歌は生き様を残すためのもの——小林武史に見出された女性シンガー桐嶋ノドカ、ついに初のミニ・アルバム完成
ファースト・インパクトから約1年と半年。あのシンガーが、動き始めた。
「大学生、佐久間望が追いかける桐嶋ノドカ」と題し、ずっと追いかけてきた女性シンガー・ソングライター、桐嶋ノドカ。2012年夏、デモ音源を音楽プロデューサーの小林武史へ送ったことをきっかけに、同氏が代表を務める音楽事務所「OORONG-SHA」のスタジオへ。OTOTOYが出会ったのは本格的にアーティスト活動を始めた、2014年3月のことだった。待望のファースト・ミニ・アルバムは、椎名林檎や東京事変などの楽曲を手掛けてきた井上うにをレコーディング・エンジニアに迎え、5曲を制作。OTOTOYでデモ版を無料配信した「ボーダーライン」やドラマ主題歌に起用された「Wahの歌」もアルバムver.へと生まれ変わり、収録された。そのなかでもリード曲「風」に込められた、混沌を突き破ろうと漲る生命力そのものの歌声に、彼女の真髄を見るだろう。
今回インタヴュアーを務めた編集長飯田仁一郎の隣には、おなじみの佐久間望の姿も。和やかな空気のなか行われた、彼女の歩みを綴るインタヴューをお届けする。
桐嶋ノドカ / round voice
【Track List】
01. 風
02. キミのいない世界
03. ボーダーライン(album ver)
04. Wahの歌(album ver)
05. 世紀末のこども
【配信形態】
WAV / ALAC / FLAC / AAC / MP3
【価格】
単曲 257円(税込) / アルバム 1,101円(税込)
OTOTOY読者プレゼント!!
桐嶋ノドカ初のグッズから"『round voice』ロゴTシャツ"を3名の方にプレゼント!!
※1 カラーは「白」のみです。
※2 サイズはS / M / L からお選びいただけます(サイズの詳細についてはオフィシャル・ページをご確認ください)
ご希望の方は以下を記載の上、〈info@ototoy.jp〉にご連絡ください。
件名 : 桐嶋ノドカ読者プレゼント
本文 : 1. お名前 / 2. メールアドレス / 3. ご住所 / 4. お電話番号 / 5. ご希望のサイズ
応募期間 : 2015年8月1日(土)〜8月16日(日)
当選は発送をもって代えさせていただきます。発送は8月下旬の予定です。
INTERVIEW : 桐嶋ノドカ
桐嶋ノドカが、遂にメジャー・デビュー! 当時インターンだった佐久間望とライヴを見に行って、あまりにも素敵な曲とパワフルな歌声だったので、ライヴ後、2人ですぐに彼女を追うことに決めた。特に「ボーダーライン」と言う曲には、打ちのめされた。そんな出会いから1年以上たって、また彼女を追いかけることが出来る喜びをかみしめている。彼女は、どんどん変化し、幹は太くなり、メジャー・シーンに強い風を起こすことでしょう。溢れんばかりの才能の種は、彼女がすでに持っている!
インタヴュー&文 : 飯田仁一郎
構成 : 佐久間望
写真 : 大橋祐希
ちゃんと真実でいたい、つねに物事に対して真正面からぶつかっていたい
——ついにデビューって感じですか?
いや、すごくフラットな気持ち。浮足立っていなくて「よし、じゃあがんばっていこう」って感じです。
——浮足立っていないんだ!
メジャー・デビューは人生で何回もあることじゃないし、今までは目指していました。でも、最終到達点ではないと思っていて。メジャー・デビューは、ひとつの階段。それは、今まで上ってきた階段と同じようにこれからも上っていくんだろうなって。メジャー・デビューまで3年かかっているからかもしれない。これからも、歌い続けていくだけっていうことはわかっているし。
——今は、なにを目指していますか?
人としてちゃんと誠実に生きること。自分の生き様を明確に色濃くしていくことをつねに考えています。私にとって、それを表現する方法が歌うことって感じだから。誠実に生きて歌い続けていくことが目標です。メジャー・デビューすることって、歌が多くの人に聴かれるか、そうでないかの差なので、それは目指すものとあんまり関係ないかなって。大きなライヴ会場で歌ったり、いい作品を作ったりの方法はあるにせよ、誠実に歌うという目標は変わらないと思います。
——僕の経験として自分の姿勢や生き様って、成長していくなかで変わっていくと思うんです。ノドカさんのなかで姿勢や生き様は固まってきた?
