8年間、愛してくれてありがとう──BiSH解散ライヴ〈Bye-Bye Show for Never at TOKYO DOME〉
約8年間に渡り、人々に驚きと感動を与えてきた“楽器を持たないパンクバンド”BiSH。2023年6月29日(木)、彼女たちの解散ライヴ「Bye-Bye Show for Never at TOKYO DOME」が東京ドームにて開催されました。結成当初からBiSHの取材を行ってきたOTOTOYでは、どこよりも熱いレポートをお届けします。
BiSH、8年間の活動の集大成となるBEST盤
LIVE REPORT : Bye-Bye Show for Never at TOKYO DOME
取材&文 : 飯田仁一郎
Photo by shotobayashi kenta
Photo by cazrowAoki
Photo by Keiichiro Natsume
Photo by Yukihide'JON...'Takimoto
2023年6月29日(木)、楽器を持たないパンクバンドBiSHのラストライブ、彼女たちが立つと信じ続けた東京ドーム公演が行われた。18時開演で17時に着いたら、物販には長蛇の列、入場も大行列と、平日にも関わらず仕事や学校を休んで来場した気合の入った、しかも運のいい5万人の黒のIDOL T-shirtsを着た清掃員(チケット取れなかった人続出)で水道橋は埋め尽くされた(笑)。
18時。ピンクのうさぎ(?←今だに意味不明)が現れ会場を煽る。5万人の手拍子が鳴り響き爆竹が鳴って、さぁBiSHのおでましだ。5万人の清掃員が大声で叫ぶから、ドームの反響も相まって声がでかい(笑)。1曲目はBiSH史上一番演奏された「BiSH-星が瞬く夜に-」。2曲目は、リンリンの「SHIT!!!」ではじまる「ZENSHiN ZENREi」。そしてアイナ・ジ・エンドが「あがっていこうぜー!」と一声、「SMACK baby SMACK」が演奏される。今日は山田健人監督の映像が、最初からバキバキにきまっている。
「アユニ・DのDは東京ドームのD」という全清掃員期待通りのメンバー紹介も終え、「HiDE THE BLUE」に突入する。この曲は、前ツアーのPUNK SWiNDLE TOURでもずっと演奏され、「ありのままでいい」と清掃員が肯定するコールは、完璧じゃなくても受け入れるという清掃員の強い想いを感じることができる。そして渡辺淳之介がプールイ(ex BiS)のことを思って書いた曲と言われている「FOR HiM」へ。BiSがあってBiSHがあり、そして東京ドームまで来た、その軌跡があることを思い出させてくれる。さらに、「一番なんて僕はいらないから 君にあげよう」という歌詞が印象的な「JAM」、「たかが運命なんてもんは変えて行ける気がするんだ」と歌う「デパーチャーズ」と、モモコグミカンパニーの作詞の力が遺憾無く発揮された楽曲が続く。
ショートMCを挟み、ここから一気にテンションを加速させる。『CARROTS and STiCKS』でBiSHの概念を進化させたド派手な雷ソング「遂に死」! さらに「STEREO FUTURE」が始まると、50メートルの花道を爆走して中央に。アイナの歌が楽曲の勢いを加速させ、やばいぞ、会場のテンションはどんどんあがっていく。そして圧巻だったのは、ラスサビまでノンドラムver.のアレンジで、バイオリンとピアノのみで演奏された「My landscape」。こういうアレンジをしても、反響の多い東京ドームでも歌がブレずにちゃんと聴こえてくるアイナとセントチヒロ・チッチの歌唱力は本当にすごい。そして12ヶ月連続シングルの「サヨナラサラバ」。東京ドーム公演の前にもツアーを回っていただけあって、バンドとメンバーで生み出すグルーブはめちゃくちゃ強靭だ! さらに加速し、やっちゃいました、BiSH史上最大の問題作、「NON TiE-UP」!!! ダメです! 「おっぱい舐めてろ チンコシコってろ」の大合唱は、さすがに東京ドームさんも怒ります。
WACKさん、出禁になっちゃう!!! しかし本当にこの曲は... ハシヤスメアツコのメガネタイムこと神ハシヤスメタイムもあるし、炎の特効はガンガン上がって危ないし、プログレ感満載で、よくこんな曲リリースしたなと今だに思う反面、やっぱりこの曲をライブで見ると、そのかっこよさに感服してしまう。
