"インサイド"と"アウトサイド"を繋ぐ架け橋を歌う──Rie fu、デビュー10周年作品第2弾をハイレゾ配信
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デビューから10周年を迎えてRie fuが臨んだコンセプト・アルバム、『 I 』と『O』。それぞれ I = Inside(内面を物語ったもの)、O=Outside(外に向かったもの)というテーマを持つ2作。そのうち『 I 』を2014年に発表、次に『O』を制作するにあたって2015年はまさしく"アウトサイド"へ積極的に出向き、ライヴやレコーディング活動を含めアジアからヨーロッパまで十数カ国を巡った彼女が、ついに『O』を完成させた。
今作は"アウトサイド"からみて見つけた自身のアイデンティティのひとつである母語(=日本語)で綴った歌が中心に。アコースティック・サウンドをベースに自身で多重録音を重ね、旅で出会った物語を雄大に描いている。年月を経るごとに深みを増す歌声、成熟していくアイデアとテクニックで豊かになっていくRie fuの音楽を、今回もハイレゾで配信する。
Rie fu / O
【Track List】
01. Fourier
02. SecretIsland
03. 夢の中であなたは
04. Father&Son
05. 雨の飛行場(Airport in the Rain)
06. Lullaby
07. Zutto
08. Scale
09. Dreamer
10. A Song For Me
【配信形態】
[左]24bit/48kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC
[右]16bit/44.1kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC / MP3
【価格】
単曲 257円(税込) / アルバム 2,160円(税込)
【アルバム購入特典】
・配信限定歌詞ブックレット
Rie fu / FourierRie fu / Fourier
INTERVIEW : Rie fu
2014年のシンガポール移住に、アジア10カ国以上への周遊。Rie fuのデビュー10周年を記念した2作目のアルバム『O』には、こうしたいくつもの旅が深く関わっている。今作を制作する間の1年半にわたる海外での活動は、結果として彼女のなかで“日本”を見つめ直すことに繋がった。新作『O』は日本語の美しさに重きが置かれ、歌謡曲へ寄り添った楽曲が収められるなど、旅での経験は作品テーマに大きく反映されているところだ。
日本にとどまることなく、積極的に海外にも進出する彼女のアーティスト人生はかなり順風満帆に見受けられる。しかしながらそれでもまだ満足することなく、今度はイギリスへ移り住むのだという。その決定には、今作を巡る旅のなかで感じた“壁”が大きく関わっていた。Rie fuがまた新たなドアを開こうとする理由とは。
インタヴュー : 飯田仁一郎
文&構成 : 鶯巣大輔
写真 : 雨宮透貴
英語ヴァージョンで歌うと「日本語で聴きたかった」って言われたりして
──Rie fuさんは2014年にシンガポールに移住されています。これも大きな変化だったと思うんですが、さらに最近はアジア諸国を回っていたそうですね。
1年間で旅行を含めたら10カ国以上に行きました。ライヴをしたのがインドネシアと中国、香港、シンガポール、台湾ですね。
──その旅のなかで何か感じることはありました?
やっぱりアジアの国は日本への憧れがすごく強いんです。ヨーロッパとは違う見方で日本を見ていて、それが独特でした。例えば、シンガポールにいると日本は、ファッションやヘアメイクもすごくスタンダードが高いなと感じることがあって。ショッピングモールに日本の100均みたいなお店があって、そこでは安くクオリティが高い日用品が買えるというイメージを持たれていたり。日本人の見た目も作るものも美意識が高いというか、そういう部分に憧れと信頼を感じているのかな。
──今作『O』は母国語である日本語を見つめ直した作品とのことですが、そういった旅での経験がテーマにも繋がっていったんですか?
そうですね。まっすぐに日本語の言葉をより大事にしようと思うようになりました。アジアでライヴをしたときに、分かりやすいかなと思って英語ヴァージョンで歌うと「日本語で聴きたかった」って言われたりして。意味は分からないけど、日本語の音としての響きがおもしろいとか、どういう内容を歌ってるかっていうのは歌い方とか、メロディの雰囲気で想像して聴くのが楽しいって言ってくれる人もいました。そのとき日本語の音ってすごく特殊なんじゃないかなと思ったんですね。だからそういう日本語の音の流れとか、言葉のまっすぐな美しさっていうのは心がけた部分ではありますね。
──特にそのテーマを意識した楽曲っていうと?
