2024/02/06 15:00

これからもずっと、かっこいい関係で──KOTORI会場限定盤Release Tour”Good Luck”ファイナル

KOTORI

会場限定盤CD『Good Luck』のリリースに伴い開催された、KOTORIの全国ツアー。2023年9月からバンドの結成地である埼玉県の越谷市を皮切りに全国25都市を巡る本ツアーは、途中のSpotify O-WEST(東京)追加公演を交えながら、2024年1月30日(火)に恵比寿LIQUIDROOMでファイナルを迎えた。今回はその長い旅を締め括るツアー・ファイナル公演での“熱狂”をレポートする。

LIVE REPORT : KOTORI 会場限定盤Release Tour ”Good Luck”

文:峯岸 利恵
写真:コバヤシ カズマ

KOTORIの全国リリース・ツアー〈“Good Luck”〉のファイナルとなるワンマンライヴが、1月30日(火)に恵比寿LIQUIDROOMで行われた。今回のツアーは、会場限定盤『Good Luck』のリリースに伴って行われた全国ツアーで、追加公演を含めた28ヶ所で開催。横山優也(Vo/Gt)はライヴ序盤で「僕らいま、仕上がりまくってるんで」と言っていたが、いままでKOTORIのライヴを何度も観てきたなかでも、正直今回は別格だった。

『Good Luck』収録曲の“Masterpiece”でライヴがはじまると、ただでさえ期待で高まっていた会場が更なる膨張を見せ、シンガロングが湧き起こる。「君のマスターピースになりたかった」と歌うこの曲が、すでに多くの人のマスターピースになっているんだというなによりの証明のように思えたし、横山の「歌ってくれ!」の声に反応する前から歌っちゃう。メロディの良さと歌詞のシンプルさも相まって、そんな衝動を掻き立ててくる。“FOEVER YOUNG”や“19歳“といったアッパーな楽曲たちはガツンと盛り上がるのだが、「ゆらゆら赤い炎が/命を燃やすように」という歌詞に合わせて赤い照明が揺らめく“SPARK”では、鳴り渡る気持ち良いビートに体が揺れる。そして特にこの日の“Anywhere”は、恐らくKOTORI自身が「こういうライヴができたら最高だな」と思っているであろう理想の形を見事に体現していた。演奏後に横山も「ヤバすぎる! 半端ねぇ!」と言葉にしていたが、なだらかな流線のなかで音の一部かのように溶け込む歌とコーラス、じわじわと激情的になっていく長めのアウトロがもたらす高揚感は、その後演奏した開放感溢れる“ツバメ“や、“1995”や“unity”のような超疾走感がもたらす快感とはまた異なるものだった。

横山優也(Vo /Gt)

上坂仁志(Gt / Cho)

人と人が同じ場で、同じ音楽を一緒に大声で歌うことの楽しさ、スピードに身を預けてハイになれるワクワク感、音楽のなかにダイヴして没頭することで得られる快感。「音楽って、ライヴって、色んな楽しみ方ができるんだ」と、KOTORIは楽曲ごとに示してくれる。その上で「KOTORIってすごいよな」と思うところは、それを物凄くフラットな状態で、自分たちがなにより楽しんでやっていることだ。自分が好きなことをするなんて普通じゃないか?と思うかもしれないが、自分たちを好きだという人が増えれば増えるほど、求められ方が少なからず見えてきて、自分たちが求めるものとの齟齬が生じてくるものだ。でもKOTORIは、そこで凝り固まったり揺らいだりすることなく、数多の変化のなかでも「自分が好きな音楽をやって、自分が楽しんで、お客さんも楽しめるのが最高」という芯を持ち続けた上で進化している。KOTORIでの遊び方、飛び方、楽しみ方が4人のなかでしっかりと、けれども至って自然に共有できているんだということが音として伝わってきたし、ステージから歌い鳴らされる音楽の飛躍っぷりと安定感がいままで以上だった。MCでも「自分たちで“成長してるな“とこんなに思えたのは、はじめてだった」と話していたが、その成長をそのままライヴで感じさせてくれる素直さがKOTORIの良いところだなと思う。

佐藤知己(Ba)

細川千弘(Dr/Cho)

ツアーで対バンしたkoboreからのリクエスト曲であるミディアム・チューン“彗星“からの“We Are The Future”の流れも素晴らしく、ラスト・スパートのスタート・ダッシュを決めた“RED”からの“ジャズマスター“、”素晴らしい世界“で超加速し、KOTORIの音楽論を歌った“REVIVAL”を経て、ラストの乾杯ソング“GOLD”に至るまで、シンガロングは絶えず、熱狂は止まず、アンコールの音が鳴り止んだあとでも会場の興奮が引くことはなかった。

本編の終盤に、横山が「どんな音楽かは結構どうでもいいと思っていて、どんな奴がやって、どんな奴が聴いているのか。それだけでいいと思っています。これからも、ずっとかっこいい関係でいよう」と話していたが、彼ららしいスタンスだなと思った。形に残るCDを「ツアー会場限定盤」というライヴと作品がセットとなる届け方をし、その会場で形としては残らずとも思い出にはしっかりと残るライヴをするという今回の趣旨を含めて、シンプルにワクワクすることをし続けてくれるのがKOTORIの良さだ。この日にアルバム・リリースと、それに伴う全国ツアーの発表もあったが、これから彼らは一体どこまで飛んでいくのだろう? ──この先への期待感も煽る、パーフェクトなライヴだった。

KOTORI「FOREVER YOUNG」Official Music Video
KOTORI「FOREVER YOUNG」Official Music Video

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