いや、これからも変わっていくと思います。学生のときは、何事も真実を見極めなきゃいけないと思っていました。本当はこれが正しいのに大人の事情、お金のこと、時間のことを考えると正しいことを選べないときってものすごく多いと思うんです。だから、私は本当のことに気づいていたかった。その思いは今も変わりないんですが、小林武史さんと出会ってから3年経って、私自身も子供から大人の立場に変わり、だんだんと大人にも事情があるんだなとわかってきたというか(笑)。
——わかってきたんだ(笑)。
そういう事情をそうだよねと受け入れる自分自身にすごくショックを受けましたけどね。でも、それらすべて含めてちゃんと真実でいたいという気持ちになりました。私は女なので、きっとこれから子どもができたり、立場がどんどん変わると思うんです。そうしたらまた考え方も変わると思うのですが、つねに物事に対して真正面からぶつかっていたい。
「風」は自分が苦しめてしまった自分を解放してあげるようなストーリー
——変わっていくものだという言葉が出ましたが、今回の5曲は、今までの作風と大きく変わりましたね。まず、「ボーダーライン」や「Wahの歌」などは、アレンジが大きく変わっています。なにか大きな影響があったのでしょうか?
アレンジ面の変化は、椎名林檎さんの作品プロデュースなどをやっている井上うにさんというエンジニアの方に出会ったことがすごく大きい。今までは、私が骨組を作ったものを小林さんが色付けするって感じだったので、私と小林さんとの間のやりとりだけで完結していました。ただ今回は、そこにうにさんが入って、私と小林さんが作ったものを大きいハンマーでバンバン割って組み直して大改造してくれました。うにさんのアレンジが私の伝えきれていなかった荒々しい部分や本能的な力を表現する音作りをしてくれたことが、大きな変化を生んだのかなと思います。
——「ボーダーライン」とか「Wahの歌」は、前のアレンジである程度完成が見えていたと思うのですが、前作の足らなかったなと思う部分はどこですか?
単純に前の音源は前の音源でそのときのもの。足りないものもあるけど、それはそれという感じはしています。今回のアレンジは単純に今の私が歌ったという感じなんです。たぶん今のアレンジ状態で、前の私で歌を入れてもあまりマッチしなかったんじゃないかな。
——ノドカさんの今の私とは?
一言でいうならば、すごく、裸な感じ。自由であり、野性的でもある。弱いけど、パワーがあるところかなと思います。
——時系列的には、本作で「風」ができたのとアレンジが変わったのはどちらが先なんでしょう?
「風」です。「風」は、うにさんとやったはじめての音源で、完成したときに今までの曲とギャップが強すぎて、一緒に出すのは違うなっていうのがあって。「風」で見つけた新しい私のイメージは、パワフルで生命力のある感じだったので、その新しい私でほかの4曲も歌い直して、ミックスもし直しました。
——アレンジを変えたきっかけは「風」なんですね。この曲は、どんなときに作った曲なんですか?
「風」は、2014年の秋にデビューが決まり、年末から実際に始動したタイミングに書きはじめた曲なんですけど、3ヶ月くらい完成しなかったんです。今まで、歌が好きで歌いはじめて今までやってたけど、ちょうどデビューが決まったくらいの時期に歌うことが嫌になっちゃって。3年間歌うなかで「本物の自分が出せる音楽ってなんだろう」と考え続けていて、その過程でだんだんと「いろんな人に聴いてもらうためには」とか「今の流行は」とかを考えるようになってしまった。自分の本当にやりたいことと、本能的なものを無視していたことが苦しくて、つまらないって思いました。歌ってこんなものだったかなって思って、自分に失望しました。
——端的に言うと、売れるために曲を書こうとしていたということですか?
そうです。売れるためにやろうとしてた。流行っている服を着たいみたいな感覚で、あまり深く考えずに売れるためっていうのを考えていたから、苦しくなってしまいました。その気持ちが極まった時期に、曲を書かなくちゃならなくて。でも、本来の自分に戻したかったから時間がかかりながらも曲を作ろうとしました。
——本来の自分ってどんな自分ですか?
前は売れる・売れないに関わらず、自分のやりたいことをやり、言いたいことをいう気持ちで曲を作ったので、そこに戻すことを考えました。だから、「風」は自分が苦しめてしまった自分を解放してあげるようなストーリーになったんです。
1番素に近いなにも纏っていない状態で魂を出していくっていうのが、私にとっての歌の表現
——どうやって本来の自分に戻していったんですか?
