君はThe Death Setの新曲「Slap Slap Slap Pound Up Down Snap」を聞いたかい? こんなに熱くなれる曲、Beastie Boysの「Sabotage」以来だ。ってことで、アメリカは、ボルチモアからブルックリンに拠点を移したThe Death Setにインタビューを行った。前回の来日公演では、会場はダイブ、モッシュの嵐。ギターも、いっぱい壊れました。それでも会場に充満したお洒落でハッピーな空気は、彼らのライヴならでは! その後、結成メンバーの突然の死という悲劇を乗り越えて完成させた本作は、2011年に産まれたパンク・ロック史に輝く名盤。彼らは悲劇をどのようにして乗り越えたのか? そしてジャン=リュック・ゴダール監督の名作『勝手にしやがれ』の主人公の名前『Michel Poiccard』をアルバム名に付けたその思いは?
インタビュー & 文 : JJ(Limited Express (has gone?))
翻訳 : 斎井直史
The Death Set渾身の最新作を、オトトイ独占特典付きで配信開始!!
The Death Set / Michel Poiccard
ローファイなエレクトロ・サウンドと初期のビースティ・ボーイズを彷彿とさせる自由奔放なパンク・ロック・スタイル、そして一度聴いたら忘れられないキャッチーなメロディを武器に2008年にデビュー。NMEが「最も期待できるライヴ・バンド」と絶賛するなど、各国のメディアが最高評価。結成メンバーの突然の死を乗り越え、トリプル・エクスチェンジ(スパンク・ロック/ケリー/ザ・キルズ)をプロデューサーに迎えて完成させた本作は、彼らの最大の特徴である自由奔放なパンク・スタイルはそのままに、音楽作品としての深みと完成度が大幅にアップしている!
【独占特典】
The Death Setの壁紙が特典として付いてきます!
40人から6000人になったのはマジでヤバい出来事だった
——前回のジャパン・ツアーは、各地で盛り上がっていましたが、どうでしたか? 楽しかったですか?
ジョニー・シエラ(以下ジョニー) : 僕らは日本を愛してる! ジャパン・ツアーでは最初から最後まで最高のショウができたよ。お客さんもショウも燃え上がったに違いないね。汗ビッショリで最高だったよ。フジ・ロックでのライヴは経験してきた中でも、最高のショウだったね。
——日本のオーディエンスはどうでしたか? また、いつもあなた達のライヴは、多くの人が楽しそうにダイブやモッシュを行いますね。そのような状況になるためにあなた達が意識していることはありますか?
ジョニー : もしブルックリンやボルチモアのオーディエンスほど狂ってなかったとしても、ダイブとかモッシュってのは必要な事であって、それらは勿論僕らも狙っているんだが、十分日本のオーディエンス達はクレイジーだったよ。 The Death Setのショウってのは汗、楽しみ、エネルギー、そして狂気なんだ。そして日本のオーディエンスはそれらを持っていて、良かったよ。
——前回のジャパン・ツアーで、最も記憶に残った出来事を教えてください。また印象に残ったバンドを教えてください。
ジョニー : YOUR SONG IS GOODとRiddim Saunterとツアーするのがとっても楽しかった。後、ジャパン・ツアーのハイライトとして俺のバカなおつむに残っているのは、Melt BananaとLimited Express (has gone? )だね。それにしても、フジ・ロックのテントでお客さんの数が40人から6000人になったのを見た時は、マジでヤバい出来事だったな。
——1st albumリリース後、世界中をバンドでライヴして、あなた達は、何を得ることが出来ましたか?
ジョニー : うーん… 沢山あるよ。バンドとしては、様々なシチュエーションの経験を積めたと思う。例えば、バーミンガムでは観客が3人、Girl Talkとシカゴでやった時は8000人だった。だけど、そんな状況に関わらず出来る限りのベストを尽くすように努めたんだ。人生経験っていうことに置いては、大変なことも素晴らしいことも沢山経験したよ。曲には人生経験が反映されるものだとおもう。だから、曲の内容には成長と進化を見せたいと思って取り組んだよ。
——ボウ・ヴェラスコが残念ながらこの世を去り、大きな悲しみを背負ったと思うのですが、それでもバンドを続け、アルバムを完成させることが出来たのは、何故なのでしょう?
