人気のボカロP・ゆよゆっぺが待望のメジャー・デビュー
すっかり文化の一つとして定着したボーカロイド。オトトイの学校でも、ぺぺろんPこと虹原ぺぺろんによる「ぺぺろんPのボーカロイド調教塾~ボカロを人間のように歌わせてみよう~」を開催したり、ボーカロイドの面白さは様々なところに波及しています。そんな中、ラウド・ロックを軸に、さまざまなジャンルのサウンドを盛り込んだボーカロイド楽曲で、ニコニコ動画では何度も“殿堂入り”を果たした人気のボカロP、ゆよゆっぺが、待望のメジャー・デビュー作をリリース。それを記念して、OTOTOYではインタビューを決行。すっかり文化として定着したボーカロイドをどのように扱っているのかなど、ゆよゆっぺに迫ります。
ゆよゆっぺ / Story of Hope
1. Intro / 2. Story of Hope / 3. 「S」 / 4. Thunder Girl / 5. Palette / 6. Leia
7. Reon / 8. Hope / 9. Lost Story / 10. For a Dead Girl+ / 11. ALONE / 12. Blue
13. カミノコトハ゛/ 14. The last 8 bers / 15. 7/8
16. Hope - My Eggplant Died Yesterday Ver.
販売形式 : wav / 単曲 250円 まとめ購入 2,300円
ゆよゆっぺ INTERVIEW
ニコニコ動画で何度も“殿堂入り”を果たした人気のボカロP、ゆよゆっぺがメジャー・デビュー作を完成させた。この作品を聴いて、あまりボーカロイド文化に馴染みのない自分は大きな衝撃を受けた。スクリーモやラウド・ミュージックを貴重に、どこか無機質で可愛らしいボーカロイドの声がのった楽曲は、聴けば聴くほど不思議な感覚を覚えさせてくれる。例えばそれは、アイドルがメタルを歌うような感覚にも近いのだけれど、やはり違いを感じずにはいられない。ここにあるのは違和感であるけれど、単なる違和感ではない。その違和感を新しい文化として昇華させてしまうくらいの地場の強さだ。ボーカロイドを中心とした盛り上がりが未だに続いているのは、はやり廃りを越えた文化として定着したからに他ならない。本作はそれを一発で知らしめるくらいの傑作だ。一体どのようにしてボーカロイドに出会い、なぜラウド・ミュージックを中心に活動しているのか、そしてどこを目指しているのか、ゆよゆっぺに話を訊いた。
インタビュー : 飯田仁一郎(Limited Express (has gone?))
文 : 西澤裕郎
アイコンとしてボーカロイドを捉えている部分はありますね
ーー資料に「暗黒の時代を抜け…」と書いてありますが、ゆよゆっぺさんにとっての暗黒時代っていうのは、どういう時期のことなんでしょう。
ゆよゆっぺ : 以前『Wall in the presence.』っていう、僕が歌った曲を収録した音源を配信させてもらったとき、いかに自分がボーカロイドに頼り切っていたかってことを認識したんです。ボーカロイドのシーンでそれなりに評価されて、名前も覚えていただいていたんですけど、実際自分一人の作品ってなったときに力が足りないことに気がついて。ボーカロイドを作っているときのようにうまくいかなくて、だいぶ落ち込んだんです。悩んだ結果、もっと根本的なところを掘り下げて考えたり、外に出て題材を集めたりして、より大きな世界で考えてみようと思って。
ーー外に出ようと意識が変わったのはなぜなんでしょう。
ゆよゆっぺ : それまでって、何となく曲が作れちゃっていたんですよ。でも、それだと弱くて、自分で歌ったときにパンチがでない。だから、意味もなく電車に乗ったり、マックとかに行って人を観察して、あの人何を考えているんだろうとか想像したりして。
ーーつまり、落ち込む前の次期は経験だけでやっていたけれど、ある程度経験を出し尽くした結果、伸び悩んでしまったわけですね。
ゆよゆっぺ : そうですね。そこで壁にぶつかったことで、インプット収集の大切さを覚えて、今の形ができたかなって思います。
ーーさっきおっしゃられた、二コ動の世界からもう一個大きい世界にでてみて、思い描いていたものと違いはありましたか。
ゆよゆっぺ : 正直、それまではそんなに差なんてないと思っていたんですよ。でも、何から何まで違いました(笑)。ニコ動みたいにダイレクトなレスポンスが見えないじゃないですか。そういう恐さとか、どう評価されていくのかっていうのは不安でしたね。Twitterで「よかったね」ってリプライをもらえることはあるんですけど、それ以外の音源を手にとってくれた方がどう思っているんだろうって。
ーーそれまでインターネット上で発信されてきたゆよゆっぺさんが、もっと広い世界を観てみたいという欲が出てきたのは、挫折という経験があったからなんですね。
ゆよゆっぺ : そうですね。挫折以降、だんだん学んでいって、外部の方と知り合うことができて。外部の方を見ていたらやりたくなったんです。
ーー外部の方というのは?
