OTOTOYローカル・コンピレーション・シリーズ第3弾は、埼玉!!
s-explodeの今井君から、熊谷に在るBLUE FORESTというライヴ・ハウスの店長が急に辞めてしまって非常に困っていると言う旨の連絡をもらう。
飯田「えっ! じゃぁBLUE FORESTは今どうなっているの?」
今井「僕と山崎さん(MORTAR RECORD)が無給でブッキングとかしてなんとかまわしているんです。」
飯田「えっ! なんでそこまで... 」
今井「だって、熊谷が、埼玉が好きなんすよね! 」
こんなエモい言葉を言われたらOTOTOY編集長も黙ってはいられません。「今の話、もっと詳しく教えて! ってか、熊谷のこと、埼玉のことをもっと教えてよ! 」
京都、名古屋と続くOTOTOYローカル・コンピレーション・シリーズ第3弾は、埼玉。埼玉のキーパーソン、熊谷から今井(s-explode)と山崎やすひろ(MORTAR RECORD)、大宮からkussy(Fragment)、秩父からヒキマ(ladderladder / HOCKLE HOCK)と共に伝える『埼玉の今』。彼らが集めた27バンドのコンピ『SAITAMA LOCAL MUSIC RECONSTRUCTION』と、今井直筆の相関図とこのテキストで、ちょっとでも埼玉のことを知ってもらえたら嬉しい。ローカル・シーンはこんなにも激動なんだぜ!
進行 : 飯田仁一郎(Limited Express(has gone?))
文 : 水嶋美和
>>>『SAITAMA LOCAL MUSIC RECONSTRUCTION』のフリー・ダウンロードはこちらから
(配信期間 : 2012年2月16日~2012年4月16日)
埼玉音楽シーンの未来を担う27組! 2ヶ月限定フリー・コンピレーション
『SAITAMA LOCAL MUSIC RECONSTRUCTION』
01 .DAY BY DAY / Little basterds
02. Do You Live Or Die / HIGH THRASH GIRL
03. MAYBE TOMORROW ,MAYBE NOT / GLEAM GARDEN
04. RE:dis heat / s-explode
05. bluff dance / Fragment
06. ネガポジション[改] / k-over
07. infiniti / Hirotaka Maki
08. DOPE ROUND / アナログ輝
09. Sunset Blues / BARZ BEATZ
10. set-your-soul-free / Ken sakano
11. INFERNO / EMDEE1
12. 雨お通り / あなあくやまい
13. ゆびきり / codomotona
14. この世に無い物質 / 突然段ボール
15. ループ/ototoy ver / ジブンジカン
16. 作りかけの日曜日(Another mix) / Sunnyday hit singers
17. カラフル / Floating Feelings
18. Top secret / Even Sense
19. touch / RAGNAROCKS
20. give me my self / Far apart Daily life
21. a new song / HOCKLE HOCK
22. From This Town / Broken Mountain
23. ガンマンの腕の中で / theビューティフルニー
24. 大嫌い / Lipples
25. 僕の花 / NANISAMA?
26. Flower / FUNNY FINE DAY
27. コメットハンター / ゆいだいき
配信期間 : 2012/2/16~2012/4/16
キュレーション : popcornimai(s-explode)、kussy(術ノ穴)、山崎やすひろ(MORTAR RECORD)
マスタリング : 高橋健太郎
ジャケット・デザイン : KENTA SUZUKI(s-explode)
>>popcornimai(s-explode)らによる収録アーティスト解説はこちらから
埼玉でツアーを受け入れる状態を作りたい(山崎)
――今日は埼玉音楽シーンについてお話を伺いたいのですが… 。
今井(s-explode) : あ、あとで秩父のライヴ・ハウスの店長が来ます。
――秩父?
今井 : 秩父は埼玉の山の方にあって、そこにHOCKLE HOCKってバンドが作ったライヴ・ハウスがあるんです。埼玉はカルチャーの主要都市が東西南北に散っているから、ひとくくりでシーンを語れないんですよね。秩父の他に熊谷、西川口、北浦和、大宮の5つがカルチャーの主要都市としてあって、最近やっと僕らも結びつきが出来始めました。
――s-explodeは、埼玉のどこで活動しているの?
