ポストロック、シューゲイザー、サイケ、クラウト・ロック、ヒップ・ホップやアンビエントなど、様々なサウンドをミックスさせたサウンドが特徴的なkilk records所属のhydrant house purport rife on sleepyがセカンド・アルバムを完成! ゲストにカヒミ・カリィ、Fragment、aoki laska、米盛つぐみ(TINGARA、ex.りんけんばんど)、Limited Express(has gone?)、Aureole、ハチスノイト(夢中夢)など、総勢44組を迎えた2枚組のセカンド・アルバム『many of these memories of the sun, and increasing gratitude』を、一年振りのメンバー・インタビューと共にお楽しみ下さい!
総勢44組の客演!
hydrant house purport rife on sleepy / many of these memories of the sun, and increasin' gratitude
【ゲスト・アーティスト】
カヒミ・カリィ / Fragment / aoki laska / 米盛つぐみ(TINGARA、ex.りんけんばんど) / Adam Mowery / 桜井まみ(ex.audio safari) / Limited Express(has gone?) / Aureole / ハチスノイト(夢中夢) / fredricson / Sarah Loucks
【販売価格】
mp3 単曲 150円 / 1,800円
wav 単曲 200円 / 2,100円
INTERVIEW : hydrant house purport rife on sleepy
表現は間接的なものでも良い(yawn of sleepy)
——今回、2ndアルバム『many of these memories of the sun,and increasing gratitude (これら日の思い出と増大する感謝)』をリリースされるわけですが、44組ものアーティストを収録しようと思ったきっかけを教えてもらえますか?
yawn of sleepy(以下、yawn) : ファースト・アルバム『roll over post rockers , so what newgazers』をリリースしたくらいから、ライヴ・ハウスとか色々な場所でたくさんの人と会う機会が増えて、その人たちと一緒に音源が作りたくなっちゃって。そういった話が結構出ていたので、このまま企画制作自体を進めちゃおうというのがそもそもの始まりです。
——なぜ、ゲストをいれてやりたいと思ったんですか?
yawn : 単純に一緒に遊びたい、そして一緒に遊んでもらいたくて。
金子祐二(以下、祐二) : もともと僕たちは、ライヴ主体ではなく、レコーディング主体で活動していたバンドなんです。
yawn : 持ち曲はたくさんあったので、多くのアーティストに一緒にやってもらいたいと考えていたら、結局44曲になってしまったんです(笑)。
——なるほど。でも、バンドにゲストを入れると、その人たちの色がついてしまうと思うんですよ。つまり、hydrant house purport rife on sleepy(以下、ハイドラント)の色が薄くなる可能性があると思うのですが、それに対しては肯定的だったのでしょうか?
yawn : そうですね。僕が歌っているパートを空け渡すというか、「己を消して行く」作業のアルバムになるのかな? と最初は思っていました。
——ミュージシャンの自我を消していく作業なんですね?
yawn : そうかもしれないですね。実際、「この人すげえな! 面白いな! 」と思うことがあって、どんどん自信を失くしていく時期もありました。
金子泰介(以下、泰介) : でも、メンバーみんなそうだと思うんですけど、どんな形であれ、曲が良くなればいいという考えで作ったんですよ。
——では、今回のアルバムは、「ハイドラントのアルバムだ! 」なのか、「ハイドラントが企画したコンセプト・アルバムだ! 」なのか、どちらなのでしょう?
yawn : それは難しいですね… 。でも間違いなく僕らのアルバムです。このアルバムを、5年10年経っても「みんなと作ったんだよね」と思えれば、それは確信に変わると思います。自己主張や表現的に攻めた部分っていうのは、際立たせようとは思わなかったです。
——自分の主張や感覚を世に伝えていくために、曲を武器にするミュージシャンもいると思うんですが、ハイドラントはそちらではなく、コンセプトを据えて押していくタイプなんじゃないかってことを感じました。
yawn : ありがとうございます。でも、本当にそういうことなんです。
——では逆に、ハイドラントがこだわった表現というのは、何なのでしょう?
yawn : 「空気」ですかね。44曲が固まってきた段階で、ハイファイな音質では持たないなと思ったんです。全曲に共通のイメージを持たせたかったので、ノイズであったり、ある程度荒くなるように、ローファイ仕様にしました。
——なるほど。その44曲の作曲を担ったのは、どなたなんですか?