ゆよゆっぺ : 例えば、やなぎなぎさんが麻枝准さんと一緒に制作された『終わりの惑星のLove Song』ってCDがあるんですね。僕も現場に行かせてもらって、アレンジをさせてもらったり、音楽のお仕事をいただくようになって、そこで得る空気感というか、自分一人で感じられないものがいっぱいあって。自分が今までやってきたおままごとのようなものは何だったんだって(笑)。
ーーそれは技術的なことですか。
ゆよゆっぺ : いや、空気感観ですね。一人一人のプロ意識がすごくわかるんです。例えば、ミキサーさんにしても全然違う。アーティストに対して「ここは、こういう理由でこうしたいんですけど、どう思いますか?」って逐一聞いていたり、アーティストの意向を消化しながら、どれだけよくできるかっていうプロ意識が垣間見えたり。ボーカリストの方が歌い終わってから「大丈夫です、もう一回いいですか」って小声で言うテンションがプロだなと思って(笑)。 「もう一回いいですか?」って小声で言うテンションがプロだなと思いました。
ーー(笑)。根本的な疑問として、ゆよゆっぺさんって歌手としても歌える方だと思うんですね。それなのにボーカロイドを使っているというのはなぜなんでしょう。
ゆよゆっぺ : 僕がやっているジャンルっていうのはすごく狭くて、それをより多くの人に聴いてほしいんです。理想をいえば、そこらへんにいる女子中学生が「あのスクリーモのバンドいいよね」っていうテンションになったら、僕的に世界平和だと思うんですよ。エモ、スクリーモ、ハードコア、ラウド・ミュージックに、より多くの人たちに触れてほしかったので、アイコンとしてボーカロイドを立てて、やってみようっていうのが、そもそものきっかけですね。
ーーあくまでもスクリーモやラウド・ミュージックを伝えたいというのが根本にあって、そのまま歌うのとは違う角度から伝えたいということなんですね。
ゆよゆっぺ : ボーカロイドの曲だから聴いてみようって人がいると思うんですね。あとは、ハードコアをボーカロイドでやったらどうなるんだろうって興味があって。それをやることは、一石二鳥なんじゃないかと。だから、アイコンとしてボーカロイドを捉えている部分はありますね。「hope」って曲なんかはニコ動に僕が歌ったものがあがっているんですけど、まずはボーカロイドで聴いてもらってから、自分で歌ったものも聴いてほしいなって。そういう分け方があるかと思います。
ーーゆよゆっぺさんが歌えば、頭の中の考えている100%が表現できると思うんですけど、ボーカロイドで表現した場合なかなか難しいんじゃないですか。
ゆよゆっぺ : そこは、ボーカロイドで歌わせるんだったらこういう曲調がいいだろうって変えて作っています。ただ、デフォルトだとシャウトってできないですからね。
ーースクリーモとかって、シャウトの部分が重要じゃないですか。そこで表現が難しいとしたら、自分で歌ったほうがいいってなりませんか?
