満を持して、Gotchにインタヴューを敢行!! ライヴ盤のハイレゾ音源とともに登場です!
ソロ・アルバム『Can't Be Forever Young』を引っ提げて行ったツアーのファイナル、渋谷CLUB QUATTROの2DAYSからベスト・テイクをセレクトしたライヴ盤『Live in Tokyo』がアナログ・レコード、CD、配信での3形態でリリース。OTOTOYでもハイレゾ配信がスタートです。ライヴはアルバム・レコーディングにも参加した下村亮介 (the chef cooks me)、井上陽介 (Turntable Films / Subtle Control)をはじめ、佐藤亮、戸川琢磨 (TYN5G、ex COMEBACK MY DAUGHTERS)、YeYe、mabanuaという強力なミュージシャンを迎えた7人編成。『Can't Be Forever Young』の全曲に加え、ニール・ヤングやウィルコのカヴァー曲や未発表曲など、全セットリスト16曲を収録!
取材にてライヴ録音はマルチトラック・レコーダーを使用、さらに32bit/96kHzで収録したと答えてくれたことからも感じる、良い音で残すことへの意識の高さ。配信用にはGotch自らサンプリング・レートを聴き比べ、24bit/48kHzを選択。ハイレゾならではのそれぞれの立ち位置を感じる空間の広さ、ひとつひとつの動きさえも捉えたかのような臨場感と興奮に湧き立ちます。一方でアナログでの良さ、そして音楽を楽しむ選択肢の広がりについても語ってもらいました。
さらにSPOON、Arcaと続く、ザ・サイン・マガジン・ドットコムとの取り組み"THE SIGN BOOK"として田中宗一郎が『Live in Tokyo』に寄稿したライナーノーツを、12月末までフリー・ダウンロードでお届け(もちろんアルバム購入しても付いてきます)。Gotchのインタヴューも含めた約16,000字。これが無料なのに読まないのはちょっと、いや、かなりもったいない。まずはこちらから読むのもありです。あわせて楽しんでください!!
「THE SIGN BOOK VOL.3―Gotch『Live in Tokyo』ライナーノーツ」
フリー・ダウンロードはこちら
Gotch / Live in Tokyo
【配信形態】
【左】WAV / ALAC / FLAC(24bit/48kHz)
【右】WAV / ALAC / FLAC(16bit/44.1kHz)、mp3
【配信価格】(各税込)
単曲 250円 / アルバム 1800円
※アルバムで購入された方には田中宗一郎(ザ・サイン・マガジン・ドットコム)によるライナーノーツ(後藤正文インタヴューを含む約14,000字)のPDFファイルが付属します。
【Track List】
01. Humanoid Girl / 02. The Long Goodbye / 03. Can't Be Forever Young / 04. Stray Cats in the Rain / 05. Aspirin / 05. Route 6 / 06. Blackbird Sings at Night / 07. Only Love Can Break Your Heart / 08. Great Escape from Reality / 09. Lost / 10. Nervous Breakdown / 11. A Shot in The Arm / 12. Sequel to the Story / 13. A Girl in Love / 14. Wonderland / 15. Baby, Don't Cry
Gotch / Route 6
【配信形態】
【左】WAV / ALAC / FLAC(24bit/48kHz)
【右】WAV / ALAC / FLAC(16bit/44.1kHz)、mp3
【配信価格】(各税込)
単曲 250円 / アルバム 450円
【Track List】
01. Route 6 / 02. Baby, Don't Cry (Live Version)
INTERVIEW : Gotch
自分のバンドとは違うファミリー感があるというか
――Gotch名義での音源が出て半年経ちましたが、その後いかがですか?