実は今回のアルバムに収録した何曲かは16歳とか17歳のときに作った曲を使っていたりして。「雨の飛行場」と「Zutto」ですね。というのも当時は本当になんにも考えずに素直な気持ちで曲を作っていたので、日本語を再発見するってことは、私にとって原点に戻るっていう感覚に近かったんですね。「Zutto」は17歳のときに作っていて、1stアルバム収録曲の候補にもなっていたんですけど、当時は王道的な歌謡曲って感じで照れくさくて歌えなかった(笑)。でもいまは曲として可愛いなと客観的に思っていて。日本の音楽のちょっと繊細でナイーヴな部分がこの曲にはあると思います。
──今作はバンド・サウンドやコーラス隊も入っていて、レコーディングの様子が気になりました。制作はどのように進めていったんでしょうか。
今回はとてもシンプルですね。まずある程度自分でアレンジを作って、前作『 I 』も一緒に作っていただいてたプロデューサーの(石崎)光さんにデータをお送りして、マジックをかけていただきました(笑)。あとはエンジニアの佐藤宏明さんと、マスタリングはバーニー・グランドマン・スタジオの山崎翼さん。その3人は日本に住む方々ですね。でもヴォーカルはシンガポールの私の自宅で録ったので、実は1回もスタジオに入ってないし、ドラムとかそういうのもすべて打ち込みなんです。ミニマルな環境のなかでダイナミックさを生み出すっていうコンセプトもあって、いままでになかった音作りではありましたね。
──え、じゃあ音の部分は石崎さんによる打ち込みなんですね。すごい空気感があったのでバンドで録音したのかと思いました。
そうなんです(笑)。でもバンド感を再現したいっていうよりかは、その空気感っていうものを立体的に表現できたらって考えていたので、そう思っていただけたのは嬉しいですね。
日本での音楽の発表の仕方も、もう少し枠を外れたことに挑戦しないと
──今作を聴いたときに、Rie fuさん曲の雰囲気がもっと柔らかくなってきたなと感じていて。例えば子守唄を意味する「Lullaby」とか。
世代的なことなんですが子供生むっていうことが周りで多くなってきているので、「Lullaby」はそういうことも意識しています。もし自分に子供ができたら曲作りをしている時間もないかもと思って、先に作っておこうという狙いもあります(笑)。
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──最後の「A Song For Me」も賛美歌のようで、作品全体のトーンを優しくしている象徴的な楽曲かなと。この曲は「頑張らないで」という歌詞が印象的でした。
この曲はアルバムで伝えたいことの集大成というか。「頑張って」「前に向かって」って言葉はたくさんあっても、「頑張らないで」とか「なじまないで」とか「変わり者でありつづけて」とかそういうことを肯定する人はあんまりいないだろうなと思って曲を作ったんです。身近な人で、頑張り過ぎちゃって精神的に少しダメージを受ける人が結構増えてきていて。そういう人たちに私が何かできたらいいなという思いですね。
──この曲を作ろうと思ったのには何か具体的なきっかけがあったんですか?
ライヴでお客さんと接したり、お話してみたりするなかで、日本のお客さんも、中国もインドネシアのお客さんもどこかみんな雰囲気や空気感が似ていたんですね。例えばライヴ中に絵を描いてプレゼントしてくれたりするような、感受性が豊かで、繊細な人というか。だからそれぞれ違う国だけど、みんな自分の音楽の同じ部分に惹かれて来てくれてるのかなと思って。そういう人たちに寄り添って伝えられることを考えたときに「A Song For Me」のような目線が浮かんできたんです。曲を聴いてくれる方の個性とか性格を肯定して、よりその人たちらしく自信を持って暮らせるようにサポートできる内容を1番考えましたね。
──そういった経験が元になっているんですね。あと『O』はRie fuさんのデビュー10周年を記念するという側面もありますよね。
本当は『 I 』アルバムのリリースと同じ年(2014年)に、デビュー10周年ってことで出す予定だったんですけど、制作に2年もかかってしまって。でも「outside」っていうテーマが今回のアルバムにはあるんですが、制作の間にいろいろなところを巡ったことで、それこそ変化もあったし、考えたこともたくさんありました。実は来月からイギリスに引っ越すことにしたんです。イギリスで音楽活動を一から始めたいなぁと思って。
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──次はイギリスに! それはなぜなんでしょうか。
2012年くらいにレーベルを始めたり、自分のペースで活動できるようになってから、どこかこう手探りで、暗中模索っていう感じがあったんです。そのなかで壁にぶつかったっていう感覚も少しありました。日本での音楽の発表の仕方も、もう少し枠を外れたことに挑戦しないと、このままではあんまり広がっていかないんじゃないかなと実は絶望的な気持ちもあって。まぁ絶望って言うとちょっと極端だけど(笑)。ハムスターが走り続けるあのランニングマシーンみたいなやつあるじゃないですか。それみたいに、ずっと同じサイクルの活動をしているなって。でもそれが心地よくもあるし、つまづくこともない。不愉快に思うことはないんですよ。だけど気づいたら同じ所をずっと回ってるんじゃないかなって思いがあったんです。
──その壁を感じ始めたのはいつだったんですか?