今井 : 僕らは、熊谷。で、山崎(やすひろ)さんが運営するMORTAR RECORDも熊谷。
――で、Fragmentが?
kussy(Fragment) : 大宮です。
山崎やすひろ(MORTAR RECORD)(以下、山崎) : the telephonesが北浦和。春日部越谷辺りにdustboxがいます。
今井 : Uhnellysも春日部でしたよね。
――その他には?
kussy : 凛として時雨は大宮でよくやってましたよね。
山崎 : dustbox直系の後輩ですよね。あと、桶川にはGOING UNDER GROUNDがいました。
(*秩父のライヴ・ハウス『ladderladder』を経営するヒキマさんが到着。)
――埼玉音楽シーンの先輩方にはどういうバンドがいますか?
山崎 : 突然段ボール、Little bastards、TheSILVER SONICSとか。みんなマイペースだし、ライヴにも「イベントに呼ばれたら出る」ぐらいの感じで活動している。
今井 : でも突然段ボールは、ライヴ・ハウスじゃなく深谷、自分達が生まれた場所でやることにこだわりを持っていますね。(※地元の駅のギャラリーで定期的にイベントをしている)
――今井くんの活動からは、熊谷へのこだわりが感じられます。それは何故?
今井 : 僕は大学進学のタイミングで上京してそのまま6年間暮らしてたんだけど、東京のことを地元とは思えなかったんですよ。根を張れないというか。やっぱり熊谷が地元なんです。で、熊谷は埼玉の中でも群馬寄りなので、バンドのツアーの受け入れ先って感じなんですね。だからツアーを受け入れるバンドになりたかったし、そのためにも熊谷の地盤をもっと固めたかったんです。
――そこは埼玉ではなく、熊谷だったの?
今井 : 最初はそうでしたね。最近は視野が広がってきて埼玉全体で捉えられるようになったんですけど。
――山崎さんも熊谷でMORTAR RECORDを運営されていますけど、熊谷から上京したバンドたちをどのようにご覧なっていますか?
山崎 : これまでに見て来た範囲のことではあるけど、東京出て早々に自分達の力量、技量に見切りをつけて解散していくバンドが多いなと。そういう人達はこっちに帰ってきてもっと続ければいいじゃんって思うんですよ。まあ、今でこそ地方のライヴ・ハウスでもそこそこ名の通ったバンドと対バンする機会はあるけど、昔はそうそうなかったわけだし、東京に憧れる気持ちもわかりますけどね。さっき今井くんが言ったことに通じるけど、ツアーを受け入れられる状態を作りたいと思ってます。ただ、呼ぶのは簡単だけど人を集めるのは簡単じゃない。せっかく呼んだバンドを大勢の人に見てもらうために、俺たちもこっちで仲間を作って根を張っておかなくちゃいけないからね。
――今の話は埼玉でも熊谷の方の話だよね。そこでkussyさんに大宮の話を聞きたい。
kussy : 僕は大学進学のタイミングで埼玉に来てもう14年目なんですけど、自分の地元みたいに思ってます。来て最初の頃は大宮Heartsって深夜はクラブになるライヴ・ハウスがあって、そこで売れる前の凛として時雨やthe telephonesがライヴをしてました。レコード屋も充実してて、あの頃は活気があった。でも10年前にHeartsが移転しちゃって、その後レコ屋も結構な数が潰れちゃって、そこから大宮らしい音楽の色は感じられなくなりましたね。廃れちゃった。でも4年前に444quadってクラブが新しく出来て、去年more recordsってレコ屋も開店して、また活気が戻ってきたところです。そのタイミングで熊谷の人達と仲良くなりはじめて、「大宮は熊谷的な繋がりを持てばもっと強くなれるな」と思ったんです。
――というと?
kussy : 大宮は東京でいうところの渋谷や新宿みたいなもので、地元意識があまりないんですよね。
――444quadが出来て、どういう風に活気づきました?
kussy : 突然段ボールやthe telephonesのメンバーがDJしに来てくれたり。みんな、危機感を持ち始めたのかもしれない。
――何に対しての危機感?