ゆよゆっぺ : いわゆるシャウトがよくわからなかったり、聴けないって人もいると思うんですよ。そういう人にも受け入れやすいスクリーモとかラウド・ミュージックを表現できると思うんですよ。なので、まずは重々しいサウンドと激しいビートに耳を傾けていただいて、それに慣れてきたら僕が歌ったものを聴いていただくと心地よくなるかもしれない。そう考えてやっています。
「お前本気出せよ」ってコメントがきて、やってやろうってなった
ーー確かに、そいういう流れでリスナーの音楽への興味が増していけばいいですよね。ここで、ゆよゆっぺさんの音楽遍歴にも話を向けたいのですが、もともとメタリックなものが好きだったんですか。
ゆよゆっぺ : 中学生のときに、TSUTAYAでメタリカの『セイント・アンガー』っていうアルバムを借りたら、すごくかっこいいと思って。音楽に動かされる動機って、みんなよくわからないものだと思うんですね。同じように僕もかっこいいって症状に陥ってしまって、そこからヘビネスを漁るようになって。
ーーちなみに、ゆよゆっぺさんの地元はどこなんですか。
ゆよゆっぺ : 茨城県の相当な田舎で、近くにレンタルショップしかなかったから、かなり偏っていますね。正直、TSUTAYAの店員さんの趣味とリンクしているのかもしれない(笑)。限られた中でバンドのCDを買っていたので。
ーーそこからバンドも組んだりしていたんですか。
ゆよゆっぺ : 水戸の高校に行ってから、バンドを始めました。そのころ、マキシマム・ザ・ホルモンとか、スクリーモも聴き始めたんです。ヘビーだけどメロディがキャッチーとか、キャッチーなんだけど極悪なブレイク・ダウンがあったり、それが今に繋がっているのかなって思います。サウンドとかテンションはハードコアなんだけど、そこにキレイなメロディや掴めるところを作ろうって。ヘビネスを聴いている人って、ここのリフがいいとか、ギター・ソロがいいとかあると思うんですけど、ぶっちゃけ一般の人はそこは聴いていないじゃないですか。ヘビネスだけど、歌詞とメロディを立たせようってことを念頭に置いてやっています。そういう軸ができたのは高校のころだったかなと。
ーー影響を受けたのは高校でマキシマム・ザ・ホルモンなんですね。
ゆよゆっぺ : あとは、ストーリー・オブ・ザ・イヤーとかも入ってきたり、リンキンパークが流行ったじゃないですか。サビのメロディがしっかりしているけど熱いブレイク・ダウンがあるとか、そういうものにすごく惹かれましたね。
ーー僕の世代では、COALTAR OF THE DEEPERSを知ったのがすごく大きくて。NARASAKIさんが初めてそういう両義的なことをやっていて、ビックリしたんです。
ゆよゆっぺ : 僕もBABY METALさんの「ヘドバンギャー」のカップリングのアレンジをやらせてもらったんですけど、NARASAKIさんはタイトル曲のほうをやられていて、すごいなと思ったんですよね。NARASAKIさんのワークスを調べるとアニメ音楽とかもやっているじゃないですか。その音楽性の広さ。そこにすごく憧れますよね。ぶっちゃけ僕も何でもやりたいので、変な観点に縛られず何でも出来る人としてNARASAKIさんを尊敬しているし、彼のようになりたいなと思いました。
ーーヘビネス、スクリーモに夢中だったゆよゆっぺさんがボーカロイドに出会ったのはいつ頃なんですか。
ゆよゆっぺ : 当時、東京の専門学校に通っていたんですけど、このままバンド続けて大丈夫なのかなと思って、先のことを考えるたびに不安になっていったんですね。それで、だんだん内にこもるようになってしまって、その中でニコ動に出会ったんです。音楽のタグがあったので見ていたら、ボーカロイドが目に飛び込んできて。聴いてみたら楽しそうだなと思って、遊び程度というか、わけもわからずバラードとかも作っていて。それで出たばかりの初音ミクを買ってきて、作ってみるかなって感じで。最初、持っていた機材でギターやピアノを録ったり、パソコンも親父のおさがりで(笑)。ドラムマシーンで打ち込んだものに無理矢理初音ミクを合わせてみたり、わりと滅茶苦茶な状態で、ニコ動にあげてみたんです。そのときは全然反応がもらえなかったんですけど。
ーー反応がもらえるようになったのはどういうきっかけがあったんでしょう。
ゆよゆっぺ : ヘビネスの要素も交ぜながらやっていたら、「お前本気出せよ」ってコメントがきて。それを見てやってやろうってなって、今ニコ動のマイリストの始めにある曲を作り始めて。そコで初めてエモとスクリーモの要素をとりいれてメロディを際立たせたら、リスナーさんからも反応をもらえたんです。
ーーそういう試みをしていた人はいなかったんでしょうか。
ゆよゆっぺ : いなかったですね。ヘビネスの考え方の方はいたけど、スクリーモっていうのはいなかったですね。
俺がアイコンだと言われるくらいになりたい