yawn : みんな曲は書きますけど、今回は主にsleepy itですね。あと僕が書いたのが何曲か。
——44曲って、ものすごく多作だと思うんですよ。sleepy itさんが30曲以上を書きあげることができた方法を教えてほしいのですが。
sleepy it : なんか、出来てしまったんです(笑)。作曲が日常というか、それしかやってないようなスタンスなので。朝起きて楽曲を作ろうと思って、パソコンを立ち上げて、その日に1曲だったり2曲だったりっていうことをずっと繰り返していて。
——sleepy itさんは楽曲を作る段階で、バンド・サウンドを思い描いて作っているのでしょうか?
sleepy it : 大体の骨格はできていて、それにバンド各々が足していくという感じです。
yawn : 核となるイメージだけsleepy itが作って、それをバラす作業ですね。
——そのバラす作業も、かなり急がないと一年間でこれだけの楽曲を作るのは無理ですよね?
yawn : 彼が作る曲は結構荒いんですよね。sleepy itから、まずパラ・データをもらうんです。それを僕が整えて、他のメンバーに送ります。だから、割と効率は良かったと思います。
——じゃあGigaFile便(大容量ファイル無料転送サービス)とかを駆使して?
yawn : GigaFileバリバリ使ってます(笑)。WAVの24bit/48kHzとかで送るので。
祐二 : 朝、sleepy itからメールが届いていて、30曲入りくらいのZIPが届いたりします(笑)。そこからギターやベースを考えて、返信しての繰り返しで創っていくんです。
yawn : でも今年は少し大風呂敷を広げ過ぎたかなぁと思います。構想段階では44曲より少なかったはずなんです。量があれば良いってことじゃないんですけど、ついつい(笑)。
——最終的にドラムを入れていくのは、さらに大変でしたよね?
泰介 : こんな変なバンドなんで、普通の8ビートとかはまずなしになるんですよ! でも僕、普通のドラマーなんで、「もっと面白いの! 」とか言われると困るんです(笑)。
——確かに、特殊な作曲方法のバンドだと思いますよ(笑)!
泰介 : ライヴ・ハウスとかに行くと、すごい違和感がありますよね。音楽の哲学に対する違和感とか疎外感みたいなものは、他のバンドに対して半端なくありますね(笑)。
——でも、自分たちではそんなに変だと思ってやっていないわけですよね?
yawn : 正直、シンプルな8ビートを聞いても、なんでこんなつまらないことをしなきゃいけないのかと思うこともありますね。でも基本的には、楽しくいきたいっていうのが一番です。sleepy itから、いきなり30曲送られてくるのが楽しいんですよね。精神的なものに踏み込んだりすることは、みんなでやってる以上、避けています。表現は間接的なものでも良いと思っているので。
色々な人と音楽ができるっていうのを伝えたい(sleepy it)
——ではこのアルバムのアイデアで、皆さんが影響を受けた人というのは誰なんでしょう?
yawn : それは完全に、一緒にやらせて頂いたみなさん全員です。
——じゃあ、例えばLimited Express(has gone?)がやらせてもらって、皆さんの意思が動いたということ?
yawn : 相談させていただいた時点で、僕らにちょっとしたイメージがあって、それがガイドになると思っていたんですよ。で、当日全開でやって頂いたじゃないですか? その刺激的な当日の空気感は、どんどん入れたいと思うようになりましたね。
——ゲストが参加しても、最終のMIXは、ハイドラントが仕上げますよね? その曲が最終的に仕上がるジャッジみたいなことは、誰がするんですか?
yawn : 今回MIXは僕がやっていたんですけど、あがったものを皆で確認してから完パケしていたんで、結局は全員でジャッジしていたことになりますね。
——じゃぁ、やっぱりものすごいデータ量でしょうね!
泰介 : いやぁ、本当このアルバムを作ったのはGigaFileってくらいで(笑)。
yawn : GigaFileをサンクスにいれても良いくらい(笑)!
