噂をよんでいたDJ BAKUの新作『THE 12JAPS』が遂に解禁。日本のヒップホップ・シーンでちゃんと評価を得ている1曲目のB.I.G. JOEからラストのILL-BOSSTINOまで総勢12人のラッパーが、BAKUのトラックの上で叫ぶし、踊るし、泣くし! このメンツが媚びてないのは、日本のヒップホップの事を少しでも知っていればわかるはず。このアルバムは、現在のジャパニーズ・ヒップホップをリアルに再現したものだ。ラストのILL-BOSSTINOが歌った「JAPANESE HIPHOP AND ME」は、THA BLUE HERBのIll-Beatnik@FUJI ROCKの名演に匹敵する程の力を持ってる。
2009年、ヒップホップを生き抜くDJ BAKUの軌跡『THE 12JAPS』は、彼の評価を決定的にする1枚となる。
インタビュー&文 : JJ(Limited Express (has gone?))
INTERVIEW
—7月31日(金)に行われる『THE 12JAPS』のリリース・パーティを楽しみにしています。
DJ BAKU(以下B) : B.I.G JOEも参加です。あの人は本当に凄くて、刑務所から出てきてまだ4ヶ月しかたっていないけれど、休まず精力的に活動していますね。
—彼は牢獄でCDを作っていましたよね? そんなことって実際可能なのですか?
B : 当時一緒に1曲作った時は、何度もCDや手紙のやり取りをして完成させました。最初手紙を送ったら、牢獄から電話がかかってきて「半年ぐらいで厳しい刑務所に移らなくちゃいけないから、プロ・ツールスの置いてある現在の刑務所にいるうちに作るしかないんだ」って、急ピッチで作業を進めたんですよ。
—そんなB.I.G JOEも参加した今作『THE 12JAPS』は、12人のラッパーをフィーチャリングしていますね。ラッパーに参加してもらおうと思ったのは何故ですか?
B : ラッパーが参加するなら、たくさんの人を集めてコンパイルしたいと思ってた。で、去年の『DHARMA DANCE 』のリリース・ツアーで各地をまわった時に、僕の次の日にやる般若のポスターが貼ってあってたり、地方のクラブのスケジュールを見ると、信頼するアーティストが同じように活発に動いていることが確認出来て、今回のような音源を創ろうと思ったんです。また今までグループだった人が一人で頑張りだしていて、誘いやすい時期だったのもありましたね。
—ラッパー達は、どのような基準で選んだのですか?
B : 特にこれといった基準って難しいんですけど、ちゃんと独立した考えを持っている人を選びました。所謂メジャー・レーベルがやるような、お金を払うからやってくれっていうノリではないんです。ちゃんと繋がっている人たちを選んだから、自然な流れというか。
—ラッパー達と、どのようなやり取りで楽曲を制作したのですか?
B : 人それぞれですね。Shing02やILL-BOSSTINOのように東京から離れて住んでいる人とは、最初はデータのやり取りだけで。しょっちゅう会える人とは、一緒に録音スタジオに入ったりしましたね。
—ラップに要望を出しましたか?
B : いや、ほとんどおまかせですよ。曲を渡して、なんとなくのイメージを伝えただけ。注文をつけることもなく、ラッパー達から出来あがってきたものは、ほぼ一発OKでしたよ。みんな、今回のアルバムのラッパーのラインナップをみて、自分の役割を感じとって果たしてくれたんじゃないですかね? それって凄いと思います。
—ラッパー達をイメージして曲を創ったのですか?
B : そうですね。その中でも、BRON-Kにはこれって言う1曲を渡したり、ILL-BOSSTINOには3曲ぐらい渡して選んでもらったりと、人によって制作過程は様々です。複数持っていった人の中には、自分が意図していた曲と違うものを選ぶ人もいて、それに対してまたこっちの考えも変化させたりしながら、〆切ぎりぎりまで作業していましたけれど、面白かったですよ。
—制作にあたってのエピソードはありますか?
B : マスタリングは、大変でした。最初に頼んだ所では想像してたものと違ったりして、ミックスもお願いしているoakのカオルさんに頼んだり。〆切が1日しかなかった。だから、かなりきつかったと思いますよ。
—三浦カオルさんの、ミックス時の役割を教えてください。
B : MPCやシンセから流しこんだものに、ビート・コンプをかけたり。カオルさんは、アレンジだとか、色々なことを進んでやってくれるのでとても信頼していて、作品は共同でつくっている感じですね。
—BAKUさんのサウンドは、僕のようなロック・サイドの人間からすると、非常に新鮮に感じます。どのようなものから影響を受けていますか?