友達感が強いバンドなので、笑いながら楽しくやっていますよ。というのも、スケジュール調整が毎回大変で滅多に集まれないから、集まれたときは楽しもうと思って。年末のライヴ・スケジュールまでは決まっているけど、来年どうなるかは全くわからないんですよね。バンドって、自分がメンバーだったらある種忠誠を誓うというか、「ファースト・プライオリティはここです」っていう暗黙の了解があるけど、このバンド・メンバーは別の場所でいろんなことをしている人ばかりだから、そういうのがなくて。だから、自分のバンドとは違うファミリー感があるというか。そこに有り難みを感じているし、楽しみたいなと思ってやってますね。
――メンバーは、後藤さんがイメージするサウンドに合う人を集めてきたのでしょうか。
そうですね。mabanuaくんは僕が群馬に弾き語りに行ったときに見にきてくれていて、そこで紹介してもらったんですけど、その時に「来年アルバムを作るから、ツアーで叩いてほしい」って話をしたら「是非!」って言ってくれて。ギターは、シモリョー(下村亮介)に「ループや地味なフレーズを弾き続けても嫌がらない人いるかな」って話をしたら、「佐藤(亮)君、ループフレーズむしろ好きだって言ってますよ」ってことだったので頼むことにして。シモリョーや陽ちゃん(井上陽介)はレコーディングから参加してもらっていたし、たっくん(戸川琢磨)やYeYeも自然な流れで頼むことになりました。
――スタジアム・ロックじゃないアメリカのバンドの匂いをすごく感じました。ラフだけど異常に上手くて、グルーヴがある感じというか。
みんな、センスがいいですよね。リハとかもドラムとベーシストでよく話し合っていたり、コーラスはコーラスでディスカッションしていたから、彼らに預けてしまっていいかなって思えて。打てば響く人達なので、コミュニケーションはすごく楽ですね。すぐ理解してくれる。
――最初からそういうスタイルでバンドをやりたいと思っていたのでしょうか?
ウィルコとかブロークン・ソーシャル・シーンとかもそうですけど、集ったらすごくいいバンドなんだけど、みんなそれぞれ他の場所でも活動しているっていうのがいいなと思っていて。ウィルコのジェフは、息子と一緒にトゥイーディーって名字のバンドをやってるんですよ。息子がドラム叩いて親父が歌っているっていう(笑)。今はコラボレーションしやすくなっている時代だと思うんです。最近は若いバンドとかでも別にプロジェクトを持っていたりしますし、自分を一人のミュージシャンと考えたら、それって自然なことなんじゃないかなって思うんですよね。僕だったら、後藤正文のすべてをASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)に回収されることはないと思うし、飯田さんだってバンドマン(Limited Express (has gone?))であり、OTOTOYの編集長でもあるじゃないですか。みんな、いろんな顔があっていいと思うんです。自分達が日本に呼ぶようなバンドも、話を訊いたら普段は学校の先生をしていたり、音楽ライターやカメラマンをやっていたりするんですよね。
――後藤さんのソロ活動は、アジカンにどんな影響を与えていますか?
アジカンはそれ自体がすごく大きい存在だから、自分の体を縛るわけじゃないですけど、例えば右手を動かそうと思ったときに、思ったより巨大で動かすまでに時間がかかるんですよね。それでいて想像を超えた動きをする。エヴァンゲリオンっぽさがないんですよ。
――えっ、エヴァ? どういうことですか(笑)?
エヴァって、中に入ってる奴は一人で操縦していて、外と中が一体化しているというか、自分の手足のように動かすことができるわけですよ。でもアジカンはそうじゃなくて、合体ロボット感のほうが強い。自分が求めるパフォーマンスと一致しているというより、全体の一部分なんです。そういうところが思ってもみない喜びにも繋がるし、その逆にうまくいかないことにも繋がるから、アジカンの大きさは自分にとっては良さも悪さもあるんですよね。
俺が「あれはエヴァじゃなくて合体ロボです!」って思えるようになったことで、操縦しにいくのが楽になりました
――なるほど。では、今回アジカンではない場所で物をつくることで、1番変わったことは何でしょう。
風通しがよくなりましたね。
――それは後藤さん自身の?
はい。物をつくるのはいつだって大変ですけど、今はモードを自分で整理できているというか。はっきりと区別しているわけじゃないけど、アジカンのときはアジカンの気持ちになれるようになって。アジカンと僕がイコールになっちゃうと、すごくしんどいところがあるんですよ。「あれもこれもあいつが動かしているんだろ!」って思われても、そうじゃないから。いちメンバーなんですよね。だから俺が「あれはエヴァじゃなくて合体ロボです!」って思えるようになったことで、操縦しにいくのが楽になりました。
――じゃあちょっと肩の力が抜けたんですね。
うん。それと同時にエゴを出しやすくなった気もしますね。気を使わないで言える。その代わり、自分を常に磨いていないといけないですけどね。サッカーとかと一緒で、それぞれのレベルが上がらないと全体のレベルが上がらないので。Gotchバンドの場合は、みんなそれぞれに自分のフィールドがあるので、そこへのフィードバックを考えていると思います。井上君とかはタンテのことを考えているだろうし。そういう中で集まってやるっていうのがいいんじゃないですかね。だからみんなGotchバンドにきてリフレッシュして帰っていく感じです。
――Gotchバンドは続いていくんですか?