——ハイドラントが初めてアルバムを出したときのインタビューで、「大きい世界を見れた」ということを話していましたよね。そこから一年、自分たちが成長したことや経験したと思うことはありますか?
yawn : 実際はわからないですけど、とても楽しませてもらっちゃいました。いろんな人と会って好きになった人も多いし。
祐二 : そういう機会を持てたってことですね。その人のライヴを観て、すごく良くて「お願いします」と言って声をかけたこともありますし。
——制作に重きを置くというハイドラントの軸は、カナダに行ってたころからブレていませんか?
yawn : カナダにMTRとマイクを持っていって作曲していました。そのせいで税関にひっかかることも多々あって…(笑)。でも、向こうの新聞で紹介してもらえることもあって、調子は良かったんですよ。
——もう、今年は海外ツアーに行ったりはしないんですか?
yawn : また行きたいですね。でも実は次の作品も既に作り始めているんです。
祐二 : またGigaFileの日々が始まるんです(笑)。
——海外ツアーで盛り上がりを経験して、実際現在の日本のシーンを見てみてどんなことを思いましたか?
yawn : 面白いと思いました。でも正直、海外って割とお金もらえたりするじゃないですか。カナダに住みながらミュージシャンとしてやっていけるかもって思ったんです。でも、日本に帰って来てからは、ずっと0なんですよ(笑)。好きでやってるし、好きな冒険なんで、厳しいけど楽しいですけど。日本にいると、なにくそ精神というか、身が引き締まるようなことはありますね。
——ハイドラントが目指すところは、どんな場所なんでしょう?
yawn : まずは、イベントにいっぱい出たいですね。交流を持ちたいというのと、音源制作でアイデアを膨らませるっていうのを、みんなとしてみたいです。色んな人と出会って「この人と作りてぇ」と思いたいんです。
——じゃあ、次の作品も本作の延長線上になるの?
yawn : いや、ある程度単体でやろうとは思っています。でもやっぱり欲が出てきてしまって、あの人に入ってほしいって思いが出てきちゃうんですけど、コラボ・バンドと思われるのは違うので。
——逆に、セッションをして制作していくようなことはしないんですか?
sleepy it : 始めた当初はセッションとかしていました。
祐二 : 始めた当初は渋谷のOrgan Barのオープン・マイクにしょっちゅう出ていたんです。カナダに行くキッカケができたのも、そのバーで活動していたからなんですよ。
yawn : 誰かがデモをたくさん持ってきて、これを次にやろうかっていう感じで。そのときはカセットで録っていて、音源もセッション・テイクもあんまり差はなかったんですけど、段々パソコンを使うようになりました。それからデータでのやりとりをする今のスタイルになっていったんです。
祐二 : 元々僕らは自分たちのスタジオがあるから、割と自由にやれているのかもしれないです。そういった意味では、普通のバンドはスタジオに入ったら練習をするけど、僕らは練習に追われる必要はないんです。
泰介 : あと、みんなで意識を確認しあって、色々な話をする時間を無限に持てるっていうのが大きいのかもしれないです。
祐二 : 朝4時まで話すことや、喧嘩することもありますし(笑)。
泰介 : yawnと祐二の兄弟は、すぐ喧嘩するんですよ。真剣なやりとりをしてるのは分かるんですけどね…。
祐二 : 恥ずかしいんだけど! やめてくれない(笑)?
yawn : そんな喧嘩もありつつ今回の作品は、「バンドって良いね」ってすごく思いました(笑)。
——喧嘩をいっぱいするのに、「良いね」って思ってるところがいいですね。
泰介 : いや、yawnが「お前らなんか友達じゃねえ! 」って言い放っていたことはありますよ。
yawn : (笑)。いや編集がたまってて、かなりの分量になっちゃったことがあって、気が立ってて…。
泰介 : 慌てて、なぐさめにいきましたよ(笑)。めんどくせえ乙女かよ! とか思いながら。
祐二 : カナダでも喧嘩したね。
yawn : 墓場で喧嘩したね(笑)。
——喧嘩をたくさん経てもバンドが好きっていう二人がいいですね!
yawn : いや~、ありがとうございます。でもカナダから帰ってきて、ミュージシャン全体の評価が日本は低いと思ったんですよ。それで若干やる気が無くなったことはあります。今は開き直りましたけど。
——ミュージシャンの評価が低いと思ったのはどんなことがキッカケですか?