そうですねぇ…。テーマである「outside」を巡って、ツアーもアジア・ライヴもできて刺激がたくさんあったって思ったけど、日本に帰ってきたら、実はみんなあんまりそういうことに興味がないのかなと思い始めたんです。それよりも芸能人の不倫とかにしか興味がないのかなって(笑)。興味を持ってもらえるようにもっと実績もこれから作っていきたいとも思っていて、そのためにさらにガンっと広げたいって思いもありますね。
言語や国境を超えて、InsideとOutsideを繋ぐ架け橋こそが、ひとつの大きな愛
──Rie fuはずっと日本で活動してるミュージシャンじゃないですし、かなり充実した人生を送っているようにも見えるんですが…。アジアでのライヴから得るものも多かったようですし。
アジアでは私のアニメの曲を知ってくれる人がいて、その人たちに向けて1年間ライヴをしてきたんです。でもいい意味でも悪い意味でも、アニメってものが先行しすぎていたところがあって。それが少し壁になっていた部分もあります。それがなかったら私を知ってもらえなかったんですけど…、それがジレンマだったんです。
──やっぱりアジアだと、例えばガンダムだったりアニメの主題歌を担当しているという情報に引っ張られる? (Rie fuは過去にTVアニメ「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」「BLEACH」などのED曲を担当)
そうですね。みんな「ガンダム、ガンダム」って、その曲しか知らないって感じなんで(笑)。もちろん、そういう聴かれ方もある種の音楽の届け方だとは思うんです。ただもう少し音楽性ありきで楽曲を届ける環境を考えたときに、やっぱりその枠を超えないとっていろいろ考えて。だから音楽を軸にしてイギリスの環境でチャレンジしたいなっていう思いがありますね。
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──なぜ挑戦の場にイギリスを選んだんでしょう。以前、Rie fuさんが住んでいたこととも関係してる?
(住んでいたのは)大学生のころなので、もう10年前くらいですね。留学していたときは美術を学ぶっていう目的でした。だから場所自体に馴染みはあるんですけど、今度は音楽のためなので本当に一から始める感じです。イギリスにはやっぱり尊敬するアーティストがいたり、その音楽シーンにも興味があります。それに主人が育った場所っていうのも大きいですね。そこでいろんな音楽を聴いて育ったっていう話を聞いていて、そういう音楽の本場に行ってみたかったんです。
──旅を通して生まれた葛藤でもあったけど、結果的にそれが次に進むためのきっかけにもなったんですね。
イギリスに行くのは、いま私がいる輪っかを飛び越えていくための挑戦です。活動のペースを作るまでに、これから2、3年はかかると思うんですけど、そこでアーティストとして認められるような環境作りをしていきたいですね。もちろん日本でのライヴも続けたいなとは思っています。
──Rie fuはヨーロッパへの旅で『 I 』を、そしてアジアを巡るなかで『O』と2枚のアルバムを完成させました。最後にこの2つの作品を巡る旅がどんなものであったか総括をしてもらってもいいですか?