歌をやめようと思ったけど、歌をとったら私の人生はおもしろくないはずだし、私にとって歌うことは、食べることや寝ることと同じく重要だって思いも強まったんです。だから、歌をやめるわけにはいかなかったんです。どうやって戻したかというと、クリエイターの方とお話をしたことがきっかけ。PVをとることになってて、書けなくても締切りがあるので曲が完成してない状態で企画しはじめることになりました。だから、自分のイメージだけをはじめて会うクリエイターの方に直接伝えていきました。曲ができていないからすごく混沌としたプロジェクトを進めてもらわなきゃいけなかったんですよ(笑)。
——曲できてなかったんだ。そりゃ、クリエイターの方は、めちゃくちゃだと思っていたかもしれませんね(笑)。
思っていただろうなー。ただ、そんな状況でもクリエイターの方は自分の仕事に誇りを持ってて、ここで手を抜くわけにはいかないという気持ちが伝わってきました。すごく真剣にやってくれているのを見たら、先が見えないわけわかんない状況でも自分のベストを尽くしていくしかないんだと気がついたんです。そこから、やっと曲が書けるようになって。今の時点でちゃんと答えが出せないとしても、出せるところまでの答えは出そうと思うようになりました。
——そのなかで生まれてきたものは、どんなものでしたか?
サビの〈それでも今をただ生きていくしかないんだろう〉ですね。自分の理想はもっと高いところにあるけれど満たない自分がいて、理想までものすごく距離があるとしてもやっぱり今の自分しか自分の手には及ばないっていうことを表現しようとした言葉です。あとは、最後の部分の〈あーあーああーあー〉の叫びのところは、自分の迷いを突破したい気持ちが出てきた声だと思います。歌詞は、何回も書き直しました。
——「風」は、つらいときに前に進むための曲だったんですね。曲を書くのに時間がかかったということですが、小林さんからは、なにかいわれましたか?
小林さんは、どうなることやらと思っていたじゃないかな。でも、小林さんは「ちゃんとノドカの生命感が伝わって、命だったり皮膚感みたいなのが出る歌詞ができるといいね」とつねに言ってくれていました。
——小林さんがいうような肌の感じが伝わるような歌詞になったと思いますか?
できるだけそうしましたが、動物的な部分とか生命力的な部分に触れるとだんだんグロくなっていくような気がしていたので、あんまり血の色っぽくはしないようにと思っていました。
——ノドカさんには、泥臭いというか野性的な部分ってあるんでしょうか?
全然あります。歌に関してそうだと思う。歌うときって、一切の着飾った気持ちを外した状態、1番素に近いなにも纏っていない状態で魂を出していくっていうのが、私にとっての歌の表現なんです。だから、今作では、歌に対する姿勢と曲の感じ、そして歌詞はリンクしていると思っています。
——「風」以外の曲は、それぞれいつごろ作った曲か教えてもらえますか?
「ボーダーライン」と「キミのいない世界」は、3年前くらい。その少しあとに、「世紀末のこども」。「Wahの歌」は2年前です。
私のパワーをお裾分けというか、そういうボールを投げ続けたい
——このアルバムは、「風」を中心に過去の桐嶋ノドカの名曲を今の桐嶋ノドカに合うようにアレンジしていったとのことですが、今のノドカさんが前のアレンジでやるとしたらどうですか?
もっとパワーが欲しいって思います。前のアレンジだと、私はポップなものが好きでそうなりたいと思っていたので、歌もポップの範疇にありました。ただ、年を重ねるにつれ誠実に歌の表現をしたいと思うようになって。ポップさが不要になったので荒々しくなっていった感じです。
——荒々しくしたいと思うようになったのはなぜですか?
はがしていったらそうだった。でも、本当は誰でもそうだと思うんです。例えば、目の前に危機が迫っていたら、たとえ素っ裸だったとしてもたぶん走り出すじゃないですか。本気で生きようとすると誰でも荒々しくなるんじゃないかな。私にとって歌うことは生き様を示すことだから、本気で生きている状態の歌じゃないとダメかなって思っていて、だから荒々しさが出るんだと思います。
——「風」はすごくはまっているなって思いました。ただ、この変化に「ボーダーライン」や「Wahの歌」が寄り添う必要があったのかって思っちゃうんですよ。つまり、当時のほうが桐嶋ノドカの初々しさを切り取っていたなと思っていて。アレンジを変えて今「ボーダーライン」を歌う理由というのは、昔からのファンの人も気になる大きなテーマなのかなと思います。
当初の「ボーダーライン」や「Wahの歌」は、もう前と同じようには歌えないです。「風」もレコーディングは寒いうちに終わっているので、今の私がライヴで歌っている「風」と当時の歌は違う。今回のレコーディングで、うにさんに私の歌のディレクションをしてもらったとき、「私の生き様を残すのか、作品作りにするのかどっちにするの?」って質問を訊かれました。私は、歌は生き様を残すためのものってずっと思っていたから、生き様のほうでお願いしますって。
——へえー! 別のほうを選んでいたらどうなっていたのか気になりますね!
