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カジヒデキとリディムサウンター / TEENS FILM
カジヒデキ待望の新作は、リディムサウンターとの強力タッグ。リディムとの共同プロデュースによる全12曲、数珠玉の名曲達。ガップリ四つの共作です。
1. あこがれ / Holy Holy Holy / 2. 僕のベイビー・レモネード / My Baby Lemonade / 3. 可愛い革命の詩 〜 灼熱のサーヴィス・エリア / Avocado Days / 4. 亜熱帯ガール / Semi-Tropical Girl / 5. PLAYBOY PLAYGIRL / Playboy Playgirl / 6. River River / River River / 7. もう恋しちゃう!/ It's a Dream World / 8. スローモーション / Slow Motion / 9.Happy Talk / Happy Talk / 10. レモンとオレンジとスクラップ・ブック / Lemon,Orange and the Scrapbook / 11. パラソルでグッバイ / Parasol / 12. TEENS / Teens [Bonus Track]
カジヒデキの名作達を配信開始。WAVあり!
TEENってなんかすごく象徴的な言葉だと思うんです
ーー今回カジ ヒデキとリディムサウンターは、どのような経緯でコラボレーションをすることになったのでしょうか?
カジ ヒデキ(以下 カジ) : 僕の新作を作ろうと思っていたんです。リディムサウンターが活動を始めた頃僕はほとんど日本にいなくて、ロンドンやスウェーデンにいました。たまに帰るとリディムサウンターがすごくいいって聞いて、ずっと気になってた。TA-1君をFRONTIER BACKYARDのサポートで初めて見て、すごく強烈な印象を受けたんです。ファッションからパフォーマンスまで。リディムサウンターを見たのはもっと後で、大体2、3年位前かな。その頃からリディムサウンターとレコーディング出来たらと思っていたんです。今回はコラボというよりも、リディムサウンターとバンドを組んで一枚のアルバムを一緒に作ったというニュアンスですね。
ーーなるほど。カジさんとリディムサウンターの間にキー・パーソンになる方はいらっしゃいました?
古川 "TA-1" 太一(以下 TA-1) : やっぱりチャーベさんですね。初めてお会いしたのは、フランスのソロ・アーティストでクラブ寄りの音楽をやるベンジャミン・ダイヤモンドって人の前座をハーバードがやって、その時にサポートで演奏してたらカジさんが来てくれたんです。
カジ : うん。僕にリディムサウンターを紹介してくれたのもチャーベ君でしたね。
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ーーリディムサウンターを初めて見た時の印象は?
カジ : チャーベ君からすごくいいんだよって聞いてて、実際に見てみたら何よりも演奏がすごく良かった。ボッサとかソウルっぽいアレンジをやったりしてて、ハーバード羨ましいなって(笑)。その演奏を見て、こんな強力なバンドがサポートしてくれたらいいなって思いましたね。
ーーリディムサウンターは、カジさんのことを知っていましたか?
TA-1 : もちろん! むしろ知らないといけないって思う位。
カジ : いやいや(笑)。
TA-1 : 僕はエスカレーター・レコーズが好きだったし。ただ渋谷系の頃のカジさんの音楽とかは聞いた事はなかったですね。
カジ : だって世代的に違うもんね。
TA-1 : 僕はその頃ブッダブランド、キングギドラとかさんぴんキャンプの時のヒップ・ホップとか、かなりハード・コアな所にいっていたんです。中学3年生くらいの頃はヒップ・ホップしか聞いてなかったですね。
ーーカジさんに話をいただいた時は、どんな気持ちでしたか?
TA-1 : すごく嬉しかったですね。
カジ : 僕はロンドンから帰ってきて、TA-1君のDJやライブを見たりしてて。セカンドの「Dear Joyce」って曲が良くクラブでかかっているのを聞いてかっこいいなって思いましたね。チャーベ君とかみんなリディムサウンターに嫉妬してましたよ(笑)。その状況を見てすごいなって思ったしね。最近ではギター・ポップだったりインディーズの音楽も聞いてるって話をして、その辺から色々喋るようになったよね。
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ーーリディムサウンターにとって、カジさんと一緒にやって勉強になったことはありますか?
TA-1 : 突き抜け方ですかね。曲作ってる時が一番カジさんの凄さが分かります。それと僕等みたいなのと対等に話してくれるし、いい意味で大先輩と話してる感じがしないんですよね。僕等もそうでありたいと思いますね。
ーー曲を作ってる時は、それぞれの活動時のようにスムーズに作れましたか?