kussy : ライヴ・ハウスやレコ屋が潰れていくこととか、音楽業界の不況とか。the telephonesみたいな売れてるバンドですら「地元の地盤を固めなきゃ」って思い始めてるんだなって。元々地盤はあるんだけど、もっと人と人を繋げようとしてる。うん、みんなが繋がり始めたのはthe telephonesがキーになっているかもしれない。
今井 : 俺がやってるBLUE FORESTってライヴ・ハウスのバーにも結構顔を出しに来てくれるんですよ。
kussy : 彼らはプライベートでのフットワークの軽さが本当にすごいんですよ。そこがみんなを結びつけてます。売れ始めてもずっと埼玉のことを気にかけてくれてるし、「地元」という場所に対する意識が高い。だから危機感も感じるんだろうし。
「音楽が好き」という気持ちを越えていかなくてはいけないんです(ヒキマ)
――大宮と熊谷のことはわかったんですけど、北浦和、秩父、春日部の方はどうですか?
山崎 : ハコ発信ではなくバンド発信になっているように感じています。「このエリアのハコから出てきたバンド」じゃなくて、東京から名前を聞いてあとで「彼らあの辺のエリアのバンドなんだ?」って知ることが多い。
今井 : でも、熊谷のバンドも含め、どのエリアのバンドもそんなに地元意識を持ってないと思います。俺はBLUE FORESTをやってるんで、出来る限り自分のバンドのイベントはBLUE FORESTでやりたいと思ってるけど、みんながみんなそういう意識を共有してる訳ではないしね。
kussy : 熊谷ってもう一個ライヴ・ハウスありましたよね?
今井&山崎 : HEAVEN'S ROCKですね!
kussy : 今はどっちが中心になってきてるんですか?
山崎 : 両方ですよ。HEAVEN'S ROCKはツアーの通り道にきちんとなっていて、BLUE FORESTはバンドが自主企画しやすいハコという印象になりつつありますね。
――秩父はどうです? ladderladderを立ち上げたのはいつですか?
ヒキマ : 2年前ですね。僕がやってるHOCKLE HOCKってバンドは、10年前は熊谷で活動してたんですよ。その頃「みんなで熊谷を盛り上げよう」ってムードがあって、それを経験する中で自分の地元である秩父にもライヴ・ハウスを作りたいと思うようになったんです。小さな街なので、もちろんシーンとしてまだ何もなかったし。
――ladderladderには県外からも多くのバンドが来ているのですか?
ヒキマ : そうですね。山梨や群馬なら1時間半から2時間ぐらいで来れるんで。熊谷からも1時間はかかるんですけどね(笑)。僕らのバンドもツアーへ行った時は各地方でお世話になっているので、せっかくなら中継点になればなと思っています。
――10年前の熊谷のムードって?
山崎 : MORTAR RECORDが出来た頃で、当時はHOCKLE HOCK、WONDERS(現codomotona)、あとGLEAM GARDENっていう、今Snuffy Smile界隈でやっている3バンドが突出していましたね。で、その3バンドが現れ、SPLIT CDを出したことで、「え、彼らも出しちゃうの? 」ってバンドがいっぱい出て来て、しかも流通が大手インディー・レーベルだったりしたんで、それに対して焦ったバンドがさらに出て来たりして、しかもバーンと売れ始めたり(笑)。THE STAND UPってバンドがいるんですけど、出していきなり10万、20万枚近く当時売れたりして。
kussy : へぇ。彼らって熊谷のバンドなんですか?
山崎 : そうそう、全員熊谷。まだ若かったけどシーンの兄貴的な存在ではあった。
kussy : 一つバンドが売れることで他のバンドも売れ始める。良い相乗効果ですね。
山崎 : そうなんです。でも、そこからの活動は地元を切り離して東京に向かうのが主になってきてしまって、結局熊谷の音楽シーンはその盛り上がりの恩恵を何も受けなかったんです。でもその最初の3バンドが売れたことがきっかけで、バンドがツアーで熊谷へ来てくれるようになった。
――クラブ・シーンにも同じような波はありましたか?
kussy : いや、なかったと思います。やっぱりみんな東京に行きますね。
――ヒップ・ホップで言う… その。
kussy : レペゼン(笑)?
