THE BEACHESは今後どうなるのか? ──昨年末リリースの復活7インチ・シングル音源を独占ハイレゾ配信
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突如の“ロング・ヴァケーション”として2010年の活動休止を経て、2016年、まずはライヴでの活動を再開。〈FEVER〉でのライヴ、〈BAYCAMP〉、〈CLUB SNOOZER〉などへの出演を果たした。そして年末差し迫った12月25日、クリスマスに新曲2曲による7インチ・シングル「Here Comes Summer Again」をリリース。トラップを取り入れた、チルな「Here Comes Summer Again」、彼ららしいラテンな陽気さも兼ね備えたエレクトロなスカ〜ファンク・チューン「Rude Boy Root Down」の2曲だ。OTOTOYではこのたび、本シングルを独占ハイレゾ配信。ライヴ活動再開の2016年を経て、今年、2017年はアルバムなどのリリースを念頭においた、THE BEACHESにとって本格的な活動再開の年となるのか? それともまた別の展開となるのか? DJとしても活発に活動を続けるヒサシ the KIDにインタヴューを行った。
THE BEACHESのひさびさのシングルとなった7インチがOTOTOYだけのハイレゾ配信
THE BEACHES / Here Comes Summer Again(24bit/48kHz)
【Track List】
01. Here Comes Summer Again
02. RUDE BOY ROOT DOWN
【配信形態 / 価格】
24bit/48kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 200円(税込) / アルバムまとめ購入 400円(税込)
歌詞を含む、デジタルブックレットがPDFで付属
INTERVEIW : ヒサシ the KID
2010年9月、恵比寿〈LIQUIDROOM〉でのワンマンライブを最後にロングバケーションに突入したTHE BEACHESが、2016年に限定復活、しかも「HERE COMES SUMMER AGAIN」、「RUDE BOY ROOT DOWN」という2曲の新曲を7inchでクリスマスにドロップ、新代田〈FEVER〉で2DAYSライヴを敢行。そしてこのたび、OTOTOYで独占配信。なんだかなにやら騒がしくなってきたTHE BEACHESの今後が気になるぞ! ってことで、ヒサシ the KIDにインタビューを敢行。THE BEACHESの今のモードは? もうここまで来たなら、アルバムも聴かせてくれよな!!!
インタヴュー : 飯田仁一郎
構成 : 岩澤春香
写真 : おみそ
THE BEACHESはポップスが作りたいっていう感覚なんです
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──昨年新譜を発表して、12月に新代田〈FEVER〉でもイベントを行いましたが、ライヴの手応えとしてはどうでしたか?
アレンジは違うんですけど、新曲を2曲ともやれて、それがやっていて一番楽しかったんですよね。特に「HERE COMES SUMMER AGAIN」は、すごくテンションが上がった。それが収穫だったと思います。
──〈FEVER〉でのライヴを経て、THE BEACHESはどんなモードになり得たのでしょうか?
綺麗さっぱりって感じです(笑)。
──ええ!? もうその綺麗さっぱり感なんですか?
THE BEACHESとしては、ロングバケーションっていって休みに入る前に、ある程度の気持ちの区切りはついていたんですけど、やり残したことがまだあったんです。でも今回作品を出せて、そのやり残していたものができたんじゃないかなと。
──そのやり残したことってなに?
まず「THE BEACHES」っていうタイトルがコンセプチュアルだし、最初に活動のイメージがあったんです。1stのイメージがあって2ndのイメージがあって3rdのイメージがあって、とにかく3枚アルバムを出そうってぼんやりと思っていたんですね。で、その中にビーチ・ボーイズみたいに、クリスマスの作品を出したいっていう思いもずっとあって。今までもその話は何回かあったんですけど、やれるタイミングがなく一旦終わってしまったから、今回10周年というタイミングでそれをやりたいと思ったんです。
──THE BEACHESがなぜ終わったのかを聞かせてもらってもいいでしょうか?