TA-1 : むしろパワー・アップしてる感じですよ。
カジ : 僕もそう思う。元々ミニ・アルバムを作る予定だったので、4、5曲作って、プリプロに入った時にそのデモを聞きつつ進めていきましたね。彼らが普段どういう風にレコーディングしているのか分からなかったので、最初は自分のデモの段階で、音とかも重ねてフレーズも決めていきました。僕が書いたコード譜に、その曲を作った時にどういう感じにしたいのかをキー・ワードとして走り書きしておいたんです。その走り書きをTA-1君が見て反応してくれて、そこでどんどんディスカッションしていくみたいな感じでスタジオ・ワークは進めていきました。スタジオではTA-1君がイニシアティブをとってくれましたね。すごく面白かったのが、作った曲の中のグッとくる部分や、おいしい部分をTA-1君はデモを聞いてすぐに掴んでくれるんです。それで、そのグッとくる部分をいかにアレンジするかを話し合ったりして、それを中心に作業が進んでいく感じが面白かったですね。
TA-1 : 何となくだけど、自分にとってここがいいなって思った所を「どんな感じですか? 」って聞きつつ、メモっていったり、「リディムサウンターならこういうアレンジにしますがどうですか? 」とか聞いたりしました。
ーーカジさんが指示を出すわけではないんですね。
カジ : そうですね。どちらかというと一つのバンドとして、一曲ずつ一緒にアレンジして曲を作り上げていった感じですね。プリプロの時点ではバンドのベーシック・メンバーが集まりアレンジを固め、レコーディングに入ってからKEISHI君やHOMMA君も参加し、更に詰めていくという感じでした。基本的にはTA-1君が中心になってまとめてくれたので、本当に僕も含んだバンドとして曲を作りあげた感じなんですよね。
ーープリプロの作業はどれ位かかりましたか?
カジ : プリプロは大体1、2日位だったかな。
TA-1 : とりあえずベーシックなものが必要だったんで、バックをバァーって録ってる間に、歌の打ち合わせをカジさんとKEISHIがやってみたいな感じですかね。
ーーえっ、そんな短期間ですか!? だって結構曲数ありますよね!?
カジ : そうなんですよね(笑)。他にも入れる候補の曲も録ったりしてるんで、全部合わせるともっと曲数はあったんです。4、5月にレコーディングした曲は、割とリディムの事を意識して作った曲を選んだっていうのがあるんですけど、そこで色々掴めたんですよね。なので8月のセッションはそこに無かった部分を補うような曲が多く、「Rever Rever」はプリプロの最終段階でもアレンジが決まらなかったですね。元々はポップなソウル・ナンバーっぽかったんですけど、TA-1君も「何か違う感じにしたいですね」って言ってて。ヒップ・ホップっぽいドラム・パターンにしてみたり、R&Bっぽくしてみたりして、スタジオの中で何転かしちゃったんです。もうその時点でアルバムの全体像が見えていた事もあったので、TA-1君が全体像からその曲調をどうするかっていう所を判断してくれましたね。あの曲はレコーディングに入っても結構悩んでて、最終的にはリミックスみたいな形になったよね。コードも変わったり、割と特徴的なリフが押し出されてる感じにね。
TA-1 : そうですね。メロしか残ってない(笑)。
ーーなるほど。TA-1さんはプロデュース能力が高いんですね。
TA-1 : どうなんでしょうか(笑)。ただ、今回はカジさんの曲があって方向性とかが見えるから、そういう意味で全体像が掴みやすかったかもしれないですね。
カジ : リディムサウンターはTA-1君が結構全体を見てプロデュースしてる感じの所もありますしね。すごくプロデュース能力に長けてる気がします。僕なんか、例えばコーラス一つにしても、コーラス・ラインができてそれがかっこ良かったら「やったぁー」ってはしゃいじゃうんですけど(笑)。TA-1君の場合はちゃんとその後に距離をもって冷静に考えられるんですよね。音の抜き差しとか、全体を見たときの音のバランス感覚がすごくいいなって思いますよね。
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精神性は僕等と一緒だなって思うんです。
ーー今回の中でリディムサウンターを意識して作られた曲はありますか?
カジ : 「ベイビーレモネード」とかそうかな。意識してというか、あの曲に「ツクタカ、ツクタカ」っていうリズムが欲しかったんです。リディムサウンターがあのリズムをやってるのがとても印象に残ってるので、きっとこの曲リディムサウンターがやったらいいだろうなって思ってましたね。
TA-1 : その「ツクタカ、ツクタカ」ってリズムは昔カジさん達がジム・ジミニーを紹介して、それを知って僕等が影響を受けてるわけですからね(笑)。そしてまたカジさんの所に戻ってくるっていう(笑)。回ってて面白いなぁ。
ーー今回一緒に音を作ってみて、共通する所はありましたか?