このメンバーでレコーディングをしたことはないから、スケジュールや曲が揃ったりしたらつくってツアーをしてもいいかなと思っていますね。ワンマンとかはまだやったことがないから。
――今作はアナログを先行でリリースして、CD、ハイレゾと続きますが、アナログで出したいという思いが強かったのでしょうか。
まず、どうしたって"物"が好きっていうのがあるんですよね。それはつくるのが難しいからっていうのに尽きるんですけど。
――難しい?
レコードの溝を彫る技術者がいて、工場にも技術者がいて、デザインも印刷もあって、校正して。そういうのはいろんな技術の結晶だから、簡単にはつくれないものなんですよね。それって自分たちの社会を考えたときにもすごくいいことだと思うんです。その人にしかできない仕事があるっていうのはどんなに幸せなことだろうと思うので。だから自分の作品がいろんな仕事の結晶であるっていうのはとても嬉しいし、しかも音が自分の好みだっていうのも素晴らしい。最近LPや7inchを買って聴く機会が増えたんですよ。逆に音楽を持って歩かなくなりました。ちょっとした移動のときに仕事の音源のチェックとかはするけど、楽しみとしては、家で針を落として椅子に座ってのんびり聴くのが1番楽しくて。面倒くさいって思う人もいるかもしれないけど、僕にとっては1時間とか2時間、音楽だけ聴いていていい時間をつくるっていうのは至福なんですよね。だったら1番好きな音で聴きたいし、ジャケット眺めるのも好きだし… って考えると、自分にはレコードが1番良いんです。
――なるほど。
僕達がデビューしたときにはCDが全盛のときだったから、どうしたら1番いい音になるかっていうのをあんまりよくわかってなかったところもあって。そこから少しずつ勉強して、カッティングはこの人がいいんだなとか、日本は音が丁寧だから冒険してみようと思ってアメリカのエンジニアにカッティングしてもらったりして、日々研究してます。片寄(明人 / GREAT3)さんが詳しくて、「カッティングだったら誰がいいですかね?」ってメールしたらブワーと返信がくるんですよ(笑)。そういうのをみんなで共有するのがおもしろくて。物づくりにまつわる話全般が好きなんですよね。
「CD通りじゃなくていいんじゃない」って、ささやかな提案が出来たら
――Gotchバンドの曲はレコードの音に合いますよね。
アナログの良さはパキッとしたところが敢えてなくなるところだと思うんです。分離よく録ったものも音の境目が馴染むというか、フィルムの写真みたいに境界線がじわっとしてる感じがする。音もそういうもののような気がするんですよね。それをどの境目で楽しむかっていうので、僕としてはアナログくらい滑らかになっているほうが好みで。あと、ハイレゾ音源をそのまま彫り込めるんですよね。今はDSDからも彫れるようになってるらしいし、広がりがあっていいですよね。
――元々の納品はハイレゾで?
そうです。今回32bit/96kHzで録ったので、それをそのまま彫ってもらってます。
――ええ!! それはすごい!