3枚目までを出して、その後にその先のことを考えようと思っていたんです。でもその3枚目のアルバムが作品的にもサウンド的にも満足度が大きくて、やりきった感もあって、もう次があまりイメージできなかったんですよね。俺は家でもデモとか作らないし、ずっとバンドでセッションしながら作っていくスタイルだったから「このままセッションをやっていく中で、これ以上何かできることがあるの?」というところまできてしまった。それにもしこのアルバムがセールス的にある程度枚数も売れていれば、俺としてはもうちょっとやりたいってなっていたと思うんですけど、それが状況はそうでもなかったんですよね。
──ヒサシ the KIDの言っている売れることと状況を良くすることはイコールだったんですか?
THE BEACHESってワールドっぽい要素もたくさんあるんだけど、俺の中ではそういうことがやりたいっていうよりかはポップスが作りたいっていう感覚なんです。誰にもわからないような音楽が作りたかったわけではなくて、「俺の中ではこれ結構ポップなんだけどな」っていうところで作っていて。その感じと伝わる感じとのギャップが大きかったっていうのはありますね。
──ジェリーリー(THE JERRY LEE PHANTOM)のすっとひいた感じとか、ヒサシ the KIDのDJの感じから、評価とかはあまり気にしないのかなと勝手に思っていました。
そこはずーっと気にしていたと思います。でもだからと言って何かに寄せて、今こういう曲をやれば売れるんだろう、みたいな感じでやったことはないですけど。自分の中で、「これポップでしょ」って思えるところまで極端に振り切ってやることが、イコール売れるっていうことに繋がってほしくてやっていて。売れる曲を書きたいっていうよりかは、そうやって作ることがポップスになるんじゃないかなっていうイメージでずっとやっていたんですよね。
──なるほど。ヒサシ the KIDってDJの感覚もあるし、流行りがどんどん変わっていくのを敏感に感じ触れているから、THE BEACHES自体が4枚目5枚目に行ける多くの可能性もあったと思うんです。その中で3枚っていう制限を作ったのはどうしてなんですか?
THE BEACHESっていう名前も、3枚って決めることもそうなんですけど、俺の中で縛りを作ることで頑張れた部分があって。ジェリーリーのときも一時期ディスコパンクみたいなことをやりだしたり、何かにピントを絞ってやっていた時期が何年かあって、そういう、何か一つ縛りを作る方が、俺は自由に書けるんですよね。そうじゃないとあれもやりたいこれもやりたいってなってしまって、あまり楽しめなくて。ただジェリーリーだともうあまりにも枚数を出していたので、お客さんが聴いていた時期によってもバンドの印象が全然違うし、それが鬱陶しくて。それを全部取っ払って、分かりやすいことを1からやり直したかったっていうのが大きかったです。バンド名を思いついたときにすごくテンションが上がったんですよね。こういうライヴがやれるし、こういう服も着れるっていうのが、縛りがあったことでいろいろイメージできた。そうやってひとつ縛りがあると、今俺が聴いている音楽を、THE BEACHESだったらこういう解釈ができるっていう発想にも繋がっていったんです。
──なるほど。10周年でTHE BEACHESをやろうっていうのはいつ頃から考えていたのですか?
10周年でTHE BEACHESをやりたいなってぼんやり思っていたんですけど、いきなり集まってやるのは無理だったんです。現実的な話、メンバーも東京にいないから、リハをするにもいちいち出てきてもらわないといけなくて、前みたいに曲も作れない。で、ちょうどその前の年(2015年)に、ジェリーリーでライヴをやらないかっていうのをヘルマン(Hermann H.&The Pacemakers)に誘ってもらって。で、会場もキネマ倶楽部で結構なキャパだったし、THE BEACHESとしてもいいウォーミングアップになると思ったんです。ジェリーリーも黙ってやめているから、ライヴを見られなかった人にももう一度見てもらう機会にもなるので。
──ヘルマンとのキネマがあって、結局ジェリーリーでは何回ライヴをしたんですか?