ーーゆよゆっぺさんが考えるボーカロイドの魅力ってどういうものなのでしょう。
ゆよゆっぺ : 前までは、言ってもボカロってソフトウェアで、音楽をよく聴かせるためのものだって思っていたんです。でも最近は少し違うのかもと思い始めていて、ももクロさんとかの楽曲とかって、ももクロってアイコンがあるからこそ何をやってもいいと思うんです。そう考えたら、ボカロっていうのも一つのアイコンで、その上で何をやってもいいんじゃないか、どんな音楽にも挑戦できる素晴らしいアイコンなんじゃないかって。なおかつ絶対にイヤって言わないですし(笑)。これを取っ付きにくいと思う人もいるかもしれないですけど、音楽的に観ればおもしろいし技術的にもすごいことなので、それを越えたらもっとおもしろいものになるんじゃないかなって。
ーーその中で巡音ルカを使っている理由というのはどういう部分なのでしょう。
ゆよゆっぺ : 巡音ルカさんが好きなんですよ。最初に発売されたときに、何かしら運命的なものを感じたんです。ふくよかでやさしいというか、ジャズとかフレンチエレクトロに会いそうな声だったんですけど、パロメーターの中でジェンダーを下げて甲高い声にして使ったらマッチするんじゃないかと思って。
ーー思いもしなかった化学反応があったんですね。
ゆよゆっぺ : フィーリングなんですけどね。アイコンが選べるっていうのがいいですよね。BABY METALさんが、ああいうゴシックとかメタルな格好して、アイドルの曲を歌っても違うじゃないですか。そこを振り分ける意味でも素晴らしいアイコンかなって思いますね。
ーーゆよゆっぺさんはDJもやっていますよね。それぞれのプロジェクトをわけて考えていらっしゃるんですか。
ゆよゆっぺ : やっぱりバンドものや海外ものを聴いていても、ヘビネスの中にエレクトロの要素が入ってきたり、KORNがSKRILLEXと一緒に組んでダブステップをやってみたりしたじゃないですか。前までは、バンドにキーボードがいるとか考えられない時期があったんですけど、よくよく考えると、エレクトロで得た知識をバンドで活かせないわけがないし、バンドで得た知識をエレクトロで活かせないわけがない。そう考えたら全部やってほうがいいじゃんって。それも中途半端にやるんじゃなくて、そこの垣根をどんどんなくしていくくらい、全力で取り組みたいと思ってやっています。
ーーコンポーザーという要素が強いのかもしれないですね。
ゆよゆっぺ : 大きいことを言わせていただけば、俺がアイコンだということを言われるくらいになりたいです。ナカタヤスタカさんがプロデュースしたらアイコンになるじゃないですか。エレクトロで使っている名義はまたちょっと違うんですけど、DJ TEKINA//SOMETHING a.k.a ゆよゆっぺっで得た知識をバンドで活かしていって、この人が作っているからおもしろいんだって言わせたいですね。
ーーニコ動を越えた大きな視点で考えているんですね。
ゆよゆっぺ : そうですね。さらに音楽的に高めるために広い世界でやろうと思っています。ニコ動に育ててもらったという気持ちもありつつ、ゲーム実況もしたりしているユーザーなので。そこは一つのコンテンツとして捉えています。
ーー今後の未来に関して目標などはありますか。
ゆよゆっぺ : 『Story of Hope』のボーナス・トラックで僕自身が歌っているものがあるんですけど、僕がやっているバンドで「Hhope」を録ってみようと思っています。ここから未来に繋げたいってのがあって、バンド活動も力入れてやっていきたいです。もちろんボカロを入れたものもどんどん作っていきたいなと思っていて、自分には歌えないものを歌わせたいですし、いろいろやってみたいです。
ーーゆよゆっぺさんは、ボーカロイドだけじゃなく、バンド、DJもやっているので、それぞれの視点からファンの人が増えていって、どこかで交わるといいですよね。
ゆよゆっぺ : バンドを見て僕を知っていただいた方に、DJも見にきていただきたいし、そこでそれぞれの文化の人が交わるといいですよね。ニコ動で知ってくれた人が外に出て楽しんでくれたりするとすごく幸せですね。
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PROFILE
ヘヴィ・ロックやラウド・ロック、エモーショナル・ロックを得意とする、オール・イン・ワン・ボーカロイド・プロデューサー。 ポストロックやエレクトロニカ、ダンス・アレンジやダブステップ等のアレンジまでもを手掛け、幅広い作曲や編曲をこなす。その類まれなるセンスの音選びにはアイデンティの高さを感じさせる。 いままで発表したオリジナル楽曲が多数殿堂入り。2009年に開設したコミュニティは13,500 人を超え、現在ではVOCALOUDの第一人者として人気を確立しつつある。