――レペゼン! そういうのはないんですか?
kussy : そういう存在が今の埼玉には欠けてる。術の穴も大宮じゃなくて東京のレーベルって思われてるんですよね。それが最近ちょっとやべえなって思ってて、わざと大宮って言うようにしたり、意識が変わってきましたね。
――今井くんがこの企画を持ちかけてくれたのは、BLUE FORESTの現状を伝えたかったからだと思うんだけど、話して頂けますか?
今井 : BLUE FORESTの現状(苦笑)。
一同 : (苦笑)。
――(苦笑)。でも、それが今回一番のポイントでしょ?
今井 : 去年の10月後半に店長が急に辞めてしまって... 。
――急に?
今井 : 僕は、1年くらい前から平日使ってバー・タイムにボランティアで入ってて、当時からその店長とは話し合ったり案を出し合ったりしていい感じに運営してたんだけど、やっぱり色んなところでストレスを抱えてたみたいで、ある日突然連絡がとれなくなっちゃったんですよね。
山崎 : 突然だったよね。失踪した日、朝まで一緒にいたもん。朝まで片付けを一緒にしてて、その日モルタルで仮眠して起きて昼に来たらいなくなってたんだよ。「あれ? 」って。
――トイレ行ったとか、ちょっと銀行行ったのかな? とか。
山崎 : いや、鍵置いてあるし、電話かけても契約切れてるし、「あれ? 」って。でもチケットもバンドに渡す記入用紙も全部用意されていて... でも来なかった。彼自身が楽しみにしてたライヴも直後あったし、やっぱり「何で? 」っていう思いはありましたね。でも、そもそも結局みんなで集まって「何かやろうぜ」ってなっても、ちゃんと気持ちを疎通できていたのは、一体そのうちの何人いたんだろう。たまに遊びに来るとか連絡するとかじゃなくて、一カ月30日、一年365日、ずっとそこに向き合っている人が自分以外にいないことは、たとえ好きな音楽が鳴っていても孤独なことなんだろうなと思います。
今井 : 俺ですら、一人で夜にいると落ちますもん。怖くなる。
山崎 : 俺は落ちないけどね(笑)。でも、音楽好きでもそれで切り盛りさせなくてはならないとなると、きついところは絶対あると思う。でもやっぱり「音楽は強い」って思っておかないとさ、そこは。
――何が一番辛かったんでしょう?
ヒキマ : お店をそこに存在させ続けるのってすごく大変だと思うんですよ。MORTAR RECORDもそう、BLUE FORESTもそう、僕がやってるladderladderもそう。存在させ続けるだけでお金は発生して、そのためにお金をやりくりしていく作業は、「音楽が好き」という気持ちを越えていかなくてはいけないんです。でも好きだから、完全に仕事として割り切れない。そのジレンマってすごいストレスになるんです。辞めたくなる気持ちはわかるな。
山崎 : 本当は東京ディズニーランドよりも夢がある場所なのにね。
一同 : (笑)。
山崎 : でも現場にいる人達に夢がないっていうのはね、悲しい。
ヒキマ : 自分の居場所が一番いづらい場所なんですよ。だから今井が言う「怖い」のも空間的な話じゃなくて、精神的な話なんじゃないかな。
今井 : 人が集まると楽しい空間になりえるが故に、一人だと落ちるんですよね。
山崎 : ああ、わかる。
kussy : じゃあさ、今は今井くんが店長ってこと?
今井 : まあ、そうですね。
――店長が辞めてから2カ月以上経ってるけど、その後どうしたんですか?
今井 : 店長はPAも兼ねてたので、一番それが騒ぎになりました。引き継ぎももちろん出来なかったし、メールのパスワードも分からないし、最初の2週間ぐらいはバンドへの連絡を自力で取り合う事で早々に過ぎていきました。
山崎 : 午前中からお酒やらの仕入れで始まり、ライヴ・ハウスの掃除からバンドの搬入、リハをやって、チケット作って開場準備して、本番終わって打ち上げをやって、テキーラ飲んだ後にコップを洗うみたいな(笑)。ライヴ・ハウスのレジ閉めて、MORTAR RECORDのレジも閉めにいって、寝て起きてまた仕入れして、っていうので一ヶ月半(笑)。