あと夏の〈BAYCAMP〉に誘ってもらって、その2本だけです。
俺がやりたいと思うことをやりたいと思ってくれるメンバーだから
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──ヒサシ the KIDにとってジェリーリーでのその2本のライヴはどんなモチベーションだったんでしょう?
キネマのときは自分でも予想外にも本当に良くて、演奏もバッチリはまったんです。でも〈BAYCAMP〉のときはあまり上手くいかなくて(笑)。同じ4人でやっていても、その4つの楽器の噛み方が全然違うから、ちょっと気を抜くと本当に上手くいかなくなっちゃうんですよね。ただTHE BEACHESの場合は、最初からそういう軽い感じではやれない仕組みになっていて。
──それはどういうことですか?
隙間が多いからぼーっとできないんですよ。一個一個の「ダン!」っていうところを皆で合わせないといけないから、集中しないとできないんです。
──なるほど。THE BEACHESの音楽は、この4人じゃないとできないんですか?
この4人じゃないとできないですね。特にドラムに関しては、普通の人が叩かないようなことをやるから、他のメンバーではもう再現できないんです。ここからそれを一から作っていくのもちょっとしんどいかなって。すごく上手い人が入ったからできるっていうものでもないから。そこはもうずっと一緒にやってきて、俺がやりたいと思うことをやりたいと思ってくれるメンバーだからっていうのもあるかもしれないです。r.u.ko (Keybords)に関してはもう、いなきゃ話にならない(笑)。
──それはどういうこと?
r.u.koのリフがそこに絡んでかっこよくなったときに初めて曲が完成するんですよね。もちろんフレーズを組み立てていったり、リズムを作るのは俺の役割なんですけど、曲として完成するってなると、r.u.koのフレーズが入らないことには完成しないです。
──ヒサシ the KIDがひとりで構築までして、っていう作り方ではないんですね。
そうです。スタジオで一個のフレーズを決めて、それがいいグルーヴになるまで延々やるっていう。1日中やって何にも使わないことも頻繁にありましたよ。やっぱりやりまくらないと出てこない瞬間ってあるから、それが見えてくるまでひたすらやるっていう、本当に面倒なやり方なんです(笑)。
──でも今回の作品はそういう感じで作られたように聴こえなかったのは、打ち込みだからですか?
この2曲に関してはバンドではセッションしていなくて、大枠を俺が一人で作ったんですよね。セッションする時間もないし、それで形にできないことには今後もないと思っていて。だから本当にしんどかったですね。
──DTMはもともと使えたんですか?
もともと使えたわけではないです。本当は自分のソロの作品もTHE BEACHESをやめてから出そうと思っていて、DTMを教えてもらったりしていたんですよね。デモとかも作ってはいたんだけど、ずっと完成しないままになっていて。だから今回初めて形にできました。
──メンバーとのやりとりはなかったんですか?
r.u.koのフレーズに関してはr.u.koに投げていろいろネタを考えてもらって、そこから一緒に組み立てていくっていう作業はやったりもしました。順番としては、リズムが出来てから歌を作っていって、歌を作りながら歌詞も同時に書いていましたね。今回歌詞の尺を同じタームにしたくなくて、歌詞の回しで構成がずれていくっていう作り方をしたかったから、歌と歌詞を書きつつ構成も変えつつっていう作業をずっとやっていました。
次に何かしら違うモードでやれるっていう気にはなれている
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──特にA面にはびっくりしました。3回ぐらい、これはA面とB面が間違っているんじゃないかと(笑)。
ははは(笑)! B面の「RUDE BOY ROOT DOWN」はA面の「HERE COMES SUMMER AGAIN」ができてから作ったんですけど、お気楽に「あ、THE BEACHESっぽいじゃん」みたいな感じで作ったんです。「HERE COMES SUMMER AGAIN」1曲目があったから、もう1曲お気楽に作ろう、みたいな。逆に「HERE COMES SUMMER AGAIN」は、THE BEACHESっぽくやろうみたいなことは考えていなかったですね。スタジオでセッションしながら歌っていたら絶対にでない声のトーンなので。
──この作品の、特に「HERE COMES SUMMER AGAIN」では何に影響されて、どんなことをしたいと思ったんですか?