B : 90年代のヒップホップですかね。僕の作るサウンドだとヒップホップと思ってもらえない時があるんです。よくね「黒くない!」とか言われちゃうんだけど、もともと聴いてきた音楽はジャズやソウルが多いんですよね。特に元ネタと全く違うように聴こえる切り貼りをしているサンプリング・ミュージックを好んで聴いていました。その影響が強いので、基本的に僕が使うのはサンプリングなんですよ。でも権利や金の問題もあるので、そのサンプリング・ネタをすっごい早回しにしたり、ハードロックとかプログレの早弾きを遅くながしたりって言うのを組み合わせたり。ただし、90年代の事をまんまやっても仕方がないので、シンセを取り入れたり今なりのサウンドも注入しています。
—3枚目のアルバムになりますが、過去作に比べて変わってきた部分はありますか?
B : 3枚目は、1枚目と2枚目の要素を足した感じですかね。1枚目の頃は、「ロックの盛り上がりって凄いなぁ。じゃぁこっちは、サンプリングで勝負してやろう。」って思ってたり。対して2枚目の頃は、バンド・マンでもあるカオルさんのエンジニア・ワークもそうだし、NICE VIEWの竜巻太郎君にドラムを叩いてもらったりと、ロックの要素を意図的に取り入れたんです。で、生楽器を使うとどうなるかるって事を理解したうえで作ったのが、今回の3枚目なんです。
—確かにBAKUさんのサウンドからは、ヒップホップやソウルだけでなく、ロックというキーワードを感じることが出来ます。
B : 平坦なノリには、すぐ飽きちゃうところもあって。だからついついダイナミクスを求めてしまうし、そういうロック的な波が好きなんです。後、単純にギターの「ギュワーン」って音がかっこいいと思う。だから、楽曲の中には、ざらついた質感の音を好んで入れています。
—BAKUさんは、KAIKOOというイベントを行われています。どのような思いで、イベントを創っているのですか?
B : 一つのイベントの中で、DJだけじゃなくてバンドも見たいって思う。ここでライブがあれば良いのにって思う事があるから、もともとはその気持ちを形にしたっていうだけなんですよ。あと、アーティストどうしで、この人とこの人をブッキングすると怒るとか喜ぶとか、そんなしがらみってあるじゃないですか? そのしがらみは、取っ払って考えようと意識的にしています。あまりにも当たり前の事と、流れをやり続けるのも別にそれはそれで良いけど、批判も承知で組み合わせてみようっていうか。若い時にしがらみを取っ払って、一人で頑張ってみようと思ったのがでかかったんだと思います。
—最後に、ヒップホップ・シーンの現在を教えて下さい。
B : 今は結構、ハードコアな人が多いと思う。LIVEとかどんどんあおる人多いですし。 あと昔よりヒップホップは売れないって聞いてますね。けれどフリー・スタイル・バトルは、どこに言っても人でパンパンだし、僕の周りはみんな楽しそうだし、お酒もばんばん売れるし、不景気な状況とは思えないんですよね。楽しいですよ。
LIVE SCHEDULE
LINK
- 『THE 12JAPS』 SPECIAL WEBSITE : http://www.pop-group.net/12japs/
- POPGROUP Recording : http://www.pop-group.net/
PROFILE
DJ BAKU
HIPHOPを基盤にしながらもターン・テーブルを操り常に新しいダンス・ミュージックを提案する、DJ/トラック・メイカー。'99~'04までの5年間のARTIST達との交流を描いた音楽ドキュメンタリー映画「KAIKOO/邂逅」を '05年4月に発表。自ら監修/音楽もつとめた。'06年6月には待望の1st.Album「SPINHEDDZ」をPOPGROUPRecordindsよりリリース。そして'08年、2nd Album「DHARMA DANCE」(ダルマ ダンス)をリリース。 前作よりもぐっとBPMを上げ、生楽器の要素を取り入れたDance Music Albumに仕上げた。'09年5月には日本人のヒップホップ名盤を中心に集めミックスしたオフィシャルMIXCD『JAPADAPTA』をリリース。そして7月22日にDJ BAKUが邂逅/KAIKOOしてきた、日本代表のラッパー12人とのフィーチャリング・アルバム、その名も『THE 12JAPS』をリリース! 参加アーティストはILL-BOSSTINO、Shing02、B.I.G. JOEを含むスキル/実力、共に最高峰のMC12人!
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