ジョニー : ああ、あれは今まででもっとも重い出来事だった。自分の中で理解するのに、時間もかかった。その後、悲しみと共にバンドから消えてしまおうか、それともこのまま続けるかを決めなきゃいけなかったんだ。でも、1500%の力で歩み続け、今回のアルバムを自分の中のベストを出し切る作品にしようと決めた。そして今作をこのバンドと、ボウ、そして俺らが今まで仕事を通して関わってきた全てを祝うものに仕上げたのさ。
俺達は普通のロックを作りたくなかった
——新しいメンバーについて教えてください。
ジョニー : もう3年はダン・ウォーカーとジョフェット・ランディスでやっているね。ダンは基本的にプロダクションを手がけてて才能のあるクレイジーな奴さ。ドラムのジョフェットは今まで俺が会ったことない何かで、ウータン・クランやキラ・ビー・チームのような感じかな。
——僕は、あなた達のことを、ボルチモアのディプロなどの流れで知りました。ボルチモアを離れ、活動拠点を、以前も活動していたブルックリンに移したのは何故ですか?
ジョニー : 何故ならブルックリンにいるからさ! ここは、いろんな機会がある土地柄なんだ。話のわかるオープン・マインドな人々や、支援体制、あとは過激なライフ・スタイルってのもあるな。この街を愛してるよ。ボルチモアやフィラデルフィアもいいんだけど、やっぱりニューヨークは世界の中心なのさ。ただ居るだけで、表現したくなるようなアートの要素が転がり込んでくるんだ。
——僕も大好きなPonytailが活動を休止しました。1st albumの頃から比べると、あなた達の周辺のバンドの状況も変わったと思うのですが、最近、あなた達がよく共演している仲の良いバンドを教えてください。
ジョニー : Cerebral Ballzyっていうパンク・バンドは近い将来有名になるよ。僕等の親友でもあるから、早くインタビューしたほうがいいよ(笑)。あとNinjasonikっていう友達もいるね。ただ、個人的には最近The Ronettes、The Zombiesとか昔の作品ばかり聴いているんだ。ちょっと一人で休む時間っていうのも必要でね。
——アメリカの若いインディー・バンド達のとてもロー・ファイなアルバムを、最近良く目にします。そんなバンド達の作品を聞いたりしますか? また、アメリカのインディー・シーンでは、現在何が起こっているかを教えてください。あなたの視点で構いません。
ジョニー : 個人的にはロー・ファイはこれから流行ると思う。ロー・ファイな音楽は好きだけど、すこし溢れている状態だとも思うよ。いくつかメジャーなブログが、ロー・ファイな曲を「クールだ」と言えば、そうなるのは自然なことさ。ヒップと持て囃されるのは、ただのサイクルの一部にすぎない。だけど僕等は、そのサイクルにハマらない新譜を作りたいと思った。前進したいと思ったからこそ、プロダクションのレべルを上げて、汚い部分を磨き上げたんだ。なぜなら、まだまだ磨かれていない部分があるからね。シーンに関しては、俺はよくわからないが、良いんじゃないかな? 常にどのレべルにおいても人々がクリエイトし、繋がり合っているから、素晴らしいと思うよ。
——トリプル・エクスチェンジのプロデュースによって、あなた達のサウンドはとても立体的になったと感じました。本作『Worldwide』のプロデューサー、トリプル・エクスチェンジを起用したのは何故?
ジョニー : 実はアメリカに着いて最初の晩に彼のソファーで寝たんだ(笑)。彼は友達の友達なんだ。そこから僕等は連絡を取り合っている仲だったんだよ。俺はSpankrockもThe Killsも愛している。理由は彼が僕等を昔から知ってて、理解もしてくれているからさ。でも、それが重要なんだよ。俺達は普通のロックを作りたくなかった。だから、彼の神経質な電子的ニュアンスが欲しかったんだ。そうなればヤバくなるって思ったね。イルなクリエイティヴィティが結婚したのさ。
——過去の作品よりも、さらにメロディアスな曲が増えていましたね。現在、あなた達はどのような音楽を好んで聴いていますか?