泰介 : 単純に環境が良くないというのがありますね。
yawn : 僕らみたいなスタンスや立ち位置でやっている人は、数段海外のほうがやりやすいと思うんです。お金、セールス、集客も含めほとんどそうだと思います。
——それに対して感じたことを、行動に起こしたりはするんですか?
yawn : アルバム自体、直接的なアプローチの一環みたいなものです。例えばこのボリュームをメジャーはできるの? と思ったりもします。カジュアルな考え方でもできるぞっていうのは見せてやりたい。やろうと思えばできるっていうのは、kilk recordsのレーベル・メイトとはよくそんな話をしますし、僕らが伝えられることは、同じ立場で頑張っている友達に見せたいんです。
——このアルバムに込めた想いを、お一人ずつ聞かせてください。
泰介 : このアルバムの紹介コメントにも書いてあるんですけど、僕は色々な人と絡むのが楽しくて、それをみんなに見てほしかったんですよ。
sleepy it : 簡単じゃないけど、色々な人と音楽ができるっていうのを伝えたいっていうのがアルバムに入っていて、知っている人も知らない人も、じゃんじゃんやってくる。そんなアルバムなんです。
yawn : これは発明だと思っています。ワンループ・ワン・イメージの短い尺で、他のミュージシャンに空け渡していくと楽しいよみたいな。
sleepy it : みんな、なかなか音源を出さないじゃないですか。でも、アルバムを出すにしろ、ライヴをするにしろ、別に難しいことをやっている訳じゃないので、「音楽以外のことでもじゃんじゃんやったほうが良いよ」というメッセージが一番大きいです。
祐二 : 自由さでは負けないなぁ、と思います。
3人 : いやいやいや!! 負けるでしょ(笑)!!
祐二 : 本作は、コンセプト・アルバムじゃないと思うんです。曲を聴いてもらうとわかるんですけど、バラード・ベストじゃないし、コンピってことでもない自由さ。僕はメンバーが作る曲にも外部からの刺激を感じますし、自分自身44組とやって刺激を受けてるところはあります。その分自由で面白いことができたかなと思います。
インタビュー : 飯田仁一郎(Limited Express(has gone?))
文 : 西澤裕郎、加瀬 成
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海外から大絶賛されている日本の至宝、hydrant house purport rife on sleepyのデビュー・アルバム。ゲストとして青木裕(downy / unkie)、森大地(Aureole / kilk records主宰)、cuushe、Ferri、Lööfなどが参加。
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前作『鋭 ku 尖 ル』から5ヶ月。あらゆるジャンル、カルチャーを横断するトラック・メイカー・デュオFragmentによるコラボ作も含め通算5作目にして初のインスト作品。7年前にリリースされネット上で高値取引されてたアナログE.P『咲ク、ササクレ。』に収録されていた「Polygonair」が初のCD化。RemixerにはHyperdub(UK)に所属しRadiohead・トムヨークのweeklyチャートに選出、Flying LotusのRemixにも抜擢された“Quarta330”が参加。
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& records初の日本人女性シンガー・ソングライターとして、ART-SCHOOL、Ropesの戸高賢史が絶賛コメントを寄せるなどデビュー前から各方面で話題になっていたaoki laska。debut mini album『about me』から、わずか半年で、1stフル・アルバムが到着。前作同様、folk squatの平松泰二が全面プロデュース。
PROFILE
hydrant house purport rife on sleepy
2006年結成。sleepy it(gt、key、machine)、金子祐二(b、key、gt)、金子泰介(dr、key、machine)、yawn of sleepy(vo、gt、key、machine)の男性4人からなるバンド。ポスト・ロック、シューゲイザー、プログレ、サイケ、クラウト・ロック、ヒップ・ホップやアンビエントなどをミックスさせたようなサウンドが特徴。音源製作によって探求・啓発を続ける事を基本コンセプトとし、現在は「音楽によってぼくらはもっとクールでいるべきだ」というバーニング・スピアのライナー・ノーツをテーマに掲げている。過去には、配信限定で莫大な数の作品をリリース。ライヴにも定評があり、現在も都内のライヴ・ハウスを中心に活動中。2008年には、5都市12箇所17回にもおよぶカナダ・ツアーを敢行し、限定500枚のCDを完売させる。
hydrant house purport rife on sleepy HP