ここからは、BiSH FESでも披露された山田健人の映像とコラボする「スパーク」「Life is beautiful」「FREEZE DRY THE PASTS」と続く。2018年12月22日の幕張メッセ「BRiNG iCiNG SHiT HORSE TOUR FiNAL "THE NUDE"」以来続く山田健人との映像コラボレーションは、間違いなくBiSHのライブをアートの世界に引き揚げたし、東京ドームというどでかい会場でも圧巻のライブを披露できるのは、彼の力が大きい。圧巻は、「遂に死」とならぶ破壊ソング「FREEZE DRY THE PASTS」。「Life is beautiful」との楽曲の対比は見事で、この両面があるからこそBiSHの楽曲に飽きがくることはないのだろう。
さて、待ちに待ったハシヤスメ・コント・タイムのお時間だ。内容は、解散ライブなのに最初に出てきたうさぎが気に食わない、そしてその正体が渡辺淳之介であっても気にせずに不満をぶちまける。挙句には生まれ変わったらBiSHじゃなくてTVのレポーターになりたいと言い出す始末... 今回のコント、何が凄かったって、オチがなかった!!! オチがうけずにスベるのがハシヤスメコントなのに、全清掃員を裏切り、まさかのオチがないコント。この東京ドーム公演にて、自分の型にはまらないものに挑戦するなんて、なんてハシヤスメはお笑いに熱心なんだとそのアティチュード含めて、今回は過去一に素晴らしかったと思います。
そんなこんなで大爆笑(たぶん)に包まれながら、ステージ袖に止めてあった、でかでかと美醜繚乱と書かれ、屋根にはサボテンがついてる謎の船に飛び乗り、出港、客席を航海し始めた。しかも意味不明ソングpart.1「ぴょ」、ただただ楽しい意味不明ソングpart.2「ぴらぴろ」、ダンスしてればいいよと言われ続ける意味不明ソングpart.3「DA DANCE!!」とやりたい放題だ。意味なんかないんだよ、理由なんかいらないよ、楽しかったらいいじゃないか! 「BiSH-星が瞬く夜に-」の連続パフォーマンスとか、こういうことを実装できちゃうのも、BiSHの強みだよなぁと改めて思うのだ。
巨大な会場のモニターは、夕暮れに変わり、星が輝き夜になった。そして名曲中の名曲「プロミスザスター」が披露される。この曲を始める前に、チッチは自分たちが叶えたいことを清掃員に伝え続けた。その光景が走馬灯のように思い出される。さらにはコロナ禍で清掃員と会えない気持ちを、直接的に書き記した「LETTERS」。チッチは堪えきれずに涙が溢れた。あの頃の会えない苦しさがあったから、今のBiSHがある。そしてあの頃の気持ちを「LETTERS」という形で清掃員に伝えたから、東京ドームまで来れたのだとも思う。
ライブは終盤戦。ハシヤスメ渾身の「GiANT KiLLERS」のタイトルコール。コロナ前は、大きなモッシュができていた曲だが、もはやモッシュがなくても、エネルギーの爆発具合は変わらない。さらに「MONSTERS」では巨大な音で爆竹が鳴らされ、メンバーも清掃員も跳ねまくる。あまりの爆竹のデカさに、スピーカーが一瞬飛んでいたんじゃないかな(笑)。さらにはメンバーが口を揃えて大好きという、こちらも名曲中の名曲「サラバかな」。「その手を離さないよう これからも共に時を縮めよう」のメロディーの後に入る「BiSHいくぞー」のコールは、もう清掃員の怒号の方が大きくて、メンバーの声が聞こえなかった。
チッチが、 「東京ドーム、BiSH解散ライブ、早いもので最後の曲になります。BiSHはみんなでまとめたたくさんの輪でこんなに大きくなりました。私たちも東京ドームが似合うグループになりましたよね?BiSHは今日で解散するけど、みんなのことを置きざりにする気持ちは全くありません。今日という日が、みんなのこれまでの人生のお守りになるように、BiSHの音楽が明日からのあなたの生きる糧であるように、強く願っています。最後に大切に届けます。ここにいる、全ての人に。愛を込めて。」
と言って、「ALL YOU NEED IS LOVE」が始まる。映像ではいつものように歌詞が映し出される。本当に何度も演奏された曲だから、心に響く。BiSHは今日もしっかりメンバーを離さないように掴んで飛び跳ねていた。