ジョニー : 少し前でも話したと思うけど、パンク・ロック、オールド・サイコ、ヒップ・ホップ、エレクトロやコメディ全てだ。もし君が良いアイデアを欲しいなら、ここから俺らのフリー・ミックス・テープをダウンロードしてみてくれ。Mishka NYCのために作ったやつだ。
——PVになっている「Slap Slap Slap Pound Up Down Snap」は、素晴らしい曲ですね。あるコメントで、「こんなに興奮した曲は、Beasty boysのsabotage以来だ! 」と書きました。この曲が出来た経緯を教えてください。
ジョニー : まぁ、このアルバムには沢山伏せるべき事情があるけども… 子供のように全て話すよ。もし人々がBeastie Boysと俺達を比べてくれるならば、それは光栄なことさ。このビデオは俺達の友人であるColin Devin Mooreがディレクションしてくれたんだ。彼は最高に面白い奴で、同時にクレイジーでもあり、神経質な奴でもある。パンク・ロックのWoody Allenといったことろか。全てが友人かフリーでの手伝いによって作られているから、あんなにヤバいものが作れるのさ。僕がブルックリンを愛しているのは、この街の気質なんだ。すぐに人が団結し、制作がすごく楽しいところ。これがビデオ撮影を手伝ってくれた俺達の友人、Brock Fetchが撮影した舞台裏だよ。
——最後に、ずばり『Michel Poiccard』をテーマにした曲をつくったり、アルバム・タイトルにまでしたのは何故なのでしょうか?
ジョニー : 僕は、昔の映画で観たことを経験したんだ。Jean-Luc Godardの『Breathless』っていう素晴らしい映画さ。最初はMichel Poiccardというキャラクターが、どんだけカッコいい奴なのかを曲にしていたんだ。けど、彼について学ぶうちに、Godardについての本を読むようになり、そしてGodardのジャンプ・カットと呼ばれる撮影技術を学んだんだ。そして俺達の曲の書き方や、ライヴの様々なスタイルの間が、スムースかつラフにジャンプしていく様と一致していることを発見したんだ。彼の流儀に沿っていることを祈るよ。
PROFILE
The Death Set
ジョニー・シエラとボウ・ヴェラスコによって結成されたThe Death Set。ローファイなエレクトロ・サウンドと初期のビースティ・ボーイズを彷彿とさせる自由奔放なパンク・ロック・スタイル、そして一度聴いたら忘れられないキャッチーなメロディを武器にアルバム『Worldwide』で2008年にデビュー。フジ・ロックやUKのレディング・フェスなど世界各地で見せた強烈なライヴ・パフォーマンスで音楽シーンに衝撃を与えた。しかし、ニュー・アルバムの制作にとりかかろうとしていた矢先にボウ・ヴェラスコがオーヴァードーズによってこの世を後にする。バンドは壊滅寸前のダメージを受けたがジョニー・シエラと残りのメンバーは、ヴェラスコの人生を祝福するために新しい作品を完成させる決意をする。
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Limited Express (has gone? ) / LIVE JUNK
Limited Express(has gone? )が、ライヴ音源『LIVE JUNK』をリリース! 本作は、2010年4月25日に下北沢THREEにて行われたイベント"LIVE JUNK”でのライヴの模様を収録したもの。昨年リリースしたアルバム『LTD』収録曲を中心に、未発表の新曲を含む全12曲が披露されました。オトトイでは、HQD(24bit/48khzのwavファイル)での販売。ミックス&マスタリングは、高橋健太郎が担当しました。現在の彼らのグルーヴが存分に発揮されている、衝動に溢れた音と緊張感が伝わるライヴならではの空気を、是非。生々しさが、尋常じゃない!