カジ : 元々リディムサウンターの音には共感していたし、形は違えど精神性は自分達の音楽の流れにいるんだなって思ってたんです。90年代前半に渋谷系って言われる時代があって、あれは別にコアな音楽じゃなくて、ただ色んな音楽が好きな音楽好きが、熱心に色んな音楽を聞いてそれを発信していただけだと思うんです。リディムサウンターはその渋谷系とか言われてた時代の影響は受けていないんだけど、精神性は僕等と一緒だなって思うんです。リディムサウンターの曲を聞いて面白いなって思うし、オリジナルを知らない分、フレッシュでいい意味で影響を受けてないなって思うんです。昔、僕等がやってきたことも、ちゃんとリスペクトしてくれますし。色々共通することがあるので、チャーベ君と作業してるのと変わらない感じなんですよね。そして、リディムサウンターはまだ若いので、フレッシュ感だったり元気な感じが違うんです。ホント違いとかはそれだけなんですよね(笑)。
ーーお二人はクラブとライブ・ハウスを自然と渡り歩ける数少ないアーティストだと思うのですが、共通点はあるのでしょうか?
TA-1 : レコード・マニアだからですかね(笑)。朝から晩までレコードですからね。
カジ : 僕もレコードが大好きですね。僕の場合は世代的にもそうですからね。2005年位からロンドンの10代から20代前半の若い人達がすごい面白い動きをし始めてて、僕等が影響を受けた80年代のギター・ポップの影響を受けてるバンドも沢山出てきたんです。その音楽を好きな人達がレーベルを始めたりして。僕はロンドンにいる時にまさにその現場を見てきたり実際にその場にいたので、今でも7インチとかレコードが面白いって思うんですよ。僕はそういう若い人達の音楽が凄く面白いと思うし、リディムサウンターもその中にいるんじゃないかって思うんですね。リディムサウンターに出会って「日本にもこういう若い人達いるんじゃん! 」って思えたんです。
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ーー昔は宇田川町にはレコ堀をしてた人達が沢山いたのに、少なくなりましたよね。そういう意味ではリディムサウンターはレアですよね。
カジ : そうなんですよね。
TA-1 : 僕はDJもやってるんで、どうしても物で欲しくなるというか、レコードで欲しくなっちゃうんですよね。ネットで落とした音よりも、レコード屋さんで「これいいよ」って言われたレコードを聞き続けちゃうんですよね。
カジ : 僕もそうですね。やっぱり「物」が好きなんですよね。もちろんダウン・ロードすることもあるんですけど、どうしても買った気がしないんですよね。そういう文化で育ってきちゃったからなのか知らないんですけど、やっぱり物が欲しくなるんです。
ーー逆に今音楽を発信するメディアが自由になってきてると思うんです。若いバンドからは、これからは配信とアナログだ、なんて声も聞こえます。お二人は無類の音楽好きですが、そういった状況をどう見てらっしゃいますか?
TA-1 : やっぱり単純にデータは欲しいですね。作業はPCを使ってやってるし、PCに入れておけば音は悪いけど聞けますしね。便利じゃないですか。でもアナログ盤も欲しいですね(笑)。自分の好きな音楽はやっぱりアナログ盤で聞きたいし、音がすごくいいから。後はアート・ワークですよね。その三点は外せないかなって思いますね。
カジ : ある世代から圧倒的に「データでいいや」ってなると思うんです。もちろんデータは必要なんですけど、物が欲しい人はアナログを買って、そうでなければデータだけ買うみたいに二極化すると思うんですよ。エスカレーター・レコーズの仲くんが面白い事を言ってたんですが、例えば今、メジャーがマイケル・ジャクソンの帯付きのアナログ盤を500枚限定で再発したら、世界中のマニアだけで即ソールド・アウトになると思う、と。本当そうですよね。なんかそう考えると、今アナログ盤を出すのは面白いなって思いますね。でもデータは必ず必要ですよね。そう考えるとCDは微妙な立ち位置になってかわいそうになりますね(笑)。
ーー今回のアルバム・タイトルである『TEENS FILM』というタイトルに込められているものとはなんですか?