5万人の大アンコールが起こった後、このアンコールのためだけに用意されたのだろう、外林健太氏の作った花びらのついた白いドレスに着替えて登場。会場はペンライトで真っ青になり、チッチが「オーケストラ」を歌い出す。アイナが歌うオチサビでは、会場が真っ赤に染まった。涙腺は崩壊した。やっぱりこの曲は特別だし、数々の彼女たちの道程を思い出した。僕はこの景色を一生忘れることはないだろう。
ここでメンバーのMC。東京ドームの反響で一部聞こえにくいところもあったのだが、せっかくなので書き起こしたいと思う。
アユニ
「実は解散が決まってから、上手く眠れない夜には、あなたがた清掃員からもらった手紙とかメッセージとかを、たくさん読み返して眠っていました。私が日々朝を迎えられているのは、あなたたちのおかげです。ありがとうございます。私はいまを必死に生きて、がむしゃらに変わらずいきますので、一緒に健やかに長生きしましょう。この8年間の日々を私はおばあちゃんになってもたくさん思い出して、ぎゅっと強く強く抱きしめて、何一つこぼさないように生きていきます。出会ってくれて嬉しいです。本当にありがとうございました。」
リンリン
「東京ドーム、ありがとうございます。正直はじまる直前まで実感がわかなくて、解散の。でも、だんだん18時が近づくにつれて、足がふわふわふわふわしてきて。猛獣のような、セトリを倒して倒してここまできて、やっと心も落ち着いて。ここが東京ドームだって感じています。この私の人生にBiSHがあって、本当の本当によかったなと思います。今日で、BiSHとも、BiSHのリンリンとも、清掃員ともお別れなので、最後に右手を挙げてみなさん、私と握手をしましょう。ありがとう! ありがとうございました! お元気で!」
ハシヤスメ
「BiSHのハシヤスメアツコです。こんなにもワクワクして、こんなにも寂しい気持ちの6月29日ははじめてです。ずっとライヴをしてきて、そして今日もライヴをして。すごい東京ドームは広いし、清掃員と過ごす時間もめちゃくちゃ楽しいから、なんかこの時間がまだまだ続くような感じがするんだけど、もうアンコールまで来てしまいました。すごく寂しいです。 BiSHは今までいろんな壁を壊してきました。 今日この東京ドーム。BiSH史上最大の夢であり、BiSH史上の壁を壊した伝説の日になったと私は思います。いままで、今日も一緒にその壁を壊してくれて本当に感謝しています。BiSH、そしてここにいる清掃員、BiSHチームのみんな、本当にありがとうございました。そして、今日入れなかった人もいるというのもわかっております。それだけBiSHはたくさんの人に愛された8年間だったんだなって思います。BiSHのことを愛してくれて、そして応援してくれて本当の本当にありがとうございました。そして、BiSHのハシヤスメアツコを応援してくれてありがとうございました!」
モモコ
「みなさん今日はありがとうございます! BiSH、最後まで走り回って、ドロドロで、もうなんか心臓バクバクで。でも、これが生きるってことなんだなって私はBiSHに教わりました。私はかっこ悪くても弱くても、それでも強がってBiSHのモモコグミカンパニーとして信じてこれたのは、あなたがたのおかげでした。BiSHに出会えたこと、BiSHをやりきったことは私の生涯の誇りです。何にもない私ですが、東京ドームにみんなで立てました! 本当にありがとうございました!」
アイナ
「清掃員、8年間、いっぱい愛してくれて本当にありがとう。私、こんなに幸せな8年が送れるってBiSHになるまで思ってもいませんでした。誕生日も「これいいんか?」って思うほどお祝いしてくれてたり。幸せの前借りしたのかなと思うほどです。私にとってBiSHのライヴ、それは生きがいでした。いつも振り付けを考える時は、おうちの中のベッドの上、シャワーを浴びながらとか、みんなで移動したハイエースのなかとか。清掃員は踊ってくれるかなと思ってると、いつも全力で踊ってくれました。本当の本当に救われていました。ありがとう。清掃員も、立派な、BiSHのメンバーです。80人キャパから始まったBiSH、今日は東京ドームに、夢の東京ドームに立てました。誰がなんと言おうとBiSHは最高です。8年間、愛してくれてありがとう、清掃員さん。」