なるべく高いレートで録っておいてもらいました。あんまりプラグインかかっていないんじゃないかな。かなり生々しいと思います。実は、ツアー前からファイナル2日間の様子を録って出したいと思っていて。
――そうなんですか。
明らかにレコードをつくったときからアレンジやフレーズが変わっているから残したいなって。みんな、ライヴでCD通りの音を求めるんですよね。
――違うアレンジだと戸惑うと。
そう。演奏なんて変わるから楽しいのにって思うんですけどね。ボブ・ディランなんて跡形もないじゃん! みたいな(笑)。
――(笑)。
詩だけ合ってれば何でもいいとか、間奏が長いとか、自由でいいなって思うんですよね。でもみんな喜ばないっていうのがすごく不思議で。そういうのが文化としてあんまりないから、「CD通りじゃなくていいんじゃない」って、ささやかな提案が出来たらって思ってます。「今日どうなるかしら!」みたいなほうが楽しいですよね。
――Gotchバンドは特にそれが顕著ですよね。
ロック・フェスとか出ても、同期音がなっているバンドがすごく多くて。それはそれでエンターテインメントに捧げているんだろうから、丁寧というか真面目だなって感心するんだけど、人力感が損なわれすぎていると「彼ら楽しいのかな?」ってなんか心配になっちゃって。楽しみ方って色々あると思うんだけど、僕は自由な気持ちになりたくてやってるから、曲のサイズが長かったりCD通りじゃなくてもいいじゃないかって思います。今作はライヴ盤だけど、自分にとってはオリジナル・アルバムみたいな感覚で。僕、ライヴDVDって観ないんですよね。
――ああ、わかります。
何でなんだろうね? ライヴ盤のほうが集中できるというか、景色を想像しながら楽しめるんですよね。去年出たニール・ヤングのライヴ盤があるんですけど、タイムスリップしたような感覚になれたのが、すごくよくて。そんなこともあってライヴ盤を作ってみようと思ったんです。
――今回、いろんな形態でリリースされましたけど、今の時代って何を選ぶかが難しいと思うんですよ。昔はCDを出すことを目標にしているところがあったけど、今はCDが容易に出せるようになって、アナログもいいしハイレゾも良さそうだし、あげくの果てにはテープも出せる。
CDも絶滅はせずとも数を減らしながら、グッズ化していきますよね。今のテープやアナログみたいな役割になる。
どこまでいっても能動的なものなんだなっていうのがU2の件でわかったし、みんなもちゃんと選んでいるんだなって
――ミュージシャンはどんなものを選択していくのがいいと思いますか?
データ圧縮やサイズダウンする方法はリスナーがいくらでも持っているから、こっちはとにかく良い音を出すことを選んでいったほうがいいと思います。それをどのくらい圧縮させるかっていうのはリスナーの手に委ねられることで、精魂込めてスタジオで作業したものは、やっぱりそのときの「いやー、いいものできたね!」って状態のまま聴いてほしいと思いますよね。臨場感はハイレゾが1番あるので。たとえそれがニッチなリリースになったとしても、望む人がいるうちはいいんじゃないかなって。だって音質いいし、いいものが売ってなくなっちゃうほうが問題で。ハイレゾはこれからいろんな方法が出てきておもしろくなってくるでしょうし。
――じゃあ現状はCD、アナログ、ハイレゾの3つですかね?
そうですね。ハードディスクの容量とか問題はあると思いますけど、ダウンロード音源だったら値段が一緒だったら音いいほうがよくない? っていう気がします。でもきっとみんな、何をどう所有するかを考えていると思いますね。だって、自分のハードディスクに勝手に人の曲が入っていたら、タダでも嫌なんだってことはこの間のU2の件(※)で証明されたから。
※2014年9月10日(現地時間は9月9日)、Appleが米国 The Flint Center for the Performaming Artsで行った新製品発表会において、U2の新作『ソングス・オブ・イノセンス』リリースが明らかになったと同時に、iTunes ストア・ユーザーに向けて同作の無料配信が行われた。(参照元)
――確かにそうですね。
あれ、「mp3にも所有欲があるんだ!」って衝撃で。タダだしバーチャルなものなんだから消せばいいのに、「勝手に私のiPodに入れられた!」みたいな感じだったでしょ? みんな、iPodやハードディスクを本棚とかCD棚みたいに考えているんだなって。おもしろいですよね。そう考えると、買ってでも自分のiPodに入れたいってものがあるんだろうなって思います。だからストリーミングからでも、いいと思った物を所有したいって欲は続いていくような気がするし、それから派生して生で観たいってところに接続したりするのかもしれない。どこまでいっても能動的なものなんだなっていうのがU2の件でわかったし、みんなもちゃんと選んでいるんだなって。プレイボタンを押すか押さないかはリスナーに委ねられているから、今後音楽がどうなっていくかはリスナーにかかっていると思いますね。
とにかくこの状況を楽しむこと。でも産業としては節目ではあるから、俺たちはこの状況にもう少し慣れないといけない
――後藤さんがリスナーとして選ぶのはやはりアナログですか?