カジ : 今回20代のリディムサウンターと一緒に制作することができて、なんか青春映画っぽいなって思ったんです。この数年ロンドンなどで、若い人達が自分達でレーベルをやったりして、アンダー・エイジ・カルチャーのムーヴメントがすごい面白いんですよ。なんか10代のパワーってすごいなって思いましたし、自分も何かを作るときはそんな気持ちでいたいし、音楽を聞く時もそんな気持ちでいたいなって思うんですよね。TEENってなんかすごく象徴的な言葉だと思うんです。ボーナス・トラックに「TEENS」って曲があって、その曲の詩をKEISHI君とどんなイメージがいいか話してて、青春映画みたいなのがいいかもって話になったんです。だから歌詞の中にも"Like a youth movie"ってフレーズが出てきたりね。このアルバム全体通して、なんだか青春映画にみんなで出演して、音楽まで作ってるみたいなフレッシュな感じがしたんです。
ーーカジさんの十代はどんな感じだったんですか?
カジ : 僕はかなりゴシックな十代を過ごしてきたんで(笑)。高校に入ってからは、ゴス少年でポジティブ・パンクが大好きでしたから(笑)。ライブ・ハウスはかなり行ってましたし、映画も好きだったので映画館とかもよく行ってましたね。アバンギャルドなものとか、ヌーベル・バーグとか寺山修司とか大好きでしたね。千葉の田舎に住んでたので、週の3、4日東京に出てアングラな映画観に行ったりしてましたね(笑)。
ーーなるほど。結局お二人とも十代の頃はいかつかったってことなんですね(笑)。いわゆる青春音楽じゃないじゃないですかっ!
カジ、TA-1 : (爆笑)。
ーー今後このプロジェクトの予定は考えてらっしゃいますか?
カジ : まずはライブをやっていこうとは思ってますけど、それも2月という... 結構間が空いてるんですよね(笑)。一つのショウとしてできたらって思ってて、誰もやったことのないようなショウをやりたいなって思ってます。これからもリディムサウンターと一緒に何か作れたらいいなとは思いますけど、リディムサウンターも忙しいだろうし。リディムはリディムじゃないとできないことがあると思うので、もう一度カジヒデキとリディムサウンターとかは悪くてできませんね(笑)。とにかくリディムサウンターの新作には期待してますね。
TA-1 : ありがとうございます! 頑張ります(笑)。
インタビュー : 飯田仁一郎
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リディムサウンターの名作達
カジヒデキ プロフィール
1989年に結成したBridgeではベースを担当。渋谷系アーティスト代表の1つとして注目を浴びる。1996年に「マスカット E.P」でカジヒデキとしてトラットリア・レーベルからソロデビュー。1997年に発表したファースト・ソロ・アルバム『ミニ・スカート』はオリコン・チャート4位を記録。これまでにアルバム11枚をリリース。2008年に上映された『デトロイト・メタル・シティ』への楽曲提供、出演するなど話題に。デビュー当時からライブも精力的に行い大型野外フェス、サマーソニック、フジロックへの出演も果たす。
リディムサウンター プロフィール
高校生の時に、同級生のVO/KEISHIとG/HIROSHIとバンドを始める。高校卒業後、東京へ出てきた3人は、TP/HONMA、SAX、Baを見つけ2002年に6人編成としてRiddim Saunterを結成する。03年、Niw! Records第一弾のコンピレーション『Niw Stocks』にて音源デビュー。そして、彼らは『SKAVILL TOKYO』、『蓮沼FAINAL』と日比谷野外音楽堂に立て続けに出演するなど、単独音源も出さず注目の若手バンドとして取り上げられる。2005年には1st album 『Current』をリリース。SOUL、HIP HOP、ROCK、PUNKなどの様々な音楽性を独自のセンスでまとめあげたデビュー・アルバムが瞬く間に話題となる。1st Albumリリース後、Sax、Baが脱退し、現Ba/HAMADAが入り、現在の5人編成になる。Saxの脱退により2本だったホーンが、TPだけになり、HONMAは、KEYやFLUTEといった新楽器を取り入れ始めたり、B/HAMADA、G/HIROSHIのコーラスも増え、3声のコーラス・ワークの曲ができあがるなど、新しいUKの音楽シーンとも自然とリンクしたサウンドになっていく。その楽曲的な変化に自分達のルーツであるBLACK MUSICが交じり合いオリジナリティーある作品となった『Think, Lad & Lass』が2007年にリリースされる。彼らは全て自ら印刷した色とりどりのジャケットを並べ初回1万枚を即完売させる。インディーズならではの自分達主動の活動がKIDSの心を掴んでいる。その後も、ACOUSTIC ALBUM、海外アーティストも参加したREMIX ALBUMもリリースするなど活動の幅は広い。09年には、メンバーが強く希望していた初のイギリス・ツアー敢行。イギリスでは、THE GREAT ESCAPE、FUTURESONIC、STAG&DAGGER、LIVERPOOL SOUND CITYなど数多くのFESをめぐり大盛況。今後は国内以外での活動も期待される中リリースされる3rd ALUBMは、NORWAYにてレコーディング。