最初から思っていたのは、バンドでセッションしてできる、こんな感じになるだろうっていう曲にはしたくなかったんです。どういうジャンルがやりたいっていうのは特になかったんですけど、俺普段家でヒップホップとかしか聴かないから。2016年は特にそうだったんですけど、洋楽の新譜が盛り上がっていたので、そういう雰囲気があるものにしたいなっていうのは漠然と思っていました。
──ちなみにどのあたりをよく聴かれていたんですか?
一番大きかったのはチャンス・ザ・ラッパーですね。あとはその周りにいたいろんなアーティストの音楽も聴いていたし、ビルボードのチャートに入っているヒップホップとかトラップとか、そういうのは好きでずっと聴いていました。別にTHE BEACHESでヒップホップやろう、ってことではないんですけど、ビートとして、その辺の感じを表現できないかなって試していましたね。で、今の洋楽で面白いのが、ビートもいろんなビートがあって、ラップも、もう歌なのか何なのか分からないようなものもある。そういうのもTHE BEACHESで俺がやりたかったことと少し似ていて。ラップじゃないんだけどそういうフローもあって、でも聴き方によっては、すごい奥地のワールドミュージックみたいなメロディにも聴こえる。そういうのが今ビルボードの100位以内にガシガシ入っているのを見て羨ましく思うし、やれたら楽しいよなとも思うんです。俺小さい現場をDJでたくさん持っているから、そこで日本語の曲が一曲でもあったら楽しいし、そういう曲を年に何曲かでも作れたらいいなと思いますね。
──2017年はそういうモードを突き詰めるときですか?
今年何がやれるかもまだわからないですけど、ただ、去年の活動を通して、次に何かしら違うモードでやれるっていう気にはなれているんですよね。休んでいた5、6年間は、どんな曲を作ってもピンとこなくて、音楽的にも、最新の音楽で「これ!」っていうのがあんまりなかった時期でもあるんです。THE BEACHESをやっていた4、5年は、毎年「このビート俺が真っ先にやってやる」っていうのが常にあった。でもちょうどベースミュージックとかでいろんなジャンルがでてきていたのが一旦飽和した時期くらいに、俺のやる気も無くなっていって。多分今年は、去年出てきたものが、もうちょっとパーティー・チューンになっていくはずなんです。2016年って結構ヘヴィな雰囲気のものが多いんだけど、ああいうのが一旦売れると、それがまたチャラくなっていくじゃないですか。俺その時が一番好きで。だから今年、DJでかけたいようなすごく良い新譜がたくさん出るんじゃないか、っていう期待感があって。で、それを聞いた時に、「これだったら俺のやり方でできる」って思わせてくれる何かが出てくれるのを待っているところもあるんですよね。
──最初に「綺麗さっぱり」と言っていましたが、THE BEACHESとしてはこれでコンプリートという感じです?
最初にバンド・サウンドとしてイメージしていたことは、3枚のアルバムの中でやりつくした感はあります。心残りだったことも、新しい作り方で1つ形にできた。ただライヴで新曲をやったのが一番楽しくて、そういう意味ではやれることがまだあるんだろうなと思えたんですよね。で、その次はやっぱり全然違うことをやりたいから、それをTHE BEACHESって名前でやってもいいかもしれないし、そうじゃない方が面白いかもしれない。そこはまだ自分でも見えていないですね。ただライヴをやるってなったら俺もバンドの方が楽しいから、何かしらバンド的なスタイルでやるのはいいかなとは思います。
PROFILE
THE BEACHES
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2006年結成。「世界は常夏」をキーワードにアルバム3枚、シングル2枚をリリース。2010年9月、恵比寿リキッドルームでのワンマンライブを最後にロングバケーションに突入。結成10周年にあたる今年、5年9ヶ月ぶりに東京、大阪でロンバケ返上ライブ。下品なダンスビートで薄暗いダンスフロアからいつまでも辿り着けない世界中のビーチを目指すNEW WAVEなパンクバンド。