
<愛知公演>
日程:2024年9月6日(金)
時間:18:00開場/19:00開演
会場:名古屋・ボトムライン
<大阪公演>
日程:2024年9月8日(日)
時間:15:30開場/16:00開演
会場:大阪・心斎橋SUNHALL
<東京公演I>
日程:2024年9月16日(月祝)
時間:15:30開場/16:00開演
会場:東京・WWW X
<東京公演II>
日程:2024年10月16日(水)
時間:18:00開場/19:00開演
会場:東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)
SPOOKY PUMPKIN 2024 ~PURO ALL NIGHT HALLOWEEN PARTY~
日程:2024年10月26日(土)
時間:21:30開場/22:00開演
会場:サンリオピューロランド
Bimiの過去記事はこちらから
Bimiディスコグラフィー
PROFILE : Bimi
2021年6月にDigital Single「Tai」でアーティストデビュー。
その独特な世界観と楽曲の強度が話題を呼び、客演参加や楽曲提供なども担当。翌年2022年12月にフルアルバム「Chess」を発表し、2023年10月にキングレコード(EVIL LINE RECORDS)よりメジャーデビュー。
パンク・ラウド・HIPHOP等を自身の音楽ルーツとしながら、POPS・和モノ・エレクトロ・R&Bなど幅広い音楽ジャンルを掛け合わせたミクスチャーなスタイルで活動中。
観客を一気に惹き込む圧倒的な世界観とステージパフォーマンスが評判を呼び、2024年7月には品川ステラボールにてワンマンLIVEもSOLD OUTするなど精力的に活動を行っている。
また、音楽シーンの世界だけではその活動の場は収まらず、俳優としても数々のヒット作品や主演作品に出演し、役者としての顔も合わせ持つ。
音楽アーティスト・俳優、そのどちらも最前線を疾走し、その類稀なる表現力・体現力が唯一無二のBimiの世界観を形成している。
■Official HP : https://bimi-official.com/
■X(Twitter) : @ise_ise_oysy