「作品作り」は、単純に歌をちゃんときれいに直すのか、「生き様を残す」は今の私を表現するために、ライヴのようにちょっとのかすれとか音のずれみたいなものを残すのかみたいなことなんだと思います。作品作りだったら、これから何十年も聴かれるであろうことを想定して作るんだろうな。生き様を残すためにしたかったので、レコーディングで歌う回数が今までの半分とか三分の一でした。音楽の本来の姿を切り取れたと同時に、そのときしかいない私も表現できたと思います。
——2015年夏の桐嶋ノドカは、どんなふうに変わっていきますか?
「風」を書いていたときは、悩み苦しみ迷っていた。「風」を書き終えPV撮影を経て、覚悟が決まっていった。腹をくくったまま今走り出そうかなって感じなので、アルバムが発売して以降はスタートダッシュ。最近の私のなかで最も気持ちが強い状態かもしれないですね。「歌ってやるぜ!」って。
——歌って届いた人にはどんな気持ちになってほしいですか?
別にノリノリになったりしなくてもいいと思っていて。私は、今の自分を自分のなかで1番かっこいい状態で残していきたいって挑んで歌っているから。「え? こんなに命かけてるの?」みたいな驚きがあれば、その人には、ちゃんとパワーが残るかなって思うんです。私のパワーをお裾分けというか、そういうボールを投げ続けたいですね。
自分のキーワードとして、自然体とか生命力っていうのを見つけてからシンパシーを感じたのはBjörk、SiaやLorde。歌を聴くとその人の生命感を感じるところや、自然っぽさ、地球っぽさを感じられる歌を歌える人はすごくいいなって思います。
——具体的に今目指す場所はありますか?
「風」ができた経緯とかを考えると目的を定めないほうがいいのかな。たしかに人前で歌ったり世に出るものを作ったりするからには、多くの人に聴いてもらったほうがいいし、大きい会場で歌いたいなとは思うんですけど、それを目的にはしたくない。成り行きで辿り着いたらいいですよね。歌う理由として生き様を残していくというものがあるのでそれを大切にしていきたいです!
過去特集
連載 : 学生、佐久間望が追いかける桐嶋ノドカ
・file.1 出会い
・file.2「もう一度ライヴへ」編
・file.3「事務所に直談判!」編
・file.4「取材がしたい!」編
・file.5「ドキドキ! 初インタヴュー!!」前編
・file.6「ドキドキ! 初インタヴュー!!」後編
・file.7「桐嶋ノドカに出会えたこと」編
・file.8「ついに音源買えちゃいます!!」編
LIVE INFORMATION
GIRLS’ FACTORY 15
2015年8月4日(火)@国立代々木競技場第一体育館
出演 : ももいろクローバーZ / 岸谷香 / miwa / 桐嶋ノドカ / 小南泰葉 / 和田アキ子 / 3B junior(オープニングアクト) / 南明奈(MC)
音霊 OTODAMA SEA STUDIO 2015 〜夏の終わりに 2015〜
2015年08月29日(土)@音霊 OTODAMA SEA STUDIO
出演 : 安藤裕子 / Salyu / 桐嶋ノドカ(オープニングアクト) / 佐藤嘉風(オープニングアクト)
SWEET LOVE SHOWER 2015
2015年8月30日(日)@山中湖交流プラザ きらら
NEW ACOUSTIC CAMP 2015
2015年9月13日(日)@水上高原リゾート200(トゥーハンドレッド)
PROFILE
桐嶋ノドカ
1991年5月5日生まれ / 横浜出身
3歳からピアノを始め、13歳で聖歌隊に入り、歌うことにのめり込む。
2012年夏、デモ音源を音楽プロデューサー・小林武史へ送ったことがきっかけとなり、同氏のスタジオに通い始める。
曲作りを続けながらライヴハウスへ出演し始めると、コアな音楽リスナーが集まる音楽配信サイト「OTOTOY」が、真っ先に彼女の才能に注目。2014年3月「ボーダーライン(DEMO ver.)」のフリー・ダウンロードをスタートしたところ、全く無名の新人にして約1ヶ月で2,000DLを記録。
2014年7月にテレビ東京ドラマ「ラスト・ドクター ~監察医アキタの検死報告~」の主題歌に急遽「Wahの歌」が起用され、初めての配信での楽曲リリースが決定。
その後もCDリリースはせず、マイペースにライヴハウスでの活動を続けるなか、昨年から毎月大阪のFM802でスタジオ生ライヴをスタート。グラミー賞にもノミネートされたSiaの「Chandelier」をカバーしたところ、圧倒的な歌唱力に大きな反響を得る。
パワフルさと透明感を併せ持つ歌声は、人の心にダイレクトに訴えかける。