そうですね。あとハイレゾもちょいちょい買ったりします。くるりの新作(『THE PIER』)とかは、どんな音で録ってるんだろうって興味もありますし。あと、ハイレゾだから出来ることとして、ライヴ盤とか、廃盤になっている音源を掘り起こしてほしいなって思いますね。マスターがテープのものとか磁器がおかしくなる前にアーカイブしてほしい。そういう意味では、ハイレゾで資料性が上がってくるかもしれないですね。アーカイブとして永遠にあるって、最高ですよ。オリジナル版を劣化しないまま残していくことが約束される、廃盤がないっていうのは、ミュージシャンにとってもすごくいいことだと思います。売れてないけど名盤とか、物は刷れないけど、デジタルのハイレゾだとそれができる。時代をまたいで再発見されることで、結果的にミュージシャンにとってはフェアになるかもしれないしね。
――昔の音源って、結構残っていないものなんですよね。
マスター音源をハイレゾ化して、みんながアクセスできるようになって、しかもそれが安価になったらいいと思いますね。文庫本みたいな感覚で、「昔の音源は3000円じゃなくていいよ!」って。そうなったら若い子たちも手が届き易いだろうし。だって森は生きているとかceroとか聴いたら、はっぴいえんどを聴いてみようかなってなると思うんです。そうなったときに、まわりには他にも新譜がある中で、旧譜に手を伸ばしにくいと思うんですよね。そういうときに、ハードカバーじゃなくて文庫本みたいなものがあると、開いていくと思う。ミュージシャンの収入にも繋がっていくと思うし。
――今、ハイレゾは高価になっていく方向にあるんですよね。CDより高くなっちゃってるものとかもあって、それではリスナーは買わないだろうと思ってて。
自分のレーベルでやってみようかな。10年も20年もまだ先の話だけど、10周年で出すときは安くするとか。でも実際、発売から3週間で旧譜みたいな扱いをされるような、そのスパンで売れない物はダメだみたいな時代ではもったいないと思うんです。70年代のニール・ヤングの音源を今開封して、みんなが瑞々しく「ヤバい!」って言うことに音楽を記録することの魅力があると思ってるから。だからこそ、みんながmp3で残していたら何十年も経ったときに「えっ、この音源、mp3しかないの!? なんでもっといい音のマスターがないの!?」ってなりますからね。文化財だって出来るだけいい状態で発掘したいじゃないですか。それと同じことが音楽でも起こると思うんです。デジタルの音源は時間が経っても劣化しないのが利点で、壁画を変に修復しちゃったみたいなことが起こらない。「ああ! 20年前の音源が8bitになってる!!」みたいなことだって起こらないんだから(笑)、みんなそれを使っていってほしいですね。
――それが出来る時代ですからね。
うん、夢がありますよね。ハードディスクが記録メディアとして廃れていかない限りは。CDだって出始めのときは音が悪いものもあったけど、今は技術革新して良くなっているしね。ケーブルを変えるだけで音が良くなるとか。だから可能性って色々あって、どれがいいとかもネガティブに言わないで、楽しんじゃえばいいじゃんって思います。みんな考えてみなよって。自分で録って自分でリリースできる時代だよ? 昔は誰かが見つけてくれない限りどうしようもなかったのにさ、みたいな。SoundCloudでヒットに繋がったり、YouTubeで何でも聴けたり、ミュージシャンもリスナーも幸せな時代だと思うから、とにかくこの状況を楽しむこと。でも産業としては節目ではあるから、俺たちはこの状況にもう少し慣れないといけないなと思ってます。
――それは、CDの全盛期にデビューして活動してきた後藤さんだからこそ、実感を伴って言えることなのかもしれないですね。
あとは、音楽で飯を食うことに間に合った僕たちの世代がもうちょっとやれることがあるかなって思ってます。そういうところでレーベルをやったり、フェスをやったり、おもしろい人達をフックアップしてみんなに機会を作っていく。やっていかないと繋がっていかないので、そういうところを意識的にやりたいと思っていますね。その部分でアジカンは大きなスコップみたいになっているので、入ってきた子達に、「まだこの先にいいものあるよ」って言えるといいなって。
――後藤さんは、状況的にはアジカンをはじめ、自分のやりたいことだけやっていくことも出来るじゃないですか。でもそこで自身の存在を俯瞰して、しっかりやるべきことを意識して行動に移されていますよね。その原動力は何なのでしょうか。