歌詞を自分で読んだときに、どの曲にもほとんど入っている言葉があるなと後から気づいたんですね。それがすごくベタなんですけど「愛」って言葉で。愛ってものをいろんな形で実感できた旅でしたね。音楽への愛、お客さんとの愛でもあるし、音楽を通して時間を共有できること、その時間への愛だったり。そういうものに対して、恥ずかしがらずに向き合えるようになってきたっていうのは旅を通して得られたことですね。あらゆる言語や国境を超えて、InsideとOutsideを繋ぐ架け橋こそが、ひとつの大きな愛だと実感じました。こういうことを言うと恥ずかしいですが、この2年間、『 I 』と『O』のアルバムを作っている間は、本当に心から応援してくれる旦那さんの存在が本当に大きかったですね。
──いやいや、いい話ですよ(笑)。この2枚はすごい幸せななかで完成したアルバムだったってことがわかりました。
Rie fu DISCOGRAPHY
OTOTOY独占音源
Rie fu / fu diary 2 - around the world- [ALL SONGS]
デビュー11周年目を迎えたRie fuの2015年のテーマは「旅」。シンガポール、バングラデシュ、ボルネオ島、中国、インドネシア、アメリカ、イギリスの7ヶ所、その現地でのフィールド・レコーディングを交えた録り下ろし音源が収録。
OTOTOY独占音源
Rie fu / so-re-da-ke(11.2MHz dsd + mp3)
オーディオ雑誌『Net Audio Vol.16』企画のもと、現在録音 / 再生が可能な最高スペックとされる、文字通りの"超"最高音質DSD 11.2MHzで音源制作に挑んだRie fu。11.2MHzの再生対応機をいち早く製品化したiFI Audioのサポートにより実現したこの貴重な音源が配信決定! 楽曲はニュー・アルバム『 I 』に収録されている「so-re-da-ke」の全編英詩ヴァージョン!
2015年、デビュー10周年を記念して、Rie fuの10年間の集大成と言えるカラフルでエキセントリックなアルバムが完成。スウェーデンにてRie fuが尊敬するシンガー、Mejaと彼女の長年のプロデューサーであるDouglas Carrと共作した「Butterfly」をはじめ、新たな恋愛観をストレートに語る「理想の男性の条件」、シンガポールへの移住体験を歌にした「Singapore」など、物語のページをめくるように1曲ずつ景色が変わって行くアルバム。タイトルの”I”(アイ)は、inside / inputを意味し、Rie fuの等身大の内面を、豊かでユニークに表現した作品になっている。
デビュー以来、その歌声をカーペンターズを彷彿させると評されることも多く、数多くのカーペンターズ・カヴァー・ライヴも行ってきたRie fuが、ファン待望のカーペンターズ・カヴァー・アルバムをリリース! アルバムのために書き下ろしたオリジナル曲や、Rie fu独自のアレンジを加えたカーペンターズ楽曲、また昨年sonodabandを迎えてビルボード東京で行われたライヴ音源も収録。OTOTOY限定の描きおろし壁紙や、歌詞カード付き。
Rie fuが生活の流れの中にある「絵を描くこと、歌を作ること」の模様を、音楽だけでなくアートワークやテキストなど、様々な方法で表現していくマンスリー・ソング・ブック・プロジェクト「fu diary」。OTOTOYと連動し、2012年6月から11月までの6ヶ月間、毎月新曲を3曲と書き下ろしのアート / エッセイ・ブック(電子書籍)をお届けしていました。現在ももちろん購入可能!
※楽曲のみを購入したい方は左、アートブックとともに購入したい方は右のアルバムをご選択ください。
2012年12月にシブヤヒカリエにて開催した「OTOTOY DSD SHOP」にて行われた公開ライヴ・レコーディングを収めた本作。エンジニアは高橋健太郎、ギター1本での弾き語りから始まり終盤では観客との掛け合いをそのまま収録。会場に張りつめた独特の緊張感が、彼女のMCによって少しずつほぐれていく様をも聴くことができます。
音づくりに、zAk(fishmans、UA、BOREDOMS etc.)、ベースに鹿島達也(the pillows、ORIGINAL LOVE etc.)、ドラマー菅沼雄太(EGO-WRAPPIN' etc.)、ギターにコーヘー(delofamilia、ex. hoi festa)と、Rie fuが信頼をおく唯一無二のセンスを持つミュージシャンを迎え、シンプルかつ立体的な音を作り出しています。より強くしなやかになったRie fu。骨太なリズム隊と共に飄々と切り替わるカラフルな彼女の世界観をどうぞ。
PROFILE
Rie fu
シンガーソングライター / 油彩画家
カレン・カーペンターを彷彿させる歌声、またジョニ・ミッチェル、ケイト・ブッシュ、キャロル・キングなど女性シンガー・ソングライターに影響を受けたフランクで情緒的な曲づくりが特徴。アメリカ、イギリス、シンガポールと様々な国で暮らし音楽活動を行い、国際色豊かな歌詞とオーガニックなメロディーで独自の世界観を創り出す。画家としても活動し、アートと音楽を繋げる活動を続けている。