チッチ
「BiSHがはじまったときから、ずっと思い描いてきた夢の日がやってきました。来てしまいました。人生かけて愛したBiSHが今日バラバラになってしまうのが、なによりもなによりも寂しいです。私は未だに解散したくないな、なんて思ってしまう自分と戦っています。だけど、この6人で生き抜いてきた日々に、なにひとつ後悔はありません。こんなにでっかい東京ドームに、胸を張ってこの6人でライヴをしてきました。一生懸命駆け抜けた青春は一生の宝です。アイナ、モモコ、アユニ、リンリン、ハシヤスメ。出会えてよかったです。セントチヒロ・チッチとして生かしてくれて、ありがとうございました。そして、BiSHを愛してくれて本当にありがとうございました。最高に幸せな8年でした!」
みんな、思い思いに感謝を伝えてくれた。ほとんど泣くことのなかったモモコが泣いていた。リンリンは、日曜日の高崎では号泣していたのに、今日は泣いてなかった。みんなここまでの間にいろんなことを考えて、思うことも、不安も、様々な感情がごちゃ混ぜになっただろうに、それでも、全員が堂々としゃべりきっていた。その姿に8年間の成長を感じることができた。そしてチッチが「最高のトゲトゲをみせてもらえますか?」と言って、「beautifulさ」が始まる。5万人のトゲトゲダンスは感無量だ。そしてもう一度「BiSH-星が瞬く夜に-」をやった。しかも今度は、ツアーのバンドメンバーが全員集合したオールスターズを紹介し、いつもの三倍の時間ヘッドバンキングをやって、もう無理ってほど走って叫んで、6人で肩を組んで花道を走って、もう大盛り上がりでアンコールが終了した。
もう大団円...
おい! ちょっと待て!!!
会場にいる清掃員皆が思った。
「Bye-Bye Show for Never」って掲げているのに「Bye-Bye Show」やってないじゃないか!!! これでは終わらさんぞとばかりに、清掃員の拍手や歓声が止まない。というのも、メンバーがインタビューなどで、「「Bye-Bye Show」にアイナが花びらが降る振り付けをつけてくれたから、東京ドームでそれを踊って桜を満開に咲かせたい」と言っていた。だから今日の炎天下の中で、清掃員はピンクのペンライトを来場者に一生懸命配っていたのだ。そして今、全ての清掃員の手には、ピンクのペンライトが握られたままだったのだ...
でも、ダブルアンコールをやってくれた。これは嬉しい!!! でかい木が映され、まず白い桜が咲いた。過去のライブの中でも1番の、特大の桜だ。そしてその桜は、ステージ上から降ってきたピンクの花びらと、山田監督のビジュアルアートと清掃員のピンクのペンライトで、ドームは桜が満開になった。もうこれ以上はない大団円で、BiSHのライブが、そしてBiSHは終了した。いや消えていったと言ったほうがいいかもしれない。最後は、大きくひらがなで「ばいばい」という文字だけが残った。
湿っぽさは全然なかった。とにかく楽しかったし、そしてメンバー、清掃員、BiSHチームのありがとうが交差した本当にいい解散ライブだった。全てのアルバムから、キーとなった曲が演奏されたし、BiSHの激しさ、やさしさ、おもしろさ、楽曲のバラエティ、ライブの素晴らしさ、彼女たちの成長などの様々な軌跡をちゃんと伝えてくれた。そしてBiSHチームの顔がちゃんと見えたのも嬉しかった。渡辺淳之介はもちろん、松隈ケンタを筆頭に楽曲に関わったミュージシャン、外林健太の衣装、ツアーをずっと回ったKM佐藤の演出、山田監督の映像、ツアーで鍛え抜かれたバンドメンバー、PA、照明、レコード会社avex、 WACKのみんな。全員の東京ドームを成功させたいというその強い思いが、ちゃんと浮き出ていたのだ。
今日でBiSHは終わった。もちろんBiSHの曲は残り続ける。だけでなく、BiSHのライブのクオリティの高さは、目撃者の会話で、そして今後見れるであろう映像などで、ずっとずっと語り継がれるであろう。8年間お疲れ様でした。渡辺さん、BiSHに出逢わせてくれてありがとう。メンバーの皆様。本当にお疲れ。今度は、みんなのこれからの未来を楽しみに生きていきます。また会いましょう!!! ばいばい
編集 : 西田健