機会とか利益とかも含めて、自分の中だけに溜め込んじゃいけないと思っていて。音楽から社会に介していかないとよくないし、そうしないと自分も含めてみんな先細っていくと思うんです。だから若い人たちにはパスを出しまくって、そこから次に繋がっていくのが理想だなって。そういう循環を意識していこうと思ってます。もちろんそれには自分の音楽活動が付随してこそだと思いますけど、ビートルズだってダサイと言われたことがあるくらいなので、自分が誇りを持てる物を作り続けていればいいんじゃないかなって思っています。
インタヴュー : 飯田仁一郎
Gotch ソロ・ファースト・アルバム
Gotch / Can't Be Forever Young (24bit/48kHz)
新しい時代の幕開けとなるような期待感と、Gotchならではのユーモア溢れる世界観が詰まった「Wonderland / 不思議の国」に続きASIAN KUNG-FU GENERATION 後藤正文こと"Gotch"待望のソロ・アルバムが完成! 後藤本人が、ヴォーカル・ギターを始め、多岐に渡るインストルメンツを手がけ、USインディー・ロックの生ける伝説"ジョン・マッケンタイア(トータス / ザ・シー・アンド・ケイク)"がミックス、マスタリング・エンジニアにはL.Aのスティーブン・マーカソンが担当! レコーディング時のサポート・ミュージシャンには、ストレイテナーのホリエアツシを始め、the chef cooks meの下村亮介やTurntable Filmsの井上陽介、8ottoのTORAなどのミュージシャンが参加と、超豪華面々が参加! 日本語ロックの歴史を塗り替え続けてきたGotchのもう一つの軌跡と日本語ロックの未来が詰まった一作。
>>『 Can't Be Forever Young』ハイレゾ配信開始&15人クロスレヴュー
後藤正文プロデュースNOWEARMAN&岩崎愛新作!!
イギリスでThe 1975がグラマラス・ロックを復権させ、Darliaが現代のグランジ・サウンドを鳴らし、アメリカではThe Orwellsが2度目のロックンロール・リヴァイヴァルを巻き起こし、オーストラリアからはロックの救世主といわれたThe Vinesが再び始動する。そんな今、ロックシーンの向かうべきベクトルを受け継ぐNOWEARMAN、クールなでタイトなリフと、研ぎ澄まされたメロディーのループが高揚感を誘う最高のデビュー作『MAN NOWEAR』が遂に完成!
浪速のノラ・ジョーンズこと岩崎愛の最新楽曲が完成!! 「哀しい予感」には、レイ・ハラカミをはじめUA、七尾旅人、大橋トリオなど数多くのアーティストの作品にもタブラ奏者として参加しているU-zhaan、そしてUA、原田郁子(クラムボン)、七尾旅人、知久寿焼(たま)ら著名アーティストとライヴで共演しているスティールパン奏者のトンチを迎えて、今までにないアレンジと心を振るわせる歌声が印象的な楽曲が完成! また、映画『風立ちぬ』の主題歌にもなった荒井由実の「ひこうき雲」を岩崎愛ならではの歌声とバンド・アレンジでカバー!
only in dreamsリリース作
PROFILE
Gotch
1976年生まれ。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのヴォーカル&ギターであり、楽曲の全ての作詞とほとんどの作曲を手がける。これまでにキューンミュージック(ソニー)から7枚のオリジナル・アルバムを発表。2010年にはレーベル「only in dreams」を発足し、Webサイトも同時に開設。また、新しい時代やこれからの社会など私たちの未来を考える新聞「THE FUTURE TIMES」を編集長として発行するなど、 音楽はもちろんブログやTwitterでの社会とコミットした言動でも注目され、後藤のTwitterフォロワー数は現在257,000人を超える。
ソロ作品としては、ライヴ会場&通販限定で7inch『LOST』を2012年8月1日に、2013年4月20日のRECORD STORE DAYに7inch『The Long Goodbye』をリリース。 2014年3月12日、ソロ・アルバムからの先行シングル「Wonderland / 不思議の国」がリリースされる。そして初のソロ・アルバム『Can't Be Forever Young』を4月19日RECORD STORE DAYを皮切りに発売。
後藤本人がVocals / Guitar / Harmonica / Synthesizer / Glockenspiel / Percussion / Programmingまで、多彩な楽器をプレイし、USインディー・ロックの生ける伝説 John McEntire (Tortoise / The Sea and Cake) がMIXを担当した渾身の1枚。その後10公演の全国ツアーを決行し、FUJI ROCK FESTIVAL'14にも出演。